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2021年6月

2021年6月30日 (水)

世に倦む日々の亜流かと思ったら首都圏青年ユニオン連合会でした

こういうことを呟いている人がいたので、

https://twitter.com/qmLYjWl3JIVY38a/status/1410154136159494144

正規労働をバッシングして、正規雇用を非正規雇用の待遇に合わせるというとんでもない案を提唱している濱口桂一郎が、今度は「連合」以外の労働組合まで攻撃し始めた!!日本国民総下流時代の幕開けだ。ブルブル(゚Д゚)

どこかで全く同じセリフを聞いた覚えがあったので探すと、この人のセリフをそのまま口パクしていたようです。

https://twitter.com/yoniumuhibi/status/283122128201609216

本田由紀とか湯浅誠とか、その亜流の連中が、そもそも正規労働を日本型雇用だと言ってバッシングし、正規雇用を非正規雇用の待遇に合わせる濱口桂一郎的な悪平準化を唱導している時代だからね。・・・

ふむふむ、近頃やたらに中国共産党政権の断固たる擁護者として孤軍奮闘しておられる「世に倦む日々」の亜流さんですか。

https://twitter.com/yoniumuhibi/status/1409842160292155402

中国には中国の国家のレゾンデートルがあり、憲法があるわけですよ。苦難の抗日解放の歴史を経て、中国共産党が中心になって建国したという基本がある。そして、世界第2位の経済大国に導き、科学技術立国として成功したという自負と自信がある。それを全否定しているわけですよね。今の日本と米国は。

https://twitter.com/yoniumuhibi/status/1409851876997165059

新疆ウィグルの話もさ、日本だって同じ事やったわけしょう。カナダみたいに。蝦夷はジェノサイドで消されちまった。旭川出身の友人がアイヌ部落の重い話をしてくれたが、聞いてて辛かった。戦後の憲法下でそんな迫害があったのかと驚く話だった。差別なんて生易しい話じゃない。基本的人権は和人だけ。

ところで、このとんでもない濱口桂一郎という奴ばらはどういう「連合以外の労働組合」を攻撃し始めたのだろうか、と興味をそそられて、この「ジュリスドクター西園寺」氏のツイートを少し遡ると、こういうのが出てきました。

https://twitter.com/qmLYjWl3JIVY38a/status/1391641073240272911

みなさんこんにちは(^-^)
4月より「首都圏青年ユニオン連合会」という労働組合で組合活動に従事している西園寺(さいおんじ)と申します。
労働者の最後の砦として、高い志を持つ方々と働いて早1ヶ月。目が回るほど忙しい日々ではありますが、やっと少しずつ慣れたきましたので、(続く)

なるほど・・・・・・。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2020/08/post-50e58d.html(首都圏青年ユニオン連合会はまっとうな労働組合に非ず@東京都労委)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2021/03/post-843385.html(御用組合の外部調達)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2021/06/post-b0c70e.html(労働組合の資格審査@『中央労働時報』6月号)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2021/06/post-367a2b.html(労働組合の資格審査@『中央労働時報』6月号に大内伸哉さんのコメント)

 

2021年6月27日 (日)

経済産業省の自業自得

Miti いや、ちんけな犯罪をやらかしたどこぞのちんぴら役人のはなしではありません。経済産業省という自称一級官庁がそのイデオロギーとして振りかざした株主主権至上主義が、ブーメランのごとく自らに攻撃をかけてきているという皮肉な構図を言っています。

それを真正面から指摘しているのは、東洋経済オンラインにおける岩村充氏です。

https://toyokeizai.net/articles/-/436207(東芝問題、新聞が報じない経済産業省の本当の罪 自ら推進した「株主主権主義」の罠にはまった)

・・・・このたびの経済産業省の滑稽さは、彼らを「不公正」と非難する報告書に記載されている個々の行状にあるのではない。彼らの滑稽さは、報告書が同省の関与を「不公正」であると断じた基準が東京証券取引所による「コーポレートガバナンス・コード」であり、そのコードなるものの作成に深く関与したのが他ならぬ経済産業省自身であることだ。

コードの基礎になっているのは、「持続的成長への競争力とインセンティブ ~企業と投資家の望ましい関係構築~」と題する報告書で、通称「伊藤レポート」、企業統治における株主主権の強化を求めたものとして知られる。つまり、経済産業省自らが作り出したルールによって自らが攻められるという構図になってしまったのだ。

ところで、伊藤レポートそのものを、私は経済学的にも誤りであり社会的にも有害な内容だと思っている。そのことは東洋経済オンライン記事「誤ったESGの議論は格差を拡大し成長を損なう」ですでに詳しく書いたので、ご覧いただければ幸いである。ここで整理しておきたいのは、「伊藤レポートをまとめた経済産業省」と、その「伊藤レポートに基づき断罪された経済産業省」、そのどちらが過ちであり改めるべきものなのか、という点である。・・・・

自業自得という言葉の使い方についても、最近は政治方面ではいささかいかがなものかという使い方もありますが、少なくともこの事例はこの言葉を使うことが最もふさわしい事例であることは間違いないのでしょう。

 

『Japan Labor Issues』7月号は比較労働政策セミナー特集

Jli_20210627133001 JILPTの英文誌『Japan Labor Issues』7月号は比較労働政策セミナー特集です。

https://www.jil.go.jp/english/jli/documents/2021/032-00.pdf

比較労働政策セミナーは毎年3月にアジア太平洋諸国の若手研究者を一堂に集めて開催していましたが、昨年3月はコロナ禍が勃発してしばらく延期、とはいえすでに出席予定者からペーパーは集まっていたので、様子を見て昨年11月にオンラインで開催しました。

この特集号はそのペーパーを書き直したものを収録しています。コロナ禍の前に企画されたものなので、デジタルとかプラットフォームとかギグといったキーワードがちりばめられています。

Technology, Jobs and the Future of Work in Australia (PDF:768KB)
Alison PENNINGTON, Senior Economist, Centre for Future Work, Australia Institute (Australia)

Counterproductive Work Behavior by Drivers of Platform Based Cab Aggregators in India: A Human Rights Perspective (PDF:546KB)
Surya Prakash PATI (Presenter), Associate Professor, and Manoranjan DHAL, Professor, Human Resource Management Group, Indian Institute of Management, Kozhikod (India)

Working Conditions of Crowdworkers: How Working Conditions of Crowdworkers Vary by Job Content (PDF:1.31MB)
Itaru NISHIMURA, Vice Senior Researcher, The Japan Institute for Labour Policy and Training (Japan)

Artificial Intelligence-Based Hiring: An Exploratory Study of Hiring Market Reactions (PDF:302KB)
Jaewan YANG (Presenter), Associate Professor, and Minjae IM, Seunghwan CHOI, Jangil KIM, and Dong Hyun KO, College of Business, Hankuk University of Foreign Studies (Korea)

Digital Platform Labor in the Philippines: Emerging Configurations and Policy Implications (PDF:306KB)
Cheryll Ruth R. SORIANO, Ph.D., Professor, Department of Communication, De La Salle University Manila (Philippines)

Marginalization of Graduate Freelancers in the Gig Economy (PDF:927KB)
Reuben NG, Ph.D., Head, Data Innovation Group, Lee Kuan Yew School of Public Policy, and Lloyd’s Register Foundation Institute for the Public Understanding of Risk, National University of Singapore, and Paul S. H. WONG, Research Assistant, Lee Kuan Yew School of Public Policy, National University of Singapore (Singapore)

The Digitalization of China’s Employment Law? (PDF:189KB)
Tian YAN, Assistant Professor, Law School of the Peking University (China)

The Internet Platform Labor in China: The Rise, Controversy and Policy Trends (PDF:461KB)
Tianyu WANG, Associate Professor, Associate Director of Social Law Department, Chinese Academy of Social Sciences (China)

Recent Development of Legal Framework of Labor Law in Indonesia (PDF:266KB)
Ike FARIDA, S.H., LL.M, Doctor of Law, Founder and Managing Partner at Farida Law Office (Indonesia)

Better Opportunity or Extended Sweatshop? —Labor Law and Policy in the Age of Digitalization in Korea— (PDF:743KB)
Sukhwan CHOI, Assistant Professor, School of Law, Seoul National University (Korea)

The Contemporary Challenge and Government Responses on Delivery Platform Worker Rights and Benefits in Taiwan: The "MOL Guidance 2019" and the "Taipei City Ordinance 2019" (PDF:355KB)
Bo-Shone FU, Assistant Professor, National Taipei University Law School (Taiwan) 

 

 

 

 

2021年6月26日 (土)

キャシー・オニール『あなたを支配し、社会を破壊するAI・ビッグデータの罠』

Ai_s 少し前に出た本ですが、AIと労働についていろいろと考えるうえで役に立ちそうなので読んでみました。

http://www.intershift.jp/w_aibg.html

 いまやAI・ビッグデータは、人間の能力・適性・信用、
さらには善悪や身体までも評価し、選別し始めた。
問題は、こうしたAI・ビッグデータの仕組みや活用法の多くが、
偏見や誤りなどであふれていることだ。
中立・公正のように見えるアルゴリズムにも、
作り手の「見解」や「目的」が埋め込まれている。
数値化しにくいリアルな世界の複雑さや公平性を欠いたまま、
効率・収益を優先するアルゴリズムによって私たちの生活・社会が導かれていく。
さらに信用格付けが下がるなど、アルゴリズムによる評価を落とすと、
他分野にも影響がおよび、悪循環のフィードバックループが待っている。
私たちは、こうした破壊的なAI・ビッグデータとは何かを知り、
変えていくことによって、主導権を人間に取り戻さなくてはならない。

初めはマネーボールのようないい側面から入っていきながら、じわじわと恐ろしい側面を暴いていきますが、私にはやはり第6章(就職)と第7章(仕事)の章が興味深かったです。

はじめに: AI・ビッグデータは破壊兵器になる
第1章[モデル] 良いモデル、悪いモデル
第2章[内幕] データビジネスの恐るべき真実
第3章[教育] 大学ランキング評価が多様性を奪う
第4章[宣伝] 弱みにつけこむオンライン広告
第5章[正義] 「公平」が「効率」の犠牲になる
第6章[就職] ふさわしい求職者でも落とされる
第7章[仕事] 職場を支配する最悪のプログラム
第8章[信用] どこまでもついて回る格付け評価
第9章[身体] 行動や健康のデータも利用される
第10章[政治] 民主主義の土台を壊す
おわりに: 人間だけが未来を創造できる

就職の話は適性検査が既存の差別を増幅再生産するといった大体予想できる話なのですが、次の仕事のところで冒頭出てきた話題は、なんとコロナ禍で日本でも急に注目されるようになった変動シフト制の問題でした。そのシフトを組むのにAIが使われているのです。

・・・さて、読者の皆さんはもう驚かないと思うが、私はスケジューリングソフトウェアを最低最悪の数学破壊兵器だと考えている。すでに見てきたとおり、非常に規模が大きく、しかも、すでにぎりぎりの生活で苦しんでいる人々の弱みに付け込んで利用している。そのうえ完全に不透明だ。従業員は、いつ職場に呼ばれるのかわからず、手掛かりも得られないことが多い。独裁的なプログラムに、ただ召集されるのだ。

また、スケジューリングソフトウェアは有害なフィードバックループも生んでいる。ジャネット・ナバロの場合もそうだった。彼女は場当たり的なスケジュールに振り回され、学校に通い続けることができなくなった。おかげで彼女が転職できる見通しは閉ざされ、低賃金労働者があふれる過剰供給の海から出られなくなった。不規則な長時間勤務が続けば、従業員は、労働条件の改善を求めて組織を作ることも、抗議することもままならない。それどころか、高まる不安と睡眠不足に苛まれ、情緒も不安定になる。・・・さらに悪いことに、スケジューリングソフトウェアは、企業の経費削減を目的に設計されているため、従業員の勤務時間が週30時間未満になるように制御されている。つまり、従業員は企業の健康保険組合に加入する資格がないのだ。不規則な勤務スケジュールのせいで、従業員の多くは副業で稼ぐこともできない。スケジューリングソフトウェアは、まるで低賃金労働者をあからさまに罰して押さえつけるために設計されているかのようだ。・・・・・

ちなみに、原題は「Weapons of Math Destruction: How Big Data Increases Inequality and Threatens Democracy」。Weapons of Math Destructionというのは、もちろん、Weapons of Mass Destruction(大量破壊兵器)のもじりです。

 

 

資本が所有権を手放すとき

Borothstein 例によってソーシャル・ヨーロッパに昨日付で掲載されたボー・ロトスタインのエッセイです。

https://socialeurope.eu/when-capital-relinquishes-ownership

As the ownership of firms becomes transferred to algorithmically-controlled index funds, why not put their human employees in charge instead?

企業の所有権がアルゴリズムによってコントロールされたインデックスファンドに譲渡されていくなら、なぜその代わりに生身の被用者たちを担当させないのか?

かつてドラッカーが忍び寄る社会主義と呼んだ年金基金などの機関投資家がむしろ資本の論理の体現者となるという逆説をめぐる議論も半世紀以上の歴史のある論点ですが、ここでロトスタインが再度提起しているのは、その機関投資家がもはや生身の基金の担当者ですらなく、アルゴリズムによって自動的に売り買いするAIになりつつある時代における資本主義論です。

・・・Given existing trends, there are strong reasons to believe that the share of capital on the world’s stock exchanges held by index funds will continue to increase. But what will this increasing percentage of ‘headless’ ownership mean for our businesses and society at large?

One thing is clear: if nothing is done, given increasingly weak and uninterested owners, financial rewards for the business-leadership layer can only become more astronomical. They will have no strong counterweight of active owners against such rent-seeking..

今までの趨勢を前提とすれば、世界の株式市場におけるインデックスファンドによる資本のシェアは増え続けるであろう。しかし、この「首無し」の所有権の割合増大はビジネスや社会全体にとって何を意味するのか?

一つのことは明らかだ。もし何もなされないならば、ますます増大する弱く無関心な所有者を前提とすれば、ビジネスリーダーシップへの金銭的報酬はより天文学的になるだけだろう。かかるレントシーキングに対して釣り合いをとれるようなアクティブな所有者は存在しない。

そこで、ソーシャル・ヨーロッパの常連寄稿者のロトスタインが持ち出すのは労働者です。

So if capital is increasingly abdicating de facto from governing companies, who will govern them? One possibility, of course, is their employees. 

そこで、もし資本が次第に事実上会社の支配権を放棄していくのであれば、誰がそれを支配すべきだろうか?一つの可能性はもちろんその被用者である。

最後の2パラグラフは、この問題に消極的な労働組合に対するいら立ちも見せています。

Index funds, increasingly in the ascendancy in modern economies, serve as lessors of capital to companies. The corporate-governance vacuum they reveal provides an opening to advance the conversation about the genuine democratisation of working life. The best candidate for stepping into that vacuum is the force of those who are actually governed day to day in our business enterprises—the white- and blue-collar employees in the workplace. 

Trade unions have been strangely ambivalent about taking on this challenge to date. New civil-society organisations which glimpse the potential of a more substantial economic democracy should also enter this conversation on the side of employees and help make it happen.

現代経済においてますます日の出の勢いのインデックスファンドは会社に対する資本の賃貸人にすぎない。彼らが露呈したコーポレートガバナンスの真空は労働生活の真の民主化についての議論への道を開けるものである。この真空に踏み込むべき最良の候補者は日々企業の運営に携わっている者たち、すなわち職場のホワイトカラー、ブルーカラーの被用者たちの力である。

労働組合は今日までこの挑戦に対して語ることに奇妙にアンビバレントであった。より実質的な経済民主主義の潜在力を垣間見る新たな市民社会団体も被用者側に立ってこの議論に加わり、進めるべきだろう。

 

 

 

労働組合の資格審査@『中央労働時報』6月号に大内伸哉さんのコメント

Ima_20210626085601 先日、本ブログでも紹介したわたくしの判例評釈(正確には判例じゃなく労委決定ですが)に対して、大内伸哉さんがブログでコメントされています。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2021/06/post-b0c70e.html(労働組合の資格審査@『中央労働時報』6月号)

http://lavoroeamore.cocolog-nifty.com/amoristaumorista/2021/06/post-60d866.html(資格審査は必要か)

直接的には、私が大内さんの論文「労働組合の資格審査は必要か-組合自治と行政サービスの効率性の観点からの再検討」(季刊労働法265号)を引用したことですが、その先を読んでいくと、本質的には極めてよく似た認識を持ちながら、ある意味対照的な判断を下しているところが、それぞれのバックグラウンドを彷彿とさせて興味深いと感じさせます。

・・・ところで,濱口さんの立論の面白いのは,労働委員会が実質個別紛争を扱うのは制度の本来の趣旨に合わないということ(これも私が一貫して主張している論点ですが,学会では相手にされていません)から,不当労働行為の救済申立てをするのであれば,外形上,法適合組合の形を整えろと述べている点です。これは,普通の研究者にはなかなか出てこない視点で興味深いです。私は,ここは二段構えの議論で,実質個別紛争はそもそも義務的団交事項ではないし,またかりに義務的団交事項となるとしても,個別の紛争なので,労働組合の自主性や民主性といった資格審査でチェックするような内容は関係ないから,やっぱり資格審査は不要だということになります。濱口さんは,不当労働行為審査で実質個別紛争を扱うのはイレギュラーだけれど,それを扱っているという現実をみているのです。私の見解は,実質個別紛争を拒否しても不当労働行為とならないので,「申立人の主張する事実が不当労働行為に該当しないことが明らかなとき」に該当して却下すべきであるという議論になるのです。濱口さんとは全然ちがうことを言っているようですが,たぶん考え方の根本は同じなのではないかと思います。要するに,実質個別紛争を不当労働行為事件で扱うな,扱おうとすると,いろいろ問題が出てくる,ということです。・・・

本来集団的紛争を扱う労働委員会が(個別紛争用の制度ではなく集団紛争用の制度において)駆け込み訴えという実質個別紛争を取り扱うのは本来の趣旨に合わないという認識において共通しつつ、

大内さんはそれを資格審査によって撥ねるのではなく、そもそも不当労働行為に当たらないという実質論で撥ねろ、資格審査は無用であるという筋論を唱えます。いかにも大内さんらしい孤高の筋論です。

私は、そうはいっても49年改正以来企業内少数派組合の訴えも認める形でずっときている以上、企業外ユニオンを撥ねる理屈はなく、ぎりぎり理屈を突き詰めれば組合の民主性を持ち出すしかないだろうと思うわけですが。

最後に佐田事件をちらりと持ち出したことについて、

 一般論として,労働組合の活動資金は企業からの協賛金でまかない,労働者からは不徴収とし,協賛金を出してくれているスポンサー企業との関係では,ものわかりのよい労働組合となって,戦闘的な組合の防波堤になり(company union),他方,協賛金を出していない企業との関係では,紛争があれば無料で労働者からの申込みを受け付けて,団体交渉をして和解金を得て,その手数料はしっかり取るというようなビジネスは,これはやはり問題があると言わざるを得ないでしょう。Company unionへの資金提供は経費援助になるのです(不当労働行為)が,それ以上に,こうした労働組合に対して法がどういう対応ができるかはよくわかりません。
 資格審査をして,資格を否定して不当労働行為の救済手続を利用させないというだけでは十分ではないでしょう。その活動自体は阻止できないからです。・・・・・

とのべておられるのも、いかにも大内さんらしい突っ込みです。本評釈はあくまでもグランティア事件の評釈なので、佐田事件からもたらされるそういう論点についてはそれ以上突っ込んでいませんが、考える必要のある論点であるのは確かです。

 

 

 

 

 

2021年6月25日 (金)

パワハラといじめ・嫌がらせは違うのか?

