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« Labor-management Relations in Japan Part III: Systems for Resolving Individual Labor Disputes@『Japan Labor Issues』Vol.5 No.33 | トップページ | 典型的にメンバーシップ型の「退職処分」 »

2021年7月28日 (水)

同一労働同一賃金は正義か@日経新聞の大機小機

昨年来、(間違いだらけの)ジョブ型の旗を振り続けてきた日経新聞の昨日の大機小機に「同一労働同一賃金は正義か」という、ものごとをよく分かっていないことは同様ながら、日本的に(自分流に)理解した「じょぶがた」に対して、これはもういかにも日本的な(自分流の)批判を繰り広げていまして、なんだかなあ、という気分にさせられます。

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO74199590W1A720C2EN8000/

ジョブ型雇用の世界では、同一労働同一賃金の原則が貫かれることが多い。

労働の質を考えれば、労働が同一かどうかを判断するのは難しい。同じ職務を遂行しても、労働の質には違いがある。人によって勤労意欲や能力に違いがあるからである。・・・

・・・にもかかわらず、同一労働同一賃金の原則がいわれるのは、弱い労働者を保護するためである。・・・

このいかにも典型的な誤解。この「猪突」さんは、同一労働同一賃金ということばを、ジョブ型の本来の趣旨通りに「異なる労働には異なる賃金」という意味ではなく、「異なる労働にも同じ賃金」というとんでもない平等主義だと理解してしまっているようです。

いや確かに、メンバーシップ型社会では同じ雇用区分で同じ年次である限り「異なる労働にもほぼ同じ賃金」という原則が貫かれ、格差は雇用区分が違うとか年功が違うということでしか正当化されないので、そういうジョブ型では通用しない観念を無意識裡に持ち込んで、自分流の「じょぶがた」を妄想してしまうのでしょう。

ジョブ型社会とは、いうまでもなく、ジョブが違うということが(それだけが)格差を正当化する社会です。職務評価に基づく高給のジョブと低給のジョブの格差が大きい社会です。だからこそ、社会的に高いと評価されているジョブが実はクソだぜという「ブルシット・ジョブ」論が、そうだそうだと受けるのです。

これほどまでにジョブ型を完璧に誤解している「猪突」氏ですが、最後のところでメンバーシップ型のメリットを説くところは、(価値判断はともかく)少なくとも事実認識としては正しい。

・・・定められた職務を超えて追加報酬なしで遂行する仕事の範囲を無差別圏と呼ぶ。この無差別圏の広さが賃金水準を決める。無差別圏が広い方が会社にとっては使い勝手が良いので、給料が高いというのが合理的になる。

例えば、残業を命じた際、積極的に受ける人の方が自分の都合を優先したい人より給料が高くて良いという考え方につながる。無差別圏の概念は、ジョブ型雇用の単純な原則にとらわれるのを防いでくれる。

ものすごくカチンと来る人が多いでしょうが、この言説自体は事実認識としてはまさに正しいし、30年前までは日本の競争力の高さを説明する原理として世界中でもてはやされていた議論です。

職務、時間、空間の限定のない無限定正社員がなぜ給料が高いのかを経済学的に説明するとまさにこうなります。これまた誤解している人がやたらに多いですが、メンバーシップ型というのは、経済学的には合理的なんですよ。

ただ、女性活躍だのワークライフバランスだのという言葉の飛び交う2021年の今日、この議論がそのまま(価値判断としても)通じると思っているとすると、いささかアナクロニズムの感は免れませんが。

 

 

 

 

 

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コメント

女性活躍のために無限定正社員的な働き方に足かせを付けろというのは、職務の面で女性が男性より劣っていると認めることに他ならない。自由主義国の平等とは「等しいものを等しく扱うこと」であり、平等を求める女性運動家は「男女の能力差はない」と主張してきた。
女性活躍のために男性無限定正社員に足かせをはめる主張は、「女性=障害者に健常男性並みの仕事を求めるのは可哀想」ということである。
これは表面的な男女平等論を根本から覆す政策ですよ。

中国さんは、女性労働問題の基礎の基礎の本をいくつか読んでからコメントした方がいいでしょう。
この問題で「女性活躍のために無限定正社員的な働き方に足かせを付けろというのは、職務の面で女性が男性より劣っていると認めることに他ならない」などというのは、ちょっと信じられない発言ですが、わざとでなければただの無知によるものだと思われます。
これは職務自体の能力の問題ではありません。

