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« 報酬の労務対償性をめぐって | トップページ | 『POSSE』46号 »

2020年12月 7日 (月)

「ジョブ型」は成果主義じゃない 広がりどうみる――名付け親・濱口桂一郎さんに聞く@朝日新聞

本日の朝日新聞の真ん中の方(25面)に、私のインタビュー記事が載っています。インタビュワーは榊原記者。先日(11月21日)に電子版に載ったものを紙面の都合で若干短縮したバージョンです。

https://www.asahi.com/articles/DA3S14721771.html

「ジョブ型」と称した人事制度を採り入れる企業が増えています。日立製作所などの大手も導入し、日本型雇用が本格的に崩れるとの見方もあります。「ジョブ型」の名付け親として知られ、労働政策研究・研修機構で研究所長を務める濱口桂一郎さんは「ジョブ型は『成果主義』の代替用語ではない」。一体、どういうことなのでしょうか。 ・・・・

これで、朝日と産経という一見対照的な論調の新聞にわたくしのほぼ同じ主張のインタビューが載り、それは日経新聞流の「ジョブ型」の批判であり、そして一見それと対照的に見える東京新聞は実は日経流の認識を無批判にそのまま受け入れて単にそれを罵っているだけ、という、なかなかに興味深い配置状況が浮かび上がってきますね。

ちなみに、肝心の日経新聞も本日の経済教室では本田由紀さんが登場し、自ら誤解を糺していますが、

https://www.nikkei.com/article/DGXKZO67002130U0A201C2KE8000(専門性とスキルの尊重を ジョブ型雇用と日本社会 本田由紀 東京大学教授)

その中で、わたくしがこう描写されておりますな。

・・・注目が高まっているジョブ型雇用だが、言葉が広まるとともに多くの誤解も生まれており、中心的に提唱してきた濱口桂一郎・・・が、自身のブログや諸所のメディアで懸命に誤解を正している。・・・

いやまあ、懸命というか、名付け親としての製造物責任があるもので・・・。

(参考)

https://www.sankei.com/life/news/201014/lif2010140001-n1.html(間違いだらけの「ジョブ型」議論、成果主義ではない…第一人者・濱口桂一郎氏が喝!)

https://www.sankei.com/economy/news/201115/ecn2011150001-n1.html(【新章 働き方改革】成果主義?解雇されやすい?思い込みが煽る「ジョブ型雇用」不安 労働政策研究・研修機構研究所長・濱口桂一郎)

・・・というのも、最近マスコミにあふれるジョブ型論のほとんどは一知半解で、言葉を振り回しているだけだからだ。ここでは、その中でも特に目に余る2つのタイプを批判しておきたい。
 1つ目は特に日経新聞の記事で繰り返し語られる、労働時間ではなく成果で評価するのがジョブ型だという議論だ。あまりにも頻繁に紙面でお目にかかるため、そう思い込んでいる人が実に多いのだが、これは9割方ウソである。 ・・・・
 もう一点、ジョブ型になれば解雇されやすくなるという趣旨の議論が推進派、反対派の双方で見られる。・・・最近では東京新聞に解雇しやすいとジョブ型の導入に警鐘を鳴らす記事が掲載された。・・・そう思い込んでいる向きも多いのだが、これも8割方ウソである。

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コメント

余計なお世話かとも思いましたが〜当ブログ読者でも日経新聞記事を日々閲覧されない方も一定数おるかとも推察され〜今回の本田由紀東大教授の同コラム記事をブログ読者皆さんのご参考になる事を祈念して勝手ながら全文掲載させていただきます。その後、小職なりのコメントも付けましたので、念のためご参考まで…。

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専門性とスキルの尊重を ジョブ型雇用と日本社会 

「ジョブ型雇用」という言葉を頻繁に目にするようになり、早くから提唱していた者の一人である筆者としては隔世の感がある。その契機となったのは日本経済団体連合会がジョブ型雇用の方針を打ち出したことにある。

2018年11月の提言「Society5.0―ともに創造する未来―」から、20年3月の採用と大学教育の未来に関する産学協議会・報告書「Society5.0に向けた大学教育と採用に関する考え方」に至るまで、近年発表された4つの提言においていずれもジョブ型雇用の推進が掲げられている。