去る6月23日に、厚労省が「過労死等の労災補償状況」を発表しています。

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_19299.html

ざっと見ていて、あれ?と思ったのは、精神障害に係る労災について、

(7)出来事(※)別の支給決定件数は、「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」99件、「悲惨な事故や災害の体験、目撃をした」83件、「同僚等から、暴行又は(ひどい)いじめ・嫌がらせを受けた」71件の順に多い。P26 表2-8

※「出来事」とは精神障害の発病に関与したと考えられる事象の心理的負荷の強度を評価するために、認定基準において、一定の事象を類型化したもの。 

上司等からのパワハラと、同僚等からのいじめ・嫌がらせが別々の項目に入っているのですが、もともといじめ・嫌がらせと呼んでいたものを、円卓会議に出ていたクオレ・シーキューブの人の影響でパワハラと呼ぶようになった、と理解していたので、この使い分けには違和感があります。

しかも、パワハラは上司からだけだと誤解されるという懸念に対して、いやいや同僚や部下であっても優越的な立場にあればパワハラに含まれると説明していたはずですが、それではやはりそこから零れ落ちるいじめ・嫌がらせがあるということでこういう整理にせざるを得なかったのでしょうけど、そうすると、この労災補償でパワハラに当たらないいじめ・嫌がらせと分類されたような代物については、昨年施行された労働施策総合推進法に基づく措置義務はかからないということになるのでしょうか。

どうも概念設計を根っこのところで間違えてしまった感がぬぐえません。

円卓会議の時、それまでいじめ・嫌がらせと呼んでいたものをやや浅薄にマスコミ受けするパワハラと呼び変えてしまったことのツケなのかもしれません。

 

 

 

 

 

 

2021年6月24日 (木)

入管法上の「不法就労」は労働者性の認定ではない件について

この記事に対して、入管当局がウーバーイーツの労働者性を認めたと思っている人もちらほらいるようですが、そういうわけではありません。

https://www.asahi.com/articles/ASP6Q44YGP6QUTIL00V.htmlウーバージャパン幹部らを書類送検 不法就労助長の疑い

不法残留していたベトナム人がフードデリバリー大手ウーバーイーツの配達員として働くのを手助けしたとして、警視庁は22日、運営していたウーバージャパン(東京都港区)の幹部2人と、法人としての同社を出入国管理法違反(不法就労助長など)の疑いで書類送検し発表した。運営会社が不法就労に関連した容疑で書類送検されるのは初めてという。・・・・ 

出入国管理及び難民認定法にいうところの「不法就労」とは、雇用契約の存否にかかわらず、どんな契約に基づくものであろうが、「報酬その他の収入を伴う」活動を指します。

(退去強制)
第二十四条 次の各号のいずれかに該当する外国人については、次章に規定する手続により、本邦からの退去を強制することができる。
三の四 次のイからハまでに掲げるいずれかの行為を行い、唆し、又はこれを助けた者
イ 事業活動に関し、外国人に不法就労活動(第十九条第一項の規定に違反する活動又は第七十条第一項第一号、第二号、第三号から第三号の三まで、第五号、第七号から第七号の三まで若しくは第八号の二から第八号の四までに掲げる者が行う活動であつて報酬その他の収入を伴うものをいう。以下同じ。)をさせること。
ロ 外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置くこと。
ハ 業として、外国人に不法就労活動をさせる行為又はロに規定する行為に関しあつせんすること。 

第七十条 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はその懲役若しくは禁錮及び罰金を併科する。
一 第三条の規定に違反して本邦に入つた者
二 入国審査官から上陸の許可等を受けないで本邦に上陸した者
二の二 偽りその他不正の手段により、上陸の許可等を受けて本邦に上陸し、又は第四章第二節の規定による許可を受けた者
三 第二十二条の四第一項(第一号又は第二号に係るものに限る。)の規定により在留資格を取り消された者で本邦に残留するもの
三の二 第二十二条の四第一項(第五号に係るものに限る。)の規定により在留資格を取り消された者(同条第七項本文の規定により期間の指定を受けた者を除く。)で本邦に残留するもの
三の三 第二十二条の四第七項本文(第六十一条の二の八第二項において準用する場合を含む。)の規定により期間の指定を受けた者で、当該期間を経過して本邦に残留するもの
四 第十九条第一項の規定に違反して収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を専ら行つていると明らかに認められる者
五 在留期間の更新又は変更を受けないで在留期間(第二十条第六項(第二十一条第四項において準用する場合を含む。)の規定により本邦に在留することができる期間を含む。)を経過して本邦に残留する者
六 仮上陸の許可を受けた者で、第十三条第三項の規定に基づき付された条件に違反して、逃亡し、又は正当な理由がなくて呼出しに応じないもの
七 寄港地上陸の許可、船舶観光上陸の許可、通過上陸の許可、乗員上陸の許可、緊急上陸の許可、遭難による上陸の許可又は一時庇ひ護のための上陸の許可を受けた者で、旅券又は当該許可書に記載された期間を経過して本邦に残留するもの
七の二 第十四条の二第九項の規定により期間の指定を受けた者で当該期間内に出国しないもの
七の三 第十六条第九項の規定により期間の指定を受けた者で当該期間内に帰船し又は出国しないもの
八 第二十二条の二第一項に規定する者で、同条第三項において準用する第二十条第三項本文の規定又は第二十二条の二第四項において準用する第二十二条第二項の規定による許可を受けないで、第二十二条の二第一項に規定する期間を経過して本邦に残留するもの
八の二 第五十五条の三第一項の規定により出国命令を受けた者で、当該出国命令に係る出国期限を経過して本邦に残留するもの
八の三 第五十五条の六の規定により出国命令を取り消された者で本邦に残留するもの
八の四 第六十一条の二の四第一項の許可を受けた者で、仮滞在期間を経過して本邦に残留するもの 

とはいえ、規定ぶりを見ると、「自己の支配下に置く」とか、指揮命令関係を前提としているような規定になっていますが、少なくとも法律上は(近年多くの国でそういう判決が続出しているように)雇用であれ(ウーバーイーツ側が主張するように)請負であれ、入管法上は不法就労として処罰の対象になるという建付けになっています。

賃上げ与党に減税野党という構図でいいのかね?

本ブログでも何回も取り上げてきたし、最近は論壇でも頻繁に論じられるように、欧米の左派が労働や貧困といったソーシャルイッシューから人種や性別、LGBTといったアイデンティティポリティクスに傾斜し、その結果右派ポピュリズムの興隆を招いたというのは、日本でも似たような状況が展開してきたのは事実。で、そこんところに着目して「リベサヨ」というペジョラティブな用語を使う向きもある。というか、私自身も時に使ったりもする。ただまあ、いまでは偉大なピケティの作り出した「バラモン左翼」という用語法が普遍的になりつつあるようだが。

でも、そういう先進国共通の「リベサヨ」現象とはかなり異なる、それよりもだいぶ前から私が、日本の「りべらる」と自称する左派の傾向として指摘してきた「リベサヨ」現象は、そういう90度に直交する軸の話ではなくて、むしろ欧米であれば端的に右派の主張である減税を、それこそが左派の命であると思い込むかのごとく熱烈に主張する奇妙な傾向のことだ。

このままいくと、賃上げ与党対減税野党という奇妙きてれつな構図になっていくんだけど、それでいいのかね。ま、いいんだろうね。こういう長い歴史があるわけだし。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2020/06/post-972110.html(「憎税」左翼の原点?)

これは、拉致問題の絡みで旧日本社会党を批判するという文脈で持ち出されている古証文ではあるんですが、

https://twitter.com/nittaryo/status/1270557950738825217

「『北朝鮮はこの世の楽園』と礼賛し、拉致なんてありえないと擁護していた政治家やメディア」
と言われても実感が湧かない皆さんに、証拠を開示しよう。これは日本社会党(現社民党)が1979年に発行した「ああ大悪税」という漫画の一部。北朝鮮を「現代の奇蹟」「人間中心の政治」と絶賛している。 

Eahtrbevcaatscf

その文脈はそういう政治話が好きになひとに委ねて、ここでは違う観点から。と言っても、本ブログでは結構おなじみの話ですが。よりにもよって「ジャパン・ソーシャリスト・パーティ」と名乗り、(もちろん中にはいろんな派閥があるとはいえ)一応西欧型社民主義を掲げる社会主義インターナショナルに加盟していたはずの政党が、こともあろうに金日成主席が税金を廃止したと褒め称えるマンガを書いていたということの方に、日本の戦後左翼な人々の「憎税」感覚がよく現れているなぁ、と。そういう意味での「古証文」としても、ためすすがめつ鑑賞する値打ちがあります。

とにかく、日本社会党という政党には、国民から集めた税金を再分配することこそが(共産主義とは異なる)社会民主主義だなんて感覚は、これっぽっちもなかったということだけは、このマンガからひしひしと伝わってきます。

そういう奇妙きてれつな特殊日本的「憎税」左翼と、こちらは世界標準通りの、税金で再分配なんてケシカランという、少なくともその理路はまっとうな「憎税」右翼とが結託すると、何が起こるのかをよく示してくれたのが、1990年代以来の失われた30年なんでしょう。

31dsj9bb24l_sx307_bo1204203200_ いまさら井出英策さんがどうこう言ってもどうにもならない日本の宿痾とでもいうべきか。

 

2021年6月23日 (水)

山本隆司・水町勇一郎・中野真・竹村知己『解説 改正公益通報者保護法』

583181 山本隆司・水町勇一郎・中野真・竹村知己『解説 改正公益通報者保護法』(弘文堂)をお送りいただきました。ありがとうございます。

https://www.koubundou.co.jp/book/b583181.html

2004年に制定された「公益通報者保護法」は、2020年に初めて基本構造に及ぶ改正が行われました。
 改正の主なポイントは、①通報者の範囲の拡大、②通報対象事実の範囲の拡大、③通報要件の緩和、④内部通報体制整備の義務化、⑤守秘義務、⑥通報者の損害賠償責任の免除、等です。改正法の施行は2022年ですので、それまでに一定規模以上の事業者は必要な内部通報体制等の整備を行わなければなりません。
 本書は、制度および改正全体を概説するほか、改正に至るまでの議論や実務上の疑問点を踏まえて、改正後の全条文を逐条解説しています。また、改正点等を具体的にイメージしやすいようQ&Aも収録しています。行政法・労働法の議論に基づく考察を行った、公益通報者保護法を真に理解するうえでの必読書です。

帯には「法改正の立案に携わった学者と弁護士による解説書」とありますが、 学者は行政法と労働法で、それぞれ第3篇で行政法と労働法の観点から書いていて、本体に当たる第1篇と第2編は、弁護士ーーというか、弁護士として役所に入って立法作業に携わった方が書いています。

第1編 総論(竹村知己 弁護士・元内閣府消費者委員会事務局参事官補佐
 第1章 公益通報者保護法制の全体像
 第2章 公益通報者保護法の制定
 第3章 公益通報者保護法改正の経緯
 第4章 公益通報者保護法改正の基本趣旨

第2編 逐条解説(中野真 弁護士・元消費者庁消費者制度課政策企画専門官)

 第1章 公益通報者保護法全般に関わる事項
 第2章 法目的(1条)
 第3章 「公益通報」の定義(2条)
 第4章 公益通報者の不利益な取扱いからの保護(3条~10条)
 第5章 事業者および行政機関のとるべき措置(11条~22条・別表)
 第6章 その他の法の検討課題
 ◆Q&A 

第3編 行政法・労働法からみた改正法のポイント

 第1章 改正公益通報者保護法のポイント――行政法の観点から(山本隆司 東京大学大学院法学政治学研究科教授)
  第1 序
  第2 本法の全体に関する行政法上の問題
  第3 事業者に対する行政措置
  第4 2号通報と行政手続との関係
  第5 国・地方公共団体の公益通報への取組み
  第6 結びに代えて―消費者庁の役割
 第2章 改正公益通報者保護法のポイント――労働法の観点から(水町勇一郎 東京大学社会科学研究所教授)
  第1 背景―公益通報者保護法の制定と改正
  第2 一般法理としての内部告発者保護法理(裁判例)
  第3 公益通報者保護法の枠組みと改正のポイント
  第4 意義と課題

 

「最賃が上がると雇用が減る」は本当か@東洋経済オンラインインタビュー

Toyokeza 東洋経済オンラインの最低賃金に関するインタビューに登場しました。

https://toyokeizai.net/articles/-/436013(最低賃金引き上げ、いま何を議論すべきなのか 菅政権が掲げる「より早期に1000円」への課題)

 毎年恒例の最低賃金をめぐる議論が6月22日の中央最低賃金審議会でスタートした。2012年以降、8年連続で最低賃金は大幅に引き上げられてきたが、今年は菅義偉政権が「より早期に全国加重平均1000円を目指す」ことを目標に掲げている。
 最低賃金をめぐり、企業経営や労働の現場でいま何が起きているのか。茨城県の筑波山のふもとで旅館業を経営する吉岡鞠子氏、労働問題の第一人者である労働政策研究・研修機構の濱口桂一郎氏、全国の生協で働く人たちを束ねる全国生協労働組合連合会の柳恵美子氏の意見を聞いた。

というわけで、私は「「最賃が上がると雇用が減る」は本当か」という問いに対して、私なりの答を述べております。

 日本は2000年代半ばから最低賃金の引き上げに一貫して取り組んでいます。「脱デフレ」を掲げた第2次安倍政権は(最低賃金の)引き上げ幅を拡大させましたが、引き上げの動き自体はそれ以前からあって、与党が自民党でも民主党でも変わりはなかった。・・・・・・

 

 

上野歩『労働Gメンが来る!』

9784575237542 労基小説としては、最初の沢村凜『ディーセント・ワーク・ガーディアン』がとても出来が良く、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/01/post-748a.html

894278 次の早見俊『労働Gメン草薙満』があまりにもひどい出来だったのに対して、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2018/01/g-0de4.html

9784334791698 今回読んだ上野歩『労働Gメンが来る!』はその中間くらいというか、労基ってこうなんだよと説明するにはいい小説という感じでありました。

https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334791698

清野清乃は二十六歳。労働基準監督官に任命され、吾妻労働基準監督署に配属された新米だ。働き方改革が叫ばれる昨今だが、意識の低い雇用主は多く、相談は絶え間ない。いきなり解雇されたり、給料の払いが遅れたり、ハラスメントを受けたり……。働くこと、雇うことって、こんなに難しいの? 清乃が担当する案件を通して、「労働」の本質をさぐる、最新型お仕事小説

正直言って、特に労災のパートなど、無理矢理小説仕立てにした労災の解説書風でもありますが、巻末の主要参考文献や労働局、監督署にいろいろ取材したのだろうなというのはよく伝わってくる小説になっています。

最後の章で、ちょうどコロナのさなかの妊娠看護師の話で出たばかりの母体健康管理措置を持ち出すあたりは、いかにもコキンから聞いた話をそのままネタにしました感があって、よろしいんじゃないでしょうか。

 

 

 

 

2021年6月22日 (火)

EUのプラットフォーム労働の労働条件に関する第2次協議に見える立法構想@JILPTリサーチアイ

JILPTリサーチアイに「EUのプラットフォーム労働の労働条件に関する第2次協議に見える立法構想」を紹介しました。

https://www.jil.go.jp/researcheye/bn/066_210622.html

プラットフォーム労働の問題と、AIによるアルゴリズム管理の問題の双方にまたがって、意欲的な立法構想を提示しています。

去る6月15日、EUの行政府たる欧州委員会は、プラットフォーム労働の労働条件に関する労使団体への第2次協議文書[注1]を附属職員作業文書[注2]とともに発表した。周知のように、EUでは労働社会政策の立案に当たってはEUレベル労使団体への2段階の協議が義務付けられており、その第2次協議においては欧州委員会が検討している措置の内容が示される。今回の第2次協議文書は、具体的なプラットフォーム労働者保護立法の内容が示されているだけではなく、先日(4月30日)このリサーチアイ第60回で紹介したEUの新AI規則案とも深く関連するテーマとして、アルゴリズム管理に関する規制の在り方についても提案がなされており、Society5.0という旗の下にICT、AIの発展を進めている日本にとっても大変興味をそそられるものとなっている。今回も基本的には速報的意義を重視し、その議論の詳細は省略して、第2次協議文書で示されている将来のEU立法構想の概略を紹介したい。

まず、就業上の地位の「誤分類」に対する施策である。ほとんどの場合、プラットフォーム労働者は契約上自営業者とされているが、近年加盟国の裁判所でプラットフォーム労働者を労働法の適用対象たる「労働者」と認定する判決が相次いでいる[注3]。しかしながら、それらは個別事案ごとのバラバラの判断に過ぎないので、EUレベルでのルールを設けようというのである。

第1の選択肢は、プラットフォーム事業者とそれを通じて就労する者との間の契約が雇用関係であるという反証可能な推定規定である。この推定を覆すためには、プラットフォーム事業者は司法手続きによりその者が真に自営業者であることを立証しなければならない。かかる法的推定規定は、労働・社会保障当局が彼らを労働者として再分類する上で明確なルールを提供することとなる。

第2の選択肢は、司法手続きにおける立証責任の転換又は証拠基準の低減である。プラットフォーム事業者を通じて就労する者は自動的に雇用関係とみなされるわけではないが、雇用関係が存在する証拠となるごくわずかな基本的事実(プリマ・ファシ)を提示すればよく、その場合その者が真に自営業者であることを立証すべきはプラットフォーム事業の側となる。プリマ・ファシとなりうるのは、報酬の水準がプラットフォーム事業者によって決められているとか、顧客とのコミュニケーションを制限しているとか、外見や接客について特定のルールを要求しているといったことでよい。

