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2020年12月

2020年12月30日 (水)

『経営法曹』206号

Image0-2 経営法曹会議の『経営法曹』206号をお送りいただきました。ありがとうございます。今号は230ページという分厚さで、年間重要判例と経団連労働フォーラムがメイン記事ですが、木村貴弘さんの職安法とプラットフォームビジネスのエッセイも、これから重要となるトピックを扱っていて興味深いです。

読んでて面白かったのは、リモートでやってる経団連労働法フォーラムで、前半のハラスメントについて議論しているところで、「異性の先輩社員から告白されたケースのセクハラ」です。セクハラというか、一方的な恋愛感情が相手にとってはまごうことなきハラスメントになるというケースですね。話は今津幸子、木下潮音という女性経営法曹が中心に進むんですが、そこに松下守男さんが(蛮勇をふるって)割り込みます。

松下 私はこの問題はそんなに簡単ではないと思います。この男性は、要は職場の女性に好意を持って、交際を求めて、一度断られたけれどももう少しあきらめずに頑張りたいと思っているけれども、手を握ったこともないという話だった時に、それほどその男性のことを非難しないといけないのかなというのが一番の疑問だと思います。例えば上司、先輩だと言っていますが、後輩や同期という話であれば、こういうことは普通にあると思うわけです。・・・

「何となく炎上含みですが」という竹林議長を受けて、木下潮音さんのことばが炸裂します。

木下 ・・・職場におけるいわゆる自由な、対等な恋愛関係と、そうでないものは区別すべきであって、彼女ははっきりノーと言ったわけですから、それでも頑張るのは男の何とかだというのはいい加減にやめていただきたい。それは女性に対して、女性は職場で出会いを求めているという非常に類型的な認識を前提にしています。それは男女差別です。私ははっきり男女差別だと申し上げたいと思います。仕事をしに来ている女性に対して、今のような松下先生の言動はおやめになった方がいいと思います。

たぶん、松下さんは「手も握ったこともない」純情な男性先輩社員に、助平ったらしい中年オヤジを連想させる「セクシュアル」ハラスメントという言葉がそぐわないと感じたのでしょうが、でも一方的な恋愛感情の押し付けも立派なハラスメントではあるんですよね。

とはいえ、これまでのサラリーマン小説やサラリーマン漫画の大半が、そういう職場の恋愛シチュエーションのあらゆるバリエーションを肯定的に描き続けてきたことも事実なので、木下さんの正論がなかなか身に沁みない人が多いんだろうなとも思うわけです。まずは『課長島耕作』という昭和感覚あふれる漫画を捨てるところから始める必要がありそうです。

ハラスメントがらみの議論はいずれも面白いのですが、ここではその次の労働契約解消に係る問題から、「職務限定社員の担当業務が、外注化などで必要なくなる場合」の話。設例は社用車のドライバーなんですが、解雇回避努力がどこまでか、他の職務に配置できるかという話ばかりで、ヨーロッパであれば真っ先に論じられるであろう選択肢が全く出てこないところに、日本のメンバーシップ型社会がよく表れていると思いました。

この例では、社用車がなくなるわけではないのです。今まで社用車に乗っていた人に、これからは電車で移動してね、と言っているわけではない。単にその社用車の運転業務を外注するというだけの話です。であれば、これがヨーロッパであれば、そのジョブと一緒に俺も外注先に移して、今までと同じ仕事をやらせろという話になる。というか、それ以外の話にはなりようがない。

雇用契約の相手方の社名などという枝葉末節よりも、どういうジョブをやるかということの方がはるかに重大なのがジョブ型社会なのですから。

そして、だから、ジョブと一緒にヒトも移せというEU指令があるわけです。

社用車の運転手という最も典型的なジョブ型職種であってすら、ジョブ型社会の常識は全く意識もされないというあたりに、日本のメンバーシップ型社会の常識の根強さがよく表れているな、と感じた次第です。

 

 

 

 

 

2020年12月29日 (火)

JILPT任期付研究員【労使関係・労務管理】の募集・採用について

JILPTが労使関係・労務管理分野の任期付研究員を募集しています。

今月初めからJILPTのホームページに募集要項が掲載されていますが、あまり目につかない可能性もあるので、こちらでもお知らせしておきます。

https://www.jil.go.jp/information/koubo/kenkyuin/2020/11.html

1.職務内容
常勤の研究員として機構が実施する各種研究プロジェクトに参画し、特定の政策課題に関する調査研究を自ら担当することで、政策的論点の整理や政策的インプリケーションの提示を含む研究成果の取りまとめ・発信を行うこと。

機構内の組織横断的プロジェクトや、厚生労働省等からの緊急の要請に基づく調査、国内外の他の政策研究機関等との共同研究や国際会議への参加、フォーラム・セミナーでの研究発表、定期刊行物への原稿執筆、厚生労働省職員に対する研修の講師等、機構の各種事業に参画すること。

2.募集分野
労使関係・労務管理

3.募集人員
研究員(任期付) 若干名

4.応募資格
次の条件をすべて満たすこと。

募集分野に関連した研究業績を過去5年以内に有すること。
国内及び海外(とくにアメリカ又はフランスが望ましい)の労使関係・労働事情、労働政策・制度等の実態把握およびその結果を踏まえた政策形成に関心をもち、その調査研究に継続して取り組む意欲と情熱があること。
上記の研究に係る研究領域に関連した研究領域に係る学部または学科(名称を問わず同様の研究分野であるものを含む)の博士課程修了者(単位取得退学者を含む)または研究業績からみてこれと同等以上の能力と経験を有すると認められる者。
自ら、もしくは他の者が設計・実施したヒアリング調査又はアンケート調査を分析した実績を有すること。
報告書や論文を日本語で執筆・発表できる能力を有すること。