そうした動きを反映して、日立製作所、富士通、NECなどをはじめ、企業が実際にジョブ型雇用の導入を進めていることが報道されている。日本経済新聞(19年12月26日)の記事にある「社長100人アンケート」の結果をみると、ジョブ型雇用を導入している企業は43.8%、導入を検討している企業が19.4%と、合計63.2%が前向きの姿勢を示している。

注目が高まっているジョブ型雇用だが、言葉が広まるとともに多くの誤解も生まれており、中心的に提唱してきた濱口桂一郎・労働政策研究・研修機構労働政策研究所長が、自身のブログや諸所のメディアで懸命に誤解を正している。

要点を復習すると、ジョブ型雇用は(1)成果主義ではなく(2)個々の社員の職務能力評価はせず(3)解雇がしやすくなるわけではなく(4)賃金が明確に下がるわけではない――ということだ。この点に関しては、紙面でも「労働時間ではなく成果で評価する。職務遂行能力が足りないと判断されれば欧米では解雇もあり得る」などと間違った説明がされており、反省を求めたい。

ジョブ型雇用とは、職務記述書(ジョブディスクリプション)で規定されたジョブに、それを遂行するスキルをもった働き手を当てはめるやり方だ。そのジョブを支障なく担当していれば、成果や職務遂行能力のこまごまとした評価は行わない。社内にそのジョブが存在しなくなった場合も、欧州では他のジョブへの変更を打診するよう定められており、使用者側の都合による解雇は厳しく規制されている。

賃金については、安井健悟・青山学院大学教授らの研究「無限定正社員と限定正社員の賃金格差」によれば、業務限定正社員(ジョブ型雇用)の場合には無限定正社員(従来のメンバーシップ型雇用)よりも月収が6.5%下がるが、そのほとんどは労働時間と職種の違いから説明され、ジョブ型であるから下がるというわけではない。

すなわちジョブ型雇用とは、労働条件がより厳しく、成果主義・能力主義が徹底され、雇用が流動化しやすいというものではまったくない。もし、ジョブ型雇用をその方向で悪用しようとしている企業があるのであれば、徹底した批判と是正要求が必要である。

正しいジョブ型は、むしろ働き方を改善するためのものである。鶴光太郎・慶応大学教授らの研究「多様な正社員の働き方の実態」などによると、ジョブ型雇用の正社員は従来型のメンバーシップ型雇用の正社員に比べ、仕事内容や労働時間に関する満足度が高く、ストレスや不満は少ない。

輪郭が明瞭なジョブに専心できるという働き方は、使用者のフリーハンドで仕事内容が量・質ともに無限定に変化・増大する従来型の雇用に比べ、働き手にとっての負荷や不確実性が軽減される。加えて、もっとも重要な点は、ジョブ型雇用ではジョブに即した専門性やスキルが発揮しやすく、それをさらに向上・更新させることへの働き手の動機づけにもつながりやすいということである。従来型の働き方では、これらの点が不足しやすく、それが日本の雇用や経済にとって重大な弱点となっている。

厚生労働省の「平成30年版 労働経済の分析 ―働き方の多様化に応じた人材育成の在り方について―」は、経済協力開発機構(OECD)の「変化する、求められるスキルの評価と予測」に基づき、国際比較を行っている。

その結果、日本では労働者のスキル不足を感じている企業の割合および労働者の教育経験・専門分野・スキルと仕事のミスマッチが生じている割合が突出して高く、それにもかかわらず企業の能力開発費が国内総生産(GDP)に占める割合が他国と比べて著しく少ないことを指摘している。

この点については、筆者の「世界の変容の中での日本の学び直しの課題」でも論じている。OECD国際成人力調査(PIAAC)の結果から、日本の成人の「学び直し」が他国と比べて少なく、また職場や労働市場においてスキルを発揮できている度合いも国際的に見て低いことがわかる。

国内の学び直しの実情に関して、経済産業省産業構造課が18年に実施した「リカレント教育に関する実態調査」データを用いて検討すると、仕事に関連する学び直しの実施率には雇用形態や性別などによる格差が大きい。また自発的な学び直しの意欲そのものは過半数の成人が示しているが、正社員および非正規男性では労働時間の長さ、非正規男女では費用負担、正規・非正規の女性では家事時間の長さがそれぞれ障害となっている。

