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2021年4月

2021年4月10日 (土)

欧州議会の企業デューディリジェンスと企業アカウンタビリティに関する欧州委員会への勧告

ちょっと分野がずれるのでしばらく気が付かなかったんですが、先月の3月10日、欧州議会が企業デューディリジェンスと企業アカウンタビリティに関する欧州委員会への勧告をいう決議を採択していました。

https://www.europarl.europa.eu/doceo/document/TA-9-2021-0073_EN.html

よく言うように、EUでは立法府たる欧州議会には立法提案権はなく、指令案を出せるのは行政府たる欧州委員会に限られます。なので、欧州議会が立法提案をしたければ、欧州委員会への勧告という形をとって、その中にこういう指令案を出せという文案をそのまま乗っけるというやり方になります。先日紹介したテレワークのつながらない権利に関する勧告も似たようなものですが、こちらは昨今注目を集めている企業のサプライチェーンに関する人権とか環境とかに関するデューディリジェンスとアカウンタビリティを義務付けようというもの。

とりわけここのところ、中国の新疆ウイグル自治区の強制労働問題をめぐって日本の企業も含めてものすごい議論が燃え上がっているのはご存じのとおりですが、それをEUの立法として確立しようという動きがあるのですね。

ためしに、上のリンク先の決議の全文に「human rights」という言葉が何回出てくるかと数えたら161回出てきました。

指令案(の案)第1条は、

Article 1

Subject matter and objective

1.  This Directive is aimed at ensuring that undertakings under its scope operating in the internal market fulfil their duty to respect human rights, the environment and good governance and do not cause or contribute to potential or actual adverse impacts on human rights, the environment and good governance through their own activities or those directly linked to their operations, products or services by a business relationship or in their value chains, and that they prevent and mitigate those adverse impacts.

本指令は、域内市場で操業する企業が人権、環境、善き統治を尊重し、それ自身の活動又は事業関係やバリューチェーンによってその創業、製品、サービスに直接リンクされた活動を通じて、人権、環境、善き統治に対して潜在的ないし現実的な悪影響をもたらし又は貢献することがなく、そのような悪影響を防止し緩和するその責務を完遂することを確保することを目的とする。

2.  This Directive lays down the value chain due diligence obligations of undertakings under its scope, namely to take all proportionate and commensurate measures and make efforts within their means to prevent adverse impacts on human rights, the environment and good governance from occurring in their value chains, and to properly address such adverse impacts when they occur. The exercise of due diligence requires undertakings to identify, assess, prevent, cease, mitigate, monitor, communicate, account for, address and remediate the potential and/or actual adverse impacts on human rights, the environment and good governance that their own activities and those of their value chains and business relationships may pose. By coordinating safeguards for the protection of human rights, the environment and good governance, those due diligence requirements are aimed at improving the functioning of the internal market.

本指令は、企業のバリューチェーンのデューディリジェンスの義務、すなわちそのバリューチェーンにおいて発生する人権、環境、善き統治への悪影響を防止し、起こった場合はかかる悪影響を適切に対処するべきあらゆる比例的な措置をとる義務を定める。デューディリジェンスの遂行は企業に対して、その活動及びバリューチェーンと事業関係がもたらす人権、環境、善き統治への潜在的又は現実的な悪影響を、明らかにし、評価し、防止し、止めさせ、緩和し、監視し、通信し、説明し、対処し、修復することを要求する。人権、環境、善き統治の保護のためのセーフガードを調整することにより、これらデューディリジェンスの要件は域内市場の機能の改善に資する。

3.  This Directive further aims to ensure that undertakings can be held accountable and liable in accordance with national law for the adverse impacts on human rights, the environment and good governance that they cause or to which they contribute in their value chain, and aims to ensure that victims have access to legal remedies.

