渡辺輝人『新版 残業代請求の理論と実務』
渡辺輝人『新版 残業代請求の理論と実務』(旬報社)をお送りいただきました。
https://www.junposha.com/book/b591784.html
前作を大幅改訂! 残業代請求の第一人者による最強の実務書
・最新の最高裁判決(2020年)と学説動向を分析
・最先端の理論で、残業代請求実務がさらに確実に
・残業代計算ソフト「給与第一」「きょうとソフト」解説付き
タイトルの通り、残業代に関する恐らく最高レベルの実務書であり、考えられる様々な論点が事細かに論じられています。後半の実務編では、渡辺さん自身が開発した残業代計算ソフトの詳しい使い方が解説されており、「残業代といえばこの一冊」であることは間違いありません。
新版はしがき
初版はしがき
凡例
用語法・言葉の定義
第1部 割増賃金制度の理論
第1章 法定の計算方法と法定外の支払方法の許容性
第1 割増賃金制度の概略
1 労基法における労働時間規制の概略
2 割増賃金制度の趣旨
(1)最高裁判決
(2)労働行政の見解
(3)学説状況
(4)まとめ
3 法定の計算方法の概略
(1)根拠条文
(2)具体的計算方法
(3)賃金形態別の賃金単価の算出方法の概略
(4)賃金形態別の賃金単価の合算
第2 法定外の支払方法の許容性
1 労基法37条の強行的・直律的効力の範囲(法定外の支払方法の許容)
2 最高裁判決によりただちに違法ではないとされたこと
第3 通常の労働時間の賃金
1 概念整理の必要性
2 「通常の労働時間の賃金」という文言の特定
3 除外賃金との関係での通常の労働時間の賃金の定義
4 25%説の「通常の賃金」と通常の労働時間の賃金の関係
5 判別要件との関係での論点設定
第2章 判別要件(法定外の支払方法の有効要件)
第1 法定外の支払方法全般と全種の割増賃金を対象に
1 「固定残業代」の定義
2 当初の判別対象
3 康心会事件最高裁判決での対象の根本的拡大
4 従前の学説の問題点
5 小括:判別要件を法定外の支払方法全般へ拡大
6 すべての種類の割増賃金を判別要件の対象に
(1)深夜早朝割増賃金についての従前の労働行政、裁判例の状況
(2)ことぶき事件最高裁判決
(3)康心会事件最高裁判決で判別要件へ編入
(4)小括
第2 「判別」することの内容の深化
1 高知県観光事件最判の「判別」
2 テックジャパン事件での月給制への射程拡大
3 国際自動車事件第一次判決で賃金の計算過程まで射程を拡大
4 康心会事件最高裁判決の「すら」
5 国際自動車事件第二次最高裁判決での「置き換え」=判別不能の判示
第3 法37条の「趣旨による判別」
1 国際自動車事件第一次判決の投げかけた問題点
2 康心会事件最高裁判決以降の「趣旨による判別」
3 国際自動車事件第二次最高裁判決の「趣旨を踏まえた」対価性検討
4 小括
第4 対価性要件を判別要件の下に位置づけたこと
1 日本ケミカル事件の概要
2 対価性要件と判別要件の関係
3 担当調査官の見解
4 国際自動車事件第二次最高裁判決での対価性要件の位置付けの明確化
第5 判別要件は契約の定めにつきなされるものと位置付けられたこと
第6 まとめ:判別要件及び通常の労働時間の賃金の意義
1 判別要件の意義
(1)強行的・直律的効力のある「基準」としての判別要件の射程
(2)判別要件の目的
(3)誰にとっての「判別」可能性か
(4)判別可能性の立証責任
2 通常の労働時間の賃金の意義:客観説
3 まとめ
第3章 判別要件を基本とする対価性要件の具体的内容
第1 対価性要件の固有の意義
1 不定形性の指摘との関係での固有の意義
2 弁済との関係での対価性の範囲
(1)問題の所在
(2)固定残業代による対価性の時間的範囲
(3)同時に2種以上の割増賃金の支払対象となる労働時間を引き当てにする手当
(4)小括
第2 日本ケミカル事件の事案の詳細
1 入職2ヶ月前の雇用契約書で合意された週の各曜日の所定労働時間等
(1)週所定労働時間
(2)休日
(3)月平均所定労働時間数
2 賃金に関する契約書面の記載内容
(1)入職2ヶ月前の雇用契約書
(2)本件雇用契約に係る採用条件確認書
(3)賃金規定
3 業務手当について、会社と他の労働者の間で作成された確認書の記載
4 労働実態
(1)時間外労働時間
