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2021年4月11日 (日)

宮本太郎『貧困・介護・育児の政治』

22844 宮本太郎『貧困・介護・育児の政治 ベーシックアセットの福祉国家へ』(朝日選書)をお送りいただきました。

https://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=22844

広がる生活不安をコロナ禍が追い打ち、やはり福祉政策こそ根本だ。今こそ、ベーシックアセットの保障へ。
政府や自治体の政策論議に深く関わりつつ、同時に批判的な視点も貫いてきた福祉政治論の第一人者が、貧困、介護、育児をめぐる生々しい政治に分け入り、そこでの対立点を明らかにしつつ、停滞から脱却する道筋を考える。

メインタイトルとサブタイトルがやや離れている感がありました。

メインタイトルの「貧困・介護・育児の政治」は、これはもうここ30年間の福祉政治を見事な切れ味で分析していて、宮本さん自身がまさにその題材の政治過程の真っただ中にいて政策の方向付けに力を尽くしてきたことを、かくも客観的に、三つの福祉政治のイデオロギーの複雑怪奇な絡み合いによって描き出せるのか!という感嘆すべき作品になっています。

三つの福祉政治のイデオロギーとは、例外状況の社会民主主義、磁力としての新自由主義、日常的現実としての保守主義ですが、これが決していわゆる政治イデオロギーの右とか左とかと一致せず、実に奇妙な絡み合い方をするところが面白いのですね。

90年代の細川連立から自社さ政権とか、2000年代から2010年代の自公政権末期から民主党政権時代という、例外的な政治的枠組みになったときに例外的に社会民主主義的な政策(介護保険とか子供子育て新システムとか)が提起され、増税する理屈の欲しい大蔵・財務省が例外的にそれを応援するという例外的な状況下で実現するが、そのとたんに政治地図の左右に広がる磁力として新自由主義が働きだし、じわじわと掘り崩されていく。そこで、やっぱり家族が面倒見ろという日常的現実としての保守主義がじわじわと広がっていくという、過去30年間に繰り返された日本的福祉政治のパタンを、ここまで見事に抉り出した分析はなかなか他で読めません。なんといっても、書いている宮本さん自身、とりわけ過去20年間はその政治過程の真っただ中にいた究極のインサイダーでありながら、それを異星人の如き眼差しで冷静に分析しているのですから。

この三つの力のうち、とりわけ日本の福祉政治を考えるうえで重要なのは、磁力としての新自由主義でしょう。日本の新自由主義というのは決して竹中平蔵みたいな典型的イデオローグによって引っ張られてきているわけではなく、とにかく増税を憎み、減税をほめたたえる左翼方面にも極めて根強い(例の社会党の北朝鮮無税化礼賛を想起せよ)思想が根っこにあるので、例外状況で社会民主主義的な政策が実現しても、すぐにそれを掘り崩す方向に力が働いていくのでしょうね。

特に、ここは宮本さんの卓見だと思いますが、もともと財政再建のために増税したい財務当局が、なかなか増税を正当化する理屈が見当たらない中で、例外的状況で表面化してきた社会民主主義的な政策に乗っかって、この福祉政策のために増税するんだよ、だから増税に賛成してね、という戦略的行動として、例外的に金のかかる福祉政策を推進する側に回る。まあ、本音のレベルでは限りなく同床異夢に近いんでしょうが、財政再建のための増税派と福祉政策のための増税派が手をつないで、そんなこと家族で面倒見ろという保守主義を抑えて新たな政策を実現するんですが、そのとたんにその連携が崩れ、日常的現実としての保守主義と磁力としての新自由主義がムダな福祉を削りにかかるというこのサイクル。

ここは、具体的な一つ一つの事例を踏まえて論じられているので、ぜひちゃんとこの本を読んでなるほどと得心してください。

サブタイトルの方は、正直言ってあまり説得されなかった、というか、ベーシックインカムやベーシックサービスのエッジの効いた、その分危なっかしい、しかしだから魅力的である議論に比べて、そのいうところのベーシックアセットのイメージが、最後まで読んでももわもわしていてなんだかよくわからないのです。

 

 

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