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« 慶應義塾大学産業研究所HRM研究会35周年記念シンポジウム「ジョブ型VS.メンバーシップ型:日本的雇用制度の未来」 | トップページ | 『日本労働研究雑誌』2021年9月号(No.734) »

2021年8月25日 (水)

低学歴を詐称することは懲戒解雇に値するが、高学歴を詐称することは雇止めにも値しない

こんな増田が話題を呼んでますが、

https://anond.hatelabo.jp/20210824201719(中途採用社員が経歴詐称だった)

中途採用した社員が経歴を、完全に詐称していた。これが俺の係で大問題になっている。
事の発端は1本の電話からだった。・・・

112483_20210825111601 正確には経歴詐称ですらなく、「スキルの一部と成果を申告しないだけ」なんだが、それで大騒ぎになっている。いかにも日本的な光景ですが、これがいかに日本的なのかを、10年前に出した『日本の雇用と労働法』(日経文庫)の中でこう説明していたので、ご参考までに。

 採用に当たり学歴詐称が問題になることは洋の東西を問いません。ただし、欧米のジョブ型社会で学歴詐称といえば、低学歴者が高学歴を詐称することに決まっています。学歴とは高い資格を要するジョブに採用されるのに必要な職業能力を示すものとみなされているからです。日本でもそういう学歴詐称は少なくありません。しかしこれとは逆に、高学歴者が低学歴を詐称して採用されたことが問題になった事案というのは欧米ではあまり聞いたことがありません。
 新左翼運動で大学を中退した者が高卒と称してプレス工に応募し採用され、その後経歴詐称を理由に懲戒解雇された炭研精工事件(最一小判平3.9.19労判615-16)の原審(東京高判平3.2.20労判592-77)では、「雇用関係は労働力の給付を中核としながらも、労働者と使用者との相互の信頼関係に基礎を置く継続的な契約関係」であるから、使用者が「その労働力評価に直接関わる事項ばかりでなく、当該企業あるいは職場への適応性、貢献意欲、企業の信用の保持等企業秩序の維持に関係する事項についても必要かつ合理的な範囲で申告を求めた場合には、労働者は、信義則上、真実を告知する義務を負」い、「最終学歴は、・・・単に労働力評価に関わるだけではなく、被控訴会社の企業秩序の維持にも関係する事項」であるとして、懲戒解雇を認めています。大学中退は企業メンバーとしての資質を疑わせる重要な情報だということなのでしょう。
 これに対して中部共石油送事件(名古屋地決平5.5.20労経速1514-3)では、税理士資格や中央大学商学部卒業を詐称して採用された者の雇止めに対して、それによって「担当していた債務者の事務遂行に重大な障害を与えたことを認めるに足りる疎明資料がない」ので、「自己の経歴について虚偽を述べた事実があるとしても、それが解雇事由に該当するほど重大なものとは未だいえない」としています。低学歴を詐称することは懲戒解雇に値するが、高学歴を詐称することは雇止めにも値しないという発想は、欧米では理解しにくいでしょう
 

 

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