この他、行政手続きによる労働者性の認定や、労働、社会保障、税務当局による契約の性質決定も、煩雑な司法手続きをしなくて済むというメリットはあるが、最終的には司法判断によらざるを得ないという問題がある。これらの選択肢を分野に応じて組み合わせるという提案もされている。

次にアルゴリズム管理に関連する新たな権利の導入である。協議文書が提示しているのは、

・アルゴリズムが労働を管理する方法に関して、その影響を受ける者及びその代表者に対して情報提供を改善すること、
・アルゴリズムが顕著な影響を与える意思決定に対する適時の正当な人間による監視、管理、説明責任を保証する内部的手続きの確立、
・是正のための適切なチャンネルの確保、
・アルゴリズム管理システムに関する情報提供と協議の権利、労使団体の関与の確保、
・勤務外時間におけるプライバシーの権利、個人データ保護規則の適用、
・レーティング(格付け)のポータビリティ、
・労働関連契約関係の自動的終了又は同等の行為の排除、

といったことであり、これらは性質上プラットフォーム労働を超える広がりをもった提案であるが、ここではあくまでもプラットフォーム労働に限定した立法提案であり、将来的に労働市場におけるAIの利用に向けたより広範なアプローチへの第一歩となりうると述べている。ここは労働法の未来を考えるうえでも興味深い。

協議文書はさらに、プラットフォーム事業者に対する登録や透明性義務(就労条件や就労者数等)、一定のデータの報告義務(タスク期間、タスクごとの報酬、タスクの割当て等)、社会保障の権利のポータビリティとプラットフォームを通じて就労する者の身元確認といった点にも言及している。

このように、今回の協議文書は、プラットフォーム労働についてのEU立法構想を示したものとしても極めて重要な意義を有するが、それだけではなく、雇用、非雇用を通じて広範な様々な働き方に大きな影響を及ぼしつつあるAIによるアルゴリズム管理に対する労働法の対応方向という観点からも興味深いものとなっており、日本における議論にも示唆するところが大きいと言えよう。 

 

過労死認定基準微修正へ

本日の労政審労災保険部会脳・心臓疾患の労災認定の基準に関する専門検討会の資料が既にアップされていますが、

https://www.mhlw.go.jp/content/11201000/000795625.pdf

今までの基準を基本的には維持するということですが、若干変わるのはこの点でしょう。

・・・さらに、この考え方に加えて、疫学調査の結果や支給決定事例等を踏まえ、労働時間と労働時間以外の負荷要因を総合的に考慮して業務と発症との関連性が強いと判断できる場合について、「労働時間以外の負荷要因において一定の負荷が認められる場合には、労働時間の状況をも総合的に考慮し、業務と発症との関連性が強いといえるかどうかを適切に判断すること」、「その際、労働時間のみで業務と発症との関連性が強いと認められる水準には至らないがこれに近い時間外労働が認められる場合には、特に他の負荷要因の状況を十分に考慮し、そのような時間外労働に加えて一定の労働時間以外の負荷が認められる場合には、業務と発症との関連性が強いと評価できることを踏まえて判断すること」を、新たに示すことが妥当である。

つまり、1か月100時間、2~6か月平均で80時間という基準には達していなくても、それに近い水準でありかつ他の負荷要因が認められる場合には認定しますよということです。

あと、そもそも今の認定基準ができた20年前にその根拠として睡眠時間との関係が載ってたのですが、今回の報告諸案には、その後のいろんな研究成果なども載っていて、改めてこの問題を考える上で役に立ちます。

 

 

 

 

2021年6月21日 (月)

「ジョブ型」賛美の裏で真実隠す――労働や賃金の概念ない濱口桂一郎@労働の解放をめざす労働者党

Marxdoushikai2016_60 労働の解放をめざす労働者党さんから、「労働や賃金の概念ない」輩であるとの御批判をいただきました。大変膨大かつ微に入り細にわたっているのですが、要するにマルクス経済学のイロハのイもわきまえない奴だというお叱りのようであります。それは最初からそういう奴ばらだと言っているはずですが。

http://blog.livedoor.jp/marxdoushikai2016/(「ジョブ型」賛美の裏で真実隠す――労働や賃金の概念ない濱口桂一郎)

「異なる労働異なる賃金」が最上の原理と

労働と労働力の区別を知らない濱口

賃金とは「労働の価値」ではない

労働力の価値規定は「メンバーシップ」のみならず、ジョブ型雇用にも当てはまる

非正規労働も女性差別も資本の本性から発生

いやもちろん、マルクス経済学の方々が労働と労働力を区別しており、それに基づいて労働力の価値は女房子供も含めた生活費だからと年功賃金を正当化してきたことも、歴史的事実としては知っています。その理屈に全然納得できていないだけで。

ただまあ、確かにマルクス経済学の観点からすれば、私がマル経流の「労働や賃金の概念ない」輩であるというのは間違いのないところなのでしょうから、そもそも全然異なる土俵の上の議論にあれこれコメントする必要もないでしょう。その点は仰るとおり。

私にとって関心があるのは、経済理論のあれこれが正しいとか間違っているといった神学的議論ではなく、それが具体的なさまざまな労働者の賃金形態にどのように影響してきたのか、そして日本の労働社会をどのように作り上げてきたのか、という点にしかないものですから。

そういう観点からすれば、マルクス経済理論によってどれほど山のように論証されようが、それは下のエントリで取り上げた「昭和感覚の減税主義者たち」と何一つ選ぶところはないように思われます。

あと、資本の本性というのは特定の労働力だけかわいがってそれ以外の労働力を搾取するなんていうチンケなものではなく、あらゆる労働力を無慈悲に無差別に搾取することにあると思いますよ。それこそ、マルクス御大がのたまわっているじゃないですか。資本主義こそ偉大なレヴェラーである、と。

(追記)

https://twitter.com/rodousyatou/status/1409353064213929990

Pddz_jr1_400x400 下記の労働者党のブログに対して濱口氏が返信をしているよう(ブログサーファーが連絡してくれた)。
だが、まともな反論になっていなく、自己弁護しているとか。  (w)

自己弁護もクソも、そもそも当方はマルクス経済学の労働の価値か労働力の価値かという議論には、それが現実社会にいかなる影響を与えたかという素材としての観点以外にはなんら関心を持っていないので、もっぱらそこにのみ関心をお持ちの方にとっての意味ある「反論」であるはずがないのですが。

ていうか、プロテスタンティズムが資本主義を生み出したか否かを論じている社会学者に対して、「そもそもお前は予定説を認めるのか認めないのか」「お前は聖書をどう読むのか」と詰め寄られても、そんなことには関心はないとしか答えようがないでしょう。

 

 

 

 

 

児美川孝一郎『自分のミライの見つけ方』

584264 児美川孝一郎『自分のミライの見つけ方 いつか働くきみに伝えたい 「やりたいこと探し」より大切なこと』(旬報社)をお送りいただきました。

https://www.junposha.com/book/b584264.html

いやこの表紙、どうみたって青春アニメでしょ。

これまでの常識が通用しない未来を、僕たちはどう働き、
どう生きるか。若い世代に向けた、まったく新しいキャリアデザインのヒント。
「やりたいこと探し」になんか悩まなくていい。
「なりたい職業ランキング」に意味はない。
この本で新しい視点=武器を手にすることで僕らはもっと自由になれるはず。
自分らしいキャリアを歩み出すための1冊 

児美川さん、今回は思いっきり目線を10代前半の若い世代に合わせてきています。

・・・昔からそうだけど、きみたち10代は「自立に向かう旅」に出発する時期だ。

今、きっと同世代のだれもが、少しずつ自分の中で「なんだろう、このもぞもぞずる感じは」って違和感を意識し始めているんじゃないだろうか。

これまでは親や先生、大人たちの言うことを素直に聞いて、それが正しいと思ってきたかもしれない。けれど、思春期になると、それだけでは満足しきれなくなっているはずだ。

そんな古い自分を少しだけ壊して新しくするためには、自分自身を旅へと駆り立てていく力が必要になる。・・・

この本ではきみが自立に向けた第一歩を踏み出し、これからの人生や進路、キャリアについて準備するためのヒントも示してみたい。・・・

もちろん、児美川さんなので、焦点は仕事についての視点を示すことにあります。

はじめに

1章 フツーの人生って、なんだ?

「同調圧力」というやっかいな存在

フツーにも意味はある?

フツーの人生はどこにある?

価値観のちがう世代が共存する時代

フツーを疑えば、きみは少し自由になる

2章 「やりたいこと」がないとダメなの?

大人はなぜ「やりたいこと」を聞くの?

「やりたいこと言わせ」の問題点

 1)夢が職業に限定されている

 2)なりたい職業は専門職ばかり

 3)「キャリア教育」の設計ミス

やりたい仕事に就けなかったら不幸?

そもそも、人は働かないとだめなの?

その仕事は10年後には消えている?

80歳まで働く社会が到来する!

「やりたいこと」にとらわれなくていい

3章 働くって、なんだ?

「いい仕事」って、どんな仕事?

転職するのはいけないこと?

5人に2人は正社員ではない

雇われない働き方も考える

「働きたくない」は許される?

きみの目の前に広がる可能性

4章 きみたちはこんな社会にこぎ出ていく

女性の「ガラスの天井」って、なんだ?

「働きバチ」社員はいなくなる?

血のつながり=家族はもう古い?

きみのまちが消滅する可能性

きみはどんな未来をつくりたいか

5章 学校の勉強は役に立つか

勉強なんて役に立たない、というフツー

「役に立つ」って、どういう意味?

そうは言っても学校の勉強はつまらない?

人はなぜ勉強するんだろう?

勉強するのは自分のためだけじゃない?

「グーグル先生」に聞けばすべて解決するのか? 

 

 

 

「殺人ワクチン」ビラ配布は従業員全員取締役の塾でしたか

こういう三面記事ネタがあったのですが、

https://www.yomiuri.co.jp/national/20210621-OYT1T50040/(「殺人ワクチン」「世界に大革命」大阪の学習塾運営会社、不安あおるミニコミ紙を住宅に大量投函)

学習塾を運営する大阪市の会社が今月初旬、新型コロナウイルスワクチンの体への影響について、誤った情報に基づいて不安をあおる内容の印刷物を、大阪府内の多数の住宅に 投函していたことがわかった。専門家は「科学的根拠のない情報に惑わされないように注意してほしい」と呼びかける。 ・・・

まあ、長引くコロナ禍の影響で変なのが続々出てきよるわいな・・・と思ってその先を読むと、どこかで目にした名前が出てきました。

・・・この会社は「類設計室」(大阪市淀川区)で、小中学生らを対象に大阪府内など約50か所で学習塾を展開。毎年、難関校の合格者を出しているという。・・・

96f1413b0efd0bd9e57fc7702b6f9487d70 この名前の塾、どこかで見たな、とおもったら、労働判例でしたわいな。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2016/03/post-7e4d.html (社員全員取締役!?)

・・・・・・いや、問題は残業代だけじゃないでしょ、というか、残業代だけならば、管理監督者に仕立てておけばいいのですが、社員全員取締役、ということは、社員全員労働者にあらず、ってことで、ということは、そもそも労働者ではないんだから、一切の労働法が適用されないということで、残業代どころか、そもそも賃金を支払う必要すらなく、労働時間も安全衛生も一切規制がなく、被用者保険にも当然入れず、お前はクビだ!と言われても、それは取締役の解任なので解雇ではなく、要するに労働者の権利は一切なくなってしまうということになるわけであって、残業代だけじゃないでしょ。 

こういうことをやらかす塾が、やっぱりこういうことをやらかすわけですな。

配布したのは「週刊 事実報道」と題した同社発行のミニコミ紙。ワクチンによる死亡が、感染による死亡より多くなるとし、「殺人ワクチン」と記しているが、示された数字に根拠はなかった。流産が高い割合で報告され、不妊症になる恐れがあるとも主張。「生殖障害が伝染する」との誤った情報も紹介していた。・・・・

ミニコミ紙は、これまで「欧州の貴族連合・奥の院」の存在を主張し、「コロナ騒動を起こし、世界に大革命を起こそうとしている」などと掲載。同社のウェブサイトによると、通常は有料だが、今回は無料で約58万世帯に配布したという。・・・

宗教系とは言いながら(たぶん)教えている中身はまともな受験勉強であるみすず学苑に後光がさして見えてくるほどの、年季の入ったトンデモっぷりです。

 

 

 

 

 

 

 

2021年6月20日 (日)

ジョブ型とメンバーシップ型のねじれた議論

みずほ銀行のシステム障害の報告書をめぐって、こういうツイートがあったのですが、

https://twitter.com/_innocent2017/status/1406076301153386498

Vliauirg_400x400 みずほ銀行のシステム障害に関する調査報告書が話題になってますね。
その中でも「声を上げて責任問題となるリスクを取るよりも、持ち場でやれと言われていることだけをやった方が組織内の行動として合理的となる企業風土」という趣旨の原因分析が、日本企業らしいとして話題になっています。

これは、本当に日本企業独特の企業風土なのでしょうか?
確かに「減点型」の人事評価をする組織ならそのようなことがあるかもしれませんが、いわゆる欧米型、ジョブ型雇用の組織こそ「自分の持ち場の外のことは口を出さない」という風土が強くなってもおかしくないと思います。

欧米型、ジョブ型雇用の組織で「あえて声を上げる」ことが組織の中で合理的な選択となるのか、ぜひ有識者の方に教えていただきたいです。

たぶん、世の多くの人もこの人も、みんな日本的な集団的に仕事をし、一人一人に権限と責務が明確に割り振られているのではない量子力学的メンバーシップ感覚のままであれこれ議論するからこうなるんだろうな、と。

いやいや、ジョブ型ってのは、何か問題を発見したらそれをきちんと報告せよというのが、その当該者に与えられたタスクである限り、それこそが「持ち場でやれと言われていることだけ」なのであり、そういうジョブにはめ込まれた人がそれをわざとやらないことは、それがばれたらそれこそどういう処分を受けても文句をいえない。他により重要な考慮すべきことがあり、それを守るためならば自分の首をかけてもいいと思えるのでない限り、自らの職責を粛々とこなすこと以外に合理的な選択などはない。

逆に、そういうタスクを課されていない人は、そもそも自分の職責にもないことで「あえて声を上げる」などという他人の仕事を奪うような真似をする理由などない。そんなバカなことはいかなる意味でも合理的な選択ではないが、それはそもそもそれが自分の仕事じゃないから。その意味では、まさしくこの人の言うとおり、ジョブ型雇用の組織こそ「自分の持ち場の外のことは口を出さない」世界だ。

という、自分の仕事と決まっていることはきちんとやる、自分の仕事ではないことには口を出さないという、ニュートン力学的なジョブ型の世界の感覚を欠落させて、誰がどの仕事にどういう責任を負っているのやらいないのやらよくわからないような量子力学的メンバーシップ型の世界で、誰もが少しずつその問題に持ち場として関わりつつ、誰も自分のみがその問題の責任者であるとは思っていないようなふわふわした状況下では、それに関わる全員が、自分もその部分的責任者であるのに、「あえて声を上げる」ことが組織の中で合理的な選択とならず、他の部分的責任者の誰かがやるだろうと考えてしまうことが合理的になってしまうのでしょう。

 

昭和感覚の減税主義者たち

くろかわしげるさん曰く:

https://twitter.com/kurokawashigeru/status/1406246839700000771

1ojde3gp_400x400_20210620123401 労働界がお父さんが持って帰る可処分所得のことしか考えない時代は減税ばかり要求してきたけど、社会政策がないと女性の就労は不可能とわかって減税を言わなくなっている。
そのことがわからないで、いまだに高度成長期のままの思考の人が多すぎる。

も少し敷衍すると、福祉は全部生活給に由来する年功賃金で賄えてきたし、賄うのが当たり前だという昭和の感覚にどっぷり漬かったまま、この令和の時代になっても依然として税金が自分の福祉の原資であるなんて感覚がこれっぽっちもないまま、ひたすら自分の女房子供の生活費から教育費から住宅費からすべて賄うはずの給料から他人の福祉のための税金を取られることに絶対的拒否反応ばかりを叫び上げる人々が政界でも評論家でもやたらにでかい顔をしていることの矛盾でしょう。野末陳平が減税だけを一枚看板にしてサラリーマンの党とか言ってた半世紀前の時代から何一つ進化していない現代の恐竜たち。

そういう超絶的時代遅れの連中から比べれば、組合員に女性がかなり入ってきて否応なく時代に適応せざるを得なくなってきた労働組合の方がまだまだ百万倍まともです。

 

 

2021年6月19日 (土)

成長戦略と骨太方針

昨日、成長戦略と骨太方針が閣議決定されたので、労働に関係するところを見ておきましょう。まず、成長戦略では、

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/seicho/pdf/ap2021.pdf

第5章 「人」への投資の強化

1.フリーランス保護制度の在り方
実態調査によると、取引先とのトラブルを経験したことがあるフリーランスのうち、そもそも書面・電子メールが交付されていない者や、交付されていても取引条件が十分に明記されていなかった者が6割となっている。こうした状況を改善し、フリーランスとして安心して働ける環境を整備するため、事業者とフリーランスの取引について、書面での契約のルール化など、法制面の措置を検討する。
フリーランスのセーフティーネットについて検討する。

2.テレワークの定着に向けた取組
テレワークの定着に向けて、労働基準関係法令の適用について、ガイドラインの周知を図る。
また、全国において良質なテレワークを推進するため、ICTツールの積極的な活用やサテライトオフィスの整備等を進める。
事業者にテレワークの実施状況について公表するよう促す。

3.兼業・副業の解禁や短時間正社員の導入促進などの新しい働き方の実現
多様な働き方や新しい働き方を希望する方のニーズに応え、企業における兼業・副業の選択肢を提供するとともに、短時間正社員等の多様な正社員制度の導入を促進する。産業構造の変化に伴う労働移動の円滑化を図るためにも、フェーズⅡの働き方改革を推進する。
選択的週休三日制度について、好事例の収集・提供等により、企業における導入を促し、普及を図る。

4.女性・外国人・中途採用者の登用などの多様性の推進
日本企業の成長力を一層強化するため、女性、外国人、中途採用者が活躍できるよう、多様性を包摂する組織への変革を促す。
留学経験者や国際機関勤務経験者など異なる文化を経験している方の活躍の場を広げる。