5.採用予定日
令和3年4月1日以降 ※採用日については相談に応じる。

6.勤務条件
雇用形態
任期付常勤研究員

※任期は原則、採用日から3年間。任期満了後、期間の定めのない雇用契約を機構から申し出ることがある(テニュアトラック)。

勤務地
労働政策研究・研修機構 労働政策研究所
東京都練馬区上石神井4-8-23 (西武新宿線上石神井駅より徒歩10分程度)

勤務時間
裁量労働制

休日・休暇
土曜日、日曜日、国民の祝休日、年末年始、年次有給休暇等

給与等
当機構の給与規程等に基づき処遇。本俸、各種手当、賞与等。

(参考) 研究員(任期付)の本俸月額37万2,500円(令和2年3月現在)

福利厚生
健康保険、厚生年金、企業年金基金、雇用保険、労災保険に加入

7.選考方法
書類審査・論文審査
研究発表
面接
※書類審査・論文審査を通過した者を対象に研究発表を実施する。
日時・場所は対象者に2月下旬を目処に個別に連絡する。

8.応募方法
提出書類
履歴書(日本工業規格様式、写真貼付)
連絡用の電話番号とE-mailアドレスを必ず記入すること。
成績証明書(最終学歴のもの)
修了証明書(最終学歴のもの)
業績目録(形式任意:A4用紙)
著書
査読付学術論文、その他学術論文
学位(学位名、論文題名、取得年月日、大学名。博士号を有する場合は、修士号についての記載は不要)
学会における活動
受賞歴
社会的活動 等
主要研究業績
主要研究業績3点以内のコピーを各1部

労働問題の実証研究の業績がある場合は含めること。
ヒアリング調査又はアンケート調査を設計・実施・分析した研究業績がある場合は含めること。
査読付論文がある場合は含めること。
いずれも要約を添付すること。外国語論文の場合は、邦訳及び日本語要約を必ず添付すること。
共著論文の場合は、本人の担当・貢献部分を明確にすること。
小論文(形式任意:A4用紙2枚程度)
機構において労働分野の政策課題についての研究を行うと仮定し、今後、中長期に重要になると考えられる課題を示した上で、研究実施企画書を試作すること。
提出期限
令和3年1月15日(金曜)必着
書類の送付先
〒177-8502 東京都練馬区上石神井4-8-23
独立行政法人 労働政策研究・研修機構 研究調整部 研究推進課 あて

※封筒の表に「【労使関係・労務管理】応募書類在中」と朱書きで明記し、簡易書留または書留にて郵送(宅配便も可)すること。持参不可。

応募に関するお問合せ先
独立行政法人労働政策研究・研修機構
研究調整部 研究推進課 研究員採用担当
電話 03-5991-5146(ダイヤルイン)
E-mail:jilpt-saiyo2020[at]jil.go.jp ※[at]を@にご修正ください。

9.その他
応募に係る費用は、全額応募者負担とします。
提出頂いた応募書類は、採用選考の用途にのみ使用し、原則として返却しません。
また、入手した個人情報は、「独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律」をはじめとする個人情報に関する法令および当機構の規程にもとづき適切に管理するとともに、正当な理由なく第三者への開示、譲渡及び貸与を行うことは一切ありません。 

 

 

2020年12月28日 (月)

坂本貴志『統計で考える働き方の未来』

9784480073495 坂本貴志さんより新著『統計で考える働き方の未来─高齢者が働き続ける国へ』(ちくま新書)をお送りいただきました。ありがとうございます。

https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480073495/

年金はもらえるのか?貯金はもつのか?「悠々自適な老後」はあるのか?それとも、生活していくために死ぬまで働かなければいけないのか?現在、将来の生活や仕事に対し、多くの人が不安を抱いている。しかし、本当に未来をそんなに不安に思う必要などあるのだろうか?本書は、労働の実態、高齢化や格差など日本社会の現状、賃金や社会保障制度の変遷等を統計データから分析することで、これからの日本人の働き方を考える。働き方の未来像を知るのに必読の一冊。

坂本さんは、厚生労働省→内閣府→三菱総研→リクルートワークスと、官民の研究職を横に動いてこられた方で、基本的にはマクロな視点の経済分析を基礎に置きつつ、社会の様々な人の働き方の細部にも目配りがされています。

はじめに―私たちはいつまで働くのか
第1章 超高齢社会のいま
第2章 賃金は増えていないのか
第3章 格差は広がっているのか
第4章 生活は豊かになっているのか
第5章 年金はもつのか
第6章 自由に働ける日はくるのか
第7章 職はなくなるのか
第8章 生涯働き続けねばならないのか 

最終章では、「生涯現役」の影の面にも目を向け、

・・・人生の最後まで現役世代の人たちと変わらぬ働き方を続けなければならないならば、それはあまりにもつらい未来である。・・・

と語りますが、もちろんそれは、「現役世代」の働き方の問題でもあります。まさに坂本さんがその直前で女性について述べているように、

・・・かつての日本企業は男女雇用機会均等法の制定に伴い、従来の男性中心の職場にそのまま女性を組み入れる方法を採った。その結果として、長時間労働や本人の意思にそぐわない異動・転勤など企業の都合に応じた働き方を女性が強いられることとなった。日本には、遅々として働き方の改善が進まない職場において、「女性の社会進出」という大義名分の下、多くの女性が家庭と仕事とのはざまの中で苦しめられてきた過去があるのだ。

