浜村彰・石田眞・毛塚勝利編著『クラウドワークの進展と社会法の近未来』
浜村彰・石田眞・毛塚勝利編著『クラウドワークの進展と社会法の近未来』(労働開発研究会)をお送りいただきました。
https://www.roudou-kk.co.jp/books/book_list/9226/
近年、ますます拡大する個人請負・業務委託やフリーランス。とりわけ急速な進展を見せているのが、ネット上のプラットフォームを介したクラウドワークという働き方である。その実態を踏まえ法的課題を展望する。
本書は大きくいって、始めと終わりに大御所による総論が配置され、その間に若手による各国法制の報告と日本の実態調査報告が挟まっているという構造です。
基本的には2018年ごろに『季刊労働法』に連載されたものが元になっていますが、「あぁ、あれは読んだよ」と思ってはいけません。デジタル化の世界はドッグイヤー。クラウドだのプラットフォームだのの様相もわずか3年で大きく変わっているからです。これはとりわけ若手研究者たちによる各国の状況報告に顕著です。
どれも、(おそらく設定された刊行日との関係で締め切りぎりぎりまで事態の推移を追いかけながら書いたのだろうと思われますが)昨年末や今年初めの状況まで何とか盛り込もうとしています。
例えばドイツの後藤究さんは、クラウドワーカーの労働者性を逆転して認めた2020年12月の連邦労働裁判所判決を、判決文がまだ公開される前の速報記事に基づいて詳細に論じていますし、フランスの小林大祐さんはテイク・イート・イージー事件判決に加えて2020年のウーバー事件破毀院判決を詳細に紹介し、イギリスの滝原啓允さんについては彼はJILPT研究員なので政策論の動きはすでに聞いているのですが、アメリカの藤木貴史さんはカリフォルニア州のダイナメックス判決以来のてんやわんやをはじめ(自分では「アメリカ50州の動向をすべて分析したわけではない」と謙遜しながら)いろんな動向を見事に紹介していて、大変勉強になります。
『季刊労働法』で旧稿を読んだ人も、全然面目が変わっているので、ぜひ本書に目を通すべきです。
とりわけ、EUの井川志郎さんのは、この間の3年間に目まぐるしくいろんなことが立て続けに出され、全く新たな論文になっています。この分野は私も追いかけてきているところなので、井川さんが原稿を何回も書き直し書き加えてきていることが良くわかります。それでも一番最近の今年2月のプラットフォーム労働に関する労使団体への第1次協議に届かず、その直前までの欧州委の動きで原稿を確定しなければならなかったのは心残りかもしれません。
« ほぼ年刊、川口美貴『労働法〔第5版〕』 | トップページ | オーウェン・ハサリー『緊縮ノスタルジア』 »
コメント