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2021年7月29日 (木)

典型的にメンバーシップ型の「退職処分」

Img_top_business03 数日前からネット上で騒ぎになっていたようですが、『ホビージャパン』という雑誌の編集者がSNSで転売について書き込んだことが炎上したため、「退職処分」とやらになったようです。

http://hobbyjapan.co.jp/news_release/detail.html?id=6

 お客様ならびに関係者各位
平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
表題の件につきまして、弊社社内規定に基づき下記の通り処分致します。
           記
当該社員
月刊ホビージャパン編集部 編集担当  退職処分
管理監督者
常務取締役編集制作局長        譴責の上取締役に降格
月刊ホビージャパン編集部 編集長   譴責の上副編集長に降格
月刊ホビージャパン編集部 副編集長  譴責の上デスクに降格

「退職処分」というのは意味不明ですが、「処分」というのは相手方の意思の如何を問わない一方的行為を指す言葉ですから、少なくとも本人の一方的意思に基づく辞職でもなければ、双方の意思の合致に基づく合意退職でもなく、会社側の一方的意思に基づく雇用終了である解雇であることは間違いなく、かつ「弊社社員のSNS等での不適切発言に関する社内処分」として、他の解雇以外の懲戒処分と並んでいることからも、(退職金の支給の如何といった非本質的なことに一切関わらず)これは懲戒解雇であることは明らかです。

そして、こういう会社外部での個人の言動が(他のいかなる根拠にもまして)懲戒解雇のもっともな対象になるということに、ジョブ型ではないメンバーシップ型の日本の姿が良く現われていると言えましょう。

最近の間違いだらけのジョブ型論でも、メンバーシップ型では解雇がきわめて困難で、ジョブ型になったら解雇し放題であるかのようなおかしな議論が横行していますが、こういう事例を見ても、そういう単純なものではないことがよく分かると思います。

ジョブがはじめにあり、そのジョブに人をはめ込むジョブ型社会では、そのジョブがなくなるという整理解雇が最も正当な解雇ですが、ジョブがちゃんと存在し、かつそのジョブをそれなりにこなしていいる人を好き放題に解雇できるなんてのは、アメリカ以外にはありません。

ジョブ型社会の解雇規制とは、ジョブを前提とし、ジョブがある限りヒトに着目した不当な解雇を制限しようとするものだからです。

それに対して、ヒトがはじめにあり、そのヒトに仕事をあてがうメンバーシップ型社会では、仕事がなければ、あるいは仕事ができなければ、何か見繕ってできる仕事をあてがうのは会社の責任なので、その面では解雇がより制限されますが、逆に会社の一員たるにふさわしくないと会社側が判断するような行為をしたら、たとえば残業を拒否するとか、転勤を拒否するというような不逞の輩は懲戒解雇しても良いと最高裁がお墨付きを出しています。

解雇規制のあるジョブ型社会の人が見たらびっくりして、日本は解雇自由の国なのかと思ってしまうような、ケシカラン奴の解雇が堂々とまかり通るのが、メンバーシップ型社会の一つの特徴でもあるのです。

報道によると、この編集者は

https://news.yahoo.co.jp/articles/b260356e1c40bb7a425ffa04e9a64335a57eee9f

「転売を憎んでいる人たちは、買えなかった欲しいキットが高く売られているのが面白くないだけ」「頑張って買ったひとからマージン払って買うのって、普通なのでは」などと転売ヤーの存在を肯定的に書き込んでいた

のだそうですが、そんなことで懲戒解雇だというのもまた、解雇規制のあるジョブ型社会の人に見せたらびっくりするような一事例であることは間違いないと思われます。

ちなみに、この問題は、9月に刊行予定の『ジョブ型雇用社会とは何か-正社員体制の矛盾と転機』(岩波新書)でも詳しく突っ込んで取り上げておりますので、その節は是非ご一読いただけますと幸いです。

第2章 入口と出口
四 解雇をめぐる誤解
1 ジョブ型社会で最も正当な整理解雇
2 誤解だらけの「能力」不足解雇
3 現実社会の解雇の姿
4 移る権利・移らない権利 

 

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コメント

> 会社外部での個人の言動が(他のいかなる根拠にもまして)懲戒解雇のもっともな対象になるということに、ジョブ型ではないメンバーシップ型の日本の姿が良く現われていると言えましょう。
> 会社の一員たるにふさわしくないと会社側が判断するような行為をしたら、たとえば残業を拒否するとか、転勤を拒否するというような不逞の輩は懲戒解雇しても良いと最高裁がお墨付きを出しています。

まさか、懲戒解雇だとは。タレント契約みたいな特殊な契約をしていて、
その中の条項に違反していて、契約解除みたな話だと思ったんですけど。
これで、思い出されるのは自称最年少准教授ですが、(もし内部情報を
あれこれ言い出すようなことをしなければ、)どうなってたんですかね。
いずれにしても、日本は「キャンセルカルチャー先進国」なんでしょう。

解雇ではなく、退職処分と記載されているので諭旨退職処分、と読みました。
実質的には諭旨退職も懲戒解雇も同様(切腹か磔かの違い…)と言われればそのとおりなんですが。

実際の話として、業務外の言動であるこのSNSの一連の内容を見たときに、諭旨退職・懲戒解雇は裁判に付されたときに勝てない事案(無効となる)と思うんですが、いかがでしょうか?