同調査では、こうした憂慮すべき事態がある中で、自身を「スペシャリスト」であると回答している正社員(大卒正社員サンプルの中で約15%を占める)は、学び直しの意欲・実施率ともに目立って高いことが注目される。このスペシャリストの職種は「専門的・技術的な仕事」が40%を占めるが、それ以外にも「管理的な仕事」17%、「事務的な仕事」13%、「サービスの仕事」15%など幅広く、ジョブ型正社員とイコールではないが重なる層であると考えられる。

上記の論考には掲載していないが、追加分析を行ったところ、スペシャリストはそれ以外と比べて「業務スキル水準」「大学での専攻分野と仕事の関連度」「収入」「仕事満足度」がいずれも高い傾向が見られた(図参照)。この傾向は、スペシャリスト内で約14%を占める医療系学部出身者を除いて分析しても、同様に確認された。

人工知能(AI)に限らず、技術が目まぐるしく進展・変容する中で、高度な専門性やスキルを発揮し不断にアップデートしていくことは不可欠である。日本経済の低迷や衰退の重要な原因が、この不可欠な条件の欠落にあることについては、あまたの指摘がある。だからこそ、従来の雇用のあり方とはなじまない面があっても、可能なところからジョブ型を切り出していくことが肝要だ。

使用者側は、社員の中から希望者を募り、学校・大学やその後の学びとスキルを尊重しつつ、職務記述書と労働条件について労使間で調整するといった形で、働く側の発意を生かしたジョブ型雇用の導入と拡大に、真剣に取り組んでいただきたい。

ーーーー
ということで、個人的に一番興味深かった(かつ嬉しかった)点は、つまるところ労働者のリスキル、社会人の学び直しという観点から(正しい)ジョブ型を(社会政策的)観点から強く推奨されていらっしゃる点ですね。それと意外にも面白かったのは、明示的には言及されてませんが、実は当の日経新聞さんの誤ったジョブ型記事をやんわり指摘されていること…(苦笑)。

最後に一点だけ、内容の誤りを指摘しますと、文中の(2)「個々の職務能力評価はせず」の箇所ですが、これは正しくありませんね。時折「ジョブ型で工場のブルーカラー労働者には業績評価はされない(?)」というような記述を見かけますが、それはそれで産業労組の労働協約上等の制約でこうした特殊なケースもあるのかとは想像しますが、少なくともジョブ型雇用における圧倒的大多数の普通のオフィスワーカーにおいて各人の職務遂行能力やパフォーマンスが「評価されない」ということはまずありません。正しいジョブ型の場合、ペイフォージョブが基本ですからペイの多寡はジョブ(サイズ)に比例し、それは職務評価によってジョブそのものに値付けされ、つまり人ではなくポジション自体にまず値段がついている訳ですが、そこにアサインされている当該労働者のレベルや適格性(職務遂行能力及びパフォーマンス)は毎年厳しく会社から「評価」されない訳がありません。すなわち、労働者の働きぶりと労働の成果、それらを支える職務遂行能力の評価は、メンバーシップ型とジョブ型の区分を問いません。どんな企業もマネジャーは部下の職務遂行能力を評価しています。

追記として少しややこしくなりますが、ジョブ型人事制度では「評価」はその対象の違いによって次の3つに区分されます。

Job evaluation 職務評価(ジョブの価値評価。その上でJD作成)
Talent assessment 人材評価(採用や昇進時の候補者アセスメント)
Performance appraisal パフォーマンス評価(年次の個人業績評価)

日本語ではどれも同じ「評価」の用語を当てますが、実際には評価される対象と手法の区別(概念の整理)が、ジョブ型人事では厳密に求められるます〜エバリュエーション、アセスメント、アプライザル〜微妙に「評価」のニュアンスが違うようです。

日経はゼロ年代と比べてかなりソフトになってて都市部ビジネスマンの感覚で見れば圧倒的にまともです。
逆に田舎の高齢保守層からサヨク(パヨクって言うんですかね)でネオリベでリベサヨに見えるのかもしれませんが。
首都圏中堅企業で産経を置いてあること自体がコンプラ問題になって契約切ったのには笑いました。
1面2面ですらオピニオン誌みたいなおどろおどろしい記事が満載で、ちょっとどうかと思います。

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