(2)残業代に関する給与明細書の記載
第3 対価性要件の具体的当てはめ内容
第4 対価性要件の考慮要素の検討
1 3つの要素の関係と意義
2 事例への当てはめの特徴
(1)労働契約上の所定労働時間の範囲と対価性の関係
(2)実際の残業時間と対価性の関係
(3)その他の事情の取り扱い
3 小括
第4章 固定残業代の具体的要件
第1 賃金算定期間と賃金締切期間
第2 時給制による支払の要件
1 時給制の賃金と通常の労働時間の賃金
2 時給制の賃金による割増賃金支払い
第3 日給制による支払いの要件
1 日給制の賃金の性質と通常の労働時間の賃金との関係
2 「休日手当」(労基則19条2項)
3 裁判例の状況
4 限界的事例の検討
第4 月給制(狭義の固定残業代)の要件
1 「通常の月給制」の原則
2 給与明細書による「明確区分」
3 就業規則で基準外賃金とされていること
4 賃金の性質が問題になる場面ごとの展開
(1)入職時
(2)賃金改定時
(3)昇給・昇進時
5 労働契約書(就業規則)に「残業代として支払う」と明記してある
(1)募集広告、求人票の記載やそれとの矛盾の追及
(2)労働契約に関する文書での記載の不備や文書同士の齟齬の追及
(3)労働契約における固定残業代の位置付けの不合理性
(4)労働時間と固定残業代の関係
(5)賃金増額を伴う場合
(6)通常の労働時間の賃金の減額を伴う場合
6 固定残業代を認めた裁判例の評価
(1)関西ソニー販売事件
(2)名鉄運輸事件
(3)ユニ・フレックス事件
(4)東和システム事件
(5)ワークフロンティア事件
(6)泉レストラン事件
(7)コロワイドMD(旧コロワイド東日本)事件
(8)結婚式場運営会社A事件
7 固定残業代の合意が無効になる場合
(1)時間外労働等に罰則付きの上限値の導入
(2)上限を超える固定残業代の契約の無効
(3)無効になる範囲
(4)無効の場合の具体的な計算方法
(5)制限値をどう考えるか
(6)三六協定未締結の場合
(7)公序良俗違反による無効
第5章 請負制(歩合給)による割増賃金の支払いの可否
第1 労基法24条との関係での請負制賃金の法的性質
1 請負制の意義
2 請負制賃金からの経費控除
第2 請負制の賃金の性質と通常の労働時間の賃金との関係
1 請負制の通常の労働時間の賃金
2 請負制の賃金該当性そのものが争点になった事例
第3 月決めの請負制の賃金全体を割増賃金とする場合
第4 月決めの出来高払制賃金の中に割合による仕切を設定する例(仕切説)
第5 通常の労働時間の賃金からの割増賃金相当額等の控除
1 割増賃金相当額の控除
(1)国際自動車事件第二次最高裁判決の要旨
(2)通常の労働時間の賃金の意義に言及がなかったことについて
(3)法37条の趣旨の実現の程度
(4)出来高制の定義がされたこととの関係での「置き換え」の意義
2 過去の平均割増賃金額の控除
3 定率・定額の控除
4 小括
第6 日決めの出来高払制等を用いて時間外労働等の時間帯のみの水揚げに対する歩合給
第7 時間決めの請負制賃金の場合
第8 まとめ
第6章 法定外の支払方法に関する学説
第1 時間賃率の未成熟
第2 固定残業代等の制度の由来
1 法定外の計算方法
2 深夜早朝割増賃金を含める所定賃金
3 日給制の手当による支払い
4 請負制の計算方法による支払い
5 狭義の固定残業代
6 狭義の固定残業代の幅広い普及経緯についての仮説
第3 必要性の乏しさ(固定残業代のメリット論批判)
1 メリットがないこと
2 使用者側から語られる社会的なメリットの検討
(1)使用者側が主張する社会的なメリット
(2)事務負担について
(3)負のインセンティブについて
(4)採用上の訴求力向上について
(5)ホワイトカラーエグゼンプションの代替について
第4 許容性と有効要件に関する学説の流れ
1 手当型の固定残業代が学説に位置付けられる経過(1990年台初頭まで)
(1)許容する学説の登場
(2)通常の労働時間の賃金との関係の考察
(3)計算過程を「基準」外とする学説の登場
2 明確区分性説の盛衰
(1)「明確に区分」を求める裁判例
(2)学説化
(3)「明確に区別」説の定式化
(4)仕切説
(5)その後の学説の状況
(6)国際自動車事件第一次最高裁判決のあとの議論の活性化
