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2021年6月12日 (土)

仁田道夫・中村圭介・野川忍編『労働組合の基礎』

08557 仁田道夫・中村圭介・野川忍編『労働組合の基礎 働く人の未来をつくる』(日本評論社)を、執筆者の一人であるとともに、むしろ本書のプランナーであるUAゼンセンの松井健さんよりいただきました。ありがとうございます。

https://www.nippyo.co.jp/shop/book/8557.html

労働者が分断され疎外感を深める今日、労働組合の未来を語る意義は大きい。法学、経済学、社会学の視点から幅広くわかりやすく解説。

と、版元のHPにはそっけなく紹介してありますが、本書はUAゼンセンの機関誌『コンパス』に連載されたもので、企画発案は松井さんです。

中身は下の方にコピペしておきますが、まさに労働組合の歴史から現状を、様々な分野ごとに解説した本で、かつてなら山のように積まれていましたが、最近はあんまり目にすることもなくなった本ですね。

JILPTからも前浦、山本、西村といった若手が執筆していますが、でも本書の中で一番読みでのあるのは仁田さんによる労働運動史戦前編、戦後編の計60ページ弱でしょう。

この部分で、きちんと伝わってほしいのは、終戦直後の労働運動が企業別組合として進んでいく過程において、とりわけ戦前来の運動家が中心の総同盟は欧米型の産業別組合化を志向し、企業別組合に疑問を感じながらも、それに流されていったこと、これに対して共産党系の産別会議はむしろ企業別、むしろ工場別の組織化を志向していたことです。この点は、今でも全く逆に理解した人がいるので(例えば本ブログでも何回か紹介した宮前忠夫『企業別組合は日本の「トロイの木馬」』など)、強調しておく必要があるでしょう。

もっとも、理屈からすれば、産別組合が強大になりすぎて伝動ベルトを踏み外して共産党の指示通りに動かない恐れが生じるよりも(ソ連でも中国でも初期には労働組合主義者が粛清されています)、個々の工場レベルを直接コントロールした方がいいので、別に不思議でもないのですが。そして、その共産党による引き回しに反発して生まれた民主化同盟が、結果的には産別会議から共産党を追い出した企業別組合主義に純化していくことにより、戦後日本の企業別組合全盛の在り方を生み出していくという歴史の皮肉。

終戦直後のこのスタンスの違いがどこに現れてくるかというと、前に桝本純さんのオーラルヒストリーの記事の時に書いたことですが、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2021/02/post-ba9276.html(総同盟的なるものと民同的なるもの@桝本純オーラル・ヒストリー)

・・・・その中でも、ややもすると多くの人が勘違いをしがちなところが、労働運動の路線対立を右派対左派でとらえてしまいがちなところでしょう。それは一見激烈だけど表層の対立に過ぎず、根っこは企業別組合中心主義とそれを超えた産別・ナショナルセンターの権限が強いかで、総評も同盟も中に両方の傾向がある。そしてそれは、戦前来の総同盟の流れと、戦後産別民主化同盟の流れに対応すると、
そして、実は企業別組合的性格は総評の方が強かったんですね。何しろ国労も全逓も全電通もみんな超巨大国営企業の企業別組合で、やたら過激に見えるその「闘争」もすべて、藤林敬三の言うところの「家庭争議」。これらはみんないわゆる「民同左派」なわけです。内弁慶体質。
一方、同盟に行った「民同右派」も、政治イデオロギーの向きが違うだけで、体質は全く同じ。塩路天皇みたいに企業内で力をふるう、その振るい方が違うだけ。
一方、旧総同盟の系譜をひく流れは、総評では全国金属だけど、初期の高野実が追放されたのちは、これはもうほんとに周辺的な存在。
同盟では総同盟派がそれなりの存在感をもち、企業別組合を超えた運動体質はそれなりに残っており(ここが、桝本さんが自らの同盟時代の経験として語るところですが)、とはいえやはり民同右派(「全労」)が大きな力を持っていた。
で、桝本さんの言いたいのは、連合結成は決して同盟の勝利なんかではなく、実は民同的なるものの勝利であり、総同盟的なるものの敗北なんだということ。
そして、やたらにイデオロギーで喧嘩していた全国金属と全金同盟がJAMとして元のさやに納まったら、実は似たような体質であったことがお互いに分かった云々という笑い話みたいなことがおこるわけです。

本書の目次は以下の通りです。

第1章 労働運動の歴史
1 日本における労働運動の形成1――戦前編――     ……仁田 道夫/東京大学名誉教授
2 日本における労働運動の形成2――戦後編――     ……仁田 道夫/東京大学名誉教授
第2章 労働組合と法――労働組合法      ……野川 忍/明治大学法科大学院教授
第3章 労働組合の組織と運営
1 労働組合の組織と運営    ……前浦 穂高/労働政策研究・研修機構 副主任研究員
2 組織拡大    ……中村 圭介/法政大学大学院連帯社会インスティテュート教授
3 労働者の自主福祉活動    ……栗本 昭/連帯社会研究交流センター・特別参与
第4章 雇用・労働条件闘争
1 団体交渉と労使協議    ……久本 憲夫/京都橘大学経営学部教授・京都大学名誉教授
2 労働争議……松井 健/UAゼンセン副書記長
3 賃金交渉……李 旼珍/立教大学社会学部教授
4 最低賃金    ……玉井 金五/大阪市立大学名誉教授、愛知学院大学客員教授
5 労働時間短縮……松井 健/UAゼンセン副書記長
6 労働安全衛生    ……水島 郁子/大阪大学大学院高等司法研究科教授
7 女性と労働運動……首藤 若菜/立教大学経済学部教授
8 雇用形態間格差是正    ……神吉 知郁子/東京大学大学院法学政治学研究科准教授
9 企業規模間格差是正    ……青木 宏之/香川大学経済学部教授
第5章 政策闘争
1 労働組合の政策・制度活動……逢見 直人/日本労働組合総連合会長代行
2 労働組合の政治活動    ……中北 浩爾/一橋大学大学院社会学研究科教授
第6章 世界の労働運動
1 国際労働運動の歴史と展開……熊谷 謙一/日本ILO協議会企画委員、国際労働財団講師
2 ドイツの労働組合と労使関係    ……山本 陽大/労働政策研究・研修機構 副主任研究員
3 イギリスの労働組合と労使関係    ……龔 敏/久留米大学法学部教授
4 スウェーデンの労働組合と労使関係    ……西村 純/労働政策研究・研修機構 副主任研究員
5 韓国の労働組合と労使関係    ……禹 宗杬/埼玉大学人文社会科学研究科教授 

 

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コメント

一般的に日本の左翼は 企業別組合ではなく産業別組合を、という志向を強く建前として持っていますが、しかし終戦直後の運動方針としてはそうでもなかったわけですよね。宮前忠夫、柳田勘次といった人は企業別組合原罪論のような発想から突き進んで、労組法制定時から右派、経営側や政府側が結託し企業別組合結成を誘導したかのように主張しますが、陰謀論まがいでしかも歴史に関する事実認識としても支持しがたいように思われます。だいたいそこまで企業別組合だからとにかく悪いと議論しても現実的には意味がないようにも感じられるのですが。

EUでは、もともと西側だった旧加盟諸国は産別組合が中心ですが、もともと共産圏だった中東欧諸国は企業別組合が中心になっています。

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