5.人事評価制度の見直しなど若い世代の雇用環境の安定化
子育て世代の収入の向上・安定を図るため、企業の人事評価制度の見直し等を通じて、若い世代の雇用環境の安定化を図る。

6.労働移動の円滑化
リカレント教育の推進など、産業構造転換に伴う失業なき労働移動を支援する。
また、特に、コロナ禍により雇用が不安定化しているのは、前述のとおり、飲食・宿泊・文化芸術・エンターテインメントなどで働く非正規雇用労働者の方々である。特に、女性の非正規雇用労働者で20代~40代の方々への影響が大きい(図8)。
他方、女性の非正規雇用労働者の方々に非正規雇用を選択した理由を問うたところ、正規雇用の仕事がないからは10.3%であり、都合の良い時間に働きたい(39.9%)、家事・育児・介護と両立しやすい(19.7%)といった優先順位が高く(図9)、時間的制約があるため、フルタイムの職業への労働移動は困難なケースが少なくない。
これらの方々のために、現在増加している正規雇用職への労働移動と時間的制約の少ない職への労働移動の選択肢を提供する。
このため、非正規雇用の方々が、簡単なトレーニングを行って、時間的制約の少ない事務職などに失業なく労働移動できるシステムを検討する。同時に、企業側にも、勤務時間の分割・シフト制の普及や、短時間正社員の導入など多様な働き方の許容を求める 

「フリーランス保護制度の在り方」については、今年3月にあんまり中身のない(既存の措置をまとめただけの)フリーランスガイドラインを作ったけれども、それで済むわけはないので、これからきちんとフリーランスの保護制度を作っていかなければならないのは当然でしょう、その際、何よりも社会政策的観点をきちんと踏まえることが何より重要なはずです。そしてその際には、先進諸国で続々と進みつつあるプラットフォーム労働への対応状況をちゃんと吸収していただきたいと思います。

労働移動の円滑化のところは妙に詳しく書かれており、かつ「非正規雇用の方々が、簡単なトレーニングを行って、時間的制約の少ない事務職などに失業なく労働移動できるシステム」って、具体的にどういう「事務職」を考えているのかよくわからないところがありますね。もちろん、女性に限らず「時間的制約の少ない職への労働移動の選択肢」というのは大変重要なんですが、そこのところのイメージが現実とずれているとうまくいかない可能性があります。

次に骨太方針は、

https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2021/2021_basicpolicies_ja.pdf

(3)賃上げを通じた経済の底上げ
民需主導で早期の経済回復を図るため、賃上げの原資となる企業の付加価値創出力の強化、雇用増や賃上げなど所得拡大を促す税制措置等により、賃上げの流れの継続に取り組む。我が国の労働分配率は長年にわたり低下傾向にあり、更に感染症の影響で賃金格差が広がる中で、格差是正には最低賃金の引上げが不可欠である。感染症の影響を受けて厳しい業況の企業に配慮しつつ、雇用維持との両立を図りながら賃上げしやすい環境を整備するため、生産性向上等に取り組む中小企業への支援強化、下請取引の適正化、金融支援等に一層取り組みつつ、最低賃金について、感染症下でも最低賃金を引き上げてきた諸外国の取組も参考にして、感染症拡大前に我が国で引き上げてきた実績を踏まえて、地域間格差にも配慮しながら、より早期に全国加重平均1000 円とすることを目指し、本年の引上げに取り組む。
また、本年4月に中小企業へ適用が拡大した「同一労働同一賃金」に基づき、非正規雇用の処遇改善を推進するとともに、非正規雇用の正規化を支援する。 

ほとんど上がらなかった昨年とは異なり、今年は最賃を上げるぞと言っています。

ちなみに、「感染症下でも最低賃金を引き上げてきた諸外国の取組」については、先月開かれた最賃審の目安制度の在り方に関する全員協議会に、JILPTの調査等に基づいて「諸外国の最低賃金制度・改定状況について」というのが報告されております。

https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/000784658.pdf

Saichin

 

 

 

アイドル研究者の提訴

こんなニュースを見て、特に何かを論じようというわけではないけれども、感じたことをつれづれに、

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210618/k10013092331000.html(筑波大教授「NGT48」問題論文 大学ホームページから削除で提訴)

K10013092331_2106181912_2106182022_01_02 アイドルグループ「NGT48」のメンバーとファンのトラブルをめぐる問題について、筑波大学の教授が論文を書き、大学のホームページで公開したところ、運営会社の抗議を受けて大学に削除されたのは学問の自由の侵害だとして、論文の再掲載を求める訴えを起こしました。
筑波大学の平山朝治教授は18日、東京地方裁判所に訴えを起こし、東京 霞が関で会見を開きました。
訴えによりますと、去年1月にアイドルグループNGT48のメンバーとファンのトラブルをめぐる問題について書いた論文を、大学のホームページ上で公開したところ、NGT48の運営会社「Vernalossom」から削除を求める抗議文が届き、大学に削除されたということです。
これについて、平山教授は憲法で保障されている学問の自由を侵害されたとして、運営会社と大学に対して論文の公開と賠償を求めています。
会見で平山教授は「研究者にとっていちばん重要なのは、自分の研究を自由に発表できることだ。大学は論文を元の状態に戻してほしい」と話していました。 

ネタがネタだけに、やや斜めからの議論にもなりがちなテーマではありますが、筋道はまさにおっしゃる通り。かつまた、アイドルを含む芸能タレントの問題はプロスポーツ選手の問題と並んで、労働者保護の欠落した組織に組み込まれたフリーランス問題の代表でもあり、その意味からも労働研究を始めとした社会科学的観点からきちんと論じる値打ちのあるトピックであることも事実です。

が、

ここからはいささか個人的な感慨になりますが、

平山さんは実は駒場時代の同期生なんですが、ここ数年来、それまでの研究スタイルとは打って変わって、やたらAKBなどのアイドル研究に熱中しているらしいのを風のうわさに聞くにつけ、どうしちゃったのかな、と感じることもないわけではありませんでした。

上述のように、芸能やスポーツは社会科学のいくつかの側面からアプローチのできる興味深いテーマであることは確かなんですが、私の知る限り、平山さんの研究スタイルというのはそのいずれともはるか遠くかけ離れたようなすごく深遠にしてしごくマクロ社会的なものであったように記憶しているので、彼の中でどれがどのようにつながっているのか、正直よくわからないなという感想も湧いてくるところではあります。

ちなみに、平山さんの提訴の当たっての所信はこちら。

https://ameblo.jp/vyc13162/entry-12681378992.html

 

2021年6月18日 (金)

労災保険特別加入の追加案

本日の労政審労災保険部会に、フードデリバリー等を労災保険特別加入に追加する省令案が示されたのですが、

https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/000794151.pdf

一 特別加入の対象となる事業として、自動車を使用して行う旅客又は貨物の運送の事業に加えて、原動機付自転車又は自転車を使用して行う貨物の運送の事業を新たに規定すること。

これは別にウーバーイーツなどのフードデリバリーだけでなく、ソクハイなどのバイシクル便も含まれますね。

逆に、ウーバーのようなプラットフォーム型の就労形態であるかどうかは法文上は出てきません。

一昨日EUのプラットフォーム労働に係る第二次協議文書が出されたことはここに書きましたが、この調子だと本年中に指令案が提案される可能性が高く、指令になるのもそれほど遅くない可能性があります。それが日本にどういう影響をもたらすかも興味深いところです。

ちなみに、もう一つのIT技術者の方はえらく複雑怪奇な規定ぶりです。

二 特別加入の対象となる特定作業として、情報処理システム(ネットワークシステム、データベースシステム及びエンベデッドシステムを含む。)の設計、開発(プロジェクト管理を含む。)、管理、監査若しくはセキュリティ管理その他情報処理システムに係る業務の一体的な企画又はソフトウェア若しくはウェブページの設計、開発(プロジェクト管理を含む。)、管理、監査、セキュリティ管理若しくはデザインその他ソフトウェア若しくはウェブページに係る業務の一体的な企画その他の情報処理に係る作業であって、厚生労働省労働基準局長が定めるものを新たに規定すること。

 

 

産業雇用安定助成金の様々なる前史@『労基旬報』2021年6月25日号

『労基旬報』2021年6月25日号に「産業雇用安定助成金の様々なる前史」を寄稿しました。

 去る2月5日より、2020年度第3次補正予算によって産業雇用安定助成金が創設され、新型コロナウイルス感染症によって一時的に雇用過剰となった企業が在籍型出向によって雇用を維持する場合に、出向元と出向先の双方に対して助成金を支給することとされました。これはもともと令和3年度予算に盛り込まれていたものですが、4月の実施を数か月前倒しにする形で設けられました。根拠規定は雇用調整助成金と同じく雇用保険法第62条第1項第1号で、コロナ対策の暫定措置として雇用保険法施行規則附則第15条の4の5に規定されています。
(法第六十二条第一項第一号に掲げる事業に関する暫定措置)
第十五条の四の五 法第六十二条第一項第一号に掲げる事業として、第百二条の二に規定するもののほか、当分の間、産業雇用安定助成金を支給するものとする。
2 産業雇用安定助成金は、次の各号に定める事業主に対して支給するものとする。
一 新型コロナウイルス感染症に伴う経済上の理由により、事業所において、急激に事業活動の縮小を余儀なくされた事業主であつて、あらかじめ出向をさせた者を雇い入れる事業主(以下この条において「出向先事業主」という。)と出向に関する契約を締結し、雇用する被保険者(出向計画期間の初回の出向をした日の前日において当該事業所の事業主に被保険者として継続して雇用された期間が六箇月未満である被保険者、解雇を予告された被保険者等(解雇を予告された被保険者その他これに準ずる者(当該解雇その他離職の日の翌日において安定した職業に就くことが明らかな者を除く。)をいう。以下この条において同じ。)及び日雇労働被保険者を除く。以下この条において「出向元事業所被保険者」という。)について次のいずれにも該当する出向をさせ、出向をした者に係る出向の状況及び出向をした者の賃金についての負担状況を明らかにする書類を整備しているもの(以下この条において「出向元事業主」という。)。
イ 出向先事業主が行う事業に当該出向した者が最初に従事する事業所(以下この条において「出向先事業所」という。)における当該従事する期間が一箇月以上の期間であり、出向をした日から起算して二年を経過する日までの間に終了し、当該出向の終了後出向元事業主の当該出向に係る事業所に復帰するものであること。
ロ 出向をした者の出向先事業所において行われる事業に従事する期間(以下この条において「出向期間」という。)における通常賃金の額が、おおむねその者の出向前における通常賃金の額に相当する額であること。
ハ 出向の時期、出向の対象となる労働者の範囲その他出向の実施に関する事項について、あらかじめ出向元事業主と当該出向元事業主の当該出向に係る事業所の労働組合等との間に書面による協定がなされ、当該協定の定めるところによつて行われるものであること。
ニ 出向をした者の同意を得たものであること。
ホ 都道府県労働局長に届け出た出向計画に基づくものであること。
二 あらかじめ出向元事業主と出向に関する契約を締結した出向先事業主であつて、雇い入れた者に係る出向の状況及び雇い入れた者の賃金についての具体的状況を明らかにする書類を整備しているもの。
 第3項以下に規定する助成率・助成額は、出向運営経費(出向元事業主および出向先事業主が負担する賃金、教育訓練および労務管理に関する調整経費など出向中に要する経費)と、出向初期経費(就業規則や出向契約書の整備費用、出向元事業主が出向に際してあらかじめ行う教育訓練、出向先事業主が出向者を受け入れるための機器や備品の整備などの出向の成立に要する措置を行った場合)についてそれぞれ以下のようになっています。なお、加算額とは、「出向元事業主が雇用過剰業種の企業や生産性指標要件が一定程度悪化した企業である場合、出向先事業主が労働者を異業種から受け入れる場合」に加算されます。
表1:出向運営経費
Roukijunpo210625_fig1
 
表2:出向初期経費
Roukijunpo210625_fig2
 さて、このような雇用維持を目的とした出向助成金というのは、今回の雇用安定助成金が初めてなのでしょうか。実は雇用政策の歴史を紐解くと、雇用維持型助成金の元祖である雇用調整給付金が石油ショックただ中の1974年末に誕生してからさほど経たない時期に、同じような助成金が生まれていたのです。今回は過半世紀近くにわたる雇用助成金の歴史の中から出向助成金の系譜を跡づけてみたいと思います。
 
 雇用調整給付金は、1974年末に成立した雇用保険法の第62条第1項第4号に基づき、「景気の変動、国際経済事情の急激な変化その他の経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた場合における失業を予防するために必要な助成」として設けられましたが、この時の給付対象は休業のみであって、教育訓練や出向は含まれていませんでした。これらを含めたのは1977年5月の雇用保険法改正です。同改正では、雇用保険法の目的に初めて「失業の予防」という言葉を明記するとともに、雇用改善事業から雇用調整給付金を取り出してきて雇用安定事業として独立させ、いくつもの新助成金を設け、雇用安定事業に必要な財源として労働保険特別会計の雇用勘定に雇用安定資金を設置し、給付対象も休業から教育訓練や出向にまで広げられました。
 政策思想の観点からは、雇用安定事業の目的がそれまでの景気変動への対応から産業構造の変化への対応にまで拡大された点が重要です。「産業構造の変化その他の経済上の理由により事業の転換又は事業規模の縮小を余儀なくされた場合」のための事業転換等雇用調整事業には、事業転換等訓練給付金、事業転換等休業給付金、事業転換等訓練費助成金及び事業転換等出向給付金が設けられ、この最後のものが本邦初の出向助成金です。
(事業転換等出向給付金)
第百二条の十五 事業転換等出向給付金は、次の各号のいずれにも該当する事業主に対して、支給するものとする。
一 第百二条の十第一項第一号及び第二号に該当する事業主であること。
二 第百二条の十第一項第一号の事業所の対象被保険者について次のいずれにも該当する出向(失業することなく他の事業主に雇い入れられることをいう。以下この条において同じ。)をさせる事業主(以下この条において「出向元事業主」という。)であること。
イ 当該事業転換等に伴い行われるものであること。
ロ 出向をした者を雇い入れた事業主(以下この条において「出向先事業主」という。)が行う事業に当該出向をした者が最初に従事する事業所(設置後一年を経過している事業所に限る。以下この条において「出向先事業所」という。)における当該従事する期間が一年未満の期間でないこと。
ハ 出向をした者の出向先事業所における通常賃金の額が、概ね出向元事業主の当該出向に係る事業所(以下この条において「出向元事業所」という。)における通常賃金の額に相当する額であること。
ニ 出向の時期、出向の対象となる労働者の範囲その他出向の実施に関する事項について、あらかじめ出向元事業主と労働組合等との間に書面による協定がなされ、当該協定に定めるところによって行われるものであること。
ホ 出向をした者の同意を得たものであること。
三 前号に規定する出向の実施について、あらかじめ、出向元事業所の所在地を管轄する公共職業安定所の長に届け出た事業主であること。
四 あらかじめ出向先事業主と締結した出向に関する契約に基づき、当該事業主に対して、出向をした者の賃金について補助を行う事業主であること。
五 出向をした者に係る出向の実施の状況及び前号の補助の状況を明らかにする書類を整備している事業主であること。
2 事業転換等出向給付金の額は、前項第二号に規定する出向をした者に係る当該出向をした日から起算して一年間における賃金について出向元事業主が同項第四号の契約に基づいて出向先事業主に対して補助した額(その額が当該出向をした者の出向元事業所における通常賃金の額に百五十を乗じて得た額を超えるときは、当該通常賃金の額に百五十を乗じて得た額)の二分の一(中小企業にあっては三分の二)の額(その額が基本手当日額の最高額に三百を乗じて得た額を超えるときは、基本手当日額の最高額に三百を乗じて得た額)とする。
 この本邦初の出向規定を見て驚くのは、出向を「失業することなく他の事業主に雇い入れられること」と安易かつ曖昧に定義してしまっていることです。これでは、再就職の斡旋によって失業することなく他の事業主に転籍させてしまう場合も排除できません。転籍によって雇用関係は切れても、転籍先に対して賃金の一部を補助することは十分あり得ます。この出向助成金はあくまでも出向元に対する助成金であり、出向元が出向先に補助した額の一部を助成するものなので、そういう法律関係がどうなっているかということにはあまり関心が向けられていなかったということなのでしょう。
 その後雇用関係給付金は大幅な変動が続きます。1980年には2つの雇用調整事業が再び1つにまとめられ、給付金も休業と教育訓練を対象とする雇用調整給付金と出向給付金の2つとなりました。この出向給付金においても、出向は安易に「失業することなく他の事業主に雇い入れられること」という定義のままです。さらに、1981年4月に雇用にかかる給付金等の整備充実を図るための関係法律の整備に関する法律によって雇用保険法等の関係法が改正され、雇用関係給付金が大幅に整理統合されました。これにより、雇用調整関係の給付金はすべて雇用調整助成金に統合されました。これ以後は現在に至るまで、雇用調整助成金という名称が使われ続けています。
 こうしてほぼ完成した雇用調整助成金の規定の中に、出向に係るものも組み込まれました。大筋は変わっていませんが、細かな要件はかなり変わっています。
(雇用調整助成金)
第百二条の三 雇用調整助成金は、次の各号のいずれにも該当する事業主に対して、支給するものとする。・・・
二 次のいずれかに該当する事業主であること。・・・
ハ 前号の事業所の被保険者(出向(失業することなく他の事業主に雇い入れられることをいう。以下この条において同じ。)をした日の前日において当該事業所の事業主に被保険者として継続して雇用された期間が六箇月未満である被保険者、解雇を予告された被保険者及び日雇労働被保険者を除く。以下この条において「出向対象被保険者」という。)について次のいずれにも該当する出向(前号ニの事業所にあっては、(2)から(5)までに該当する出向)をさせ、あらかじめ出向をさせた者を雇い入れる事業主(以下この条において「出向先事業主」という。)と締結した出向に関する契約に基づき、当該事業主に対して、出向をした者の賃金について補助を行った事業主(以下この条において「出向元事業主」という。)であること。
(1) 当該出向をした日が指定期間内にあること。
(2) 出向先事業主が行う事業に当該出向をした者が最初に従事する事業所(設置後三箇月を経過している事業所に限る。以下この条において「出向先事業所」という。)における当該従事する期間が六箇月以上の期間であること。
(3) 出向をした者の出向先事業所における通常賃金の額が、概ね出向元事業主の当該出向に係る事業所(以下この条において「出向元事業所」という。)における通常賃金の額に相当する額であること。
(4) 出向の時期、出向の対象となる労働者の範囲その他出向の実施に関する事項について、あらかじめ出向元事業主と労働組合等との間に書面による協定がなされ、当該協定の定めるところによって行われるものであること。
(5) 出向をした者の同意を得たものであること。
 この出向に係る雇用調整助成金とは別に、1983年には特定不況業種に係る雇用調整助成金というのが設けられましたが、奇妙なことにこちらは特定不況業種事業主が行った再就職の斡旋により対象労働者を雇い入れる側の事業主に支給されます。雇入れ助成金としては既に特定求職者雇用開発助成金があり、その中に特定不況業種離職者を雇い入れた場合も含まれていたのですが、それとは別に「失業することなく」企業間を移動するケースを雇用調整助成金の中に含めてしまったわけです。
 その後1988年には特定不況業種関係労働者の雇用の安定に関する特別措置法の改正に伴って、この特定不況業種に係る雇用調整助成金が産業雇用安定助成金という名前になりました。は?どこかで聞いたことのある名前だと思ったら、今回コロナ禍で設けられた助成金とまったく同じ名前ではありませんか。しかしその内容は出向ではなく(出向に係る雇用調整助成金はそのまま変わらず)、同改正法による雇用維持計画に基づいて職業転換訓練、配置転換、出向、再就職斡旋をした場合に、前二者についてはその特定不況業種事業主に、後二者についてはその特定不況業種事業主からの出向や再就職斡旋を受入れた側の事業主に支給されるというのです。だんだん頭が混乱してきました。
 その旧産業雇用安定助成金の出向に係る規定を見てみましょう。
(産業雇用安定助成金)
第百二条の三の二 ・・・
2 ・・・
一 次のいずれかに該当する事業主であること。
ハ 次のいずれにも該当する事業主であること。
(1) 計画認定事業主が認定計画に含まれる措置として行った次のいずれにも該当する出向またはあっせんにより、指定期間内において、当該計画認定事業主に雇用されていた計画対象被保険者を雇い入れる事業主であること。
(i) 出向またはあっせんの時期、出向またはあっせんの対象となる労働者の範囲その他出向またはあっせんの実施に関する事項について、あらかじめ、当該計画認定事業主と当該認定計画に係る事業所の労働組合等との間に書面による協定がなされ、当該協定の定めるところによって行われるものであること。
(ii) 出向またはあっせんの実施について、当該計画認定事業主が、あらかじめ、当該認定計画に係る認定をした公共職業安定所長に届け出たものであること。
(iii) 出向の実施の場合にあっては、出向をした者の出向の時期その他出向の実施に関する事項について、あらかじめ、当該計画認定事業主と出向先事業主との間に出向に関する契約が締結され、当該契約の定めるところによって行われたものであること。
(iv) 出向の実施の場合にあっては、当該出向をした者が、出向先事業所に継続して雇用する労働者として雇い入れられるものであることまたは出向先事業所における従事する期間が三箇月以上の期間のものであること。
 要件は異なるとは言え、出向元には雇用調整助成金、出向先には産業雇用安定助成金が支給されるという分業体制になっていたわけですが、後者は1995年には廃止され、変わって労働移動雇用安定助成金等が創設されました。これは当時盛んに唱道されていた「失業なき労働移動」のための政策ですが、内容的には前者を受け継いでいます。この助成金の支給要件は雇用保険法施行規則ではなく、支給業務を担当する雇用促進事業団(現在の高齢・障害・求職者雇用支援機構)の一般業務方法書に規定されていました。やや継子扱いのような感じです。
(助成対象)
第百二条の四十九の四 労働移動雇用安定助成金は、認定計画に基づき、計画対象被保険者(認定計画に係る事業規模の縮小等に伴い配置の転換、出向(失業することなく他の事業主に雇い入れられることをいう。以下この章において同じ。)または離職を余儀なくされる雇用保険の被保険者(・・・)をいう。以下この章において同じ。)に対して、失業の予防に特に資すると認められる措置を講ずる事業主であって、その種類ごとに定める要件に該当するものに対して支給するものとする。
 しかし、「雇用維持から労働移動促進へ」という政策の転換は、この中途半端な助成金も洗い流し、2001年には雇用対策法の改正に伴い、新たな花形政策として労働移動支援助成金が創設されるとともに、雇用調整助成金は重要度を下げ、業種に基づくものではなく、個別事業所ごとに、急激な事業活動の縮小を余儀なくされた場合の一時的な雇用調整への助成として生き残りました。この労働移動支援助成金は、再就職援助計画の対象労働者に求職活動のための休暇を付与するとか、職業紹介事業者に対象労働者の再就職支援を委託する(アウトプレースメント)といったことに対する助成であって、出向助成金ではなくなりました。
 ただ、その縮小した雇用調整助成金には依然として出向のケースが残っています。意外に思うかも知れませんが、現在でもそうです。では一体、出向に係る雇用調整助成金が既にあるのに、それに積み重ねるように産業雇用安定助成金という(昔の名前で出ています的な)新た助成金を作った意味はどこにあるのでしょうか。両者を見比べていくと、明らかに異なるのは前者が出向元による賃金負担額に対する助成であるのに対して、後者は出向元と出向先の双方に対するより手厚い助成であるという点です。賃金に対する助成率がより高く設定されるとともに、賃金以外の諸経費も助成対象です。しかし、それほどの新機軸というわけではなさそうです。
 ちなみに、長らく変わらなかった「出向」の定義ですが、2004年の改正でさりげなく消えています。出向元と出向先の双方と雇用関係を有することという労働法学的な定義が設けられたわけでもなく、無定義用語になってしまった形ですが、ひるがえって考えれば、旧産業雇用安定助成金を作った際に、出向と再就職の斡旋とを並列させて助成対象にしたことによって、出向は在籍出向に限られることになったのかも知れません。
 
