新年早々、日経新聞は
新年早々、日経新聞は、あれほど口が酸っぱくなるほど違うといっているのに、依然として
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO67690860V21C20A2M11300(<キーワード>ジョブ型雇用)
あらかじめ職務内容や職責を規定した職務定義書(ジョブディスクリプション)を策定し成果に基づき評価する仕組み。欧米で一般的だ。・・・・日本では勤続年数に応じて昇給する「年功型」が多数派だが、成果に基づき評価されるジョブ型では年功概念は否定される。同期入社でも給与格差が拡大する可能性がある。・・・
などと言っていますな。
ジョブ型とは、ヒトじゃなくて人をはめ込むべきポストに値札が付いているんだ、と百万回言っても、そもそもヒト基準の発想から脱却していない脳みそで書くものだから、どうしてもこうなってしまうんですね。
それにしても、そもそもジョブ型社会ではありえない「同期」という概念を何の疑いもなく持ち出し、「同期入社でも給与格差が拡大する」などと、頭のてっぺんから足のつま先までメンバーシップ感覚にどっぷり漬かり切った脳みそで、よくも「ジョブ型」を人様に解説しようなどという気になったものだと、その匹夫の勇に驚嘆の念を漏らさざるを得ません。
たまたま同じ時期に就職した者同士であっても、ジョブが違えば給与が違うのが当たり前というジョブ型社会の常識が、かけらも脳みそに浸み込んでいないのですね。
ジョブ自体で値段に差がつくという発想が根っこにないものだから、成果を持ち出さないことにはみんな平等になってしまうという恐怖感から逃れられないのでしょう。でもその成果って、結局日本的な「能力」に化けてしまうんですがね。
こうして、いかにも欧米風に持ち出された「ジョブ型」は、結局極めて日本的な「能力評価による格差」に堕してしまうわけです。
もういい加減こういうジョブ型論の間違い指摘は飽きたし、先日出た『ジュリスト』1月号の座談会で十分すぎるくらい喋ったので、そろそろ卒業しようかなと思っていたのに、新年早々、こういうのを見せつけられると、お前なんかまだまだ卒業させてやらないぞという意地悪な意図を感じざるを得ませんね。
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日経新聞の「ジョブ型」解説ですが、むしろ後半の方がおかしいですね。
曰く、「… (中略)日本では勤続年数に応じて昇給する「年功型」が多数派だが、成果に基づき評価されるジョブ型では年功概念は否定される。同期入社でも給与格差が拡大する可能性が高い。ジョブ型が一般的な欧米では企業内で特定のジョブがなくなれば、雇用もなくなるケースが多い。成果と評価の結びつきを維持しつつ雇用を保障する「日本版ジョブ型」の在り方が模索されている。」
おそらく、意地悪な意図はないのでしょう。日経新聞としてはたぶん精一杯、わかる範囲で描いているだけかと…。
以下、あくまでご参考まで〜小職では「ジョブ型」の解説は次のようになります。
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日本と韓国の多くの企業で一般的ないわゆる「正社員」(職務無限定の無期雇用社員)は、世界的には極めてユニークな雇用形態である。それを「メンバーシップ型」と名付けるとき、そうではない世界標準の雇用形態のことを対比して「ジョブ型」と呼ぶ。
メンバーシップ型雇用では、多くの同質かつ均一な労働者が学校卒業直後に「新卒」で企業に入社し、その後中高年まで長期間勤め上げることを念頭に、会社主導の広範かつ柔軟な職務変更(人事異動)、年功昇進/賃金、定年退職と手厚い退職金(賃金の後払い)等によって中長期的な社員の労務貢献に報いることを特徴とする。
一方で、世界(ジョブ型雇用)では〜そのような特殊なメンバーシップ型が前提とする労働者の同質性や均一性及び新卒採用と長期雇用という諸条件は見出されないため、雇用及び人材マネジメントの仕組みは必然、本来的なもの〜各人の職務内容(ジョブディスクリプション)に基づくものとなる。すなわち採用はポジション別に行われ、賃金は職務別(ジョブレベル)に応じて設定され、処遇は社員の短期的な貢献に都度報いることを特徴とする。
すると、日本では第二次世界大戦以降すでに半世紀以上にわたってほぼ全ての会社でメンバーシップ型雇用を唯一のデフォルトとしてきたため、残念ながら、一般の人たちがそうではない雇用形態(すなわちジョブ型)について想像することすら困難を極める状況となっており、2021年初めの現時点では、そうした結果、ほぼ全ての企業がこの誤った現状認識のもと会社側にとって大変都合のよい手法で「日本版ジョブ型」の導入という全く訳の分からない制度変更を試みるという異例の事態が生じている。
投稿: ある外資系人事マン | 2021年1月 1日 (金) 20時20分
いえいえ、卒業されては困ります。うそつきをただすことを継続してください。
濱口先生のような、影響力のある人に発言していただかないと何ともなりません。
私も微力ながら、機会がある度に「日経に気を付けて」と言っています。
今後もがんばってください。
投稿: 斉藤貴久 | 2021年1月 2日 (土) 07時21分