という問題とパラレルです。

この一節については、坂本さんは同時代的に経験されていないからだと思いますが、男女均等法の制定に伴って日本企業がやったのは、男の仕事に総合職、女の仕事に一般職というラベルを貼って、ごく少数の女性総合職を言い訳程度に採用することであったので、ここに書かれたような事態が大規模に出現するのはほぼ21世紀になってからです。とはいえ、それまでの男性型働き方モデルに女性をぶち込んで、はざまに苦しむ事態となったのはその通りです。

坂本さんはそれゆえ、

・・・多くの企業にとっては、雇用の在り方を抜本的に見直して高齢者を迎え入れる仕組みを整えるよりも、現役世代の社員を中心に組織を回していく方が効率的なのだ。結局、日本の企業は全ての高齢社員に満足できる働き方を用意することなどできないのである。

と、極めて悲観的な将来像を描きます。うーむ。

ここは人によっていろいろな意見のあるところでしょう。

 

 

 

 

 

 

高仲幸雄『同一労働同一賃金Q&A[第3版]』

Syoseki16 経団連出版の輪島さんより高仲幸雄『同一労働同一賃金Q&A[第3版]』をお送りいただきました。ありがとうございます。

改正法令をわかりやすく解説するとともに、各社の制度見直しに必要な情報や実務上の留意点をQ&A形式でまとめました。あわせて、均衡待遇・均等待遇をめぐる判例・裁判例を収集、整理し、問題となった待遇差のポイントを紹介します。
注目を集めた2020年10月の最高裁判決5件も踏まえた、充実の改定増補版です。

昨年5月に初版をいただいた時には、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2019/05/post-50ff10.html

なにしろ、今年2月の大阪医科薬科大学事件やメトロコマースの高裁判決まで載っています。

でしたが、今回はもちろん、最高裁5判決まで載ってます。

実務的解説書に徹していますが、たとえば、私が繰り返し指摘している基本給については、ガイドライン本文じゃなくって注なんだよということがきちんと書かれています。

 

 

 

 

 

『生活経済政策』2021年1月号(No.288)

Img_month_20201228094301 『生活経済政策』2021年1月号(No.288)をお送りいただきました。特集は「若者と政治」なんですが、

http://www.seikatsuken.or.jp/monthly/index.html

明日への視角 民主主義の回復/山口二郎
特集 若者と政治
はじめに/高安健将
政治から切り離される若年非大卒層/吉川徹
イデオロギーと若者の置かれている政治的コンテクスト/遠藤晶久
若者の「社会運動嫌い」?—社会運動に対する忌避感とその原因/富永京子
教育における政治的中立性が若年層の政治的態度に及ぼす影響/秦正樹・酒井和希
「政治的に中立でいたい」時代の「政治的なもの」 — マンハイム・シュミット・丸山/野口雅弘 

全体に、政治意識の低い近頃の若者を嘆く感が漂い、なかなか届かないだろうなあ、という感じがします。

でも、それは「政治」のイメージの問題のような気もします。若者非大卒層は「不安定な雇用、低い所得をはじめとし不利な日常を生きることを余儀なくされる」存在であるのに、政治意識が低いと嘆くわけですが、でもそれは、そこで提示される政治的争点なるものが「加計学園、大学無償化、大学入試民間試験導入延期、日本学術会議」であれば、関心を持てという方が無理難題のような。

むしろ、不利な社会的位置に置かれている彼らの問題をきちんと政治的議論のテーマとして言語化する努力を、怠ってきたことの帰結なのではないか、という感じもします。もちろん、言語化だけでは物事は動かず、それを動かすべき社会的メカニズムが、おそらくかつての全般的低学歴時代には現場の労働組合活動がその役割を担っていたのでしょうが、その機能を失ってしまったことがその背景にあるのだろうとは思いますが。

 

 

 

 

 

 

『日本労働研究雑誌』2021年1月号(No.726)

726_01 『日本労働研究雑誌』2021年1月号(No.726)は「新たな労働市場における労働保険の役割 」が特集で、下記の通り、いずれもじっくり読まれるべき論文が並んでいます。

https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2021/01/index.html

提言 労働保険の役割 菊池 馨実(早稲田大学法学学術院教授)
解題 新たな労働市場における労働保険の役割 編集委員会
論文 新たな労働市場における労働保険の役割 西村 健一郎(京都大学名誉教授)
労働保険におけるマルチジョブホルダーへの対応のあり方 河野 尚子(京都府立大学講師)
労災保険における特別加入について──個人事業主と労災保険との関係 地神 亮佑(大阪大学准教授)
失業給付の効果分析 小原 美紀(大阪大学大学院教授)・沈 燕妮(大阪大学大学院博士後期課程)
第二のセーフティネットとしての特定求職者支援法 丸谷 浩介(九州大学教授)
紹介 労災保険における保険料の決定方法──業種区分およびメリット制における保険原理と使用者間負担調整の関係を中心に 北岡 大介(東洋大学法学部専任講師・特定社労士) 

ちなみに、解題を書かれている酒井正さんは、今年度の労働関係図書優秀賞の受賞者です(『『日本のセーフティネット格差 労働市場の変容と社会保険』(慶應義塾大学出版会) 』)。