 

 

2021年6月16日 (水)

EUのプラットフォーム労働の労働条件に関する第2次協議

昨日(6月15日)、欧州委員会はプラットフォーム労働者の労働条件に関する労使団体に対する第2次協議を行いました。

https://ec.europa.eu/social/BlobServlet?docId=24094&langId=en

いろんな意味で興味深いのですが、とりあえず労働法関係者が興味をひかれそうな部分を

5.2.1. Addressing misclassification in employment status

いわゆる誤分類の是正について、

One option would be a rebuttable presumption of an employment relationship to the effect that the underlying contract between the platform and the person working through it is deemed an employment relationship. To counter that presumption, platforms would have to establish in a legal procedure before a court that the person is in fact self-employed. ・・・

一つの選択肢はプラットフォームとそれを通じて就労する者の間の契約が雇用契約であるとみなされる反証可能な雇用関係の推定であろう。この推定を覆すには、プラットフォームは裁判所における訴訟手続きにおいてそのものが真に自営業者であると立証しなければならない。・・・

Another option would be a shift in the burden of proof or lowering the standard of proof required for people engaged in platform work or for their representatives in legal proceedings. The person working through the platform would not automatically be considered to be in an employment relationship, but would have to establish very few basic facts from which it can be presumed that an employment relationship exists (prima facie evidence), in which case it would be for the platform operator to prove that the person is in fact self-employed.

もう一つの選択肢はプラットフォームを通じて就労する者やその代表者に求められる証拠の基準を引き下げる立証責任の転換である。プラットフォームを通じて就労する者は自動的に雇用関係にあるとみなされるわけではないが、雇用関係が存在すると推定しうるようなごくわずかな基本的な事実のみを立証すればよく、その場合その者が真に自営業者であることを立証すべきはプラットフォーム運営者のほうである。

5.2.2. Introducing new rights related to algorithmic management

アルゴリズムによる管理に関係した新たな権利について

 

 

 

 

 

 

 

 

許可制は健全で届出制は不健全?

朝日の夕刊に「性風俗業は「不健全」か コロナ給付金巡り、国「道徳観念に反し対象外」」という記事が載っていて、この問題自体は本ブログでも厚生労働省の雇用助成金と経済産業省の持続化給付金の取り扱いの違いについて論じてみたことがありますが、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2020/04/post-b631f8.html(新型コロナと風俗営業という象徴)

・・・雇用助成金の時には、風俗営業だからと言って排除するのは職業差別だとあれほど騒いだ人々が、岡村発言の直後にはだれも文句を言わなくなってしまっているというあたりに、その時々の空気にいかに左右される我々の社会であるのかがくっきりと浮かび上がっているかのようです。

本日はその件ではありません。

https://www.asahi.com/articles/DA3S14941351.html(性風俗業は「不健全」か コロナ給付金巡り、国「道徳観念に反し対象外」)

何の話かというと、政府が性風俗業を持続化給付金の対象から外した論拠として、スナックや料亭といった(性風俗ではない)風俗営業は公安委員会の「許可」制にしているのに対し、性風俗業は公安委員会への届出制にしていることを挙げているという点に、ものすごい違和感を感じたからです。曰く、

・・・性風俗業を「性を売り物にする本質的に不健全な営業」「許可という形で公認するのは不適当」としている。

国はこれらをもとに、性風俗業は「不健全で許可制が相当でない業務とされてきた」・・・

性風俗業がいかなるものであるかについてはここでは論じませんし、持続化給付金の対象にすべきかどうかもとりあえずここでの論点ではありません。

しかし、「本質的に不健全」であるがゆえに許可制ではなく届出制とするのだ、というこの政府が裁判所で論じたてているらしい論理というのは、どう考えてもひっくり返っているように思われます。

そもそも、行政法の教科書を引っ張り出すまでもなく、許可制というのは、一般的禁止を特定の相手方に対して解除するという行政行為です。なぜ一般的に禁止しているかといえば、それはほっとくと問題が発生する恐れがあるからであり、何か問題が起きたら許可の取り消しという形で対処するためなのではないでしょうか。

それに対して、届出制というのは一般的には禁止していないこと、つまりほっといても(許可制の事業に比べて)それほど問題は発生しないであろう事業について、でもやっぱり気になるから、念のために届出させて、何かあったら(届出受理の取り消しなとということは本来的にありえないけれども)これなりにちゃんと対応するようにしておこうという仕組みのはずです。

そして、労働法政策においても、たとえば有料職業紹介事業は許可制ですが、学校や公益法人等の無料職業紹介事業は届出制ですし、派遣も今は許可制に統一されましたが、かつては登録型派遣は許可制で、常用型派遣は届出制でした。これらはどう考えても、前者の方が問題を起こしやすく、いざというときに許可の取り消しができるように、後者はあんまり問題がないだろうから、届出でええやろ、という制度設計であったはずです。

それが常識だと思い込んでいたもんですから、このデリバリーヘルス運営会社の起こした持続化給付金訴訟において、政府が上述のような全くひっくり返った議論を展開しているらしいということを知って、正直仰天しています。

 

 

 

労働者協同組合のパラドックス@『季刊労働法』2021年夏号(273号)

483_o_20210616085901 『季刊労働法』2021年夏号(273号)に書いた「労働者協同組合のパラドックス」は、例によって立法運動と立法政策を歴史的に辿ったものであり、失対事業由来のワーカーズ・コープと生活クラブ生協由来のワーカーズ・コレクティブの双方の動きをかなり細かく取り上げています。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2021/06/post-aecc1f.html

その初めのところと終わりのところだけを、ちらりとお見せしておきましょう。

 去る2020年12月11日、労働者協同組合法が成立しました。まだ施行日も未定の法律ですが、労働法の観点からも興味深い点があり、今回はその制定に至る経緯を概観しつつ、その逆説的な性格を考察していきたいと思います。
 
1 労働者協同組合とは何か?
 
 今回制定された法律の第3条第1項は、労働者協同組合の基本原理をこう規定しています。
・・・・・
 ここで「基本原理」と言われている、組合員が出資し、経営に参加し、労働に従事するという3項目は、組合員が同時に資本家であり、経営者であり、労働者であるということを謳っています。つまり、労資対立も、労使対立も、資本と経営の分離もない、三位一体の資本=経営=労働の共同体であるというわけです。
 この点から、労働者協同組合はある種の共同体的マルクス主義者から好まれる傾向があるようです。例えば、昨年末に法律が成立しようとするとき、『人新世の資本論』の著者である斎藤幸平氏は次のように労働者協同組合を絶賛していました*1。
 私たちは好きな仕事を選び、嫌ならば辞める自由がある。しかし、資本主義における企業の目的はあくまでも最大限の利益を出すことなので、労働者の意思を無視して命令を出し、生産性を上げようとする。つまり、私たちはどの企業のもとで働くかを選べる自由くらいしか与えられていない。
 しかし労使関係を前提にしない、もっと別の働き方があるはずで、それが協同労働だ。必ずしも労使関係を前提とせず労働者自らが出資し、自分たちでルールを定め、何をどう作るかを主体的に決める。株主の意向に振り回されず労働者の意思を反映していけば、働きがいや生活の豊かさにつながるのではないか。
 斎藤氏によると、労働者協同組合とは労使関係などという妙なものの介在しない立派な働き方であるようです。資本主義を否定する考え方からすればそういう発想は必ずしも不自然ではありません。
 とはいえ、階級対立が定義上存在しない共産主義国家から家父長制的企業一家主義に至るまで、労使関係を否定する麗しき共同体的関係と称してこれまで登場してきた「様々なる意匠」の悲惨な歴史を知っている我々からすると、この手の議論にはいささか眉に唾をつけたくなるところがあります。労使関係というものは、イデオロギーでもってなくなれといえばなくなるほど生やさしいものではないというのが、我々が自分たちの経験で学んだ苦い智慧ではないのでしょうか。・・・・・ 

2 民法上の組合
3 企業組合
4 失業対策事業の終息の中から
5 生協からワーコレへ
6 労働者協同組合法案の有為転変
7 2010年の法案
8 労働者協同組合法の成立とパラドックス
9 労協組合員の労働者性
10 労働者協同組合の悪用とその是正 

 連合が懸念するようなそうした悪用の例が、労働者協同組合が長い歴史を有するスペインでも見られるようです。青砥清一の研究*20によりながら見ていきましょう。
・・・・・
 この判決を盾に労協制度を悪用するケースが多発しました。ガリシア州では食肉処理会社が従業員をいったん解雇し、仕事の継続を希望する人には労働者協同組合に加入するよう通告しました。加入者の手取りは正規雇用労働者の4割程度まで下がり、労働時間規制も雇止め手当も適用されなくなったため、労働組合は労働基準監督署に申立てを行い、調査の結果、違法な偽装加入があったとして企業に原職復帰が命じられました。新聞報道では、3万2800人が元の雇い主から協同労働を強制され、協同労働は名ばかりで経営参加も自由裁量もないと報じられています。これを受けて2018年、サンチェス社会労働党政権は、「労働搾取に対する指導計画」を策定し、偽装協同労働に対する労働基準監督署の監視を強化しました。
 こうした中で、上記判決の上告審でスペイン最高裁判所が2019年5月8日に逆転判決を下しました。協同組合と協同労働者は組合関係ではあるが、理事会に代表される執行部の指揮に服する協同労働者が従属的な仕事に従事しているという事実は歴然と存在し、そのような協同労働者が、労働者としての利益を守る権利を有するのは疑いの余地はなく、それゆえ協同労働者が自ら選ぶ労働組合に自由に加入する権利を有すると判示したのです。スペインの最高裁判所は、日本の共同体的マルクス主義者よりも労働者の実態に即してものごとを考えようとする誠実さを有していたようです。・・・・ 

 

2021年6月15日 (火)

NHK取材班『霞が関のリアル』

583363 NHK取材班『霞が関のリアル』(岩波書店)をお送りいただきました。

https://www.iwanami.co.jp/book/b583363.html

NHK NEWS WEBの注目連載書籍化。激務で知られ、さらにコロナ対応で疲弊する霞が関官僚。不条理な働き方は、精神疾患、相次ぐ退職、なり手不足といった問題だけでなく、第一線で働く官僚の能力発揮を妨げ、国の政策を停滞させている。官僚本人、家族、政治家、関係者への緻密な取材から、その現状と構造に鋭く迫る。

労働政策研究なんてことをしていると、当然のことながら厚生労働省の方々と接することも多く、時代とともにどんどんその激務ぶりが過激になってきていることは感じることも多いですし、いやいや何を言っているんだ、お前自身かかつてその中の人だっただろうと言われれば、物理的な長時間労働の時間数だけでいえば確かに昔もやたらに拘束時間は長かったけれども、あんまり濃縮感はないというか、それなりに職場でじっくりとものを考える時間はあったと記憶しているので、今みたいにのべつ幕なしに始終仕事が降り注いでくるという感じではなかったというのが正直なところです。

目次は以下の通りですが、やはり霞が関最大のキリングフィールドは、コロナ以前からすでに厚生系と労働系で残業時間のツートップを争っていた厚生労働省が、コロナという台風のど真ん中にぶち当たって、コロナと直接関係ない各局各課からコロナ本部に人身御供を大量に供出した結果、ただでさえ人手不足の部署がへとへとで回らなくなるという事態を現出した厚生労働省ということになるのでしょう。

厚生労働省で妊婦が深夜3時まで残業!? 」というのはたぶん二重三重四重くらいに皮肉で、近頃働き方改革だのワークライフバランスだのと民間企業に説教垂れているというだけじゃなく、100年前の工場法以来母性保護とか母子健康とか言っている役所のど真ん中なんですからね。

