『新しい労働社会』が12刷
版元の岩波書店から、2009年に刊行した『新しい労働社会-雇用システムの再構築へ』(岩波新書)が12刷になるという連絡が来ました。
刊行から12年になり、その間、そこで主張していた長時間労働の是正や非正規労働者の均等待遇は「働き方改革」の看板の下で政策課題として取り上げられるようになりましたが、本来のものとは似ても似つかない「同一労働同一賃金」が謳われるなど、言葉だけが踊っています。とりわけ、前著が定式化した「ジョブ型」という言葉が、コロナ禍の中で経団連や日経新聞主導で流行語となりましたが、雇用システム論を抜きにした小手先の成果主義の言い換えに過ぎず、かえって誤解をまき散らしています。
『若者と労働』『日本の雇用と中高年』『働く女子の運命』といった対象集団ごとの新書に対して、広く日本の労働問題全般にわたって今日的課題を論じた本書のような本がそろそろ必要なのかもしれません。
はじめに序章 問題の根源はどこにあるか-日本型雇用システムを考える1 日本型雇用システムの本質-雇用契約の性質職務のない雇用契約長期雇用制度年功賃金制度企業別組合2 日本の労務管理の特徴雇用管理の特徴報酬管理の特徴労使関係の特徴3 日本型雇用システムの外側と周辺領域非正規労働者女性労働者中小企業労働者第1章 働きすぎの正社員にワークライフバランスを1 「名ばかり管理職」はなぜいけないのか?マクドナルド裁判管理職と管理監督者スタッフ管理職(コラム)組合員資格と管理職2 ホワイトカラーエグゼンプションの虚構と真実ホワイトカラーエグゼンプションの提起政府の奇妙な理屈付けと経営側の追随労働側のまともな反論「残業代ゼロ法案」というフレームアップ(コラム)月給制と時給制3 いのちと健康を守る労働時間規制へ消えた「健康」の発想過重労働問題と労働政策の転換まずはEU型の休息期間規制を4 生活と両立できる労働時間を日本型「時短」の欠落点ワークライフバランスの登場普通の男女労働者のための基準(コラム)ワークシェアリングとは何をすることか?5 解雇規制は何のためにあるのか?恒常的時間外労働と整理解雇法理遠距離配転や非正規労働者と整理解雇法理生活との両立を守る解雇規制こそ必要第2章 非正規労働者の本当の問題は何か?1 偽装請負は本当にいけないのか?偽装請負追及キャンペーン「偽装請負」とはそもそも何か?経団連会長の指摘請負労働の労働法規制2 労働力需給システムの再構成登録型派遣事業の本質労働組合の労働者供給事業臨時日雇い型有料職業紹介事業労働力需給システムの再構成(コラム)日雇い派遣事業は本当にいけないのか?3 日本の派遣労働法制の問題点「派遣切り」の衝撃EUの派遣労働指令業務限定の問題点「ファイリング」の無理製造業派遣禁止論の無理4 偽装有期労働にこそ問題がある登録型派遣事業禁止論の本質EUの有期労働指令有期労働契約をどう規制すべきか5 均衡処遇がつくる本当の多様就業社会均衡処遇の必要性職能資格制度における「均衡処遇」期間比例原則の可能性賃金制度改革の社会的条件(コラム)職能資格制度と男女賃金差別第3章 賃金と社会保障のベストミックス-働くことが得になる社会へ1 ワーキングプアの発見ワーキングプアの発見プアでなかった非正規労働者像生活できない最低賃金2 生活給制度のメリットとデメリット生活給制度はいかに形成されたか生活給制度のメリット生活給制度のデメリット日本的フレクシキュリティのゆらぎ(コラム)家族手当の社会的文脈3 年齢に基づく雇用システム年齢差別問題の再登場年長若年者への年齢差別問題学卒一括採用システム4 職業教育訓練システムの再構築公的人材システム中心の構想企業内教育訓練体制の確立職業指向型教育システムに向けて日本版デュアルシステムの可能性(コラム)教育は消費か投資か?5 教育費や住宅費を社会的に支える仕組み生計費をまかなうのは賃金か社会保障か二つの正義のはざま教育費や住宅費を支える仕組み(コラム)シングルマザーを支えた児童扶養手当とその奇妙な改革6 雇用保険と生活保護のはざま雇用保険と生活保護の断層日本型雇用システムに対応した雇用保険制度のほころび(コラム)登録型プレミアムの可能性トランポリン型失業扶助生活保護の部分的失業給付化働くことが得になる社会へ第4章 職場からの産業民主主義の再構築1 集団的合意形成の重要性「希望は戦争」という若者誰が賃金制度を改革するのか非正規労働者も含めた企業レベルの労働者組織の必要性2 就業規則法制をめぐるねじれ労働条件の不利益変更は個別労働問題なのか?合理性の判断基準としての労使合意労働契約法の迷走3 職場の労働者代表組織の再構築労働者代表組織のあり方過半数組合と労使委員会新たな労働者代表組織の構想(コラム)労働NGOとしてのコミュニティユニオン4 新たな労使協議制に向けて整理解雇法理の再検討日本型労使協議制の光と影(コラム)フレクシキュリティの表と裏5 ステークホルダー民主主義の確立三者構成原則への攻撃三者構成原則の現状と歴史ステークホルダー民主主義の確立に向けて
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