本指令はさらに、企業がもたらし又はそのバリューチェーンにおいて貢献する人権、環境、善き統治への悪影響について国内法に従って説明責任を果たし製造責任を果たすことを確保することを目指し、その被害者が法的救済を得られるように確保することを目指す。

やや別分野とはいいながら、労働問題ともかかわってくる話でもあるので、その動向にも注意を向けておきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

2021年4月 8日 (木)

佐藤忍『日本の外国人労働者受け入れ政策』

570637 佐藤忍『日本の外国人労働者受け入れ政策 人材育成指向型』(ナカニシヤ出版)をお送りいただきました。

http://www.nakanishiya.co.jp/book/b570637.html

人材育成指向型による受け入れへと舵を切った日本の移民政策。その実態と変化を詳細に分析する。

いろいろと興味深い分析がされていますが、終章のこの一節には、なるほどと思いました。

・・・外国人労働者への在留資格は特定の活動に対して与えられている。就労すべき産業・業種・企業が特定されており、そして特定の仕事内容(職種)に従事することが予定されている。予定外の活動は違法である。つまり外国人労働者の働き方は、ジョブ型である。・・・・国際労働市場に置いて、「技能実習」「特定技能」「専門・技術職」はそれぞれ分断されていると同時に、能力の高低によって階層化され、緩やかに接続している。「活動に基づく在留資格」から定住や永住と言った「身分に基づく在留資格」へシフトすれば、働き方もメンバーシップ型へ移行しうる。日本の平均的な働き方がメンバーシップ型である限り、外国人労働者の受入れ拡大、すなわちジョブ型の働き方の浸透には限界が隠されていると言わなければならない。メンバーシップ型の国内労働市場は、外国人労働者の受入れ拡大に対する歯止めとなっているのである。・・・・

 

 

 

 

2021年4月 7日 (水)

大内伸哉『人事労働法』

564091 大内伸哉さんの『人事労働法 いかにして法の理念を企業に浸透させるか』(弘文堂)をお送りいただきました。

https://www.koubundou.co.jp/book/b564091.html

労働法の再設計を試みた画期的な教科書
 「おこなわれている」労働法のエッセンスを紹介することに加え、「あるべき」労働法を大胆に提示した斬新な教科書。
 裁判規範を重視した伝統的労働法とは違い、企業が人事管理において「労働者の納得を得るよう誠実に説明すべきである」という納得規範(行為規範)を軸とした「人事労働法」により労働法を再設計したチャレンジングな内容。
 実務上大きな役割を果たす就業規則を具体的にどう作成するかを示すことにより、法の理念が企業に浸透することを目指す。 

というわけで、教科書だということなんですが、大内節全開の大内労働法としか言いようのない独自のテキストブックです。大内さんには『労働法実務講義』という普通に使える割と普通の教科書もありますが、そういう制約を一切取り払って、大内節ですべて塗り固めた概説書を書くとこうなるという一種極北の書といえましょう。

同感する人と反感を抱く人とがくっきり分かれそうな本ですが、いずれにせよ物事深く考えるためのよすがとして有用な本であることは間違いありません。

個々の論点での賛否はさまざまでしょうが、裁判規範を重視し、出るところに出た時の理屈ばかりをこねくり回しがちなために、出るところに出ない圧倒的大部分のケースが視野から落ちこぼれてしまうという労働法学の偏りに対して異議を申し立てるという点については、とりわけ解雇などの個別紛争の労働局あっせん事例レベルのものを分析したことのある立場からすると、大変共感するところは大きいものがあります。

 

 

2021年4月 6日 (火)

医療法改正案と医師の働き方改革@WEB労政時報

WEB労政時報に「医療法改正案と医師の働き方改革」を寄稿しました。

https://www.rosei.jp/readers/login.php

 去る2月2日、政府は「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律案」を閣議決定し、国会に提出しました。国会では3月18日から審議に入ったようです。この法案、タイトルだけでは労働法と関係ありそうに見えませんが、実はその中に医師の働き方改革に関わるいくつかの規定が入っています。法案要綱の改正の趣旨には、「医師の長時間労働等の状況に鑑み、良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するため、医師の労働時間の短縮及び健康確保のための制度の創設・・・等の措置を講ずること」とあります。
 医師の働き方改革については、本連載の第127回(2019年4月12日)に「医師の不養生はいつまで続くか?」と題して・・・・

オーウェン・ハサリー『緊縮ノスタルジア』

9784909237484_600 オーウェン・ハサリー『緊縮ノスタルジア』(堀之内出版)をお送りいただきました。

https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784909237484

緊縮財政下の現代イギリスが、いかに第二次大戦期(=以前の緊縮時代)へのノスタルジアで覆われているのかを、デザイン、建築、食品、映画、音楽など幅広い視点から論じる。