まえがき
0 コロナで激務に――霞が関の官僚にいま何が
追い詰められる官僚/官僚の“長い1日”/“対面が基本”の国会対応/残る紙文化/仕事は大変……でも「国民のために」/国家公務員は労働基準法の適用外/7人に1人が「辞めたい」/官僚トップに聞いた/始まった働き方改革
■第1部 官僚だってつらい
1 眠らない官僚
つらい! 眠い! 官僚たちの本音/保険金上げた……/“国会対応”/残業は120時間の過労死ライン超え! でも、官僚は……/長時間労働の“つけ”は大きい/「昔から忙しかったけど……」/官僚の家族の叫び/残業代には「天井」が/本当に「高給取り」?/子どもが欲しいが……/専門家「政治主導の強まり」
2 官僚女子もつらい!
女子の悩みは官僚も一緒/制度あるのに、使えない!/子どもはいないのですが……言い出せない悩み/「女性活躍」掲げるけれど……/専門家はどう見る/代行不能な「仕事の属人化」
3 厚生労働省で妊婦が深夜3時まで残業!?
働き方改革の旗振り役なのに……/妊婦が午前3時まで!/職場で倒れた人も/時間外の在庁が100時間超 なんと374人!!/人事院に直撃!! 何で休めないの?/専門家「人員増やすのもタブー視するな」
4 この春、霞が関やめました
私もかつて官僚でした……/「憧れ」の仕事だったけど……/終わりなき長時間労働/相次ぐ不祥事対応/異動ばかりで専門性が高められない/1年間で何人辞めたのか?
5 心身病む官僚たち
同じ課で一度に4人が……/つらいと言えなかった/職場に戻ることなく……/自死から5年たっての申請/将来を嘱望されていた男性/民間と官僚“労災”めぐる違い/何が追い詰める? 専門家は
6 官僚の勤務データは“リアル”? 人事院に直撃
データと取材実感に違いが……/国と民間の調査結果……こんなに差が!?/専門家はどう見る?/人事院にも聞いてみた!
■第2部 霞が関と永田町
7 夏休みの宿題? これ、官僚の仕事?
文部科学省に、夏休みの宿題!?/秘書がやるべき業務じゃないの?/まだまだありました……/専門家はこう見る
8 どうして即日廃棄? 大臣の日程表
日程表とは? 秘書官経験者に聞いてみた/その保存状況は?/指針では1年未満保存と明記/相次ぐ問題で見直された指針。しかし……/三大都市(東京・大阪・愛知)の知事の日程表は?/さらに調べると……/重要かどうか検討せずの省も/ついに廃棄前の日程表が!/各省庁の日程表、違いは……/どうやってチェックすれば!/黒塗りの省庁も/「政務」は記述されず
9 霞が関の嫌われ者 “質問主意書”って何?
「質問主意書」で退職を覚悟!?/質問は国会議員の重要な仕事/過去に不正発覚につながったことも/総理大臣公邸に幽霊!?/修正でがっかりすることも/【官僚の負担1】1時間ルール/【官僚の負担2】7日以内の答弁作成/【官僚の負担3】書式も厳密で面倒……/なんと10倍近くに!/質問主意書、どの議員が多い?/ランキング1位の議員に聞いた
10 官僚が自転車で疾走――真夜中に届けるものは
届けよ! 答弁書/なぜ遅い?【理由1】 通告時間/なぜ遅い?【理由2】 壮絶な“フリモメ” /いったい誰のせいなのか?
■第3部 今どきの霞が関事情
11 なぜ? 東大生の“官僚離れ”
東大生の進路に異変?/トップ合格、親族も官僚。でも……/「沈む船に乗りたくない」/官僚主導から政治主導へ/「冬」の時代の官僚たち/若手官僚たちの模索
12 40歳以上が多すぎ?――官僚組織の「逆ピラミッド」
若手官僚たちの嘆き/意外な組織構造/人事担当も疑問を持ちながら……/長期的なキャリアビジョンを持てない
13 民間人がなぜこんなに!?
霞が関の民間出身者 その数はなんと……/どうしてこんなに増加?/どの企業がどんな省庁に……/なぜこんなに民間から……/民間人は霞が関をどう見た?/「紙文化」に違和感
14 霞が関文学って何?
霞が関文学とは/霞が関文学だけでなく、隠語も!!/霞が関の隠語、実は省庁別にたくさんあった!/隠語の起源は、昔から……/「霞が関文学」が政治にも/【クイズ官僚用語】解答
15 改革は“外目線”――霞が関を飛び出す若手官僚たち
「第3の居場所」を作る/厚生労働のすべてがここに!/コミュニケーション改革を!
■第4部 コロナと闘う官僚たち
16 失われた“特別な時間”
誰もいない学校/突然の表明、ざわめく省内/休校は本来誰が判断?/方針決定の経緯は?/対応に追われた現場は
17 今どき官僚もテレワークですが……
青空の下、大臣記者会見/庁舎の窓は全開/手ごわいのがテレワーク/こうした事態、想定していた?/【理由1】ぜい弱なオンライン環境/【由2】国会議員への対応/霞が関だけの課題ではない
18 コロナと闘う公務員たち――厚労省“コロナ本部” 現場の保健所は
24時間態勢「コロナ本部」の官僚たち/メールの宛先は900人超え/厚労省では体調崩す妊娠中の職員も/現場の保健所は「悲鳴をあげています」/保健所の実情に詳しい専門家は
あとがき 

しかし、本書を立体的にしているのは、そこまで若手が疲弊しきっている霞が関にも、ちゃんと「働かないおじさん」がいるということにも目を向けていることです。

もともと終戦直後には純粋ジョブ型の職階制でスタートしたはずの国家公務員制度が、70年後のいまではどの企業よりも硬直的なメンバーシップ型の泥沼にはまり込んでしまっていることでしょう。その人事の硬直性の原因が実は仕事の極限までの柔軟性にあることも、民間企業の宿痾と同じです。

まあ、国会や政治家相手に究極の柔軟性を発揮してきたがゆえにここまで生き残ってきたという面もあるのでしょうが、そのツケが今の若手に降り注いでいるとすれば、その矛盾を解きほぐすには、まずなによりも本来の公務員制度の原点に立ち返って、もっと仕事のやり方を硬直的にしていくしかないように思います。

 

労働組合の資格審査@『中央労働時報』6月号

Ima 『中央労働時報』6月号に「労働組合の資格審査」を寄稿しました。グランティア事件の評釈です。

といっても、そりゃなんじゃいな、という反応が大部分でしょう。これは東京都労働委員会令和2年6月16日決定ので、不当労働行為の救済を申し立てた労働組合が労働組合法第2条及び第5条第2項の規定に適合せず、労働組合法上の救済を受ける資格を有するものと認めることができないとして、申立てを却下した事案です。

というと、ああ、もしかしてあれか、と、ぴんと来た人もいるかも知れません。

そうです、これは不当労働行為事件でありながら、会社側の名前なんかどうでも良くて、申し立て組合の名前が大事なんです。

その名は、人呼んで、遊星仮面、じゃなくって、首都圏青年ユニオン連合会。

あの、首都圏青年ユニオンとやたらに紛らわしい妙にいろんなところに出没する団体です。

 グランティア事件は、不当労働行為の救済を申し立てた労働組合が労働組合法第2条及び第5条第2項の規定に適合せず、労働組合法上の救済を受ける資格を有するものと認めることができないとして、申立てを却下した事案である。通常、労働組合の資格審査は形式的なものと考えられており、規約が労組法の規定に適合しない場合は補正を勧告して資格を認める運用がされていることを考えると、本件の判断は注目に値する。形式的な規約の改正では済まないほど労働組合の資格に欠けると判断された労働組合とはいかなるものであったのであろうか。

一 事案 
二 決定要旨
三 検討
1 労働組合の資格審査
2 労働組合の社会的機能
付 佐田事件について

 

2021年6月13日 (日)

『労働弁護士「宮里邦雄」55年の軌跡』

24142f60e7e6f0e3bf918796a1e06c30 『労働弁護士「宮里邦雄」55年の軌跡』(論創社)をお送りいただきました。宮里さんといえば労働弁護士の第一人者ですが、その55年にわたる労働弁護士人生を中心にしながら、沖縄の宮古島で育った若き日の思い出などもちりばめられた『ザッツ宮里邦雄』というべき本です。

https://ronso.co.jp/book/%e5%8a%b4%e5%83%8d%e5%bc%81%e8%ad%b7%e5%a3%ab%e3%80%8c%e5%ae%ae%e9%87%8c%e9%82%a6%e9%9b%84%e3%80%8d55%e5%b9%b4%e3%81%ae%e8%bb%8c%e8%b7%a1/

第一部のインタビューがメインですが、インタビュワは全国ユニオンの高井晃、労弁の棗一郎、元連合の高橋均の3人で、す。いきなり冒頭の宮里さんが初めて手掛けた不当労働行為事件の日本教育新聞社事件で、救済命令を勝ち取り、現職復帰を実現するなど完全勝利の事件であったが、復職後職場で孤立し、自殺に追い込まれてしまったというほろ苦い思い出が語られます。

はじめに
第Ⅰ部 インタビューで聞く55年
1 労働弁護士としての遥かなる道
1 最初の不当労働行為事件
2 昭和四〇(一九六五)年代から昭和六〇(一九八五)年代の事件
3 労働運動の内容も時代と共に変化
(1) 一九七〇年代の労働事件
(2) 一九七〇年代の思い出に残る重大事件
(3) 一九八五(昭和六〇)年代以降の労働事件 
(4) 平成(一九八九年)以降現在まで
2 長いたたかいだった「国労問題」
1 マル生反対闘争
2 「スト権スト」と二〇二億円の損害賠償請求
3 国鉄民営分割化と国労への攻撃
3 労働弁護士として生きて
1 弁護士として労働事件に携わる
2 労働弁護士の未来︱︱棗弁護士と労働弁護士の未来を語る
(1) 雇用によらない就業者の労働者性
(2) 新しい就労形態が拡大する中での労働者の保護をどのように図っていくか
(3) 雇用を軽視する制度を認めてはならない
(4) コロナ禍での雇用をどう守っていくべきか
(5) 派遣法とフリーランスという新しい働き方 
(6) 八〇歳を超えても第一線で戦える秘訣
(7) これからの労働運動に求められること
第Ⅱ部 裁判をめぐる随筆
1 ウチナーからヤマトへ
2 沖縄関係訴訟への取り組み
3 最高裁判所弁論(その1)――新国立劇場運営財団事件
4 最高裁判所弁論(その2)――長澤運輸事件
5 わが「労弁」の記
6 ロースクールで「法曹倫理」の講義を担当して
7 強気と弱気――依頼人と弁護士
8 「権利の認知度」と「権利教育」
9 「賃金と貧困」について考える
10 上野裁判の思い出
(1) 提訴とその効果
(2) 広まる支援の輪
(3) 判決の大きな意義
(4) パワハラ訴訟の先駆け
第Ⅲ部 折々の記
1 「自分史」を書く?
2 わがふるさとを語る︱︱沖縄・宮古島
3 ふるさとの味︱︱「ラフテー」は豚肉料理の王様
4 正月――子供の頃の思い出
5 私の幼年時代︱︱シュークリームの甘い思い出
6 蝉しぐれ
7 わが趣味︱︱クラシック音楽
8 映画と名曲喫茶
9 『刑事』(イタリア映画)とラストシーン
10 『チャップリンとヒトラー』を読む
11 忘れ得ぬ酒
12 あの頃、これまで、そしてこれから
13 近況三題
14 近況つれづれ
15 「老兵は死なず、まだ前線にあり」
16 散歩と断捨離 
あとがき
著作一覧  

第Ⅱ部には最高裁における弁論のスクリプトも二つ収録されていて、なかなかの決めの名台詞が載っています。

長澤運輸事件の名台詞はこれです。

・・・「存在するものは合理的である」とはかのドイツの哲学者フリードリッヒ・ヘーゲルのの有名な言葉でありますが、原判決は、「賃金格差は存在する。存在するがゆえに『合理的である』」というのでしょうか。・・・

社会的に広く存在する事実があっても、そしてたとえそれが社会的に容認されているとしても、それが法に照らして許されるかどうかを判断するのが司法の使命ではないでしょうか。・・・

思わず傍聴席から「いよッ、日本一!」と掛け声がかかりそうな名台詞ですが、残念ながら最高裁判事の心を動かすには至らなかったようです。

 

 

 

 

 

 

 

2021年6月12日 (土)

『季刊労働法』2021年夏号(273号)

273_h1212x300 来週刊行される『季刊労働法』2021年夏号(273号)の内容が、労働開発研究会HPにアップされています。

https://www.roudou-kk.co.jp/books/quarterly/9499/

特集:最高裁5判決とパート有期法8条
夏号では、昨年10月の最高裁5判決とパート有期法8条を特集します。研究者による鼎談、論稿に加え、労使の弁護士、そして労使団体がどう今後を展望するか。近未来の針路を示す内容です。

鼎談・最高裁5判決とパート有期法8条 早稲田大学教授(司会) 島田 陽一・東京大学准教授 神吉 知郁子・明治大学法科大学院教授 野川 忍
有期・パート労働者の均衡待遇を考える―2020年最高裁5判決/パート・有期法の施行を受けて― 同志社大学教授 土田 道夫
労契法20条最高裁5判決の評価と労使への影響~本当に格差是正につながるのか? 新法施行による均等均衡待遇実現の行方 弁護士 棗 一郎
最高裁5判決、パート・有期法8条の意義と課題―使用者側弁護士の立場から 弁護士 向井 蘭
旧労働契約法第20条に関する最高裁判決と労働組合の取り組み 日本労働組合総連合会労働法制局次長 菅村 裕子
均等・均衡規定(同一労働同一賃金)への対応―使用者側の立場から― 一般社団法人日本経済団体連合会 労働法制本部長 鈴木 重也 

さすがに労働法の専門誌であって、旧労契法20条の最高裁5判決と、働き方改革によるパー有法8条はきちんと分けていますし、同一労働同一賃金というミスリーディングな表現は鈴木さんのタイトルの中にカッコ書きで出てくるだけです。

●第2特集では、米英独仏などを対象に、男女同一賃金、性差別禁止の規定、妊娠出産の取り扱い、セクハラに重点を置きつつ、その研究を踏まえて、日本の法政策のあるべき姿を探求します。 

本特集「男女雇用平等法制の再検討」の趣旨 一橋大学特任教授 中窪 裕也
アメリカにおける男女雇用平等法理の展開―ジリアン・トーマス氏の著書を手がかりとして 一橋大学特任教授 中窪 裕也
イギリスにおける「性」関連差別の禁止―「性」差別の概念整理のために 久留米大学教授 龔 敏
フランスにおける男女間の職業的平等法制の構造と展開 九州大学名誉教授 野田 進
ドイツにおける男女賃金格差是正の法理―賃金透明化法の制定までの展開と残された課題― 学習院大学教授 橋本 陽子
性差別禁止とライフコース―スウェーデン法を中心とする比較法的検討 慶應義塾大学教授 両角 道代
中国における男女雇用平等法の展開と課題 中国華東政法大学講師 鄒 庭雲
間接差別、ポジティブ・アクション、セクシュアル・ハラスメントの明確化に向けての一試論 上智大学教授 富永 晃一 

それ以外の記事は以下の通りですが、

■論説■
従業員代表制の常設化と労働組合機能(下)北海道大学名誉教授 道幸 哲也
船員の働き方改革と船員関連法改正―労働時間と良好な海上労働環境の保持に向けた取り組みを中心に 日本大学教授 南 健悟

■イギリス労働法研究会 第36回■
18世紀北アメリカにおける黒人奴隷制の展開(1)―アメリカ独立革命が奴隷制に与えた影響と深南部における奴隷制の維持・拡大― 駒澤大学准教授 向田 正巳

■労働法の立法学 第61回■
労働者協同組合のパラドックス 労働政策研究・研修機構労働政策研究所長 濱口 桂一郎

■判例研究■
無期転換申込権発生前の担当業務移管に伴う雇止めの有効性 バンダイ事件(東京地判令和2年3月6日労経速2423号10頁)弁護士 千野 博之

■重要労働判例解説■
学部廃止に伴う大学教員に対する整理解雇の相当性 学校法人奈良学園事件・奈良地判令2・7・21労判1231号56頁 日本大学教授 大山 盛義
偽装請負と労働者派遣法の労働契約申込みみなし制度適用の有無 日本貨物検数協会(日興サービス)事件・名古屋地判令2・7・20労判1228号33頁 日本大学法科大学院非常勤講師 小宮 文人

わたくしの連載は、昨年成立した労働者協同組合法について、過去に遡っていろいろと突っついています。

1 労働者協同組合とは何か?
2 民法上の組合
3 企業組合
4 失業対策事業の終息の中から
5 生協からワーコレへ
6 労働者協同組合法案の有為転変
7 2010年の法案
8 労働者協同組合法の成立とパラドックス
9 労協組合員の労働者性
10 労働者協同組合の悪用とその是正

 

 

 

 

ロングセラーを読む@産経新聞

131039145988913400963_20210612085701 産経新聞の「ロングセラーを読む」に、拙著『新しい労働社会』が取り上げられています。

https://www.sankei.com/article/20210612-4P24ACRHSVNI5BWHPU2DS7LHJU/

新型コロナウイルス禍によるテレワーク急増で社員の業績評価が難しくなる中、今こそ日本の雇用システムを欧米流の職務(ジョブ)に基づく制度に転換すべきだ-。昨年来、経済メディアを中心に大ブームとなっている「ジョブ型雇用」導入論。日本企業が抱える長時間労働や低い生産性など諸問題の解決策と期待されているが、この流行語の「原典」をひもといてみれば、そう単純な話ではないことが分かる。

本書は「ジョブ型」の名付け親かつ労働政策研究の第一人者として知られる濱口桂一郎氏が、日本型雇用システムの特質と日本社会との関係についてクリアに整理する。平成21年の刊行以来、12刷約4万部を数え、雇用という視点からの卓抜な日本社会論としても読み継がれている。・・・・・

磨井慎吾記者は、昨年日経を始めとするおかしなジョブ型記事の氾濫する中で、私のインタビュー記事を載せてくれた記者ですが、

https://www.sankei.com/article/20201014-7YESORJN7FMV5JCL2V543K6XPA/(間違いだらけの「ジョブ型」議論、成果主義ではない…第一人者・濱口桂一郎氏が喝!)