それこそ、拙著ですが。『働く女子の運命』くらいは読んでみたらいかがですか。中国共産党政権の中華民族主義の正当性を声高に叫ぶのと同じ調子では足を踏み外しますよ。

エリートは無限定が職務であり、よって、エリートに限定すれば劣っている(傾向にある)。にも拘らず、そこでも平等を求め始めたのが、近年の(先鋭化された?)フェミニズムである、とは言えるかもしれません。

> メンバーシップ型というのは、経済学的には合理的なんですよ。ただ、女性活躍だのワークライフバランスだのという言葉の飛び交う2021年の今日、この議論がそのまま(価値判断としても)通じると思っているとすると、いささかアナクロニズムの感は免れませんが。

> 多様性の精神と相いれぬ能力主義
> 勝負の世界。負けたものはダメ、クズ。ホームレス、障がい者、老人、弱いものは追い出される
> スポーツの暴力性が祝賀資本主義の暴力性と結びつけば暴力は暴走し、弱者は排除され、搾取され、とことん踏みつけられる
https://mainichi.jp/articles/20210801/ddm/014/040/020000c

> 『ジョブ型雇用社会とは何かー正社員体制の矛盾と転機』
> 第1節 女性活躍というけれど
> 3 ジョブなき社会の女性活躍
> 第2節 障害者という別枠
> 1 メンバーシップ型になじまない障害者雇用

無差別級だけでなく、「身体障害者が活躍しやすいもの」(パラリンピック)、「女性が活躍しやすいもの」(女性リーグ)を導入しよう的な話、はいいのですが、無差別級で彼らがあまり活躍できないのは差別があるからだ、とか、無差別級と比べて商業的に盛り上がらないため、賞金が低いのは差別だ、とか、言い募る方々って、一体、何なんでしょう

スポーツ競技は(少なくとも勝負に関しては)明確に限定的ですが、だからと言って、もしも差別がなければ、身体障害者や女性が活躍できるはずである、なんてことはないでしょう

もしも差別がなければ、男も妊娠、出産できるはずである、なんてことも、もちろんありませんが、ひょっとしたら、育児だって生物学的には男は比較的に苦手なのかもしれません。もちろん、男だからと言って、予め育児から排除するのは、差別だとは思いますが、育児が苦手な個人が育児から離脱する傾向にあるのは、差別でも、何でもないでしょう

限定的な領域が増えることは、個々の領域(例えば、ジョブ)で多様性が増すことではなく、多様な人々が自分が活躍できる領域(ジョブ)を(メンバーシップ型社会よりも)見出しやすくなり、その結果として、どこかで活躍できるようになるというだけです

> メンバーシップ型というのは、経済学的には合理的なんですよ。ただ、女性活躍だのワークライフバランスだのという言葉の飛び交う2021年の今日、この議論がそのまま(価値判断としても)通じると思っているとすると、いささかアナクロニズムの感は免れません

>スポーツ競技は(少なくとも勝負に関しては)明確に限定的ですが、だからと言って、もしも差別がなければ、身体障害者や女性が活躍できるはずである、なんてことはないでしょう

ですです
そもそもマスコミで「アンチ能力主義」を語る人ってその人自身がある種の実力者か特権者であるんですよね。サバルタンは語れないという話。

無能で貧困な人が能力主義批判してもそれは「みっともない負け惜しみ」にしかならないので、逆の立場の人に言わせるしかない。でもその場合は必ずブーメランになるという

能力主義を舌鋒鋭く批判する日米の文系学者さんたちはかなりの競争をしてきたと思うんですが(実際、文系の博士号取得は一般に理系より難しい)、より低評価な人達にポストを譲ろうって人はいないんですよ。

チャンチャラおかしいわ

ここまで、元のエントリの中身とまったく関係のない駄弁をこねられる神経が信じられないね。
過去このブログに何回か現れて、しばらく騒いだ挙げ句消えていった人々と同じ手合いなんでしょうが、本ブログのコメント欄は本来そういう人々のための特設落書き帳ではなく、元エントリに関するコメントのためのスペースなので、そろそろ対応を考えた方がいいかも知れません。

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