正直、文脈が特殊イギリス的すぎて、たぶん訳者は「日本もそうだろ」的感覚で訳しているんだと思うのですが、だいぶ違うような。いや、確かにある種の保守感覚をくすぐるノスタルジアはあるにしても、それはイギリス的文脈での「緊縮ノスタルジア」じゃないだろうと。

むしろ、日本のリベサヨインテリのある種の緊縮ノスタルジアを論じた方が生産的かもしれないと思ったところです。

 

 

2021年4月 4日 (日)

浜村彰・石田眞・毛塚勝利編著『クラウドワークの進展と社会法の近未来』

Crowd 浜村彰・石田眞・毛塚勝利編著『クラウドワークの進展と社会法の近未来』(労働開発研究会)をお送りいただきました。

https://www.roudou-kk.co.jp/books/book_list/9226/

近年、ますます拡大する個人請負・業務委託やフリーランス。とりわけ急速な進展を見せているのが、ネット上のプラットフォームを介したクラウドワークという働き方である。その実態を踏まえ法的課題を展望する。

本書は大きくいって、始めと終わりに大御所による総論が配置され、その間に若手による各国法制の報告と日本の実態調査報告が挟まっているという構造です。

基本的には2018年ごろに『季刊労働法』に連載されたものが元になっていますが、「あぁ、あれは読んだよ」と思ってはいけません。デジタル化の世界はドッグイヤー。クラウドだのプラットフォームだのの様相もわずか3年で大きく変わっているからです。これはとりわけ若手研究者たちによる各国の状況報告に顕著です。

どれも、(おそらく設定された刊行日との関係で締め切りぎりぎりまで事態の推移を追いかけながら書いたのだろうと思われますが)昨年末や今年初めの状況まで何とか盛り込もうとしています。

例えばドイツの後藤究さんは、クラウドワーカーの労働者性を逆転して認めた2020年12月の連邦労働裁判所判決を、判決文がまだ公開される前の速報記事に基づいて詳細に論じていますし、フランスの小林大祐さんはテイク・イート・イージー事件判決に加えて2020年のウーバー事件破毀院判決を詳細に紹介し、イギリスの滝原啓允さんについては彼はJILPT研究員なので政策論の動きはすでに聞いているのですが、アメリカの藤木貴史さんはカリフォルニア州のダイナメックス判決以来のてんやわんやをはじめ(自分では「アメリカ50州の動向をすべて分析したわけではない」と謙遜しながら)いろんな動向を見事に紹介していて、大変勉強になります。

『季刊労働法』で旧稿を読んだ人も、全然面目が変わっているので、ぜひ本書に目を通すべきです。

とりわけ、EUの井川志郎さんのは、この間の3年間に目まぐるしくいろんなことが立て続けに出され、全く新たな論文になっています。この分野は私も追いかけてきているところなので、井川さんが原稿を何回も書き直し書き加えてきていることが良くわかります。それでも一番最近の今年2月のプラットフォーム労働に関する労使団体への第1次協議に届かず、その直前までの欧州委の動きで原稿を確定しなければならなかったのは心残りかもしれません。

 

 

ほぼ年刊、川口美貴『労働法〔第5版〕』

Roudouhou5 川口美貴さんより1000ページを超えるテキスト『労働法〔第5版〕』(信山社)をお送りいただきました。

https://www.shinzansha.co.jp/book/b10000028.html

って、確か去年も書いてなかったっけ。一昨年も、その前の年も・・・。

というわけで奥付けを確認すると、

2015年11月 第1版

2018年3月 第2版

2019年3月 第3版

2020年3月 第4版

2021年3月 第5版

と、第2版以来ほぼ年刊化していますね。糸井重里じゃないけれどタイトルに「ほぼ年刊」と入れたくなる頻度です。しかも1000ページを超える分厚さですからね。

というわけで、どこを突っ込もうかと考えたのですが、初版以来の本書の一つの特徴であるはじめの方で40ページ近くに亘って「労働法の形成と発展」というタイトルで労働法の歴史を叙述しているところに疑問を呈しておきたいと思います。