改めてこうして本書を紹介していただきありがたいです。

実は、今年9月にも本書をさらに発展させた『ジョブ型雇用社会とは何か?』(仮題)を同じ岩波新書から刊行する予定ですので、その節にはお買い求めいただければ幸いです。

 

仁田道夫・中村圭介・野川忍編『労働組合の基礎』

08557 仁田道夫・中村圭介・野川忍編『労働組合の基礎 働く人の未来をつくる』(日本評論社)を、執筆者の一人であるとともに、むしろ本書のプランナーであるUAゼンセンの松井健さんよりいただきました。ありがとうございます。

https://www.nippyo.co.jp/shop/book/8557.html

労働者が分断され疎外感を深める今日、労働組合の未来を語る意義は大きい。法学、経済学、社会学の視点から幅広くわかりやすく解説。

と、版元のHPにはそっけなく紹介してありますが、本書はUAゼンセンの機関誌『コンパス』に連載されたもので、企画発案は松井さんです。

中身は下の方にコピペしておきますが、まさに労働組合の歴史から現状を、様々な分野ごとに解説した本で、かつてなら山のように積まれていましたが、最近はあんまり目にすることもなくなった本ですね。

JILPTからも前浦、山本、西村といった若手が執筆していますが、でも本書の中で一番読みでのあるのは仁田さんによる労働運動史戦前編、戦後編の計60ページ弱でしょう。

この部分で、きちんと伝わってほしいのは、終戦直後の労働運動が企業別組合として進んでいく過程において、とりわけ戦前来の運動家が中心の総同盟は欧米型の産業別組合化を志向し、企業別組合に疑問を感じながらも、それに流されていったこと、これに対して共産党系の産別会議はむしろ企業別、むしろ工場別の組織化を志向していたことです。この点は、今でも全く逆に理解した人がいるので(例えば本ブログでも何回か紹介した宮前忠夫『企業別組合は日本の「トロイの木馬」』など)、強調しておく必要があるでしょう。

もっとも、理屈からすれば、産別組合が強大になりすぎて伝動ベルトを踏み外して共産党の指示通りに動かない恐れが生じるよりも(ソ連でも中国でも初期には労働組合主義者が粛清されています)、個々の工場レベルを直接コントロールした方がいいので、別に不思議でもないのですが。そして、その共産党による引き回しに反発して生まれた民主化同盟が、結果的には産別会議から共産党を追い出した企業別組合主義に純化していくことにより、戦後日本の企業別組合全盛の在り方を生み出していくという歴史の皮肉。

終戦直後のこのスタンスの違いがどこに現れてくるかというと、前に桝本純さんのオーラルヒストリーの記事の時に書いたことですが、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2021/02/post-ba9276.html(総同盟的なるものと民同的なるもの@桝本純オーラル・ヒストリー)

・・・・その中でも、ややもすると多くの人が勘違いをしがちなところが、労働運動の路線対立を右派対左派でとらえてしまいがちなところでしょう。それは一見激烈だけど表層の対立に過ぎず、根っこは企業別組合中心主義とそれを超えた産別・ナショナルセンターの権限が強いかで、総評も同盟も中に両方の傾向がある。そしてそれは、戦前来の総同盟の流れと、戦後産別民主化同盟の流れに対応すると、
そして、実は企業別組合的性格は総評の方が強かったんですね。何しろ国労も全逓も全電通もみんな超巨大国営企業の企業別組合で、やたら過激に見えるその「闘争」もすべて、藤林敬三の言うところの「家庭争議」。これらはみんないわゆる「民同左派」なわけです。内弁慶体質。
一方、同盟に行った「民同右派」も、政治イデオロギーの向きが違うだけで、体質は全く同じ。塩路天皇みたいに企業内で力をふるう、その振るい方が違うだけ。
一方、旧総同盟の系譜をひく流れは、総評では全国金属だけど、初期の高野実が追放されたのちは、これはもうほんとに周辺的な存在。
同盟では総同盟派がそれなりの存在感をもち、企業別組合を超えた運動体質はそれなりに残っており(ここが、桝本さんが自らの同盟時代の経験として語るところですが)、とはいえやはり民同右派(「全労」)が大きな力を持っていた。
で、桝本さんの言いたいのは、連合結成は決して同盟の勝利なんかではなく、実は民同的なるものの勝利であり、総同盟的なるものの敗北なんだということ。
そして、やたらにイデオロギーで喧嘩していた全国金属と全金同盟がJAMとして元のさやに納まったら、実は似たような体質であったことがお互いに分かった云々という笑い話みたいなことがおこるわけです。

本書の目次は以下の通りです。

第1章 労働運動の歴史
1 日本における労働運動の形成1――戦前編――     ……仁田 道夫/東京大学名誉教授
2 日本における労働運動の形成2――戦後編――     ……仁田 道夫/東京大学名誉教授
第2章 労働組合と法――労働組合法      ……野川 忍/明治大学法科大学院教授
第3章 労働組合の組織と運営
1 労働組合の組織と運営    ……前浦 穂高/労働政策研究・研修機構 副主任研究員
2 組織拡大    ……中村 圭介/法政大学大学院連帯社会インスティテュート教授
3 労働者の自主福祉活動    ……栗本 昭/連帯社会研究交流センター・特別参与
第4章 雇用・労働条件闘争
1 団体交渉と労使協議    ……久本 憲夫/京都橘大学経営学部教授・京都大学名誉教授
2 労働争議……松井 健/UAゼンセン副書記長
3 賃金交渉……李 旼珍/立教大学社会学部教授
4 最低賃金    ……玉井 金五/大阪市立大学名誉教授、愛知学院大学客員教授
5 労働時間短縮……松井 健/UAゼンセン副書記長
6 労働安全衛生    ……水島 郁子/大阪大学大学院高等司法研究科教授
7 女性と労働運動……首藤 若菜/立教大学経済学部教授
8 雇用形態間格差是正    ……神吉 知郁子/東京大学大学院法学政治学研究科准教授
9 企業規模間格差是正    ……青木 宏之/香川大学経済学部教授
第5章 政策闘争
1 労働組合の政策・制度活動……逢見 直人/日本労働組合総連合会長代行
2 労働組合の政治活動    ……中北 浩爾/一橋大学大学院社会学研究科教授
第6章 世界の労働運動
1 国際労働運動の歴史と展開……熊谷 謙一/日本ILO協議会企画委員、国際労働財団講師
2 ドイツの労働組合と労使関係    ……山本 陽大/労働政策研究・研修機構 副主任研究員
3 イギリスの労働組合と労使関係    ……龔 敏/久留米大学法学部教授
4 スウェーデンの労働組合と労使関係    ……西村 純/労働政策研究・研修機構 副主任研究員
5 韓国の労働組合と労使関係    ……禹 宗杬/埼玉大学人文社会科学研究科教授 

 

2021年6月 8日 (火)

職階制で始まった国家公務員法が全面的年齢差別法になった!?@WEB労政時報

WEB労政時報に「職階制で始まった国家公務員法が全面的年齢差別法になった!?」を寄稿しました。

https://www.rosei.jp/readers/login.php

 去る4月13日に国会に提出された国家公務員法等の一部改正法案は、6月4日に参議院で可決され成立しましたが、改めてその条文を読み直してみると、今まで少なくとも法律条文の表面には出さずに事実上やっていた年齢に基づく人事管理を、包み隠すことなくもろに表出してしまっているというのが第一印象です。
 国家公務員法は終戦直後の1947年にGHQの強い影響力の下で制定された法律ですが、その時の基本哲学はほぼ完全なジョブ型でした。今や法律の条文上からも消えてしまった「職階制」というシステムは、職種ごとの欠員補充によって採用、昇任し、職級明細書に基づいて徹底した職務給を支給するという制度のはずでした。しかし、根強い日本型のメンバーシップ感覚に・・・・・・・・ 

 

『財界』6月23日号

100000009003441115_10204 先日、TM研究会なるところに呼ばれてジョブ型雇用について喋ったのですが、そのごく簡単な紹介記事の続きが『財界』という雑誌の2021年6/23号に載ってます。

https://www.zaikai.jp/magazines/detail/251

TMトピックスNo.245 TM研究会・研究交流会より
濱口桂一郎・労働政策研究・研修機構労働政策研究所長②
採用や人事制度の実態、判例などをひき、安易なジョブ型導入論に違和感を訴える 

 

 

浅見和彦『労使関係論とはなにか』

584250 浅見和彦さんの『労使関係論とはなにか イギリスにおける諸潮流と論争』(旬報社)をお送りいただきました。ありがとうございます。

浅見さんは、別に警察庁刑事局長の弟とかではなく、運輸一般の専従書記を経て労使関係論の研究者になった組合運動の経験を持つ研究者です。

https://www.junposha.com/book/b584250.html

イギリスにおける「労使関係論の起源」である「労働組合論」を出発点として、
「労使関係論とはなにか」をあらためて問う。
新自由主義的な労働政策や使用者の人事労務管理の個別化の進展により労働組合の組織率が低下しているなか、今後の労使のあり方に示唆を与える。 

よく似たタイトルの木下武男『労働組合とは何か』(岩波新書)とはいろんな意味で対照的ですが、なにより同書の紹介時に述べた「半世紀前で止まっている」のその後の動向を、労使関係論という鏡に映った姿を通じて詳しく紹介し、イギリスという国の労使関係というものの複雑さを伝えようとしています。

はじめに
第1章 労使関係論の起源――労働組合論としての出発(一九世紀末~一九五〇年代)
第2章 労使関係論の形成――プルーラリズムの黄金期(一九六〇年代)
第3章 労使関係論の欠陥――法的規制論と人的資源管理論の台頭(一九八〇年代)
第4章 労使関係論の刷新 Ⅰ――マルクス主義派の挑戦と分岐(一九七〇年代と九〇年代)
第5章 労使関係論の刷新 Ⅱ――ネオ・プルーラリズムとマテリアリズム(二〇〇〇年代以降)
終 章 要約と含意
あとがき 

そして、昨年海老原さんとの共著で出した『働き方改革の世界史』で取り上げたイギリスの3冊、ウェッブ夫妻と、コールと、フランダースが、より詳しいイギリス労使関係論史の中にどのように位置付けられるかがよく分かる本でもあります。

私が内心うれしく思ったのは、本書で第1章題2節で取り上げているG.D.H.コールです。節タイトルに「ギルド社会主義論から労使パートナーシップ論へ」とあるように、私が上記拙著で敢えて取り上げた労使パートナーシップ論を、後期コールの思想としてきちんと位置付けています。私の知る限り、コールをそのように位置付けた議論はほとんどなかったように思います。

ちなみに、浅見さんはp70の注で、

・・・なお、濱口は和田訳のこのコールの本は、「それほど話題にもなりませんでした」(113頁)と書いているが、和田自身は、「[社会政策論の重鎮の]大河内[一男]さんが『コール以上にコール的な和田さんの翻訳だ』と新聞で書いてくれた。そんなことで・・・コールの本はよく売れました」と述べている・・・

と書いておられますが、大河内一男が新聞の書評で取り上げてくれたのと、労使関係のアカデミックサークルでコールを労使パートナーシップ論の先駆者として位置付けられたというのとは別の話で、少なくとも研究者の中ではかなりの程度忘れられた本になっていたのではないでしょうか。

実際和田耕作さんは若き日にはマルクス主義者でしたが、戦後ソ連に抑留され、その後フェビアン協会から民社党の議員として活躍した方であり、「よく売れた」のもそちらの関係であったように思われます。

 

 

 

2021年6月 7日 (月)

岸健二編『業界と職種がわかる本 ’23年版』

10795_1621217302 毎年恒例の、岸健二編『業界と職種がわかる本 ’23年版』(成美堂出版)をお送りいただきました。

http://www.seibidoshuppan.co.jp/product/9784415233048/

これから就職活動をする学生のために、複雑な業界や職種を11業種・8職種にまとめて、業界の現状、仕事内容など詳しい情報を掲載し、具体的にどのような就職活動が効果的か紹介。
実際の就職活動に役立つ就職活動シミュレーションや、最新の採用動向をデータとともに掲載。
自分に合った業界・職種を見つけ就職活動に臨む準備ができる。

例によって、岸健二さんの最近のエッセイを「労働あ・ら・かると」から。

https://www.chosakai.co.jp/information/alacarte/26055/(「人を雇ったことのない奴に良い職業紹介ができるのか!」という苦言)

・・・「いい仕事をしているな。」と思える職業紹介事業者は、新卒を採用してから従事させるまでの間にも、その後も、取扱職種と業界についての徹底した教育研修を行っています。またコスト捻出に苦労されながらではありますが、紹介人材に対しても「リカレント教育」「ブラッシュアップ研修」の実施を行う事例も見かけます。
 「多様な働き方」が急速に普及する中、事業者が紹介する「雇用」の中身も多様化しています。民間の職業紹介事業者は、職業安定法をはじめとした労働法の知識を覚えるだけでなく、「紹介する職場の状況情報」を解りやすく適切に伝えることができる知見を吸収してはじめて、ハローワーク(公共職業安定所)の機能と共存・補完し合いながら、社会の労働力需給がより円滑になるよう機能できるように思います。
 その「仲介の付加価値」を忘れてしまうと、まま批判を受ける「右から左」に履歴書を回すだけの紹介業になってしまい、それではWeb上に急増している「プラットホーム型」の求人情報提供による人材マッチングに淘汰されてしまうのではないかと危惧する気持ちを喚起する先輩の指摘でした。 

2021年6月 6日 (日)

セレブバイトと派遣法

なにやら主婦の通訳がセレブバイトだったとかいう話が炎上しているようですが、実のところ、1985年に労働者派遣法ができた時に、相当程度虚構でありながら表面的に「専門業務」のポジティブリストだと言ってごまかしていた時の素材の一つが、この通訳とか秘書といったいかにも女性職っぽい専門職であったのですね。そして、表面のロジックでは専門職だから派遣でいいのだという議論の裏に、暗黙の裡に家計補助的な女性の仕事だから派遣でいいのだという隠れたロジックが潜んでいて、同じ年に男女均等法ができて女性の活躍という雰囲気がごくごくわずかながらちらりと顔を出しながら社会の大勢はなおほぼ完全に女性の役割はアシスタント役という風潮がどっぷりあるという時代の感覚の中で、何となくみんなを納得させていたわけです。

もちろん、当時も派遣の大部分は一般事務の普通のOLだったのであって、それをファイリングという職業分類表にもない専門業務をでっちあげてごまかしたのであって、セレブバイト云々はしょせんごく一部の話に過ぎないのですが、それでもマスコミが報道する際にはほぼ必ず、派遣は通訳や秘書のような専門業務であって云々と書かれていたのも確かです。この実態と言説のずれ自体が、この時期の意識のありようをよく示しているとも思えます。

このあたり、労働市場構造と社会のジェンダー構造の絡み合いと時代の推移によるその変貌の全てを踏まえながら議論しないと、ただ気に入らないのを殴り付けるだけの議論になりがちなのですが、うまく論じれば過去数十年くらいの日本社会の動きというものが浮かび上がってくる素材でもあります。

(参考)

派遣法の生みの親ともいわれる故高梨昌氏が、後年『大原社会問題研究所雑誌』に寄せた文章で、その辺の消息をこう語っています。

https://oisr-org.ws.hosei.ac.jp/images/oz/contents/604-01.pdf

・・・派遣法の当初に試案として提案した業務は13業務で,これらの業務は専門的職業別労働市場として外部労働市場を形成しており,終身雇用・年功制で形成されている企業内労働市場とは競合しない市場として棲み分けたことを指摘したい。つまり,外部と内部のそれぞれの労働市場は相互に交流する重ね合わさった市場ではないから,いわゆる「常用代替」は起きえないことに着目したことが,ポジティブリスト方式を採用するに当たって専門的知識・経験を必要とする業務に限定した理由である。・・・

もともと専門職の業務は,相対的に高賃金の市場を形成しており,したがって派遣会社は,高付加価値の業務であるため収益率も高く,良好かつ健全な派遣市場の形成に役立つと考え,ポジティブリスト方式を提案し,かつ年功制に立つ長期安定的雇用システムの正社員の労働市場とは棲み分けているから派遣期間制限は提案しなかったのである。・・・

ところで,「登録型派遣」を事務処理派遣で認めた理由について触れなければならない。それは,これらの専門的業務に従事しているのは専ら女子労働者であることに着目したからである。労働者派遣法の立法化問題が審議されていた当時は,いま一つ男女雇用機会均等法の立法化が重要な労働政策の課題として審議されていた。均等法の最大の争点の一つは,女子労働者の職業生活と家庭生活との関連のつけ方にあった。・・・

派遣システムは,中途採用市場での求人と求職のマッチングに役立つ需給システムであると考えてきた私は,派遣に当って「登録型」を認める必要があると考えた。その理由は,次の事実に注目したからである。求職者のニーズは,フルタイマーとして正社員と同様の勤務形態を望むものは少数派で,自己のライフスタイルや家庭生活との調和を考えて働きたいという女性が多数派であった。
また,専門的知識と経験を必要とする専門職への求人には,通訳や速記など単発的なアドホックな求人があること。また書記的事務でも,複数の者が交替しても仕事が処理できる性質の仕事であることなど,必ずしも「常用雇用形態」である必要性は少ないことに注目したからである。
労働者派遣法では,私は,こうした女子労働者の職業選択行動を念頭において,専門的知識と経験を必要とする業務に限定するポジティブリスト方式の採用と,これに登録型派遣制度をとり入れた派遣法案を労働大臣に建議したのである。・・・

ちなみに、同じ雑誌の同じ号で、私はこう論じておりました。

https://oisr-org.ws.hosei.ac.jp/images/oz/contents/604-03.pdf

・・・そこで,労働者派遣法においても「労働者の職業生活の全期間にわたるその能力の有効な発揮及びその雇用の安定に資すると認められる雇用慣行を考慮する」(第25条)ことが求められるとともに,そのような雇用慣行に影響を及ぼさないような業務,具体的には専門的な知識経験を要する業務と特別の雇用管理が行われている業務に限って労働者派遣事業を認めるという理屈が構築された。専門的な知識経験を要する業務であれば,日本的雇用慣行に縛られず個人の専門能力によって労働市場を泳ぎ渡っていけるであろうし,そもそも日本的雇用慣行の外側の外部労働市場にいるような人々は派遣就労でもかまわないということであろう。しかしながらそれを「業務」という切り口で制度設計することにはかなり無理があった。日本のように個々人の職務が不明確で,会社の命ずることが即ち職務であるような在り方が一般的な社会において,個々の作業を「業務」で切り分けてこちらは認めてこちらは禁止というのは,職場の現実からはかなり無理のある仕組みであったように思われる。
その無理が特に露呈していたのが「ファイリング」なる専門業務であった。当時の産業分類にも職業分類にも,ファイリング業務なるものは見当たらないし,当時の事務系職場において,ファイリング業務が専門的な知識経験を要する業務として特定の専門職員によって遂行されていたという実態にもなかった。実態から言えば,既に事務処理請負業として行われていた労働者派遣事業のかなりの部分が,当時オフィスレディといわれていた事務系職場の女性労働者の行う「一般事務」であったにも拘わらず,それでは上記の対象業務限定の理屈付けに合致しないので,現実社会に存在しない「ファイリング」なる独立の業務を法令上創出したのだと理解するのが,もっとも事実に即しているように思われる。これは,実態は一般事務であるものを「ファイリング」などと称して対象業務にしたのが間違っていたという意味ではない。派遣事業の対象にするべき一般事務を対象業務にできないような無理のある業務限定基準を設けたことに,その原因があるのである。この矛盾は,1999年改正でそれまでのポジティブリスト方式からネガティブリスト方式に移行したことで,一応は決着したということもできるが,今なお法律上は旧ポジティブリスト業務とそれ以外の業務では規制に様々な差がつけられている。・・・

(追記)

ちなみに、この後に及んで今ごろ、「新たな可能性、「プロフェッショナル派遣」は日本を救えるか?」とか寝ぼけたことをいっている向きもあるようですけど、いやいや、そもそも36年前に派遣法作ったときに、「派遣はプロフェッショナル」という触れ込みだったんですよ。上っ面だけね。

https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2106/11/news022.html

2021年6月 5日 (土)

