相澤美智子『労働・自由・尊厳』
相澤美智子『労働・自由・尊厳 人間のための労働法を求めて』(岩波書店)をお送りいただきました。
https://www.iwanami.co.jp/book/b559571.html
労働とは何か。憲法の職業ないし勤労に関する人権は、日本国憲法の全体系においてどのような位置を占めているのか。国連憲章及び世界人権宣言において基本原理とされている「尊厳」概念は労働法とどのような関係に立っているのか――。フランス憲法史、ドイツ憲法史なども視野に入れながら、労働法の根本問題を考察。
ということなんですが、・・・・・うーん、正直、意味がよくわからない。序章で紹介されているヴィッキー・シュルツさんの論文、家事労働に賃金をというフェミニストやベーシックキャピタルを主張する「リベラル」に反論して、労働はそれ自体意味があるぞという、方向性としてはむしろ同意するところが多いけれども、よくある議論という感想しか湧いてこず、相澤さんが受けたという「衝撃と感動」がよくわからない。
そして第1部の労働論で、芝田進午の『人間性と人格の理論』を、もうこれ以上ないくらい持ち上げるのですが、この共産党直属のクラシカルなマルクス・レーニン主義者の議論のどこにそれほど感動できるのか、相澤さんが熱っぽく論じれば論じるほど置いてけぼりにされた感が募ります。結局、社会主義が崩壊したので共産主義への意向には賛成しかねるというのですが、じゃあ一体何なのという感が残ります。
せっかくお送りいただいておいて失礼なことばを並べるようですが、労働法学にどういう意味があるのかよくわからないという印象はぬぐえませんでした。
相澤さんの前著『雇用差別への法的挑戦』は、拙著『働く女子の運命』でもちらりと引用させていただいたりしており、結構興味深く読めたのですが、今回の本は正直波長が最初から合わないという感じでした。
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この感想は、なるほど、と思わされます。今の時代に芝田進午を絶賛するなら、既成社会主義は真の社会主義にあらず、と断言するくらいの気概が必要でしょう。社会主義が崩壊したから共産主義はダメだ、といいながら芝田進午を理論面で絶賛するというのは確かに謎です。
投稿: 希流 | 2021年3月26日 (金) 11時51分