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2021年2月23日 (火)

小島庸平『サラ金の歴史』

102634 小島庸平さんの『サラ金の歴史 消費者金融と日本社会』(中公新書)をお送りいただきました。ありがとうございます。

https://www.chuko.co.jp/shinsho/2021/02/102634.html

個人への少額の融資を行ってきたサラ金や消費者金融は、多くのテレビCMや屋外看板で広く知られる。戦前の素人高利貸から質屋、団地金融などを経て変化した業界は、経済成長や金融技術の革新で躍進した。だが、バブル崩壊後、多重債務者や苛烈な取り立てによる社会問題化に追い詰められていく。本書は、この一世紀に及ぶ軌跡を追う。家計やジェンダーなど多様な視点から、知られざる日本経済史を描く意欲作。

封筒からこの本を取り出した時、私は一瞬、もしかして宛先を間違えられたのかな?と思いました。著者の小島庸平さんも存じ上げていないし、タイトルを見ても、私に送られてくるような本じゃないと思ったからです。

しかし、あて先は間違いなく私です。私に読めという中身があるに違いないと思って、さっそく読み始めました。

読み進むうちに、なるほど、私に読めというのはこういう趣旨だったのだな、ということがじわじわとわかってきました。

一言でいうと、戦後日本におけるサラ金の発展(と没落)は、サラリーマンと専業主婦という性別役割分業を前提とした日本型雇用システムの確立とその変容を反映していたのです。

戦前以来の素人高利貸しの中から、まず「団地金融」というビジネスモデルが登場してきますが、これは団地に入居できるような階層であることを住宅公団の審査によって確証された「社員」の妻に、「夫に内緒で」お金を貸すというものです。

そこから今度は、その夫の方、つまり「サラリーマン」にお金を貸すビジネスモデル、つまり「サラ金」という言葉の源流が生み出されます。

ここで小島さんは、サラ金のニーズが当時の日本企業の人事管理制度とサラリーマン夫婦の在り方にあったのだと説明します。

日本企業の人事管理制度とは人事査定、とりわけ日本独特の「情意考課」です。情意考課で高く評価されるためには、仕事だけではなく全人格的に「付き合い」をよくしなければならず、特に付き合いゴルフや付き合い麻雀が必須です。

ところが一方、戦後日本的夫婦役割分担構造では、「家のことは全部任せた」と財布の管理も専業主婦に委ねられ、夫は渡される小遣いの範囲内で賄わなければならず、情意考課引き上げのための原資はほかに求めなければなりません。それを提供したのがサラ金だったというわけです。ふむふむ。

いささか図式的すぎるきらいもありますが、高度成長期の日本社会の構造からサラ金という新たなビジネスモデル出現の必然性を説く小島さんのロジックはなかなか興味深いものがあります。

この日本型システムがやがて揺らいでいき、そういう「前向き」の資金需要ではなく「後ろ向き」の資金需要、つまり下層の人々の目先の生活資金までサラ金が「金融包摂」するようになっていくと、言い換えればかつての(専業主婦を持てる上級労働者層という意味での)サラリーマン金融から、労働者金融、消費者金融になっていくと、我々の記憶に生々しい暴力的な取り立てのあれこれが全面に浮かび上がってきたというわけです。

この歴史絵解きを、どこまで説得的と感じるか否かは読者によってさまざまでしょう。

さて、読み終わって改めて「まえがき」に目を通すと、上で「金融包摂」といったことに関わる一節が再度目に入ってきました。

貧しい人に金を貸す金融包摂の代表格であるバングラデシュのグラミン銀行、その金利は年20%で現在の大手サラ金よりも高利なのですが、創設者ユヌスはノーベル平和賞を受賞しています。

この皮肉をあらためてじっくりと考えてみる必要がありそうです。

 

 

 

 

 

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コメント

皮肉も何も、「貧しい人」に金を貸すことが商売として、成立するなら、そうなりますわね、という感じしか。
それよりも、「貧しい人」の自営支援として「事業」への様々な出資形態を認めるのが良い、と思うんですよ。
民間は人に投資するのではなく、事業に投資しなさいよ。

今このときに
貧しい人に一ミリも金出さない政府と違って
消費者金融は
ご新規無利息で金貸すという
無能政府よりよっぽど役に立つ存在

本を購入しましたが、まだ読んでいないので、これから読むのが楽しみになりました。

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