SAPIXでは『働く女子の運命』は中3レベル

SAPIXという有名な学習塾で、「リベラル読解論述研究」なるコースがあるようで、学習指定文献をあらかじめ読んできて受講しろということになっているらしいのですが、その中学3年用のコースに、拙著も入っているようです。

https://www.y-sapix.com/mypage/request-for-purchase/

100000009002477082_10204_004 女性の「活用」は叫ばれて久しいのに、日本の女性はなぜ「活躍」できないのか?
>ジョブ(職務)=スキル(技能)に対して賃金を払う〈ジョブ型社会〉の欧米諸国と違い、日本社会では「社員」という名のメンバーを「入社」させ、定年退職までの長期間、どんな異動にも耐え、遠方への転勤も喜んで受ける「能力」と、企業へ忠誠を尽くす「態度」の積み重ねが査定基準になりがちだ。このような〈メンバーシップ型社会〉のもとでは、仕事がいくら出来ようとも、育児や出産の「リスク」を抱える女性は重要な業務から遠ざけられてきた。なぜそんな雇用になったのか――その答えは日本型雇用の歴史にある。
本書では、豊富な史料をもとに、当時の企業側、働く女子たち双方の肉声を多数紹介。歴史の中にこそ女子の働きづらさの本質があった! 老若男女必読の一冊。

なるほど、中3レベルの本だったんですね。

ではほかに注3レベルの本はどんなものがあるのかとみてみると、加藤陽子さんの『それでも日本は戦争を選んだ』とか、川北稔さんの「砂糖の世界史」とか、ジョージ・オーウェルの『動物農場』とか、萱野稔人さんの『死刑その哲学的考察』とか、いやいやSAPIXの中3って、結構凄いな。

 

『情況』2021年春号

61yvydholml_sx350_bo1204203200_ kiryunoさんこと服部一郎さんより、『情況』2021年春号をお送りいただきました。

http://jokyo.org/

『情況』はブント系の新左翼雑誌ですが、前にお送りいただいた号は、桝本純さんを偲ぶ記事とか、まあわたしにもかかわりのある内容のあるものですが、今回は「国防論のタブーをやぶる」とのことで、表紙にも「これは防衛省の広報誌か、それとも暴力革命の合図か?」なんて宣伝してますね。

やはり面白いのは冒頭の鼎談(久間章生×木村三浩×三上治)ですが、事実上、(そこいらのネトウヨとは根っこが違う真正右翼の)一水会代表木村三浩さんと、(自民党きってのまともな防衛族というべきか)初代防衛大臣の久間章生さんの掛け合いが、価値合理的イデオロギー人間と目的合理的リアリスト人間の噛み合わない噛み合いぶりをものの見事に浮き彫りにしていて、大変面白かったです。例の普天間基地の移設の問題についてのやりとりですが、

木村 アメリカと本気になって交渉しなきゃだめでしょ。

久間 本気で交渉してもダメだった。ダメなものはダメなんですよ。俺がやってダメだったんだから誰がやれるかって。沖縄でつい本音で言ってしまったことがあるんだよ。アメリカの兵隊沖縄に駐留させてるというのは、アメリカは安保条約というけど本気で最後まで血を流すかどうかわからんぞと。アメリカ兵が死んで初めて流す。あるいはアメリカの基地が沖縄にあれば、中国から攻撃を受けた時、そこの兵隊が一人でも二人でも死んだらアメリカはワーッと盛り上がる。

三上 じゃあ、「人質」っていうことですね。

久間 人質という言葉を使っちゃいけないけれども、これはここだけの話だけれども、人質に置いているんだと。そう思えば腹も立たんじゃろ。私は合理主義者だからそうですよ。・・・

木村 私は自主改憲、やっぱり自衛隊の国軍化しかない。外交力もつける。

久間 あなたね、そう言うけど、日本人で自分の血を流して守ろうというやつがこれから先どれだけ出てくるか。ますます減ってくるんだから。そうした時にやっぱり人質に置いとってアメリカがワッと出てきて戦うというのはありがたいと思って。・・・

木村 民族主義者の私としては認められない。それは事大主義ですよ。他力本願では国を滅ぼしますよ。

久間 民族主義者っていうのは自分たちの民族がどれくらいの力かっていうのを知った上で民族主義者になればいいんですよ。自分たちの民族だけで勝てるっていうならやればいい。勝てっこない。日本の人口はこれから減っていく。その中で沖縄を維持していくだけのパワーはない。・・・

 

 

2021年6月 4日 (金)

労働政策フォーラム「新型コロナによる女性雇用・生活への影響と支援のあり方」

来る6月25日~29日に、オンラインによる労働政策フォーラム「新型コロナによる女性雇用・生活への影響と支援のあり方」を開催します。今回は、JILPTと内閣府男女共同参画局との共同開催です。

Josei

研究報告は先日JILPTから「割愛」されて日本女子大学に行かれた周燕飛さんと東大の白波瀬さん。事例報告はもやいの大西さん、しんぐるまざあず・ふぉーらむの赤石さんに、横浜市男女共同参画協会の植野さんというメンツです。男女共同参画局の矢野さんも含めたこのそうそうたる方々のパネルディスカッションを、わたしが「コーディネート」することになっていますが、まあただの司会です。

 

 

 

 

 

木下潮音『Q&Aで読む実務に役立つ最新労働判例集』

9784889681253_1_2 木下潮音さんの『Q&Aで読む実務に役立つ最新労働判例集』(日本労務研究会)をお送りいただきました。木下さんは女性経営法曹としてその名は轟きわたっていますが、本書は『人事労務実務のQ&A』にずっと連載し続けている判例解説を本にしたもので、ここ十年の労働判例をざっと見るのに適当です。

第Ⅰ部労働契約、第Ⅱ部賃金労働条件、第Ⅲ部懲戒解雇雇止め、第Ⅳ部その他となっている中で、働き方改革もあり、やはり賃金労働時間の関係がかなり多くなっていますね。

一点、気になったのは、かなりの数の事件名が匿名化されていることです。

たとえば、No.4のN社事件はニヤクコーポレーション事件、No.8のY社事件はヤマト運輸事件、No.9のA社事件(会社分割)はエイボン・プロダクツ事件、No.22 の甲会事件は全国重症心身障害児(者)を守る会事件・・・といった具合で、一部セクハラ事件と違って実際には社名が公開されている事件なので、匿名化する意味があるのかな?と疑問を感じました。

 

公衆衛生と健康の間

昨年来のコロナ禍で、医療分野の素人としてつらつら思ったこととして、世の中の風潮やそれに合わせた政策の流れが、かつて社会問題として深刻であり、国家の重要課題として取り組んでいた感染症対策などの公衆衛生という政策観点が薄れてきて、生活習慣病などの個人の健康管理に重点を置くようになってきたことが、今回のコロナ禍にこれほどの混乱を生じさせている一つの要因ではないのだろうかということです。

一部の市民団体がワクチン接種を目の仇にしてそれをマスコミが煽ったとか、一部の政治家が保健所をやたらに統廃合しただとか、エピソード的なことがいろいろと語られますが、それら表面に現われた諸現象を奥底で駆動していたのは、公衆衛生なんていう古くさい政策思想はさっさと脱ぎ捨てて、健康増進こそが21世紀の目指すべき姿だ、というような大きなうねりだったのではないのでしょうか。

それを象徴するように、かつて厚生省には医務局と並んで公衆衛生局というのがありましたが、今の厚生労働省で医政局と並ぶのは健康局という名前です。

こういうことを考える一つのきっかけとして、このシフトのミニチュア版としての、労働の場における衛生=健康対策のシフトがあります。こちらはなお組織名称は労働衛生課という昔ながらの名前ですが、やはりかつては職業病対策中心だったものが、21世紀になるころから職場の健康管理なんてことが重視されるようになってきました。これは、労災補償で過労死や過労自殺といった厚生サイドでは生活習慣病やメンタルヘルスといわれるような事柄が焦点になってくるという社会風潮のシフトを反映していたのですが、さらにマクロ社会的な公衆衛生から健康管理へというシフトをも反映していたように思います。こっちもときたま、アスベストのような古典的タイプの職業病(これはまさに塵肺の一種)が飛び出してきて、釘を刺すわけですが。

人口の高齢化や生活水準の高度化などで、古典的な公衆衛生の課題が切実さを感じられなくなり、人員や予算もあまり付かなくなり、代わって個人の健康増進が政策の目玉として打ち出されるようになるというのは、それ自体としてはやむを得ないというか、なかなかどうしようもないうねりなのだと思いますが、ときどき感染症が蔓延して釘を刺してくれないと、なかなか向きが変わらないのかも知れません。

 

本日は近江絹糸人権争議の記念日

共同通信社の「あのころ」に、今から67年前の1954年6月4日に始まった近江絹糸の人権争議の写真が載ってます。

https://nordot.app/773320907366973440

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1954(昭和29)年6月4日、大阪の近江絹糸紡績の労働組合が「結婚の自由を認めよ」「信書を開封するな」「仏教の強制をやめろ」などの要求を掲げ無期限ストに突入した。会社は人権無視の労務管理を行っていた。世間は驚き、前近代的な企業体質に非難が集中、100日を超す争議の末に労組側の訴えが通った。

これ、わたしも解説文を寄せた『日本人の働き方100年』にも載っていた奴ですね。私の解説では:

51z7cehkyfl_sx347_bo1204203200__20210604085601 ・・・日本の労働争議史上に燦然と輝く成果を収めたのは、既に第2部に入っているが、1954年の近江絹糸争議である。人絹と人権を引っかけて、人権争議とも呼ばれたこの争議は、若い女子工員たちが宗教、外出、通信の自由を求めてストライキを決行し、封建的な経営方針を打ち破った、まさに戦後民主主義の象徴ともいうべき争議であった。・・・

近江絹糸人権争議については、今日でもなお関心が持たれ、続々と研究書が刊行されています。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2013/04/1-d614.html(『近江絹糸人権争議オーラル・ヒストリー(1)』)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2017/12/3-1dda.html(『近江絹糸人権争議オーラル・ヒストリー(3)朝倉克己オーラル・ヒストリー』)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2019/02/post-6fc2.html(本田一成『写真記録・三島由紀夫が書かなかった近江絹糸人権争議』)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2019/04/post-0181.html(その時19才の私は!!)

 

 

2021年6月 3日 (木)

『労働調査』5月号で書評

Coverpic_20210603221901 労働調査協議会の『労働調査』5月号に、小熊信さんが『働き方改革の世界史』の書評を書かれています。

https://www.rochokyo.gr.jp/articles/br2105.pdf

本書で取り上げた原典について丁寧に紹介していただいたうえで、こう述べられています。

・・・本書は、時間、空間を超え、労使関係のあり方を原典に依拠しながら紹介している。原典の著者も、研究者、組合活動家、運動家、司祭など多様である。原典の多くは、当時の労使関係の理解(である論)にとどまらず、理想とするあり方(べき論)にも踏み込んでいる。それゆえ、本書のタイトルは『働き方改革の世界史』なのだろう。ただ、第二章のタイトルに“奇跡”という文字が含まれていることに象徴的だが、労使関係はそれを取り巻く社会と無関係に形成できるものでもない。それゆえ本書では“挫折”もまた取り上げられている。
 現在、コロナ禍が引き金となり、グローバルなレベルで新しい働き方のあり方が模索されている。テレワークの浸透もグローバルなレベルで進んでいる。労使関係における比較社会的な視点はますます重要になっていくだろう。

 

JILPTブックレット『テレワーク コロナ禍における政労使の取組』

Booklet02210603 JILPTのブックレット『テレワーク コロナ禍における政労使の取組』が本日刊行されました。

https://www.jil.go.jp/publication/ippan/booklet/02.html

JILPTでは、新型コロナウイルス感染拡大の雇用・就業への影響に関する実態把握のため、組織横断的なプロジェクトチームを緊急に立ち上げ、企業・個人を対象とした連続パネル調査やその二次分析、国内外の情報収集などに取り組んできました。

本ブックレットでは、各種調査結果や情報収集の研究成果を活用して取りまとめた「テレワークの労働法政策」と「テレワークの現状と今後」という2つのレポートにより、注目の高まっているテレワークに関する現状と課題を提示しています。

このうち、前者はわたくしの講義録です。

レポート テレワークの労働法政策
(2021年3月17日に開催した東京労働大学講座特別講座「テレワークの労働法政策」の講義録を編集・整理

内容は以下の通り

はじめに 在宅勤務の急拡大

Ⅰ テレワークの概観

Ⅱ テレワークの労務管理等実態調査

Ⅲ EUのテレワーク政策

Ⅳ 諸外国のテレワーク概観

後者は荻野登、藤澤美穂、渡邊木綿子の3人によるさまざまな調査結果のまとめです。

レポート テレワークの現状と今後
新型コロナウイルス感染拡大に伴うテレワーク経験を通じ、企業労使は何を学び、どういった対応を行いながら、今後の働き方を追求しようとしているのか

内容は以下の通り

1 はじめに

2 全国的な「緊急事態宣言」を契機に急速に広がった「テレワーク」

3 揺り戻しを生じたのはなぜか

4 テレワークは今後のニューノーマルになり得るのか

5 テレワーク経験で浮かび上がった課題に対し、ウィズコロナ・ポストコロナの働き方に向けてどのような対応が行われているのか

6 テレワークの拡大に伴う不公平感や格差に対する注意喚起

7 おわりに

 

AFLはアメリカ労働総同盟の略

9_20210603114301 プレカリアートユニオンブログで、書記長の稲葉一良さんに『働き方改革の世界史』の書評をしていただきました。

https://precariatunion.hateblo.jp/entry/2021/06/03/102547

・・・本書では日本の著作を含み11冊の労使関係の古典を的確に要約し、集団的労使関係の歴史と展望について示しています。この本を読んで、あらためて労使関係のあるべきかたちについて考えを深めることができました。

とのことで、有り難い限りです。

ただ、一点だけ。例のゴンパーズのところを紹介していただく中で、

・・・本書の中でもっとも印象に残ったのは「労働は商品じゃない」という言葉の誤解についてです。会社はもっと従業員を大切にしろというニュアンスで使われがちなこの言葉ですが、みなさんは本当の意味を知っていますか?反トラスト法のいかなる規定も適用されない特殊な商品として、労働組合が労働条件を使用者と交渉する集合取引(団体交渉)が談合と見なされることのないようにAFL(アメリカン・フットボール・リーグ)初代議長ゴンパースらが立法闘争の末に勝ち取った文言なのです。自らの手でハンドルを握り、労働条件を決定していくことへの誇りに満ちた言葉です。

いやまさにそう言うことをいいたかったのですけど、AFLというのはアメリカ労働総同盟(American Federation of Labor))の略であって、アメリカン・フットボール・リーグ(American Football League)の略ではないんです。

 

 

 

 

ヨーロッパに幽霊が出る

Oliverroethig ソーシャル・ヨーロッパに、欧州UNI(サービス労組)のローティグ会長とナランホ氏による「Workplace, public space: workers organising in the age of facial recognition」という文章が載っていますが、冒頭でいきなり「ヨーロッパに幽霊が出る」と始まります。

https://socialeurope.eu/workplace-public-space-workers-organising-in-the-age-of-facial-recognition

A spectre is haunting Europe—the spectre of workers’ surveillance. Under the cover of ‘emergency’ legislation against ‘terrorism’ or to contain the Covid-19 pandemic, surveillance of working people is continually being expanded and normalised, in the workplace and on our streets.・・・ 

ヨーロッパに幽霊が出る。労働者監視という幽霊が。「テロリズム」やコロナ禍を防ぐための「緊急」立法という装いをつけて、働く人々の監視は職場や公共の場で拡大し、正常化し続けている・・・・。

彼らが懸念するのはこれが秘かに労働運動の抑圧に使われることです。

The deployment of facial recognition (or other biometric surveillance technologies) by governments or companies is an immanent threat to workplace democracy. Amid protest outside the headquarters of a company, CCTV cameras could be repurposed for union-busting. Secret algorithms, lacking a scientific basis, could be applied to mark and identify ‘troublemakers’.・・・

政府や企業による顔認証などのバイオメトリック監視技術の広がりは職場の民主主義への差し迫った脅威である。企業本社周辺の抗議運動の中に、テレビカメラは組合弾圧のために使われよう。科学的根拠なき秘密のアルゴリズムが「トラブルメーカー」をあぶり出すのに使われる。

問題意識は職場におけるAIの利用にも向かいます。

Furthermore, the use of AI in the workplace—in recruitment, appraisals and so on—as with all workplace-related rules must be subject to collective-bargaining agreements. The commission’s draft would only require self-evaluation by the companies selling these technologies, leaving the fox to guard the henhouse.・・・ 

さらに、採用、評価など、職場におけるAIの利用はすべての職場に関わるルールとともに団体協約に従わなければならない。欧州委員会の規則案はこれら技術を販売する企業による自己評価を求めているだけで、鶏小屋を守るために狐を放し飼いにしているようなものだ。

先日紹介したEUのAI規則案を、「鶏小屋に狐」という、なんだか「猫に鰹の番」みたいな言い回しで批判しています。

 

 

 

 

2021年6月 2日 (水)

大内伸哉『労働法で企業に革新を』

9784785728663 大内伸哉『労働法で企業に革新を』(商事法務)をお送りいただきました。

https://www.shojihomu.co.jp/publication?publicationId=14805487

 「新しい働き方」を実現するために奮闘する人事部員たちのストーリー

働き方改革やDXの導入等、「新しい働き方」をめぐる様々なトピックについてストーリー仕立てで解説。ニューノーマルにおける労務問題や同一労働同一賃金に関する主要な論点についても盛り込んだ、人事労務担当者・法律実務家にとって実用的な一冊。

2015年に出た『労働法で人事に新風を』の続編で、独立した戸川美智香が元の会社の顧問としてやはりいろんな人事問題に絡んでいくという小説仕立ての労働法解説書です。

正直言って、小説としても労働法の解説書としてもやや物足りなさが残るんですが、しかしそこを振り切ってしまうと、本にならないのかもしれませんね。

ちなみに、わざわざ「はしがき」で、「日本酒の取り次ぎ・販売をメインとする会社という設定なのに、イタリアワインのことばかり詳しく紹介しているのはおかしい、といった物語のディテール面での苦情は受け付けませんので、悪しからず」と断っていますが、でもやはり、小説としては日本酒のうんちくを傾けていただきたかったところです。

 

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