今回のコロナ禍に関わって、労働市場のセーフティネットやフリーランスのセーフティネットについては、8月に東京労働大学で喋ったものがブックレットになっていますので、論文より読みやすいと思いますので、さらっと読んでいただけると幸いです。

https://www.jil.go.jp/publication/ippan/booklet/01.htmlブックレット『新型コロナウイルスと労働政策の未来』

Booklet01201221_20201228092101 世界的に急速に蔓延しパンデミックとなった新型コロナウイルス感染症への緊急対策として打ち出された雇用調整助成金の要件緩和や適用拡大、新たな休業支援金の制定、アルバイト学生へのセーフティネットの構築、さらには学校休校によってクローズアップされたフリーランスへのセーフティネットの問題や、一斉に拡大したテレワークがもたらした様々な課題など、各分野のさまざまな労働政策について、歴史的経緯を振り返りつつ、その政策的意義について検討・分析を行っています。

特集以外では、これが、先日労働政策フォーラムで取り上げたアニメーターの働き方につながる問題を取り上げています。ちなみに、松永伸太朗さんの『アニメーターはどう働いているのか 集まって働くフリーランサーたちの労働社会学』ナカニシヤ出版も、今年度の労働関係図書優秀賞受賞作です。

 研究ノート(投稿)雇用によらない働き方におけるワーク・エンゲイジメントの規定要因──雇用者とフリーランスの比較分析 石山 恒貴(法政大学教授)

松永さんは、「やりがい搾取」という通り一遍の決めつけに疑問を呈し、彼らの働き方を駆動しているものはなにかを探ろうとしたわけですが、石山さんの論文はそれを別の角度から照らそうとしているようです。

近年,雇用によらない働き方が注目されているが,現段階では定義自体が曖昧である。そこで本研究では,フリーランスの概念を働き方の特徴でとらえた「特定の企業や団体,組織に専従しない独立した形態で,自身の専門知識やスキルを提供して対価を得る人」を,雇用によらない働き方の定義とする。そのうえで,フリーランスと雇用者のデータを同時に分析して,ワーク・エンゲイジメントの水準を比較し,またその水準を規定する要因間のメカニズムを解明する。組織に所属する雇用者の特徴を反映したJD-Rモデルとフリーランスの規定要因のメカニズムを分析することで,日本において実証的研究が乏しかったフリーランスの二面性の実態の解明に寄与することを本研究の目的とする。分析結果は,次のとおりとなった。フリーランスのワーク・エンゲイジメントの水準は,傾向スコアマッチングで調整したうえで,会社員より高かった。その差異は,キャリア自律,専門性,創造性という規定要因が会社員と比べて高いために生じており,規定要因からワーク・エンゲイジメントに与えるメカニズムにフリーランスと雇用者の間に違いがあるためではなかった。また,キャリア自律を起点としてワーク・エンゲイジメントを高めるメカニズムが存在した。フリーランスに関する政策立案の議論においては,単に保護するという視点だけでなく,キャリア自律を起点とするメカニズムを促進していくことにも留意する必要があろう。

書評は2つですが、この土岐さんの本も本年度の労働関係図書優秀賞受賞作です。

土岐将仁 著『法人格を越えた労働法規制の可能性と限界──個別的労働関係法を対象とした日独米比較法研究』鎌田 耕一(東洋大学名誉教授)
早川智津子 著『外国人労働者と法──入管法政策と労働法政策』根岸 忠(高知県立大学准教授) 

早川さんの本に対する根岸さんの「あれが足りない、これも足りない」という注文は、いちゃもんのようですが、読んだ時に私も感じたものでした。というか、早川さんの手つきはやや優等生的で、外国人労働問題という建前は紳士的だけど裏側は結構やくざな分野を切り裂くには、いささかお上品すぎるのではないかという印象は感じたところです(山口浩一郎先生も同様の感想を抱かれた由)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2020年12月27日 (日)

『Japan Labor Issues』2021年1月号

Jli_20201227112201 JILPTの英文誌『Japan Labor Issues』2021年1月号は、JILPT研究員によるコロナ関連の2論文が冒頭に並んでいます。

https://www.jil.go.jp/english/jli/documents/2021/028-00.pdf

How Women Bear the Brunt of COVID-19’s Damages on Work  ZHOU Yanfei

Impact of the COVID-19 Recession on Full-Time Workers: Shortened Work Hours, Working from Home, and Possible Widening of Income Disparities TAKAMI Tomohiro 

周燕飛さんと高見具広さんの、すでに日本語でJILPTホームページ上に公表された論文のアップデートされた英語版です。

周さんは(マスコミ等でもよく報じられたコロナ禍が女性に打撃を与えたという話の後で)最後のパラグラフで、コロナ禍が女性の生き方、働き方を変えるきっかけになるかもしれないと論じています。

・・・Indeed, it may no longer be a fantasy to imagine a near future in which the full-time dual earner model replaces the traditional “full-time housewife”-type lifestyle. In this sense, the pandemic has the potential to be an excellent opportunity for closing the employment inequality gap between men and women. 

この2論文の次の荻野登さんの春闘の解説は、これまでの春闘の歴史を手際よくまとめていますが、最後のパラグラフでかなり踏み込んだ評論をしています。

What Is Shunto OGINO Noboru

今号の分量の過半を占めるのは小畑史子さんと児美川孝一郎さんの論文です。

 The Law to Prevent “Power Harassment” in Japan OBATA Fumiko (Kyoto University)

Where Does Career Support and Education in Japanese Universities Stand? Erosion by Business, or a New Form of University Education? KOMIKAWA Koichiro (Hosei University)

児美川論文では、最後の「大学教育の再定義」のところで、ビジネスによる浸食を呪っているだけの大学人を負け犬の遠吠えと批判しています。

・・・If this is the case, we must acknowledge that simply bemoaning universities’ blatant lack of initiative, and the “erosion” of university education through utter reliance on the business sector for career support and education, could be called the mere howling of the losing team. Bemoaning the situation alone cannot solve the current problems. Perhaps, having fully grasped the seemingly insurmountable challenges we face, and remaining cognizant of the situation, it is time for us to adopt a positive stance and take positive actions toward shaping the future.