細目次ではこんな感じですが。

第2章 労働法の形成と発展
第1節 明治維新(1868年)からILO創立(1919年)まで
 1 労働法の前提となる近代的法基盤の整備
  (1) 所有権制度
  (2) 契約自由の原則と合意原則
 2 官営事業における労働法制の初期形成
  (1) 官営事業における労使関係
   ア 官吏と「雇員」「傭人」等
   イ 「使用者」と「労働者」の形成/1870(明治3)年
  (2) 「職工規則」「服務心得」/1872(明治5)年~
  (3) 労働関係法令の制定
   ア 災害扶助制度/1875(明治8)年
   イ 退職金制度/1876(明治9)年頃
  (4) 民営化に伴う労働条件承継と民営化後の就業規則制度
   ア 官営事業の組織と労働条件の承継
   イ 民営化後の職工採用時における労働条件決定
   ウ 民営企業における就業規則制度の確立/1890(明治23)年
   エ 就業規則制度の法制化/1890(明治23)年
 3 憲法、刑罰法規、一般民事法令による労働分野の規律
  (1) 結社の自由と労働組合の結成
   ア 大日本帝国憲法の規定/1889(明治22)年
   イ 労働組合の結成、団体交渉・労働協約/1904(明治37)年頃
  (2) 民法・民事訴訟法による雇用全般の規律
   ア 民事訴訟法による労働債権保護/1890(明治23)年
   イ 民法による雇用・請負・委任等の規律/1896(明治29)年
  (3) 組合結成・組合活動と刑罰法規
   ア 兇徒聚衆罪・騒擾罪/1880(明治13)年
   イ 治安警察法17条/1900(明治33)年
   ウ 運用実態
 4 産業分野別法令の中の労働関係条項
  (1) 船員労働法制/1879(明治12)年
   ア 海運事業の位置付けと労働関係法令
   イ 船員労働法制の特徴
  (2) 鉱夫に関する労働基準の設定/1890(明治23)年
   ア 鉱業条例による労働基準の法制化/1890(明治23)年
   イ 労働安全衛生に関する法規制の開始/1892(明治25)年
  (3) 工場職工に関する労働基準の設定/1911(明治44)年
   ア 工場法の内容と保護対象
   イ 施行令と施行規則による具体的規律
第2節 ILO創設(1919年)から終戦(1945年)まで
 1 ヴェルサイユ条約の批准、公布/1919(大正8)年
  (1) ILOの基本理念
  (2) ILOの創設
  (3) 日本の労働法制への影響
  (4) 内務省社会局の創設/1922(大正11)年
 2 職業紹介・健康保険制度の整備
  (1) 職業安定行政に関する法整備/1921(大正10)年
  (2) 健康保険制度の創設/1922(大正11)年
 3 労働組合の公認・規制と労働組合法案
  (1) 治安警察法17条の廃止/1926(大正15)年
  (2) 暴力行為等処罰ニ関スル法律の制定/1926(大正15)年
  (3) 労働争議調停法/1926(大正15)年
  (4) 労働組合法案の制定の動き
 4 労働基準の段階的引上げ
  (1) 児童労働の規制強化/1923(大正12)年
  (2) 労働時間規制の強化/1923(大正12)年~1939(昭和14)年
   ア ILO第1号条約/1919(大正8)年
   イ 保護職工の労働時間規制の強化/1923(大正12)年
   ウ 男性労働者に対する労働時間規制/1928(昭和3)年
  (3) 解雇予告制度/1926(大正15)年
  (4) 労働安全衛生に関する規則整備/1927(昭和2)年~
  (5) 女性の深夜労働規制の本格的実施/1928(昭和3)年
  (6) 工場法適用対象工場の拡大/1929(昭和4)年
  (7) 災害扶助対象の拡充と労災保険制度の創設/1931(昭和6)年
  (8) 商業労働者の労働時間規制/1938(昭和13)年
 5 戦時体制と労働法
  (1) 国家総動員法と関連法/1938(昭和13)年~
  (2) 厚生年金保険制度の発足/1941(昭和16)年
第3節 終戦(1945年)から現在まで
 1 終戦及び日本国憲法と労働法制等
  (1) 旧労働組合法の制定/1945(昭和20)年
  (2) 日本国憲法の制定/1946(昭和21)年
  (3) 労働基準法・職業安定法の制定/1947(昭和22)年
  (4) 労働保険・社会保険制度
 2 公務員の労働基本権の制限
  (1) 国家公務員法の制定/1947(昭和22)年
  (2) 政令201号/1948(昭和23)年
  (3) 公務員の労働基本権の制限/1948(昭和23)年~
 3 労働関係における人権保障
  (1) 自由と人格権保障
  (2) 国籍・信条・社会的身分を理由とする差別的取扱の禁止
  (3) 組合員等を理由とする不利益な取扱いの禁止
  (4) 性別を理由とする差別的取扱いの禁止
   ア 労基法の男女同一賃金原則
   イ 均等法による性差別禁止
  (5) 障害者の雇用保障と差別の禁止等
   ア 身体障害者雇用促進法
   イ 障害者の雇用の促進等に関する法律
  (6) 年齢と募集・採用における均等な機会
 4 労働基準
  (1) 労基法の制定と発展
   ア 労基法の制定/1947(昭和22)年
   イ 個別法の分離と制定
   ウ 労働時間法制の変遷
   エ 女性の就労制限の段階的緩和と撤廃/1985(昭和60)年~
  (2) 労働者災害補償保険法の制定と発展
   ア 労働者災害補償保険法の制定/1947(昭和22)年
   イ 長期療養者の生活保障と給付の充実/1955(昭和30)年~
   ウ 責任保険制度からの脱却/1965(昭和40)年
  (3) 賃金の支払の確保等に関する法律/1976(昭和51)年
  (4) 育介法の制定と発展/1991(平成3)年~
  (5) 次世代育成支援対策推進法/2003(平成15)年
  (6) 石綿による健康被害の救済に関する法律/2006(平成18)年
  (7) 過労死等防止対策推進法/2014(平成26)年
 5 労働契約
  (1) 民法改正/1947(昭和22)年
  (2) 労働契約法の制定/2007(平成19)年
  (3) 会社分割と労働契約承継法/2000(平成12)年
  (4) 非典型労働契約
   ア 労働者派遣と派遣労働契約
   イ パートタイム労働契約
   ウ 有期労働契約
   エ 職務に応じた待遇の確保
 6 集団的労使関係
  (1) 労働組合法
   ア 旧労組法の制定/1945(昭和20)年
   イ 現行労組法の制定/1949(昭和24)年
  (2) 労働関係調整法の制定/1946(昭和21)年
  (3) スト規制法の制定/1953(昭和28)年
 7 雇用保障・労働市場
  (1) 雇用の機会の確保
  (2) 雇用保険制度
  (3) 職業訓練・職業能力開発
  (4) 労働施策の基本方針
  (5) 高年齢者の雇用の促進
  (6) 求職者支援
  (7) 青少年の雇用促進
  (8) 女性の職業生活における活躍の推進
  (9) 外国人労働者の受入れと技能実習制度
 8 法的救済・紛争解決制度
  (1) 行政機関による救済制度
  (2) 裁判所における労働審判制度/2004(平成16)年
 9 民法改正(2017<平29>年)と労働法 