(7)最高裁判所による明確区分性説の否定
第5 差額清算(合意)の位置付けに関する議論
1 肯定説での位置付けの変化
2 不要説とその問題点
3 テックジャパン事件最高裁判決の櫻井補足意見
4 国際自動車事件第一次最高裁判決での「時間による増額」文言の消失の意義
5 判別要件の一部としての差額清算合意ないしその実態
第6 125%説に対する25%説
1 125%説の概要
2 25%説の概要
3 裁量労働制の割増率
4 大星ビル管理事件と25%説
5 国際自動車事件第一次最高裁判決と25%説
6 国際自動車事件第二次最高裁判決と25%説
7 「仕切説」と25%説
8 まとめ
第7章 割増賃金制度の諸理論
第1 算定基礎賃金と除外賃金等
1 算定基礎賃金(労基法37条5項)
2 除外賃金の不算入
(1)除外賃金の意義
(2)除外賃金の要件
(3)除外賃金を潜脱する例
3 割増賃金自体の不算入
4 法内残業代の不算入
第2 賃金単価をめぐる諸問題
1 通常の労働時間の賃金と賃金単価の関係
(1)最低賃金と賃金単価の関係
(2)通常の労働時間の賃金の分割算定の可否
(3)賃金額が減額された場合の賃金単価
2 所定労働時間数と賃金単価の関係
(1)就労実態が労働契約を下回る場合
(2)月平均所定労働時間数を特定できない場合
(3)月平均所定労働時間数が法律上の上限値より高い値の場合
(4)月平均所定労働時間数の算定期間と賃金算定期間のずれ
(5)賃金単価算定のため契約で過小な所定労働時間数が定められている場合
(6)変形労働時間制が無効となった場合の労働時間数の算定
(7)労働時間の継続と終了
第3 割増率
1 法案起草時の割増率の設定に関する議論
2 8時間超の規制と40時間超の規制の関係
3 法定休日労働の割増率と割増率加算説
(1)学説の割増率不加算説と加算説
(2)労働行政の別立て時間計算を前提にした不加算
(3)加算説の現代的意義
4 深夜早朝労働の割増率、請負制の割増率、裁量労働制の割増率
5 労働契約上の割増率と労基法37条の関係
第2部 残業代請求の実務
第1章 労働時間とその立証
第1 「労働時間」の意義
1 「労働時間」の意義
(1)労基法の「労働時間」とは何か
(2)「労働時間」該当性における実際の当てはめ
2 裁判所によって労働時間と認定された行為の類型
(1)総論
(2)不活動時間(仮眠時間、滞留時間、手待時間)
(3)準備時間、朝礼(体操)、後片付け、終礼等
(4)本務外の活動(研修、QCサークル活動等の小集団活動)
(5)接待が労働時間になる場合もあり得る
(6)移動時間
3 休憩時間不取得の場合の労働時間性
(1)休憩付与義務
(2)非労働時間たる休憩の判断要素
(3)裁判例
4 持ち帰り残業の労働時間性
第2 労働時間の立証責任とその軽減
1 主張・立証責任は原則労働者にある
2 労働時間の推計自体は最高裁判所も認めている
(1)使用者の労働時間適性把握義務
(2)労働時間の推計、概括的認定、割合的認定
第3 労働時間を証明する様々な証拠
1 「これじゃなきゃだめ」という決まりはない
2 タイムカード、コンピューター上の出退勤管理システム
(1)タイムカード
(2)コンピューター上の出退勤管理システム
3 業務上使用する業務日報等
4 事業所の警備記録または警備システムの作動・解除の記録
5 コンピューター上の様々な時刻の記録
6 タコグラフ
7 労働者が作成したメモ類
8 勤務形態そのものからの労働時間認定
9 公共交通機関の利用記録
(1)IC乗車券の記録
(2)契約駐車場の利用履歴
(3)ETCの利用履歴
(4)駅の駐輪場の入庫時刻の記録
10 様々な証拠の信用性をどう考えるべきか
(1)類型的な証拠価値の分析
(2)様々な事情による修正
11 完全な証拠が揃わなくても諦めない
12 証拠保全の必要性の有無
第4 訴訟上の主張立証のポイント
1 検討の要点
2 居残り残業
(1)勝手に残業していた
(2)ダラダラ残業をしていた、遊んでいた、喫煙のために離席することがあった
(3)残業を命じていない、承認制になっていた
(4)残業してもやることがなかった
3 早出を命じていない
4 休憩時間は所定どおり取得していた
第2章 残業代の計算
第1 賃金単価の算出
1 請求原因事実の特定方法
2 賃金単価の意義
