『雇用差別と闘うアメリカの女性たち』
ジリアン・トーマス著、中窪裕也訳『雇用差別と闘うアメリカの女性たち 最高裁を動かした10の物語』(日本評論社)を、訳者の中窪さんよりお送りいただきました。ありがとうございます。
https://www.nippyo.co.jp/shop/book/8412.html
1964年公民権法が定めた雇用における性差別禁止。その規定を出発点に、働く女性に対して懐疑的な時代と社会の中、権利を求めて闘った女性たちの《10の物語》。
中窪さんの翻訳書としては、6年前に出されたレッドベターの『賃金差別を許さない』に続き、女性差別をめぐる本ですが、今回のは10のケーススタディです。
プロローグ
第1章 女性と子どもは最後に
第2章 刑務所の壁を突き破れ
第3章 (より)長生きして幸せに
第4章 敵対的な環境
第5章 「床」であって「天井」ではない
第6章 女性パートナーへの道
第7章 妊娠する可能性のある方は
第8章 サンドラ・デイ・オコナー判事に言ってやる
第9章 通報者を撃つな
第10章 安全な配達、安全な出産
エピローグ
謝辞
訳者あとがき
冒頭のプロローグで描かれるのは、アメリカ公民権法制定直前に、人種差別を続けたくて公民権法案を葬り去るために、わざと条文に「性別」を入れる修正を提案した南部出身の80歳のじいさんの話です。
この話、私の『働く女子の運命』でもちょっと触れましたが、そこでは、そのエピソードに続いて、「さて、ここからが重要です。いかに最初の意図は別なところにあったとしても、法律で男女同一賃金や男女差別の禁止が規定されれば、それらはそれ自体のロジックで動いていきます。」と書きました。
でも、実のところ、法律ができたからと言って、それも人種差別主義者の修正で思いもかけず入ってしまったような条項であれば、そう簡単に現実社会を動かしていったわけではなく、それを使って裁判に訴えて、世の規範を動かしていった女性たちの懸命の努力があったということを、当たり前ではありますが改めて思い起こさせるのが本書です。
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