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2021年2月13日 (土)

「成長」の物語(基本的に再掲)

この記事に対して、

https://toyokeizai.net/articles/-/409906(徹夜も上等!結局「猛烈に働く人」が成長できる)

「社長輩出企業」として知られるリクルート。同社で鍛えられ、外に出て社長になるのは男性だけではない。なにせ『リクルート出身社長名簿女子版2021』という本が出るくらいに「女性社長」を輩出しているのだ。
リクルート女子はなぜ社長になれるのか。自らも元リク(リクルートのOB・OG)で、女性経営者を支援するベンチャー企業「コラボラボ」の社長でもある横田響子氏に、『起業の天才! 江副浩正 8兆円企業リクルートをつくった男』を上梓した大西康之氏が話を聞いた。 

deseanさんがこう呟いていたので、

https://twitter.com/desean97/status/1360369456057249796

 そもそも「成長」という言葉が不明だよな。成長ってなによ。「出世」はわかる。「稼ぐ」もわかる。でも「出世する」って「成長する」なのか?「稼ぐようになる」って「成長」なのか?

この、日本の雇用社会における独特な「成長」という言葉の奇怪さに気が付かれましたな。

これも、本ブログで折に触れ論じてきたトピックです。

せっかくなので、いくつかのエントリをお蔵出し。

=============

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/04/post-b066.html(決まってるじゃないか。自分の成長のためだよ!)

ダイヤモンド・オンラインの「格差社会の中心で友愛を叫ぶ」から、「じつは派遣より悲惨!?“ブラック化”する外食・小売チェーンの正社員たち」というタイトルの、読んでいくうちに背筋が冷えてくるリポートを。筆者は西川敦子さん。

http://diamond.jp/articles/-/7843

>“交通事故を引き起こす社員がやたらと多い”。

 これが「外食産業の裏側」の管理人で、大手外食チェーンで働く大塚賢児さん(仮名・30代)の率直な感想だ。疲労と睡眠不足でハンドル操作を誤るのだろうか。車が全損するほどの大きな事故もまれではないそうだ。

 社員の悲劇はそれだけにとどまらない。

「寝床から起き上がれない」と電話をかけてきたきり、退職する社員。接客中に倒れる社員。突然、失踪してしまう社員。

 今までに大勢の同僚がこうして職場から消えて行った。

 大塚さん自身、危うい場面を何度も経験している。運転中、信号待ちの間に猛烈な睡魔が襲ってくることは数知れず。39度の熱に浮かされても仕事を休むことはできない。

“身近で格安”というイメージのある外食・小売チェーン。だがその裏では、一部の企業で過重労働問題が多発している、という声がある。

具体的な事例はぜひリンク先をじっくりお読みいただきたいところですが、雇われて従わざるを得ない側の

>なんだかんだで自宅に戻る時間がなく、控室の床に段ボールを敷いて寝ることも多い、と大塚さん。店の駐車場に停めた車で寝ることもしばしばだ。

 たまに帰宅すれば、ベッドに倒れこんで泥のように眠るだけ。アパートのポストは郵便やDMがいっぱいで、洗濯カゴからは汚れた衣服が溢れているが、どうすることもできない。

というような状態を、自分で好きに夜中まで働いているベンチャー経営者の感覚で

http://ameblo.jp/takapon-jp/entry-10428558374.html

>最近は新規上場する会社の元従業員とかがチクって労働基準法違反が見つかり上場審査で×を貰うことも多いらしい。ベンチャー企業の従業員の多くは好きで夜遅くまで働いている奴も多いのに、それができなくなる。なんて馬鹿馬鹿しい。きっと労働生産性が低く働きづらくなってやめた社員の僻みだったりするんだろうが。

と罵る神経はあまりいただけるものではありませんね。

もちろん、本ブログにも現れたように、そういうのを崇拝する人々もいるようで、

>ところで、ベンチャー系チェーンの中には、経営者を崇拝する社員たちが、自らサービス残業を買って出るケースもあるようだ。

 ブラック企業の問題に詳しいNPO法人若者就職支援協会の黒沢一樹さんは、自身もベンチャー系の飲食店チェーンで働いた経験を持つ。

「1日の平均勤務時間は16時間くらいでしたね。サービス残業はあたりまえで、泊まりもありました。みんなけっこう自分から長時間労働をしているので、おかしいなと思い、『どうしてこんなに働くんですか』って聞いたことがあるんです。そうしたら『決まってるじゃないか。自分の成長のためだよ!』と……。

 その店では社長が神様みたいに思われていて『あの人はすごい』『社長様さまです』ってみんな言い合っていた。たしかに店員は一生懸命接客していて、サービスの質は高かった。でも、それだけ働いて、正社員でも月20万円の給料って、どうなんだろう、と。結局、その会社は僕が辞めてまもなく潰れてしまいました」

なるほど、いかにも。「決まってるじゃないか。自分の成長のためだよ!」ですか。

そういえば、

>だいたいこのような起業家の元には、同じような価値観を持った人たちが集まり、自分の意思で夢を叶えるために必死に頑張っているだけです。努力しているだけです。

>努力している人、頑張っている人を批判するのはよくない。
あなたの頭のレベル、低いね。

と罵倒した人もいましたっけ。

===============

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2013/02/post-8159.html(何で日本の左派なひとは「成長」が嫌いか)

