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2021年6月16日 (水)

労働者協同組合のパラドックス@『季刊労働法』2021年夏号(273号)

483_o_20210616085901 『季刊労働法』2021年夏号(273号)に書いた「労働者協同組合のパラドックス」は、例によって立法運動と立法政策を歴史的に辿ったものであり、失対事業由来のワーカーズ・コープと生活クラブ生協由来のワーカーズ・コレクティブの双方の動きをかなり細かく取り上げています。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2021/06/post-aecc1f.html

その初めのところと終わりのところだけを、ちらりとお見せしておきましょう。

 去る2020年12月11日、労働者協同組合法が成立しました。まだ施行日も未定の法律ですが、労働法の観点からも興味深い点があり、今回はその制定に至る経緯を概観しつつ、その逆説的な性格を考察していきたいと思います。
 
1 労働者協同組合とは何か?
 
 今回制定された法律の第3条第1項は、労働者協同組合の基本原理をこう規定しています。
・・・・・
 ここで「基本原理」と言われている、組合員が出資し、経営に参加し、労働に従事するという3項目は、組合員が同時に資本家であり、経営者であり、労働者であるということを謳っています。つまり、労資対立も、労使対立も、資本と経営の分離もない、三位一体の資本=経営=労働の共同体であるというわけです。
 この点から、労働者協同組合はある種の共同体的マルクス主義者から好まれる傾向があるようです。例えば、昨年末に法律が成立しようとするとき、『人新世の資本論』の著者である斎藤幸平氏は次のように労働者協同組合を絶賛していました*1。
 私たちは好きな仕事を選び、嫌ならば辞める自由がある。しかし、資本主義における企業の目的はあくまでも最大限の利益を出すことなので、労働者の意思を無視して命令を出し、生産性を上げようとする。つまり、私たちはどの企業のもとで働くかを選べる自由くらいしか与えられていない。
 しかし労使関係を前提にしない、もっと別の働き方があるはずで、それが協同労働だ。必ずしも労使関係を前提とせず労働者自らが出資し、自分たちでルールを定め、何をどう作るかを主体的に決める。株主の意向に振り回されず労働者の意思を反映していけば、働きがいや生活の豊かさにつながるのではないか。
 斎藤氏によると、労働者協同組合とは労使関係などという妙なものの介在しない立派な働き方であるようです。資本主義を否定する考え方からすればそういう発想は必ずしも不自然ではありません。
 とはいえ、階級対立が定義上存在しない共産主義国家から家父長制的企業一家主義に至るまで、労使関係を否定する麗しき共同体的関係と称してこれまで登場してきた「様々なる意匠」の悲惨な歴史を知っている我々からすると、この手の議論にはいささか眉に唾をつけたくなるところがあります。労使関係というものは、イデオロギーでもってなくなれといえばなくなるほど生やさしいものではないというのが、我々が自分たちの経験で学んだ苦い智慧ではないのでしょうか。・・・・・ 

2 民法上の組合
3 企業組合
4 失業対策事業の終息の中から
5 生協からワーコレへ
6 労働者協同組合法案の有為転変
7 2010年の法案
8 労働者協同組合法の成立とパラドックス
9 労協組合員の労働者性
10 労働者協同組合の悪用とその是正 

 連合が懸念するようなそうした悪用の例が、労働者協同組合が長い歴史を有するスペインでも見られるようです。青砥清一の研究*20によりながら見ていきましょう。
・・・・・
 この判決を盾に労協制度を悪用するケースが多発しました。ガリシア州では食肉処理会社が従業員をいったん解雇し、仕事の継続を希望する人には労働者協同組合に加入するよう通告しました。加入者の手取りは正規雇用労働者の4割程度まで下がり、労働時間規制も雇止め手当も適用されなくなったため、労働組合は労働基準監督署に申立てを行い、調査の結果、違法な偽装加入があったとして企業に原職復帰が命じられました。新聞報道では、3万2800人が元の雇い主から協同労働を強制され、協同労働は名ばかりで経営参加も自由裁量もないと報じられています。これを受けて2018年、サンチェス社会労働党政権は、「労働搾取に対する指導計画」を策定し、偽装協同労働に対する労働基準監督署の監視を強化しました。
 こうした中で、上記判決の上告審でスペイン最高裁判所が2019年5月8日に逆転判決を下しました。協同組合と協同労働者は組合関係ではあるが、理事会に代表される執行部の指揮に服する協同労働者が従属的な仕事に従事しているという事実は歴然と存在し、そのような協同労働者が、労働者としての利益を守る権利を有するのは疑いの余地はなく、それゆえ協同労働者が自ら選ぶ労働組合に自由に加入する権利を有すると判示したのです。スペインの最高裁判所は、日本の共同体的マルクス主義者よりも労働者の実態に即してものごとを考えようとする誠実さを有していたようです。・・・・ 

 

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