(1)法定計算で契約により定まるのは賃金単価のみ
(2)時間比例性
(3)賃金単価は計算上の概念であり「通常の労働時間の賃金」ではない
第2 月給制の賃金単価の算出方法(労基則19条1項4号)
1 問題の所在
2 そもそも月給制なのかのチェック
3 賃金単価算出の分母となる月平均所定労働時間の計算式
4 賃金単価算出の分母となる月平均所定労働時間数の算出
(1)月平均所定労働時間数に関する経験則
(2)不特定や上限値超の場合の処理
(3)使用者側が173.8時間を使用する問題点
5 賃金単価計算の分子となる月給額(算定基礎賃金)の算出
(1)一方的な減給は無視して元の賃金を算入
(2)「休日手当」等や判別不能な固定残業代の算入
(3)除外賃金の除外
(4)法内残業代の控除
第3 他の賃金算定期間別の賃金単価の算出方法
1 時給制の賃金単価(労基則19条1項1号)
2 日給制の賃金単価(労基則19条1項2号)
3 賃金算定期間が非典型的な場合の労基則19条1項5号の賃金
第4 請負制の賃金の賃金単価(労基則19条1項6号)
1 そもそも請負制の賃金なのかのチェック
2 請負制の賃金単価の計算方法
3 賃金締切日(締め日)が設定されている場合
第5 時間外労働等の時間数の算出方法
1 法定時間外労働の時間数
(1)法概念と計算の関係
(2)1日8時間超の時間数
(3)週40時間超の時間数
(4)月60時間超の時間数
2 週40時間制と法内残業の関係
(1)週40時間制と週5日勤務制の下での所定休日労働の関係
(2)週40時間制と週6日労働制の所定時間外労働の関係
3 法定休日労働の時間数
(1)計算の前提となる法定休日の事後的な特定
(2)休日の振替
(3)時間概念としての法定休日の範囲
4 深夜早朝労働の時間数
5 法内残業の時間数
(1)法内残業が生じる場合
(2)所定休日労働が24時を超えた場合の扱い
6 まとめ
第6 割増賃金の計算
第3章 計算ソフトの活用
第1 開発経緯
1 ソフト開発の経過(ソフトの必要性)
2 どのソフトを使うべきか
第2 ソフトを使用するうえでの共通した留意点
1 前提となる法的知識を身につけること
2 新しいバージョンのMicrosoft Excelを使用すること
3 ソフト上の始業時刻、終業時刻、休憩時間の概念
4 各週について労働日、(法定)休日の日の検討を行うべきこと
5 ソフトの保護を解除しようと思わないこと(ソフトを改変したいと思わないこと)
6 1事例1ファイルの原則(ファイルの使い回し禁止)
7 時刻データとして認識させること
8 計算に関する共通した特徴、制約
(1)計算上の四捨五入
(2)変形労働時間制には対応しないこと
(3)賃金締切期間は月のもののみであること
第3 給与第一の使用方法
1 ソフトの特性
2 計算の前提となる諸条件の設定(「計算規則」シート)
(1)計算期間の設定
(2)賃金締め日の設定
(3)賃金支払日の設定
(4)月の表示の設定
(5)1週間の起点となる曜日設定
(6)月60時間超の150%割増賃金の適用の有無
(7)所定労働時間の設定
(8)残業代の計算方法の設定
(9)法内残業の割増率の設定
(10)時間、法定の割増率の設定
3 賃金単価、既払金の計算(「単価・既払金計算書」シート)
(1)月給制の賃金単価の算出
(2)日給制の場合の賃金単価計算
(3)時給制の場合の賃金単価計算
(4)請負制の賃金(歩合給)の賃金単価の計算
(5)既払金の計算
4 時間外労働等の時間の計算(時間計算書シート)
(1)時間と時刻の記入のルール
(2)始業時刻、終業時刻、休憩時間の記入
(3)「始業時刻前日」の列
(4)日属性の特定
(5)休憩時間の記入
(6)事業所所定労働時間数の修正・月末日の修正
(7)週6日労働の事案への対応
5 残業代、既払金、遅延損害金、付加金の計算(割増賃金計算書シート)
(1)遅延損害金に関係する入力
(2)法内残業割増率の設定、既払金の控除
(3)付加金について
6 「詳細計算書」による割増賃金、既払金の詳細な計算
(1)「詳細計算書」でできること
(2)入力方法
(3)各ケースへの対応方法
7 当事者の主張の対照(労働時間認否・認定書シート)
8 「『きょうとソフト』へ出力」シートの活用方法
第4 きょうとソフトの使用方法