 

 

 

2020年12月26日 (土)

これからのテレワークでの働き方に関する検討会報告書

12月23日に終わったこれからのテレワークでの働き方に関する検討会の報告書が12月25日に確定して発表されました。

https://www.mhlw.go.jp/content/11911500/000711687.pdf

重要な点はほとんど変わっていませんが、最終日にいくつか指摘された点が若干書き込まれてます。

私からは、テレワークが難しいエッセンシャルワークにも言及すべきと述べて、それが書き込まれてます。

(1)テレワークの対象者を選定する際の課題について
① テレワークの対象業務について
○ 全員がテレワーク可能である企業がある一方、一定数の出社が必要な企業、また業務の性質上テレワークを実施するのが難しい業種・職種がある6。しかしながら、一般にテレワークを行うことが難しい業種・職種であってもテレワークを実施できる場合があり、必ずしも既存の業務を前提にテレワークの対象業務を選定するのではなく、仕事内容の本質的な見直しを行うことが有用である場合がある。「テレワークに適さない業種なのでテレワークは行わない」と安易に結論づけるのではなく、経営者側の意識を変えることや、業務の見直しを検討することが望ましい。なお、いわゆるエッセンシャルワーカー等出社せざるをえない職種があることについては十分留意する必要がある。

6 軽作業、販売業、警備・清掃業、建築等、製造、ドライバー、理美容、医療・福祉専門職等(本検討会第1回参考資料)

 

 

2020年12月25日 (金)

『ビジネス・レーバー・トレンド』2021年1・2月号

202101_02 『ビジネス・レーバー・トレンド』2021年1・2月号は「テレワークの現状」が特集で、メインは9月29日にやった労働政策フォーラム「テレワークをめぐる課題」の報告とパネルディスカッションです。

https://www.jil.go.jp/kokunai/blt/backnumber/2021/01_02/index.html

【研究報告】在宅勤務の課題――近時の実情、組織と個人が心がけるべきこと 池添 弘邦 JILPT 副統括研究員
【事例報告1】フルリモートワークの実践例 中川 祥太 株式会社キャスター 代表取締役
【事例報告2】日立のテレワーク活用、そして新たな働き方へ 近藤 恭子 株式会社日立製作所 人財統括本部 人事勤労本部エンプロイーリレーション部 働き方改革グループ 部長代理
【事例報告3】サイボウズにおけるテレワークの取り組みと課題 なかむらアサミ サイボウズ株式会社チームワーク総研 シニアコンサルタント
【パネルディスカッション】コーディネーター:濱口 桂一郎 JILPT 研究所長 

このパネルディスカッション、リモートでやったためもあり、膨大な質問が送られてきて、ほとんど各パネラーの質問への回答で埋まりました。

あと、コロナといえば、一方ではテレワークですが、もう一方ではエッセンシャルワークが注目されていて(なので、テレワーク検討会でも最後にその旨の指摘をしておきましたが)、そちらの状況も労働組合へのヒアリングで載っています。

医療・介護分野の労組の取り組み
労働条件の改善と健康に生活できる賃金水準の確立を目指す 日本医労連の2021年春闘基本構想
全産業平均賃金と介護職との賃金格差は約8万円に――勤務先のコロナ禍の対応には約7割が評価 日本介護クラフトユニオンの就業意識実態調査結果から 

あと、「労働図書館新着情報」に、『働き方改革の世界史』が取り上げられました。

https://www.jil.go.jp/kokunai/blt/backnumber/2021/01_02/066.pdf

Sekaishi  本書では、労働問題のエキスパートである著者が労働運動の仕組みについて、どのような経緯でそれができあがったのかを時代と国情などから整理して解説する。例えば、欧州の横断的組合は職人組合(ギルド)をその祖とした影響が大きく、19世紀には英国で「集合取引」(コレクティブ・バーゲニング)という手法によってある程度形作られていたという。米国では集合取引とストライキを用いたジョブ・コントロール型労使関係を構築。これに対して、ドイツでは社内に従業員代表制を作り、労使で協議を行うという仕組みが定着したと強調する。こうしたメカニズムを解き明かすため、古典的な名著を紐解きながら、働き方の意味を考察。世界中で検討され、実行されてきた労働運動の理想と現実を浮き彫りにする。 最後には、日本の古典、藤林敬三著「労使関係と労使協議制」を取り上げ、労使関係の本質は、親和的な「経営対従業員関係」と対立的な「経営対組合関係」の二元的関係にある、との見方を紹介している。

 

 

2020年12月24日 (木)

『ジュリスト』2021年1月号(No.1553)

L20210529301 明日、『ジュリスト』2021年1月号(No.1553)が発行される予定ですが、

http://www.yuhikaku.co.jp/jurist/detail/020600

2020年は,新型コロナウイルス感染症の流行の影響で人々の働き方が大きく変化した1年でした。このような働き方の変化により,日本の雇用システムはどのように変化するのでしょうか。特集では,テレワーク,副業などの新たな働き方に伴う法的課題をピックアップするとともに,その背後にある雇用システムの変化にもスポットを当てながら,これからの働き方について考えます。

