フォト
2024年12月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        
無料ブログはココログ

« 佐藤忍『日本の外国人労働者受け入れ政策』 | トップページ | 宮本太郎『貧困・介護・育児の政治』 »

2021年4月10日 (土)

欧州議会の企業デューディリジェンスと企業アカウンタビリティに関する欧州委員会への勧告

ちょっと分野がずれるのでしばらく気が付かなかったんですが、先月の3月10日、欧州議会が企業デューディリジェンスと企業アカウンタビリティに関する欧州委員会への勧告をいう決議を採択していました。

https://www.europarl.europa.eu/doceo/document/TA-9-2021-0073_EN.html

よく言うように、EUでは立法府たる欧州議会には立法提案権はなく、指令案を出せるのは行政府たる欧州委員会に限られます。なので、欧州議会が立法提案をしたければ、欧州委員会への勧告という形をとって、その中にこういう指令案を出せという文案をそのまま乗っけるというやり方になります。先日紹介したテレワークのつながらない権利に関する勧告も似たようなものですが、こちらは昨今注目を集めている企業のサプライチェーンに関する人権とか環境とかに関するデューディリジェンスとアカウンタビリティを義務付けようというもの。

とりわけここのところ、中国の新疆ウイグル自治区の強制労働問題をめぐって日本の企業も含めてものすごい議論が燃え上がっているのはご存じのとおりですが、それをEUの立法として確立しようという動きがあるのですね。

ためしに、上のリンク先の決議の全文に「human rights」という言葉が何回出てくるかと数えたら161回出てきました。

指令案(の案)第1条は、

Article 1

Subject matter and objective

1.  This Directive is aimed at ensuring that undertakings under its scope operating in the internal market fulfil their duty to respect human rights, the environment and good governance and do not cause or contribute to potential or actual adverse impacts on human rights, the environment and good governance through their own activities or those directly linked to their operations, products or services by a business relationship or in their value chains, and that they prevent and mitigate those adverse impacts.

本指令は、域内市場で操業する企業が人権、環境、善き統治を尊重し、それ自身の活動又は事業関係やバリューチェーンによってその創業、製品、サービスに直接リンクされた活動を通じて、人権、環境、善き統治に対して潜在的ないし現実的な悪影響をもたらし又は貢献することがなく、そのような悪影響を防止し緩和するその責務を完遂することを確保することを目的とする。

2.  This Directive lays down the value chain due diligence obligations of undertakings under its scope, namely to take all proportionate and commensurate measures and make efforts within their means to prevent adverse impacts on human rights, the environment and good governance from occurring in their value chains, and to properly address such adverse impacts when they occur. The exercise of due diligence requires undertakings to identify, assess, prevent, cease, mitigate, monitor, communicate, account for, address and remediate the potential and/or actual adverse impacts on human rights, the environment and good governance that their own activities and those of their value chains and business relationships may pose. By coordinating safeguards for the protection of human rights, the environment and good governance, those due diligence requirements are aimed at improving the functioning of the internal market.

本指令は、企業のバリューチェーンのデューディリジェンスの義務、すなわちそのバリューチェーンにおいて発生する人権、環境、善き統治への悪影響を防止し、起こった場合はかかる悪影響を適切に対処するべきあらゆる比例的な措置をとる義務を定める。デューディリジェンスの遂行は企業に対して、その活動及びバリューチェーンと事業関係がもたらす人権、環境、善き統治への潜在的又は現実的な悪影響を、明らかにし、評価し、防止し、止めさせ、緩和し、監視し、通信し、説明し、対処し、修復することを要求する。人権、環境、善き統治の保護のためのセーフガードを調整することにより、これらデューディリジェンスの要件は域内市場の機能の改善に資する。

3.  This Directive further aims to ensure that undertakings can be held accountable and liable in accordance with national law for the adverse impacts on human rights, the environment and good governance that they cause or to which they contribute in their value chain, and aims to ensure that victims have access to legal remedies.

本指令はさらに、企業がもたらし又はそのバリューチェーンにおいて貢献する人権、環境、善き統治への悪影響について国内法に従って説明責任を果たし製造責任を果たすことを確保することを目指し、その被害者が法的救済を得られるように確保することを目指す。

やや別分野とはいいながら、労働問題ともかかわってくる話でもあるので、その動向にも注意を向けておきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

« 佐藤忍『日本の外国人労働者受け入れ政策』 | トップページ | 宮本太郎『貧困・介護・育児の政治』 »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 佐藤忍『日本の外国人労働者受け入れ政策』 | トップページ | 宮本太郎『貧困・介護・育児の政治』 »