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2021年6月 8日 (火)

浅見和彦『労使関係論とはなにか』

584250 浅見和彦さんの『労使関係論とはなにか イギリスにおける諸潮流と論争』(旬報社)をお送りいただきました。ありがとうございます。

浅見さんは、別に警察庁刑事局長の弟とかではなく、運輸一般の専従書記を経て労使関係論の研究者になった組合運動の経験を持つ研究者です。

https://www.junposha.com/book/b584250.html

イギリスにおける「労使関係論の起源」である「労働組合論」を出発点として、
「労使関係論とはなにか」をあらためて問う。
新自由主義的な労働政策や使用者の人事労務管理の個別化の進展により労働組合の組織率が低下しているなか、今後の労使のあり方に示唆を与える。 

よく似たタイトルの木下武男『労働組合とは何か』(岩波新書)とはいろんな意味で対照的ですが、なにより同書の紹介時に述べた「半世紀前で止まっている」のその後の動向を、労使関係論という鏡に映った姿を通じて詳しく紹介し、イギリスという国の労使関係というものの複雑さを伝えようとしています。

はじめに
第1章 労使関係論の起源――労働組合論としての出発(一九世紀末~一九五〇年代)
第2章 労使関係論の形成――プルーラリズムの黄金期(一九六〇年代)
第3章 労使関係論の欠陥――法的規制論と人的資源管理論の台頭(一九八〇年代)
第4章 労使関係論の刷新 Ⅰ――マルクス主義派の挑戦と分岐(一九七〇年代と九〇年代)
第5章 労使関係論の刷新 Ⅱ――ネオ・プルーラリズムとマテリアリズム(二〇〇〇年代以降)
終 章 要約と含意
あとがき 

そして、昨年海老原さんとの共著で出した『働き方改革の世界史』で取り上げたイギリスの3冊、ウェッブ夫妻と、コールと、フランダースが、より詳しいイギリス労使関係論史の中にどのように位置付けられるかがよく分かる本でもあります。

私が内心うれしく思ったのは、本書で第1章題2節で取り上げているG.D.H.コールです。節タイトルに「ギルド社会主義論から労使パートナーシップ論へ」とあるように、私が上記拙著で敢えて取り上げた労使パートナーシップ論を、後期コールの思想としてきちんと位置付けています。私の知る限り、コールをそのように位置付けた議論はほとんどなかったように思います。

ちなみに、浅見さんはp70の注で、

・・・なお、濱口は和田訳のこのコールの本は、「それほど話題にもなりませんでした」(113頁)と書いているが、和田自身は、「[社会政策論の重鎮の]大河内[一男]さんが『コール以上にコール的な和田さんの翻訳だ』と新聞で書いてくれた。そんなことで・・・コールの本はよく売れました」と述べている・・・

と書いておられますが、大河内一男が新聞の書評で取り上げてくれたのと、労使関係のアカデミックサークルでコールを労使パートナーシップ論の先駆者として位置付けられたというのとは別の話で、少なくとも研究者の中ではかなりの程度忘れられた本になっていたのではないでしょうか。

実際和田耕作さんは若き日にはマルクス主義者でしたが、戦後ソ連に抑留され、その後フェビアン協会から民社党の議員として活躍した方であり、「よく売れた」のもそちらの関係であったように思われます。

 

 

 

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コメント

G.D.H.コールというとギルド社会主義=イギリスにおけるサンディカリズムの中心的存在だったということだけが頭に刻み込まれていてその後考え方が変化したとかそういうことは考えもしませんでした。紹介されている本ぜひとも読んでみたいですね。

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