1 ソフトの特性
2 計算の前提となる諸条件の設定(要素シート:XY共通)
(1)表を作成する期間
(2)法定休日(原則)
(3)週労働時間の制限時間数
(4)週労働時間制限の起算曜日
(5)1日の所定労働時間(原則)
(6)賃金の支払方法
(7)賃金月度の表示形式
(8)月60時間規制の適用
(9)付加金請求の日
(10)確定遅延損害金計算の終期(A)
(11)遅延損害金の利率(年○%)(B)
(12)退職日(C)
3 賃金単価の計算(単価シート:XY別)
4 時間外労働等の時間の計算(時間シート:XY別)
(1)時間と時刻の記入のルール
(2)始業時刻・終業時刻、休憩時間の入力
(3)始業時刻の前日指定
(4)法定休日の例外形、所定労働時間の例外形の記入
(5)週6日労働の事案への対応
5 残業代の計算(金額シート:労使別)
(1)賃金単価
(2)歩合給額
(3)法内残業代の割増率が100%ではない場合
(4)既払金額
(5)遅延損害金の計算
6 当事者の主張の対照(対照シート)
第4章 相談から請求まで
第1 時効の完成猶予
1 残業代請求における「消滅時効は2年」の意味
2 締め日と支払日
3 まずは時効を止める
(1)催告のために債権額の特定は必須ではない
(2)当初の計算額が結果として過少でも問題はない
(3)交渉過程と時効の関係
(4)実際の催告のやり方
4 付加金と時効の関係
第2 証拠の類型、使用方法、入手方法
1 証拠収集の経路
2 労働時間に関するもの
(1)タイムカードなど労働時間証明の資料
(2)変形労働時間制に関する資料
3 労働契約、労働実態に関するもの
(1)ハローワーク求人票、労働者募集広告
(2)労働条件通知書、労働契約書
(3)就業規則、賃金規定、労働協約書
4 賃金の実態に関するもの
(1)給与明細書
(2)賃金台帳
(3)三六協定書
5 「周知されていないこと」に関する証拠
第3 打ち合わせで順次確認すべき事項
1 全体を通じて
2 労働時間、職務について
(1)職務内容(管理監督者に該当する可能性の有無)
(2)労働契約上の始業・終業時刻、休憩時間、所定労働時間数(休日数)
(3)大ざっぱな残業時間と理由
(4)労働時間の証拠の有無、入手の可否、証明力の検討
(5)就労場所、就労パターンの変遷
3 賃金について
(1)賃金形態、賃金支払実態
(2)締め日、支払日
(3)給与明細書上の賃金と契約上の賃金の対応関係の有無
(4)賃金減額や天引きの理由
4 その他のことについて
(1)労働時間以外の証拠の収集方法の検討
(2)代表者の氏名、会社のFAX番号
(3)事業所の存続可能性
(4)付加金について期待を持たせる発言をすべきではないこと
第4 請求
1 示談交渉
2 法的手続きの選択
(1)労働審判
(2)訴訟
第5章 頻出論点への対応
第1 問題の所在
第2 労働者性
1 立証責任は労働者側
2 使用従属性の判断基準
第3 変形労働時間制
1 対応検討の要点
(1)制度のイメージ
(2)制度の種類
(3)対応の要点(抗弁事由であること)
2 変形制の有効要件
(1)1ヶ月以内単位
(2)1年以内単位
3 労働契約書に記載がない
4 制度に具体性がない
5 起算日の不特定
6 労働日、各労働日の労働時間、始業時刻・終業時刻の不特定
(1)1ヶ月以下単位の場合
(2)1年以下単位の場合
7 労働時間制限違反
(1)1ヶ月以下単位の場合
(2)1年以下単位の場合
8 対象期間に入ってからの労働日の変更
(1)1ヶ月以下単位の場合
(2)1年以下単位の場合
9 労使協定の締結手続きの瑕疵
(1)労働者代表の選出手続きの瑕疵
(2)締結時期の瑕疵
10 制度を周知していない
11 労基署への届出がない
第4 事業場外のみなし労働時間制
第5 裁量労働制
1 検討の要点
2 要件
(1)専門業務型
(2)企画業務型
第6 管理監督者(適用除外 )
1 検討の要点
2 「実態に基づく判断」の要素
3 裁判例とその概観
第7 他の適用除外
1 農業・畜産・水産業
2 監視又は断続的労働
(1)要件
(2)監視に従事する者
(3)断続的労働に従事する者
(4)断続的労働としての宿日直労働
第8 週44時間制の特例
1 検討の要点
2 事業所性の判断基準
第9 付加金
1 制度概要
2 制度趣旨