というわけで、表紙にでかく「WORK」と出てますが、「新たな働き方と法の役割」が特集です。

【特集】新たな働き方と法の役割

◇新たな働き方と法の役割――特集に当たって●荒木尚志……14

◇[座談会]雇用システムの変化と法政策の課題――「ジョブ型雇用社会」の到来?●森戸英幸●濱口桂一郎●田中恭代●鶴 光太郎……16

◇雇用類似の働き方と法規制――基準規制の断絶と契約法理の連続性をふまえて●本庄淳志……34

◇新たな働き方と労働時間管理――副業・兼業,テレワークを中心に●國武英生……41

◇副業・兼業と労災保険・雇用保険●小畑史子……48

◇高年齢者の雇用と処遇――定年延長・再雇用における労働条件に関する法的制約●櫻庭涼子……54

で、すでにご案内の通り、座談会に出ております。副題が「「ジョブ型雇用社会」の到来?」と、ジョブ型雇用社会に鍵かっこがついていて、しかも最後に「?」がついているのがミソです。

ちなみに、後ろの方を見ていくと、労働判例評釈で石黒駿さんが、先日法律ができた労働者協同組合の先行型である企業組合のワーカーズコレクティブの事件を取り上げておりますね。これはぜひ読みたい。

◇ワーカーズ・コレクティブの組合員の労基法上の労働者性――企業組合ワーカーズ・コレクティブ轍・東村山事件――東京高判令和元・6・4●石黒 駿……119

 

 

 

 

 

2020年12月23日 (水)

hamachanブログ2020年ランキング発表

今年も年末が近づいてきたので、恒例のhamachanブログ今年のエントリPVランキングの発表を行います。

ランキングに入る前に、今年は全国的に「ジョブ型」祭りだったことから、本ブログでも「ジョブ型」がらみのエントリが大変多くなりました。1位から10位までに「ジョブ型」ネタが6つもあります。

さて、その中でも1位はやはり「ジョブ型」です。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2020/10/post-ca0715.html(間違いだらけの「ジョブ型」議論、成果主義ではない…第一人者・濱口桂一郎氏が喝!@産経新聞)ページビュー数: 5422

私は見ていなかったのですが、何やらNHKがトンデモをやらかしたようで、それを批判するつぶやきの中に私の名前も出てきているので、

https://twitter.com/StarMoonCrystal/status/1320337339839725570

NHKでKDDIの成果主義雇用制度を欧米式ジョブ型と紹介していて、まーたhamachan先生がブチ切れるだろうなぁと

せっかくなので産経新聞に掲載されたわたくしのインタビュー記事を全文載せておきます。それほど長くない記事ですが、まあこれだけわきまえておけば、今回のNHKみたいなトンデモをしなくて済む程度のことは盛り込まれているはずです。 

今年は、日経新聞をはじめとしたおかしな「ジョブ型」論を一生懸命正しに回る1年でしたが、やはり紙媒体の新聞は日ごろ私の書くものを読まないような人にも伝わるという意味で、それなりに意味があります。

そういうインタビューを載せようとした新聞が、朝日新聞と産経新聞という、ある意味で対照的な論調でありながら、ある意味でよく似ている新聞であったこともいろんな意味で面白いことでした。

第2位も「ジョブ型」がらみですが、これはネット界の雄佐々木俊尚さんの文章にかこつけて、「ジョブ型」に対する誤解をほぐそうとしたものです。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2020/11/post-c68858.html(ジョブ型は能力主義の正反対)ページビュー数: 5263

・・・いやあ、まさにこれがアメリカ的な「ジョブ型」の神髄ですね。大事なのは、「人の能力に頼っていない」というところです。「交代要員を幾らでも量産できる」というところです。それこそがアメリカ自動車産業のブルーカラー労働者を最も典型例とするところの「ジョブ型」なんですがね。百万回いっても日本人が理解できないのはここでしょう。ジョブ型は特殊日本的な『能力主義』の正反対なんですよ。

始めに『ジョブ』ありき。そこに人をはめ込む。それがジョブ型です。

ジョブ型を論じている文章の中に妙に日本的な「能力」という言葉が出てきた瞬間に、そいつを直ちにゴミ箱に放り込むべきである理由はここにあります。

第3位は、これはやや労働法の玄人向けですが、労働組合の資格がないと労働委員会にダメ出しをされた自称「労働組合」の話です。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2020/08/post-50e58d.html(首都圏青年ユニオン連合会はまっとうな労働組合に非ず@東京都労委)ページビュー数: 3985

・・・労働組合の資格審査なんて、労働法の教科書ではどちらかというとあんまり力が入っていない部分ですよね。だいたい、不当労働行為事件で労働組合の適合性が問題になっても、「ここをちゃんと直してね」と親切に勧告して、規約を直してくればそれでOKというのが一般的なパタンなので、ここまではっきりと労組法第2条の要件を欠くから駄目じゃ!と蹴飛ばしたのはほとんど例がないと思います。

一体、そこまで駄目出しされた「組合」とはいかなるものなのか、有名な「首都圏青年ユニオン」じゃなくって、こちらの「首都圏青年ユニオン連合会」で検索してみると、・・・・・・・・

ここまではいかにも今年のホッテントリらしいのですが、第4位にはなぜか9年前のこんなエントリが入っています。竹中平蔵氏のツイートにケチをつけているんですが、これが何で今頃になってよく読まれたのかよくわかりません。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/07/post-ee4d.html(総理大臣のリコール制度はありますが・・・)ページビュー数: 3376

これは法学部卒業生だけの知識ではないはずですが、

http://twitter.com/#!/HeizoTakenaka/status/88597074291073026

>今日も国会で菅総理が「刃折れ矢尽きるまでやる」と述べた。こういう姿を見ていると、総理(および国会議員)にリコールの制度がないのは制度的不備に思える。国益を考えたら、リコール制度は必要ではないか。

