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2021年2月16日 (火)

労働運動はプチブルである件について

9784480073310_600_20210216095501 昨日紹介した『経営法曹研究会報』の創刊第100号記念特集号のパネルディスカッションの中で、いろいろと面白ネタについて喋っていますが、その中で昨年の『働き方改革の世界史』に絡んでお話しした部分を。労働運動というのはそもそもプチブルの運動なんですよ。

 

緒方 先ほどのご講演で労働力が商品であるというお話がありました。資本主義社会の中ではブルジョワジーとプロレタリアートがいて、持たない者が労務の提供を商品にして対価を得るというのが、雇用契約というか、資本主義社会の中の基本的な、原理的な考え方ではないかと思います。それと、先生の先ほどのご講演で、労働力と独占禁止法との関係があって、取引契約の基本を据えて、交渉力を付けるために集団カルテルを認めたというお話がありました。労働力の商品とその関係がどう関連するのかをもう少し教えていただければと思います。

 講師・濱口 これは最近出た『働き方改革の世界史』という本にも書いていますが、今言われたブルジョワジーとプロレタリアートというのはマルクス主義的な発想で、これはむしろ欧米の主流の労働運動の発想ではありません。ですので、私の本ではマルクスは取り上げていません。取り上げていないというのは、労働運動はそういう発想ではないのです。

 では何かというと、今の言い方になぞらえて言うと、労働者はプロレタリアートではなくてプチブルです。プチブルというのは、大ブルジョワジーに対するプチブルです。商店主や何かみたいなところです。つまり、労働力を売るというのは、小さなお店が自分のところの物を売っているのと一緒です。そういう意味では、マーケットの同じアクターです。だから、労働者もそういう意味からいくとブルジョワジーです。物すごく違和感のある言い方かもしれませんが、欧米の労働運動の出発点はプチブルとしての労働運動です。プチブルというのは、労働力という商品を売るわけです。ただし、大きなブルジョワジーに比べれば弱い。だから団結するわけですが、団結というのは、つまり、別の言い方をすれば談合です。弱いプチブルが談合して、この値段以下では売らないぞと言っているわけです。それが労働運動の出発点です。

 それに対して、みじめな労働者があまりにもかわいそうだから、我々社会主義者がお前たちを救ってやろうというのがマルクス主義なので、流れとしてはその2つは全く別だと思ったほうがいいと思います。

 労働は商品ではないというのはどういうことかというと、商品を売っている労働組合が、商品を売る人間が、談合するのはけしからんと言って繰り返し摘発されたわけです。しかも、罰金が2倍返し、3倍返しのような迫害を受けた。それに対して、アメリカ労働総同盟(AFL)のサミュエル・ゴンパーズは立法運動をして、法改正を勝ち取った。反トラスト法の中に、労働者が団結してカルテルのようなものを結んでも、それは対象にしないという法律をつくらせようという運動を延々と何十年もやって、ついにそういう法律が出来るわけです。アメリカの労働運動の歴史は、その運動の歴史です。

 日本はそれが全部終わってから、独禁法もそれが終わってからやってきたので、それがあまり表に見えない。ですが、根っこをたどると、実はそういう話になっています。

 ですので、労働は商品でないというのは、商品だけれどもカルテル規制の対象にはするなという意味での言葉だというのが本来の意味ですが、そもそも雇用関係が人間関係になってしまって、労働力が本当の意味で商品でなくなってしまっている日本では、逆に、まともに商品として、この性能は幾らだということを言うと、労働者を商品扱いしてけしからんというような訳の分からない批判になってしまっている。その辺のずれ、おかしさがあるということを言いたかったわけです。

 その辺は最近出た本の中でももう少し詳しく解説していますので、読んでいただければと思います。

 

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