私自身の『日本の労働法政策』における独自の時代区分と違っているのは当然としても、戦後75年間を全部ひとまとめにして項目ごとに並べてしまうと、歴史叙述としての意味がなくなってしまうのではないかという気がします。第2部以降で項目ごとに詳しい叙述がされているのの単なる先出しになってしまっていて、その戦後75年間にどういう推移があったのか、それぞれの時代時代の特徴があるはずなのに、それが全部消えてしまっていて、せっかくこれだけの分量を歴史叙述に当てている意味が乏しいように思われました。

もう一つ、昨年版をいただいたときに、ワーカーズコレクティブ轍・東村山事件が早速載っていることを紹介しましたが、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2020/04/post-ea214a.html

その関心の延長線上で、せっかくほぼ年刊化しているんだったら、昨年末に成立した労働者協同組合法における労働者性の問題についても一言何か書かれていたらよかったのに、と思いました。

この問題については、次の「労働法の立法学」で取り上げようと思っています。

 

 

2021年4月 2日 (金)

中村圭介『地域から変える』

563487 中村圭介『地域から変える』(旬報社)をお送りいただきました。

https://www.junposha.com/book/b563487.html

地域で働き、暮らす人々の生活改善にとって何が必要か!
「結束を強める」、「力を高める」、そして「社会を変える」という一筋の道を提起する。
~「静かな革命」を続ける7つの地域協議会の調査から見えてきたもの~ 

