『日本労働研究雑誌』2021年5月号(No.730)
『日本労働研究雑誌』2021年5月号(No.730)は「教員の職場環境」が特集です。
https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2021/05/index.html
特集:教員の職場環境
提言 教員の職場環境 広田照幸(日本大学教授)
解題 教員の職場環境 編集委員会
論文 教員の過剰労働の現状と今後の課題 大内裕和(中京大学教授)
公立学校教員の労働時間概念─労働基準法を潜脱する改正給特法の問題 髙橋哲(埼玉大学准教授)
組織開発による教員の長時間労働是正の取り組み─校長研修におけるチェンジエージェントの育成を通じて 町支大祐(帝京大学講師)・辻和洋(國學院大學特任助教)・中原淳(立教大学教授)・柳澤尚利(横浜市教育委員会主任指導主事)
学校は変われるか─職員室の内と外から教師の働き方を考える 内田良(名古屋大学准教授)
教員研修の現状と今後の職能開発の在り方 安藤知子(上越教育大学教授)
教員の人事考課に基づく昇給制度の運用と改定─ある自治体の労使交渉に着目して 岩月真也(同志社大学助教)
教員の職場環境の国際比較─OECD・TALISから見えてくるもの 杉浦健太郎(国立教育政策研究所総括研究官)
論文(投稿)公立小中学校教員の生活満足度を規定する要因 神林寿幸(明星大学教育学部常勤講師)
このテーマではおなじみの顔ぶれもいればそうでない方もいますが、そのうち教員の人事考課と労使交渉を論じている岩月さんについて一言。いや、中身はこの要約のとおりなんですが、
本稿は人事考課に基づく昇給制度がいかに運用され,その制度がいかに改定されたのか,何が変わったのかを明らかにする。加えて,賃金・人事制度の変化を踏まえ,教員の働き方改革に対する論点を提示した。研究方法としては労使関係論の視点から,A県における人事考課に基づく昇給制度の運用と改定をめぐる2017年の労使交渉に焦点をあてた。2017年交渉の結果,組合側の要求が一部反映し,監督職層に対する5%の付与率が撤回されたとはいえ,改定された昇給制度は,従来は3号昇給であった教員を2号昇給とし,また従来は2号昇給であった教員を1号昇給とするルールへと変貌した。労働力取引の観点からみれば,日本の教員については賃金の個別的取引が主軸であるといえる。総じて,教員の世界においても,校長や教育委員会による人事考課が個々の教員の賃金に及ぼす影響力が増大し,組合側が一定程度は抑制しているとはいえ,日本の民間組織と同様に,賃金の個別化が漸進的に進んでいる。教員の働き方改革に対する論点として,①人事考課に基づく賃金のルールをいかに形成するかについての議論,②人事考課を土台とする教員の職務の無限定性の議論,③労使関係の役割,④労労関係の議論の必要性に言及した。最後に今後の研究課題として,賃金制度の裏側にある,仕事のルールの解明の必要性を提示した。
ここではその肩書きについて。目次やタイトル下には「同志社大学助教」とありますが、最後のプロフィール欄には「2021年4月より労働政策研究・研修機構研究員」とあるように、今月からJILPTに来ています。最終校正で直せなかったのでしょうか。
ちなみに、岩月さんは昨年10月に『教員の報酬制度と労使関係――労働力取引の日米比較』(明石書店)を出しています。これはなかなかか読み応えのある本です。
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