3 口頭弁論終結前の弁済
(1)付加金発生時に関する最高裁の見解
(2)最高裁の判決時説に対する度重なる批判
(3)いつの「未払額」なのか
4 判決確定前の弁済
5 付加金の認定割合
6 一部弁済の場合の充当関係
第10 割増賃金不払いの不法行為性
関連条文
判例一覧
そうなんですが、そもそものところで、私は残業代の議論というものに、あまり重要な意義を感じられないので、素晴らしい力作だとは思うのですが、やや斜め方面からのコメントになってしまうことをあらかじめお詫びしておきます。
残業代が重要でないとは何事だと怒り出す人がいるかもしれません。いや確かに、使用者と労働者の間の賃金問題として極めて重要です。そして、労使間の紛争に法的に取り組む弁護士の皆さんにとっても極めて重要であることも否定しません。しかし、国家が労働条件の最低基準を定め、その最低基準を下回るような非人間的な劣悪な労働条件に対しては刑罰を以て禁止しなければならないという労働基準法政策の観点からすると、最低賃金を下回るような低賃金を払うとか、最長労働時間を超えて働かせるというような意味での「最低労働基準」なのか、という大きな疑問があります。
これはもう十数年前から繰り返し言い続けてきていることですが、時給1000円の薄給の人が1時間残業したら1250円しか払えと言わないのに、月給100万円近くで時給換算して5000円の高給の人が1時間残業したら6000円払えというのは、もちろん民事契約上はまことに正当ですし、弁護士がそう主張するのも当然ですが、国家権力が刑罰を以て強制する原理としてまで正当なのかどうかは、私は深い疑問を抱いています。
そんな金持ち労働者の権利なんか、民事上の問題で十分じゃないか、国家権力がわざわざ出張ってまで強制しなければならないのは、もっと厳しい状況に置かれている労働者の権利なのではないか、という問題意識に、きちんと答えてくれた人はいままでいません。
なぜそうなったかももちろん明らかであって、労働基準法に最長労働時間規制があると言いながらそれはほとんど空文化し、2018年に過労死水準の上限規制が設けられるまでは、管理監督者でも裁量制でもなんでもないヒラ社員でも残業代さえ払えば無制限の長時間労働が可能であったからで、本来賃金規制に過ぎない残業代規制が、あたかもそれだけが労働時間規制であるかのようなでかい顔をしてしゃしゃり出るようになってしまったわけです。
というような話は、実は本書の著者である渡辺輝人さんと2014年に『POSSE』で対談しています。
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2018/07/posse242014-fd3.html
濱口:先ほど学者対実務者の枠組みとおっしゃっていましたが、私は自分を純粋な学者とは思っていません。実際に労働法学者と呼ばれる方々のほとんどが行っているのは労働法解釈学であって、その方々の感覚の基本的な土俵は渡辺さんと同じだと思います。私自身は、いま渡辺さんがおっしゃったようなもの(本号では省略)が労働時間規制であるという発想自体に対して批判的な立場です。特に「1日8時間1週間40時間を超えたら残業代を払わなければならない」というのが日本の労働時間規制だとする見解でくくれば、労働弁護士も経営法曹も労働法学者も同じ労働法サークルに属していて、そこに対して私が孤立的な立場に立っているという認識です。
日本の労働時間規制は条文を素直に読めば物理的な時間を規制しているので、制度的にみれば実はヨーロッパ型であると言えます。1日8時間、週40時間を超えて働かせてはならず、超過して働かせた場合には刑事罰まであります。これに対してアメリカの公正労働基準法は、週40時間を超えた場合には50%割増しの規定があるのみで、それさえ守ればいくらでも長く働かせることができる。そのような違いがあるにもかかわらず、労働法サークル内外のほとんどの人は日本の労働時間規制はアメリカ型の残業代規制だと思っている。皮肉な言い方をすれば、一方にサルを神様だと思い込んで拝んでいる人がいて、その傍らにはサルを悪魔だといって叩こうとしている人々がいるというような状況です。たとえば変形労働時間制といっても、1日10時間に達したときに、そこで強制的に労働を終わらせる義務はなく、それ以降は割増しを払う必要があるというだけです。時間外労働や休日出勤といった際、日本人には時間外手当や休日手当を払うべき時間という以上の意識がない。そのため、法定休日か否かという議論も、単に割増率が25%か35%かという議論に還元されてしまいます。そんなものが休日規制の名に値するのかが問題ですが、実務家からも学者からも提起されることはありません。ここに最大の問題があるというのが私の問題意識です。