日本国憲法第69条:

>内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、または信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。

国益を考えてリコールの制度がちゃんとあります。使い方を失敗した方々がおられたようですが。

ついでに国会議員については、まさに衆議院の解散がリコールでしょう。ただし、竹中氏自身が属していた参議院議員にリコールがないのは議論の余地があるかも知れません。

まあしかし、そんなことよりも、こういう憲法の初歩的常識の欠如した方が、日本国の総務大臣をされていたということに、某ドラゴン大臣以上にもろもろの感想を抱かざるを得ませんが。 

ちなみに、これは9年前のツイートですので、その中の「菅総理」はもちろん「かんそうり」です。

次の第5位も、今年ではなく2年前のエントリです。

eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2018/11/post-dd55.html(勝谷誠彦氏死去で島田紳助暴行事件を思い出すなど)ページビュー数: 3176

というか、このエントリ自体は勝谷勝彦氏の訃報に接して上げたものですが、その実質的中身は6年前の2014年に東大の労働判例研究会で報告したある事件の判決の評釈であり、さらに言えば、そこで問題となった事件は今から12年前の2008年に起きた事件なので、そういう意味では大変古い話ということもできますね。

勝谷誠彦氏が死去したというニュースを見て、

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181128-00000060-spnannex-ent(勝谷誠彦氏 28日未明に死去 57歳 公式サイトが発表)

吉本興業で勝谷氏担当のマネージャーだった女性が島田紳助に暴行された事件の評釈をしたことがあったのを思い出しました。

これは、東大の労働判例研究会で報告はしたんですが、まあネタがネタでもあり、『ジュリスト』には載せなかったものです。

せっかくなので、追悼の気持ちを込めてお蔵出ししておきます。 

そして第6位も過年度エントリです。2016年の船員労働法関係のもの。なぜこういうニッチな玄人向けのエントリが長年にわたって人気なのか、書いた私にも謎です。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2016/07/11472-bfad.html(1日14時間、週72時間の「上限」@船員法)ページビュー数:3048

 先日都内某所である方にお話ししたネタですが、どうもあんまり知られていなさそうなのでこちらでも書いておきます。といっても、六法全書を開ければ誰でも目に付く規定なんですが。

ここでようやく今年のネタに戻りますが、そうすると7位から10位まですべて「ジョブ型」がらみになります。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2020/06/post-a51574.html(なんで「ジョブ型」がこうねじれるんだろう?)ページビュー数:2821

この第7位のエントリが、日経新聞のあまりにもいい加減な「ジョブ型」記事に業を煮やして、ブログ上でかなりまとまった形で批判をした最初のものになります。これは全文再掲しておきましょう。

 もう毎日どこかで「ジョブ型」「メンバーシップ型」という字を目にしない日はなく、それこそ金子良事さんあたりから再三

http://ryojikaneko.blog78.fc2.com/blog-entry-340.html

今の労働問題をどう考えるのか、という風に聞かれるときに、メンバーシップ型とジョブ型という考え方が今やもう、かなりデフォルトになって来たなというのが私の実感である。おそるべきhamachanの影響力。

とからかわれそうですが、「リベサヨ」ほどではないにしても、世間での使われ方が妙な方にねじれていくのは、一応この言葉をこねくりあげたことになっている人間からすると、どうも居心地の悪さが半端ないところがあります。

今朝も日経新聞が一面トップでどどーんと、

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60084930X00C20A6MM8000/(雇用制度、在宅前提に 「ジョブ型」や在宅専門の採用)

という記事を出し、そこにご丁寧に「ジョブ型」を解説しているんですが、

▼ジョブ型 職務内容を明確にした上で最適な人材を宛てる欧米型の雇用形態。終身雇用を前提に社員が様々なポストに就く日本のメンバーシップ型と異なり、ポストに必要な能力を記載した「職務定義書」(ジョブディスクリプション)を示し、労働時間ではなく成果で評価する。職務遂行能力が足りないと判断されれば欧米では解雇もあり得る。

まあ、前半はやや難はあるとはいえあまり間違ってはいませんが、後半がひどい。

まずなによりも、「職務遂行能力が足りないと判断されれば欧米では解雇もあり得る」ってなんだよ。

あのさ、「職務遂行能力」ってのは、日本的『能力主義管理』の中核概念であり、具体的な「職務(ジョブ)」から切り離された特殊日本的概念であり、それゆえに、企業を離れたら通用性のない企業内の格付にしか使えない「あいつはなんでもできる」でしかない概念だということは、拙著をちらりとでも読んでいたらわかっているはずのことですが、それをこうも見事に逆向きに使ってしまえる、ってことは、日経新聞のいうところの「ジョブ型」ってのは、実のところそういうものなのか、とため息を漏れさせるに十分です。

解雇自由なアメリカを除けば、ほかの諸国はなにがしか解雇に規制がありますが、解雇を正当化する理由が「ジョブ」の消失、あるいは当該具体的なジョブに係る能力不足であるのが「ジョブ型」であって、なんだかよくわからない「職務遂行能力」がでてくるのが「メンバーシップ型」なんですよ。

日本の解雇裁判の記録を見ると、「いやあ、こいつはどうしようもない奴で、社内のどの部局もこいつだけは引き取りたくないっていっているんです」という会社側の主張がいっぱい出てきますが、それくらい「ジョブ」が希薄で、その分「職務遂行能力」が大事なのが「メンバーシップ型」の日本なんですが、それが日経の解説ではかくも見事にひっくり返るのですから、正直なんと言っていいのか・・・。

