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2021年6月22日 (火)

EUのプラットフォーム労働の労働条件に関する第2次協議に見える立法構想@JILPTリサーチアイ

JILPTリサーチアイに「EUのプラットフォーム労働の労働条件に関する第2次協議に見える立法構想」を紹介しました。

https://www.jil.go.jp/researcheye/bn/066_210622.html

プラットフォーム労働の問題と、AIによるアルゴリズム管理の問題の双方にまたがって、意欲的な立法構想を提示しています。

去る6月15日、EUの行政府たる欧州委員会は、プラットフォーム労働の労働条件に関する労使団体への第2次協議文書[注1]を附属職員作業文書[注2]とともに発表した。周知のように、EUでは労働社会政策の立案に当たってはEUレベル労使団体への2段階の協議が義務付けられており、その第2次協議においては欧州委員会が検討している措置の内容が示される。今回の第2次協議文書は、具体的なプラットフォーム労働者保護立法の内容が示されているだけではなく、先日(4月30日)このリサーチアイ第60回で紹介したEUの新AI規則案とも深く関連するテーマとして、アルゴリズム管理に関する規制の在り方についても提案がなされており、Society5.0という旗の下にICT、AIの発展を進めている日本にとっても大変興味をそそられるものとなっている。今回も基本的には速報的意義を重視し、その議論の詳細は省略して、第2次協議文書で示されている将来のEU立法構想の概略を紹介したい。

まず、就業上の地位の「誤分類」に対する施策である。ほとんどの場合、プラットフォーム労働者は契約上自営業者とされているが、近年加盟国の裁判所でプラットフォーム労働者を労働法の適用対象たる「労働者」と認定する判決が相次いでいる[注3]。しかしながら、それらは個別事案ごとのバラバラの判断に過ぎないので、EUレベルでのルールを設けようというのである。

第1の選択肢は、プラットフォーム事業者とそれを通じて就労する者との間の契約が雇用関係であるという反証可能な推定規定である。この推定を覆すためには、プラットフォーム事業者は司法手続きによりその者が真に自営業者であることを立証しなければならない。かかる法的推定規定は、労働・社会保障当局が彼らを労働者として再分類する上で明確なルールを提供することとなる。

第2の選択肢は、司法手続きにおける立証責任の転換又は証拠基準の低減である。プラットフォーム事業者を通じて就労する者は自動的に雇用関係とみなされるわけではないが、雇用関係が存在する証拠となるごくわずかな基本的事実(プリマ・ファシ)を提示すればよく、その場合その者が真に自営業者であることを立証すべきはプラットフォーム事業の側となる。プリマ・ファシとなりうるのは、報酬の水準がプラットフォーム事業者によって決められているとか、顧客とのコミュニケーションを制限しているとか、外見や接客について特定のルールを要求しているといったことでよい。

この他、行政手続きによる労働者性の認定や、労働、社会保障、税務当局による契約の性質決定も、煩雑な司法手続きをしなくて済むというメリットはあるが、最終的には司法判断によらざるを得ないという問題がある。これらの選択肢を分野に応じて組み合わせるという提案もされている。

次にアルゴリズム管理に関連する新たな権利の導入である。協議文書が提示しているのは、

・アルゴリズムが労働を管理する方法に関して、その影響を受ける者及びその代表者に対して情報提供を改善すること、
・アルゴリズムが顕著な影響を与える意思決定に対する適時の正当な人間による監視、管理、説明責任を保証する内部的手続きの確立、
・是正のための適切なチャンネルの確保、
・アルゴリズム管理システムに関する情報提供と協議の権利、労使団体の関与の確保、
・勤務外時間におけるプライバシーの権利、個人データ保護規則の適用、
・レーティング(格付け)のポータビリティ、
・労働関連契約関係の自動的終了又は同等の行為の排除、

といったことであり、これらは性質上プラットフォーム労働を超える広がりをもった提案であるが、ここではあくまでもプラットフォーム労働に限定した立法提案であり、将来的に労働市場におけるAIの利用に向けたより広範なアプローチへの第一歩となりうると述べている。ここは労働法の未来を考えるうえでも興味深い。

協議文書はさらに、プラットフォーム事業者に対する登録や透明性義務(就労条件や就労者数等)、一定のデータの報告義務(タスク期間、タスクごとの報酬、タスクの割当て等)、社会保障の権利のポータビリティとプラットフォームを通じて就労する者の身元確認といった点にも言及している。

このように、今回の協議文書は、プラットフォーム労働についてのEU立法構想を示したものとしても極めて重要な意義を有するが、それだけではなく、雇用、非雇用を通じて広範な様々な働き方に大きな影響を及ぼしつつあるAIによるアルゴリズム管理に対する労働法の対応方向という観点からも興味深いものとなっており、日本における議論にも示唆するところが大きいと言えよう。 

 

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