労働時間規制でないものを労働時間規制だとするこのような発想は、マスコミや政治家など労働法サークルの外部にまで浸透しています。ここでも残業代ゼロが是か非かという議論に現れているように、サルを拝んだり叩いたりしているだけで、本質的な部分がすっぽりと抜け落ちているわけです。第一次安倍内閣のWEの議論の際からその流れがずっと続いていて、ようやく最近になって残業代とは切り離して労働時間の物理的な上限規制を設けるべきだという議論が出てきました。規制改革会議が明確にそれを提起し始めていますし、骨抜きになっているとはいえ産業競争力会議もリップサービスとしては言及しています。
濱口:そのように議論すること自体が、サルの話になってしまっています。35%が良いか悪いかではなく、そもそも法定休日とは仕事をさせてはいけない日なんです。EU指令の法定休日とはまさにそういう意味です。それがいつの間にか加算するかしないかの話になってしまうのが今の日本の状態で、労働時間の問題がお金の問題に還元されてしまっている。法定休日に働かせているだけで刑罰の対象になるという感覚が全くないんですね。もっとも、法学者や実務家は実際に出てきた判例を評釈しなければならず、サルしかいないところでサルばかり相手にしているので、いつの間にか本来の神がみえなくなってしまっているわけです。
濱口:そのような議論も、法定休日をお金の問題としかとらえていません。日本の法律の仕組みは本来はあくまでもヨーロッパ型です。お金ではなく物理的な時間規制です。つまり、物理的労働時間を規定する32条こそ重要なはずですが、現実には32条は空洞化していて、割増賃金を規定する37条こそが労働時間規制の本質だと思われているのです。
第一次安倍内閣の時にも、労働時間規制を抜本的に変えようという議論がありましたが、エコノミスト、経済評論家、マスコミ、経営者、政治家などほとんどが、労働時間規制とはすなわち残業代規制であるという、労働法の世界から発信されている主張をそのまま受け取って議論していました。たしかに現在の残業代規制は不合理な面をもっていますが、それよりも議論の土俵自体が間違っているところにより大きな問題があります。
濱口:しかし、そのような主張は結局のところ、過労死するほど働かせても残業代さえきちんと支払っていれば問題ないという発想に吸収されてしまうと思います。EUの労働時間指令は残業代の話を一切抜きにして時間だけを規制しており、また日本も昔は女性に対して1日2時間、年150時間以という物理的な時間外労働の上限がかけられていました。一方でアメリカはお金で間接的に規制しようという立場です。
いまの立法論の議論は、工場法・労働基準法以来の物理的な労働時間規制の建前が運用のなかで実質的に空洞化されてきたところを、さらに建前の部分も空洞化しようとしています。実務家として残業代請求が主戦場だと思うのはよく理解できますが、立法論の基本からいえば、残業代だけに集中した議論は、100年前から続く天守閣をやすやす明け渡して、二の次に作っていた小さな櫓にしがみついている、と言わざるを得ません。主たる天守閣が空洞化している中では櫓しか闘う拠点がないので、現実にそれが役に立っているのは確かですが、その櫓が攻撃されている理由は天守閣との関係ではなく、櫓そのものにあります。城を守る方の立場からすると天守閣をそっちのけにして櫓だけ守ってみても意味をなさないわけですが、攻める方からみると、櫓だけが邪魔者に見えるのです。具体的には、櫓に対する攻撃にあたっては、天守閣との関連でではなく、櫓そのもの、つまり賃金制度としての合理性に対して批判がなされるわけです。もっとも典型的なのは、時間と比例した賃金制度はおかしいという主張ですね。そのため、櫓だけしか目に入らない議論をしていると、賃金制度の基準を時間に置くべきか成果に置くべきかという狭い議論に陥ってしまうので、まさに櫓だけが攻防の場となってしまいます。労働法の実務家も解釈学者も含めたすべての人に対して、そのような議論をしていていいのかと問いかけたい最大の理由がここにあります。