メモ書きとして:

ジョブ型社会では、経済成長すると、「ジョブ」が増える。「ジョブ」が増えると、その「ジョブ」につける人が増える。失業者は減る。一方で、景気がいいからといって、「ジョブ」の中身は変わらない。残業や休日出勤じゃなく、どんどん人を増やして対応するんだから、働く側にとってはいいことだけで、悪いことじゃない。

だから、本ブログでも百万回繰り返してきたように、欧米では成長は左派、社民派、労働運動の側の旗印。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/01/post-5bad.html(「成長」は左派のスローガンなんだが・・・)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/01/post-211d.html(「成長」は労組のスローガンなんだし)

メンバーシップ型社会では、景気が良くなっても「作業」は増えるけれど、「ジョブ」は増えるとは限らない。とりわけ非正規は増やすけれど、正社員は増やすよりも残業で対応する傾向が強いので、働く側にとってはいいこととばかりは限らない。

とりわけ雇用さえあればどんなに劣悪でもいいという人じゃなく、労働条件に関心を持つ人であればあるほど、成長に飛びつかなくなる。

もつ、エコノミック系の頭の人は「成長」といえば経済成長以外の概念は頭の中に全くないけれど、日本の職場の現実では、「成長」って言葉は、「もっと成長するために仕事を頑張るんだ!!!」というハードワーク推奨の文脈で使われることが圧倒的に多い。それが特に昨今はブラックな職場でやりがい搾取するために使われる。そういう社会学的現実が見えない経済学教科書頭で「成長」を振り回すと、そいつはブラック企業の回し者に見えるんだろうね。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/04/post-b066.html(決まってるじゃないか。自分の成長のためだよ!)

まあ、要すれば文脈と意味内容のずれによるものではあるんだが、とりわけ経済学頭の人にそのずれを認識する回路がないのが一番痛いのかもしれない。

(追記)

まあ、実のところ、「ニュースの社会科学的な裏側」さんのこの評言が一番的確なのかも、という気もしますが・・・。

http://www.anlyznews.com/2013/02/blog-post_13.html


さすがに経済成長を重視する人々も、不平等や外部不経済が自動的に解決すると主張する人々は少数だ。ただし、ブラック企業問題に取り組んでいるNPOに経済成長に着目しないのはセンスが悪いと高飛車に言い放ったりする経済成長万能派も現存するわけで、実証的・理論的な背景が脆弱な面もあって、特に根拠は無いのだが、左派には不愉快に思われるような気がする。つまり、左派は経済成長が嫌いなのではなく、経済成長と言う単語にうるさい人々が嫌いなのでは無いかと思われる。

いるいる。

==================

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2014/08/post-5698.html(「成長」をハードワークの同義語として擁護/反発する人々)

またもなつかしのデジャビュシリーズですが、

https://twitter.com/alicewonder113/status/502440729743208449

ありす:世界はもうこれ以上経済成長しなくていいと言うのは、こういう女性たちをそのままにしていいと言ってるのと同義だと思ってる

スメルジャコフ:問題はどういう経済成長がいいのか、ということですよね。過労死と隣り合わせの経済成長がいいというわけではないでしょうし。

ありす:少なくとも経済成長は必要だということだと思っています。嫌な経済成長は嫌だからといって、成長を嫌がっていても何の世のため人のためにならない

ありす:いや…というか、過労死は経済成長と関係がないんですよ。過労死が成長をもたらすわけでもないし、経済成長してなくても過労死はあるので。

本ブログでも何回も指摘しているのですが、なまじまじめに経済学を勉強してしまったありすさんは、世間一般で、とりわけブラックな職場で人をハードワークに追い込むマジックワードとして用いられる「成長」という言葉が、厳密に経済学的な意味における「成長」とは全然違うことにいらだっているわけです。

でもね、その「成長」への反発は、そういう「成長」を振りかざす人々がいるからその自然な反作用として生じているのである以上、お前の用語法は経済学における正しい「成長」概念と違う、といってみても、なかなか通じきれないわけです。

 

 

 

 

 

 

 

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コメント

「成長」という言葉は文脈によって意味が変わるので,そこをはっきりさせないから,話がグタグタになってしまうようです.
「人の」成長は主に「出来なかったことが出来るようになること」に使われます.例えば,「子どもの」成長は「オムツが必要だった子が自分でトイレに行けるようになった」とか,「会社員の」成長は「先輩と一緒でないと契約をまとめることが出来なかったA君が一人で契約をまとめられるようになった」みたいに使われます.
一方,「国の」成長は,"経済成長"という観点ではGDPで測定されますし,"社会的成長"(あまり一般的な言い方ではないか,「成熟」と言われる方が多いかも)では,民主的な政治制度,人権の保証,公務員の腐敗レベルのような尺度があると思います.
当然,「国の」"経済の"成長を測るうえで,総和であるGDPだけでなく,どう分配されているかという観点(ジニ係数や相対的貧困率とか)も必要なのは明らかで,人に依ってそれの優先順位が違う(「まず全体を大きくすることが重要」派 vs 「平等が最優先(全体としては貧乏になっても格差が少ない方が良い)」派)ことが明示的になっていないので,話が通じにくいのでしょう.
話をする時に,これらを混同するから(あるいは意図的に混同させる人がいるから),ゴチャゴチャになってしまうのだと思います.

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