中村圭介さんの「地域」といえば、以前連合総研で調査され、教育文化協会から刊行された『地域を繋ぐ』が思い出されますが、本書はその続編という位置づけです。

第Ⅰ部 分析編

第1章 地域で顔を見せる運動と「静かな革命」
1 地域協議会の強化
2 地域を繋ぐ
3 地協に期待する機能
4 新たな調査
5 新たな方向性――地域から社会を変える
第2章 結束を強める
1 はじめに
2 地方連合会との連携
3 幹事会メンバー
4 加盟組織
5 組合員
6 まとめ
第3章 力を高める
1 はじめに
2 首長と議員
3 自治体
4 使用者団体
5 まとめ
第4章 地域から変える
1 はじめに
2 労働相談、生活相談と組織拡大
3 街頭宣伝行動
4 政策制度要請
5 まとめ
第5章 地域労働運動の可能性

第Ⅱ部 事例調査編
第1章 鶴岡田川地域協議会
第2章 外房地域協議会
第3章 中濃地域協議会
第4章 尾張中地域協議会
第5章 津地域協議会
第6章 福山地域協議会
第7章 京築田川地域協議会

 

 

 

「知的怠慢」への清涼剤として

昨日、エイプリルフールの日に、大内伸哉さんがブログ「アモリスタ・ウモリスタ」で、同一労働同一賃金という言葉をめぐるマスコミや専門家の「知的怠慢」を厳しく批判しています。

http://lavoroeamore.cocolog-nifty.com/amoristaumorista/2021/04/post-4d37f0.html

・・・ところで,「同一労働一賃金」は,いまだに「同じ仕事をすれば,同じ賃金がもらえる」という紹介の仕方を,ほとんどのマスメディアがしており,今回の産経新聞の記事も解説のところでは,その趣旨のことが書かれていました。しかし,そもそも日本の雇用社会で,そんなことが実現できるはずがないという疑問を,マスメディアの人はもたないのでしょうかね。そうした疑問をもたずに,法改正で「同じ仕事をすれば,同じ賃金がもらえる」ことになったという紹介の仕方をし続けるのは,知的怠慢と言うべきでしょう。・・・・

Image0_20210401085201_20210402084701 実は奇遇ですが、同じエイプリルフールの日に届いた倉重公太朗さん編著の『【日本版】同一労働同一賃金の理論と企業対応のすべて』(労働開発研究会)』の序章において、わたくしがまさにそこのところを鋭く問い詰めています。

・・・中小企業における施行(2021年4月)を目前にした現在、八つぁんよろしく「てぇへんだ、てぇへんだ」と「同一労働同一賃金」を煽り立てる書籍は書店にうずたかく積まれています。昨年の異様な「ジョブ型」の流行を見るまでもなく、薄っぺらな理解のまま流行語がもてはやされるのは世の常ではありますが、「【日本版】同一労働同一賃金」がいかなるものであり、そしていかなるものではないのかを、冷静に厳密に詳細に論じ尽くしていく本書をじっくり読んで、心を落ち着かせて下さい。

この書影の下の方の緑の帯状のところで、大御所の先生方が言われているのもその点なのでしょう(山口先生のシーザー云々はよく分かりませんが)。

「同一労働同一賃金」の本質を正しく喝破した上、判例・指針を正確に踏まえて企業実務を余すところなく指南する好著。東京大学名誉教授 菅野和夫

「日本版」の標題のとおりガイドラインのマジック的表現を判例分析などから、企業実務にわかりやすく解説。 安西法律事務所 弁護士 安西愈

「働き方改革」の視察にローマからシーザーがやってきた。一知半解は困るのでこの本を見せた。彼はたちどころに言った。「来た、見た、買った、すばらしい本だ」 上智大学名誉教授 山口浩一郎

「同一労働同一賃金」は法律を超えた広い視点からの検討が必要であり、法律家にとどまらず各分野の労働エキスパートが執筆する本書はこの課題に応える好著である。 学習院大学名誉教授 今野浩一郎

大内さんの指摘する「知的怠慢」への一服の清涼剤になるのではないでしょうか。

しかし倉重さん、ようこれだけ偉いひとのコメントもってきたなあ。

 

 

 

 

2021年4月 1日 (木)

