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2021年3月 7日 (日)

JRA調教助手・厩務員は雇用されているけれど個人事業主だって?

ここ数年くらい、自分の判例評釈のトピックに労働者性に関わるものが多くなったような印象があり、改めて振り返ってみると、確かにそういう傾向がありますね。

http://hamachan.on.coocan.jp/hyoushaku.html

正確に言うと、ずっと昔20年近く前にちょびっとそういう事件を評釈した後、かなり長い間他のトピックが多かったんですが、2年前くらいからやたらに労働者性に関わる事件が増えています。

綾瀬シルバー人材センター事件(東京大学労働判例研究会2003年10月30日)

「研修生」契約は労働契約に該当するか?--ユーロピアノ事件(『ジュリスト』2004年5月1/15日号)

多重請負関係における「労働者性」と「使用者性」の齟齬--わいわいサービス事件(『ジュリスト』2018年9月号)

Worker Status of the Commercial Agent - The Bellco Case(『Japan Labor Issues』2019年5月号)(ベルコ事件(和文))

Worker Status of the Member of the Worker's Collective - The Worker's Collective Wadachi Higashi-Murayama Case(『Japan Labor Issues』2020年6月号)(企業組合ワーカーズ・コレクティブ轍・東村山事件(和文))

浅口市事件(東京大学労働判例研究会2020年6月12日)

岡地事件(東京大学労働判例研究会2020年11月6日)

Worker Status of the Member of the Troupe - The Air Studio Case(『Japan Labor Issues』2021年6月号)(エアースタジオ事件(和文))

労働者性については、最近、労働基準監督署における監督復命書や申告処理台帳の内容分析を報告書にまとめたところでもありますが、世の中にはいろんな分野にいろんな問題があるのだなあ、と感じます。

https://www.jil.go.jp/institute/reports/2021/documents/0206.pdf

なんでこんなことを改めて思ったかというと、こんな記事があったからですが、

https://mainichi.jp/articles/20210306/k00/00m/040/096000c(JRA調教助手ら164人が持続化給付金不適切受給 調教師や騎手も)

日本中央競馬会(JRA)は6日、滋賀県栗東市と茨城県美浦村にある競走馬のトレーニングセンター(トレセン)で働く調教助手や調教師、騎手ら厩舎(きゅうしゃ)関係者165人が、新型コロナウイルス対策で中小事業者などを支援する国の持続化給付金を受給していたと発表した。総額は約1億9000万円に上り、制度の趣旨や目的から逸脱した不適切な受給者は164人。既に49人が返還。114人は返還手続き中で、残る1人は体調不良で休職中のため、今後対応する。副業の飲食業での減収を理由とした1人は返還手続きをしていない。 

・・・・・騎手や調教師は個人事業主に該当。調教師が雇用する調教助手や厩務員も給与や賞与以外に管理する馬がレースで獲得した賞金に伴う報酬を得ており、個人事業主となる。競走馬がレースで獲得した賞金のうち、調教師が10%、騎手と調教助手らは5%ずつの報酬を得る。管理する馬の強さや出走レース数によって金額は大きく変動するため、成績不振の月を選んで申請したとみられる。 

まあ、そもそも騎手や調教師が個人事業主ということでほんとにいいのか、という問題はあるわけですが、それよりも「調教師が雇用する調教助手や厩務員も給与や賞与以外に管理する馬がレースで獲得した賞金に伴う報酬を得ており、個人事業主となる」ってのが、やはり訳が分からない。

なんではっきり「雇用されている」調教助手や厩務員が、全く別の個人としての仕事でならともかく、まさに雇用されている当の仕事で馬が稼いだ賞金の分け前をもらったら個人事業主になるのか、持続化給付金がもらえる立場になんぞなりうるのか、その辺の理屈がさっぱりわからないのですが、そこのところを突っ込んでいる記事が管見の限り見当たらない。

この問題、実は昨年、郵便局員が持続化給付金をもらっているということが明るみになったときに、WEB労政時報でやや詳しく突っ込んで論じたことがあるのですが、

http://hamachan.on.coocan.jp/webrousei200623.html(税法上の労働者概念と事業者概念)

・・・・・一方で、両分野の労働者概念が異なることにより、労働法上は労働者としての地位を享受していながら、税法上は事業者としての利益を享受できてしまうという事態もあることが露呈しました。これはやや意外な方面から明らかになったのですが、日本郵便とかんぽ生命保険が6月、新型コロナとは直接関係がないのに給付金を申請した社員が計約120人いたと明らかにしたのです。これは、かんぽ生命の不正販売を受けた営業自粛による収入減を給付金で補おうとしたもので、両社は申請取り下げや給付金返還の手続きを促していると報じられました。
 両社も、報じるマスコミも疑問を持っていないようなのですが、まともな労働法の感覚を有する者であれば、日本郵便やかんぽ生命の社員、つまりれっきとした企業に雇用される雇用労働者であるはずの人が、なぜ中小企業や個人事業主が対象の持続化給付金を申請できるのかということに疑問を感じるはずです。
新聞報道によれば、郵便局員らは、給与所得とは別に、保険の販売成績に応じて支給される営業手当を事業所得として確定申告しているというのですが、れっきとした雇用労働者に支払われる「出来高払制その他の請負制」(労働基準法〔以下、労基法〕27条)の賃金である営業手当が、なにゆえに事業所得として確定申告できてしまうのかこそ、最大の疑問です。いうまでもなく、労基法27条の「請負制」は請負契約ではなくて雇用契約の賃金制度だというのは、労働法の初歩の初歩で教わることのはずですが、日本郵便ではそうなっていないようなのです。
とはいえ、天下の日本郵便がこれだけ堂々とやっているのですから、何か法的根拠があるはずです。所得税法の規定を見てみましょう。まず、事業所得と給与所得の定義です。・・・・・ 

税法上の労働者概念と労働法や社会保障法上の労働者概念とのこれほどまでの食い違いぶりは、やはり両分野の研究者がきちんと意見をぶつけ合う必要性があるように思われます。

 

 

 

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