インフレの元凶、デフレの元凶
アンコリさんが『働き方改革の世界史』にツイートでコメントされているのですが、
https://twitter.com/uncorrelated/status/1361905380461174784
だらだらと『働き方改革の世界史』https://amzn.to/2OCnSwA を読み始める。語り口が軽く読みやすい思想史と言うか労働問題の古典紹介になっている。
根拠脆弱と言う意味で「結果的にデフレ二〇年間を生み出してきた日本型社員組合」(p.36)がちょっと気に入らないのだが、組合の形態は制度だから外生的と見なせるから、論としては成立するかな。
数理モデルと計量分析にウェイトがかかっている経済学徒が読むと視野が広くなりそうではあるが、なぜかより一般均衡で考えないといけない感が出てくる。こういう歴史学的な方向でいったら、経済学のアドバンテージを示せないからかな?
いやまあ、わたしはむつかしい経済理論を使って経済分析しているわけでもなんでもないので、どういう「論」として成立しているかといわれれば、せいぜい労働をめぐる議論にすぎないわけですが、それも別段目新しい議論をやっているわけでもなく、半世紀前の「聞き分けのない労働組合がインフレの元凶だ」という議論をそっくりそのまま裏返しただけです。
今どきの若い人は知らないでしょうが、1970年代の世界中の経済論議の焦点はインフレ、それも不況なのに物価は上がり続けるスタグフレーションというやつで、その元凶と目されていたのが、企業経営に何の顧慮もしないで平然と賃上げ要求ばかりやりやがる労働組合というやくざ連中だったわけです。世界的には。「へぼ将棋、雇用より賃金をかわいがり」てなわけです。
その中で、なぜか例外的に経済整合性をわきまえていたのが、当時世界中の経済学者から賞賛の嵐を浴びていたわが日本の労働組合であったなんてことは、もはや老人でないと覚えていないのでしょうね。
例外的にインフレの元凶ではなかったがゆえに経済学者から賞賛されていた日本の労働組合が、半世紀後には「へぼ将棋、賃金より雇用をかわいがり」とデフレの元凶視されるに至ったのも、実のところ論理構造自体は何にも変わっていないのです。
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