濱口:マスコミも労働法のプロではないので、残業代による間接的な規制ではなく、過労死させないという観点から労働時間そのものを規制することが重要なんだと、櫓と天守閣を峻別した議論を理解してもらうことが必要です。ところが前回も今回も、批判派の議論はもっぱら、残業代を払わせることが長時間労働・過労死を防止している、すなわち櫓が天守閣の代わりに闘っているからいいんだという言説です。でもから見ると、なぜ天守閣ではなく櫓だけを大事にするのかという印象を受けます。実務家の立場としてはよくわかりますが、一国のルールをゼロベースで作るとなった際に、その議論では天守閣の姿がまったく見えてきません。残業代ゼロは過労死の促進だと強調したところで、結局それは労働法サークルの中でしか通用しない話です。一歩その外に出て、天守閣と櫓についての事情を知らない人に対してそのように打ち出したところで、妙な櫓を守れという話しかしていないように思われてしまう。
今の情勢はゼロベースで労働時間規制をどうするべきかという議論ができるまたとない絶好の機会で、しかも規制改革会議は部分的に私の主張を取り込んでいます。36協定も終戦直後はそれなりに抑制力のあるものでしたが、50年代に数回にわたって行われた省令改正によって空洞化されてしまった歴史があります。細かいところは後々詰めていけばいい話ですが、天守閣がなくなった跡地に再度小さなものでもいいので天守閣を作ろうという議論がまず第一になされるべきであり、もともと殿様がいるわけでもない櫓を守ることばかりに全力を注がないほうがいいのではないかと思っています。
濱口:バーター論と言っても、こちら側の合理性である長時間労働規制を何としてでも手に入れるためにしぶしぶ経営側の合理性である残業代規制の緩和を認めざるをえない、という捉え方は少し誤解があります。先ほども申したように、経営側は、天守閣がないなかで成果に基づいて報酬を支払いたいというロジックなので、一定の合理性があるわけです。そこに、現在長時間労働を間接的に防いでいる櫓を壊すのであれば、その代わりに新しい天守閣を作らなければいけないというこれまた合理性のあるロジックを持ち出すことになるので、このバーター論ではそれらの合理性を前提にした、話し合いの余地が十分にあります。
濱口:経営側のいう残業代規制の矛盾が顕著に現れている例としては、モルガンスタンレーサービスリミテッド事件があります。
濱口:まともな労働法学者が評釈したら疑う余地もなく判旨反対となりますが、一般の意見としてはそんなの当たり前だろうと捉えられてしまう。世の中の大半の人がこれ以外の結論はないと思うことが違法になってしまうような仕組みはおかしいわけです。この例の場合は年収3000万円ですが、これが1000万や800万に引き下げられた場合はどうなのか。そのあたりになると世間の常識がせめぎ合うようになるわけです。高給取りであれば残業代規制に守られていなくても仕方がないという常識による攻撃に櫓がさらされたとき、単に判旨反対では守れません。そこで生きてくるのがバーター論です。物理的な労働時間以外の領域における線引きをどのように釣り合わせていくかという政治的な判断の領域においてはそのような議論が必要になってくると思います。
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コメント
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(誰でも被害者になり得ると思しき性暴力ではなく、)弱者だけが被害者になり得ると思しき性搾取を問題視することが、結局は(弱者ではなく)強者の利益になる、というのと似てますね。まあ、ナベテルさんですし
> 国家権力が刑罰を以て強制する原理としてまで正当なのかどうかは、私は深い疑問を抱いています。そんな金持ち労働者の権利なんか、民事上の問題で十分じゃないか、国家権力がわざわざ出張ってまで強制しなければならないのは、もっと厳しい状況に置かれている労働者の権利なのではないか
投稿: 残念マン | 2021年9月20日 (月) 23時53分