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2020年12月28日 (月)

『日本労働研究雑誌』2021年1月号(No.726)

726_01 『日本労働研究雑誌』2021年1月号(No.726)は「新たな労働市場における労働保険の役割 」が特集で、下記の通り、いずれもじっくり読まれるべき論文が並んでいます。

https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2021/01/index.html

提言 労働保険の役割 菊池 馨実(早稲田大学法学学術院教授)
解題 新たな労働市場における労働保険の役割 編集委員会
論文 新たな労働市場における労働保険の役割 西村 健一郎(京都大学名誉教授)
労働保険におけるマルチジョブホルダーへの対応のあり方 河野 尚子(京都府立大学講師)
労災保険における特別加入について──個人事業主と労災保険との関係 地神 亮佑(大阪大学准教授)
失業給付の効果分析 小原 美紀(大阪大学大学院教授)・沈 燕妮(大阪大学大学院博士後期課程)
第二のセーフティネットとしての特定求職者支援法 丸谷 浩介(九州大学教授)
紹介 労災保険における保険料の決定方法──業種区分およびメリット制における保険原理と使用者間負担調整の関係を中心に 北岡 大介(東洋大学法学部専任講師・特定社労士) 

ちなみに、解題を書かれている酒井正さんは、今年度の労働関係図書優秀賞の受賞者です(『『日本のセーフティネット格差 労働市場の変容と社会保険』(慶應義塾大学出版会) 』)。

今回のコロナ禍に関わって、労働市場のセーフティネットやフリーランスのセーフティネットについては、8月に東京労働大学で喋ったものがブックレットになっていますので、論文より読みやすいと思いますので、さらっと読んでいただけると幸いです。

https://www.jil.go.jp/publication/ippan/booklet/01.htmlブックレット『新型コロナウイルスと労働政策の未来』

Booklet01201221_20201228092101 世界的に急速に蔓延しパンデミックとなった新型コロナウイルス感染症への緊急対策として打ち出された雇用調整助成金の要件緩和や適用拡大、新たな休業支援金の制定、アルバイト学生へのセーフティネットの構築、さらには学校休校によってクローズアップされたフリーランスへのセーフティネットの問題や、一斉に拡大したテレワークがもたらした様々な課題など、各分野のさまざまな労働政策について、歴史的経緯を振り返りつつ、その政策的意義について検討・分析を行っています。

特集以外では、これが、先日労働政策フォーラムで取り上げたアニメーターの働き方につながる問題を取り上げています。ちなみに、松永伸太朗さんの『アニメーターはどう働いているのか 集まって働くフリーランサーたちの労働社会学』ナカニシヤ出版も、今年度の労働関係図書優秀賞受賞作です。

 研究ノート(投稿)雇用によらない働き方におけるワーク・エンゲイジメントの規定要因──雇用者とフリーランスの比較分析 石山 恒貴(法政大学教授)

松永さんは、「やりがい搾取」という通り一遍の決めつけに疑問を呈し、彼らの働き方を駆動しているものはなにかを探ろうとしたわけですが、石山さんの論文はそれを別の角度から照らそうとしているようです。

近年,雇用によらない働き方が注目されているが,現段階では定義自体が曖昧である。そこで本研究では,フリーランスの概念を働き方の特徴でとらえた「特定の企業や団体,組織に専従しない独立した形態で,自身の専門知識やスキルを提供して対価を得る人」を,雇用によらない働き方の定義とする。そのうえで,フリーランスと雇用者のデータを同時に分析して,ワーク・エンゲイジメントの水準を比較し,またその水準を規定する要因間のメカニズムを解明する。組織に所属する雇用者の特徴を反映したJD-Rモデルとフリーランスの規定要因のメカニズムを分析することで,日本において実証的研究が乏しかったフリーランスの二面性の実態の解明に寄与することを本研究の目的とする。分析結果は,次のとおりとなった。フリーランスのワーク・エンゲイジメントの水準は,傾向スコアマッチングで調整したうえで,会社員より高かった。その差異は,キャリア自律,専門性,創造性という規定要因が会社員と比べて高いために生じており,規定要因からワーク・エンゲイジメントに与えるメカニズムにフリーランスと雇用者の間に違いがあるためではなかった。また,キャリア自律を起点としてワーク・エンゲイジメントを高めるメカニズムが存在した。フリーランスに関する政策立案の議論においては,単に保護するという視点だけでなく,キャリア自律を起点とするメカニズムを促進していくことにも留意する必要があろう。

書評は2つですが、この土岐さんの本も本年度の労働関係図書優秀賞受賞作です。

土岐将仁 著『法人格を越えた労働法規制の可能性と限界──個別的労働関係法を対象とした日独米比較法研究』鎌田 耕一(東洋大学名誉教授)
早川智津子 著『外国人労働者と法──入管法政策と労働法政策』根岸 忠(高知県立大学准教授) 

早川さんの本に対する根岸さんの「あれが足りない、これも足りない」という注文は、いちゃもんのようですが、読んだ時に私も感じたものでした。というか、早川さんの手つきはやや優等生的で、外国人労働問題という建前は紳士的だけど裏側は結構やくざな分野を切り裂くには、いささかお上品すぎるのではないかという印象は感じたところです(山口浩一郎先生も同様の感想を抱かれた由)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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