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2021年6月16日 (水)

許可制は健全で届出制は不健全?

朝日の夕刊に「性風俗業は「不健全」か コロナ給付金巡り、国「道徳観念に反し対象外」」という記事が載っていて、この問題自体は本ブログでも厚生労働省の雇用助成金と経済産業省の持続化給付金の取り扱いの違いについて論じてみたことがありますが、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2020/04/post-b631f8.html(新型コロナと風俗営業という象徴)

・・・雇用助成金の時には、風俗営業だからと言って排除するのは職業差別だとあれほど騒いだ人々が、岡村発言の直後にはだれも文句を言わなくなってしまっているというあたりに、その時々の空気にいかに左右される我々の社会であるのかがくっきりと浮かび上がっているかのようです。

本日はその件ではありません。

https://www.asahi.com/articles/DA3S14941351.html(性風俗業は「不健全」か コロナ給付金巡り、国「道徳観念に反し対象外」)

何の話かというと、政府が性風俗業を持続化給付金の対象から外した論拠として、スナックや料亭といった(性風俗ではない)風俗営業は公安委員会の「許可」制にしているのに対し、性風俗業は公安委員会への届出制にしていることを挙げているという点に、ものすごい違和感を感じたからです。曰く、

・・・性風俗業を「性を売り物にする本質的に不健全な営業」「許可という形で公認するのは不適当」としている。

国はこれらをもとに、性風俗業は「不健全で許可制が相当でない業務とされてきた」・・・

性風俗業がいかなるものであるかについてはここでは論じませんし、持続化給付金の対象にすべきかどうかもとりあえずここでの論点ではありません。

しかし、「本質的に不健全」であるがゆえに許可制ではなく届出制とするのだ、というこの政府が裁判所で論じたてているらしい論理というのは、どう考えてもひっくり返っているように思われます。

そもそも、行政法の教科書を引っ張り出すまでもなく、許可制というのは、一般的禁止を特定の相手方に対して解除するという行政行為です。なぜ一般的に禁止しているかといえば、それはほっとくと問題が発生する恐れがあるからであり、何か問題が起きたら許可の取り消しという形で対処するためなのではないでしょうか。

それに対して、届出制というのは一般的には禁止していないこと、つまりほっといても(許可制の事業に比べて)それほど問題は発生しないであろう事業について、でもやっぱり気になるから、念のために届出させて、何かあったら(届出受理の取り消しなとということは本来的にありえないけれども)これなりにちゃんと対応するようにしておこうという仕組みのはずです。

そして、労働法政策においても、たとえば有料職業紹介事業は許可制ですが、学校や公益法人等の無料職業紹介事業は届出制ですし、派遣も今は許可制に統一されましたが、かつては登録型派遣は許可制で、常用型派遣は届出制でした。これらはどう考えても、前者の方が問題を起こしやすく、いざというときに許可の取り消しができるように、後者はあんまり問題がないだろうから、届出でええやろ、という制度設計であったはずです。

それが常識だと思い込んでいたもんですから、このデリバリーヘルス運営会社の起こした持続化給付金訴訟において、政府が上述のような全くひっくり返った議論を展開しているらしいということを知って、正直仰天しています。

 

 

 

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コメント

いや、面白いですね。

西洋近代法の建前では、一応法と道徳は分離したうえで、法的に人は一般的な自由を享受するが公共的な見地から例外的に制限されうる。許可制というのはその建前に則っている。

しかし西洋近代以外では法はある道徳秩序を前提に存立し、道徳に適っているものには権力のお墨付きとして許可を出し、適合しないものにはせいぜいご慈悲でお目こぼしが与えられるというのがノーマルでしょう。ここでいう届出制というのはそのようなお目こぼしの願い出ということなのでしょう。

まあ、西洋近代法というのは歴史的にみればかなりアブノーマルなわけですが、日本は(日本だけじゃない?)そのようなアブノーマルを脱して歴史的常態に回帰しつつあるのかもしれません。


オラ、ワクワクしてきたぞ!!!

ま、どっちがノーマルでどっちがアブノーマルかは人類史の解釈次第でしょうけど、それよりも私が驚愕したのは、持続化給付金を所管する経済産業省なのか、風俗営業法を所管する警察庁なのかはともかく、大学の法学部で一通り行政法を勉強し、公務員試験でも行政法で受験した法律職の公務員がいっぱいいるはず(警察庁であれば大多数)の霞が関の役人たちが、そういうイロハのイをすっからかんに忘れた風情で、前近代の「お目こぼし」思想全開の議論を、裁判所で並べ立てているらしいことでした。

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