【GoTo書店!!わたしの一冊】『ブルシット・ジョブ――クソどうでもいい仕事の理論』

51iadqon5kl282x400 『労働新聞』に交替制で毎月寄稿している【GoTo書店!!わたしの一冊】ですが、今回は昨年話題を呼んだデヴィッド・グレーバーの『ブルシット・ジョブ――クソどうでもいい仕事の理論』です。

https://www.rodo.co.jp/column/103943/

コロナ禍さなかの2020年7月に刊行され、その直後の9月に著者が急逝したこともあり、かなり評判を呼んだ本である。そこで列挙されている取り巻き(flunkies)、脅し屋(goons)、尻ぬぐい(duct tapers)、書類穴埋め人(box tickers)、タスクマスター(taskmasters)というブルシット・ジョブの5類型をみて、そうだそうだ、こいつらみんなクソだと、心中快哉を叫んだ人も少なくないだろう。とはいえ、すべてのブーメランは自分のもとに戻ってくる。・・・・・

最後のところで、ブルシットジョブにもジョブ・ディスクリプションのある海外と、そんなものなくてもいくらでも「働かないおじさん」が作れてしまう日本を対比しています。

 

 

倉重公太朗編著『【日本版】同一労働同一賃金の理論と企業対応のすべて』

Image0_20210401085201 倉重公太朗編著『【日本版】同一労働同一賃金の理論と企業対応のすべて』(労働開発研究会)が新年度の初日に届きました。

まだ版元のホームページには上がっていないようですが、これはなかなかいい本です。だって、私が序章を書いているんですから・・・というのは冗談ですが、上の写真では一見オビであるかのようにみえる下の方の緑色の帯状の推薦の言葉の欄には、菅野和夫、山口浩一郎、安西愈、今野浩一郎という大御所が名を連ねています。

山口先生曰く:

「働き方改革」の視察にローマからシーザーがやってきた。一知半解は困るのでこの本を見せた。彼はたちどころに言った。「来た、見た、買った、すばらしい本だ」

なんだかよく分かりませんが、カエサルも凄く褒めているようです。

序章「なぜ「日本版」同一労働同一賃金なのか」(JILPT研究所長濱口桂一郎氏)
第1章 日本版同一労働同一賃金とは(倉重)
第2章 最高裁7判例解説
第3章 基本給・賞与・退職金の理論と実務対応 (近衞弁護士、人事コンサル田代氏、JILPT山本陽大氏)
第4章 手当、その他労働条件の理論と実務対応(荒川・河本・池邊弁護士)
第5章 高年齢者雇用の理論と実務対応(JILPT藤本真氏、中山達夫弁護士)
第6章労働者派遣の実務(一般社団法人 日本生産技能労務協会 会長 青木秀登氏) 

(追記)

ようやく版元に紹介のページができたようですが、

https://www.roudou-kk.co.jp/books/book_list/9283/

書影と内容紹介だけじゃなく、なにやら不思議な写真もアップされているので、これは何かとよく目をこらしてみたら

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倉重さんがせっせと本にサインしているところでした。

こちら、サイン入り数量限定版だそうです。

 

サプライチェーンと労働人権

たまたま『大原社会問題研究所雑誌』4月号をぱらぱら見ていたら、「第33回国際労働問題シンポジウム COVID-19危機からより良い仕事の未来へ――産業別の取組みと社会対話」という特集で、例によって政労使学の方々がいろいろとしゃべっているのですが、

https://oisr-org.ws.hosei.ac.jp/oz/contents/?id=2-001-0000069

【特集】第33回国際労働問題シンポジウム
COVID-19危機からより良い仕事の未来へ――産業別の取組みと社会対話
特集にあたって 藤原千沙
基調講演 COVID-19危機とILO 伊澤章
使用者(企業)の立場から 吉川美奈子
労働者(労働組合)の立場から 郷野晶子
政府の立場から 井内雅明
学識経験者の立場から 中村圭介 

このうち、使用者側を代表してできている吉川美奈子さんというのは、アシックスのCSR、サステナビリティを担当しておられる方なんですね。アシックスといえば、いままさに新疆ウイグル自治区の綿をめぐってもみくちゃになりつつあります。今はやりのSDGsですが、これまでは労働人権問題というと、東南アジアの縫製工場だとか、中国の半導体工場といったいわゆる苦汗工場、搾取工場の話だったわけですが、今回まさにアシックスが巻き込まれたように、ジェノサイド話にまで発展すると、今度はまさに国際政治の対立の真っただ中に放り込まれることになってきます。今まで思われているような生易しい話ではなくなってくる可能性がありますね。

 

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