ジョブ型はやっぱりよく理解できていないのですが、(アメリカ以外の)ジョブ型社会では同じ事をやっても処分されないのでしょうか?
私の理解している範囲では、
 ・月刊ホビージャパン誌の読者の大部分は熱心なプラモデル愛好家である
 ・熱心なプラモデル愛好家のほとんどは転売に反対している
 ・月刊ホビージャパン誌も公式に転売に反対している
 ・当該編集者の投稿内容は勤務先の公式な方針に反している
 ・投稿に反発した読者の間で月刊ホビージャパン誌の不買運動が起きている
という事だと思います。
(アメリカ以外の)ジョブ型社会では、ジョブ(編集)をきちんとこなしていれば、会社外部で個人的に勤務先の公的方針に反する投稿をし、それによって勤務先の業績に悪影響を与える恐れが出てきても処分されないのでしょうか?

この件とは無関係ですが、テニスの大坂なおみ選手に関する人種差別的ツイートを投稿した編集者との契約を解除した会社がありました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/70498d84fbde9266793a5cd1aa46c76f00b4caa9
この編集者は業務委託なので社員ではありませんが、編集者が社員であればジョブ(編集)をきちんとこなしている限り、(アメリカ以外の)ジョブ型社会では同じツイートを投稿しても処分されないのでしょうか?

この退職処分は不当解雇だ。
転売は一般的に合法であり、「希少なものほど高くなる」ことは市場原理として広く経済学で受け入れられているし、大資本やカルテルによる必需品の極端な買い占めや価格協定を除けば人権侵害とはいえない。
つまりホビーの転売の是非とは、法的には容認されており、非とする側も感情的な不快感を表明しているにすぎないのである。
人権侵害ではない場合の個人的な好悪によって意見を封殺されるのみならず、それによって解雇するというのは、労働基本権侵害の極致ではないか。

※某雑誌編集者のアルリートに対する人種差別事件や某政治家によるロリコン容認事案は人権侵害思想でありキャンセルされてしかるべきである。

> 人権侵害思想でありキャンセルされてしかるべきである。

高弟たちを引き連れて雑誌の編集部を侵入して、そこに居合わせている人々に暴行を加えるのは人権侵害なのか?それとも、そうではないのか?

> 過去の犯罪をテレビで自慢をしている人が、ここにいるようなんですが。
> こちらは、放置でよろしいんでしょうかね?
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2021/07/post-c59654.html#comment-120232705

議員は主に公開情報を元に採用(?)が判断されるのに、
従業員はそうではないというのを正当化しようとすると、
(聴取や調査などによって特別に得られた)その非公開
情報が当該雇用契約の重要事項であることが必要である
べきような気がするんですけどね

同様に、新たに情報が発生、乃至、獲得されたときにも
懲戒相当か、どうかというのも、それが当該雇用契約の
重要事項であるということが必要であるべきではないか

で、実際に、これらの案件では、重要事項だと雇用主は
思っているっぽい訳ですが、もしそうだとすると、重要
事項であるのか?もし重要事項であるとしたら、そんな
ことが(指揮命令を伴っている)雇用契約として妥当で
あるのか?ということが気になります

じゃあ、妥当ではないよ、ということになったときには、
今度は、例外的に公務員だったら、公務員というだけで
急に妥当になるのか?という話にもなりそうで、本当に
面倒ですね

日本に特徴的な差別の温床には、これらのことが、強く
関わっているのではないかしらね

>この編集者は業務委託なので社員ではありませんが、編集者が社員であればジョブ(編集)をきちんとこなしている限り、(アメリカ以外の)ジョブ型社会では同じツイートを投稿しても処分されないのでしょうか?

この点に関して以下の記事がありました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/9784559dfdbd0e6e9e7290a085f8d04fc00887bb?page=2

  ドイツでは2016年に旅行代理店Thomas Cookの管理職だった男性従業員が、職場の社員食堂で働く
  カメルーン出身の女性に数回に渡り「黒ん坊キッスがほしい」などと声をかけ、これが人種差別と
  セクハラに該当するとして同社から解雇通告受けたことが報じられました。
   男性従業員がそれまでの勤続年数十年の間にそれ以外に特に問題を起こしていなかったことから、
  フランクフルトの労働裁判所は解雇を無効としたものの、会社側はマスコミに対して
   「カメルーン出身の女性に対する同氏の肌の色をからかうような言動は一度限りのものではなく、
    数回にわたり行われた挑発的なものだった」
  と発表しました。

私はドイツの雇用や法律に関して全くの素人ですが、この記事によれば、(ジョブ型である)ドイツでは、長年ジョブを問題なく遂行していれば人種差別やセクハラに該当する行為をしても解雇はされないようです。

> 職場の後輩との不倫が妻にバレた際、『あなたの会社にすべて報告しますね』とだけLINEが届きました。
> 『従業員同士が不倫しているなんて、会社としても問題でしょう?』『事実はきちんと報告しないと』と言われてしまい……。
https://ananweb.jp/anan/373399/

何が、どう(会社として)問題なんだろう?と思いましたが
「不貞を働くような不逞輩」は、仲間として相応しくないと
いうことでしょうね

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