も一つ、これも近頃やたらにこういうのが多いけど、「労働時間ではなく成果で評価する」ってのは、ジョブ型かメンバーシップ型かとは関係ないからね。

ジョブ型社会でも、上の方の経営管理的なジョブであればあるほど成果で評価されるし、下の方のクラーク的なジョブであれば決められたことをきちんとやることがジョブディスクリプションなのだから、時間で給料が決まるのは当たり前。

これは、雇用システム全般にわたる「ジョブ型」概念を、25年前の『新時代の日本的経営』の「高度専門能力活用型」の言い換えだと心得ているひとが犯しがちな間違いだけど、世界中どこでも、上の方になれば成果主義になるのは当たり前。

問題は、その「成果」ってなあに?ってところで、「ジョブ」が曖昧な日本では、その成果も曖昧にならざるを得ないので、わけのわからない「職務遂行能力」に基づく実のところは「人間力」評価を「成果」の「査定」にしちゃっているだけなわけで、それをどうにかしたいといっている舌の根も乾かないうちに、「職務遂行能力が足りないと判断されれば欧米では解雇もあり得る」だから、呆れて涙が出てくる。

第8位も「ジョブ型」なんですが、中身はちょっとひねっていて、「公務員を減らして公共サービスを増やせ」という、現代日本でやたらに多く見かける議論が、いかにメンバーシップ感覚にどっぷり漬かったものであるかを、わかりやすく説明したものです。これもせっかくなので全文再掲しておきましょう。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2020/05/post-978e1a.html (ジョブなき社会の公務員減らしの帰結)ページビュー数:2817

これを読んで、

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/72275 (コロナでわかった、やっぱり日本は公務員を「減らしすぎ」だ)

・・・たとえば、新型コロナウィルスに関して、なくてはならない働きをしている保健所や公的医療機関。感染者の把握や感染拡大防止で後手に回ったとして批判を受けているが、もともと「平時」を基準に体制が構築されており、緊急時においては明らかに人手不足であることが今回わかった。
国の各省庁の職員も、時々刻々と状況が変化する中で、国会議員の動きに振り回されるなど、普段の激務に輪をかけた混乱状況に忙殺されている。
・・・・いま挙げた例はあくまでごく一部にすぎないが、なぜ行政の現場はこれほど疲弊してしまっているのか。
主な理由は、ここ20年以上にわたり、国も地方自治体も、行財政改革により職員を軒並み削減してきたこと、その一方で行政が対処しなければいけない仕事は減っておらず、むしろ増えていることにある。・・・・

言われていることはそのとおりなれど、なぜ日本が今のような状態になってしまうのかを理解するためには、やはり公務員法制はじめとする制度設計は万国共通のジョブ型でできているにもかかわらず、それを実際に運用する側は日本独特のメンバーシップ型でなんとかかんとかやりくりしてしまうという、もう何万回も繰り返してきたこの宿痾から説き起こす必要があるように思います。

公務員を減らせ減らせという議論自体は世界共通にどの国にもあります。いわゆるネオリベ系の論者は多かれ少なかれそういう主張をします。

でも、日本以外のジョブ型社会のネオリベ論者は、公務員減らしとは即ち公務員が従事するジョブ減らしであり、すなわち公共サービス減らしであるということをちゃんとわかって、というか、それを大前提として主張しているのです。彼らの主張は極めて明快であって、そんな公共サービスは要らないんだ、民間でやればいいんだ、だから当該サービスを行うジョブは要らないんだ、だから当該ジョブに充てられる公務員は要らないんだ、というまことに筋の通った議論であって、それゆえ、それに賛成する人も反対する人も、当該公共サービスの必要性という本丸の議論を戦わすことができます。まずジョブがあり、そのジョブを遂行するために人が雇い入れられるという点では、民間企業も公共部門も何の違いもないのですから当然です。

そういうまっとうな議論があらかじめ不可能となっているのが民間企業も公共部門もメンバーシップ型で運営されてしまっている日本です。

日本では、公務員減らしを主張する人が、少なくとも筋金入りの一部の立派な欧米風のネオリベを除けば、それによって当該公務員の遂行するジョブが減るのであり、即ちあんたが享受しえた公共サービスがその分だけ減らされるのだよという、ジョブ型社会であればあまりにも当たり前の事実が脳みそから完全に消え失せてしまって、その極限まで減らされた公務員が、なぜかもっといっぱいいた時と同じくらいの、あるいはむしろそれ以上のサービスを提供してくれるのが当たり前だと、悪意などこれっぽっちもなく、ほんとに素直に、それのどこがおかしいの?と稚気愛すべきほど無邪気に、思い込んでいるんですね。

それはもちろん、かれら特殊日本的いんちきネオリベが、自分では欧米のネオリベと同じことを言っているつもりで、その実は冥王星ほどかけ離れた発想で、日本的なメンバーシップ感覚にずぶずぶに漬かり切った発想で、人を減らすことはいかなる意味でもジョブの減少を意味せず、むしろサービスの拡大ですらあり得るという感覚に対して、これっぽっちも疑いを抱いてみることもないからなのでしょう。まず人が雇い入れられ、それからおもむろにその人にジョブがあてがわれるわけですから、ジョブの総量が少なければ暇になり、ジョブの総量が多ければ少ない人数のみんなでそれを必死でこなすのが当たり前。もちろん日本だけの当り前ですが。

そういう社会では、素直にメンバーシップ感覚にどっぷり漬かった善良な国民諸氏が、政治家やマスコミがはやし立てる公務員減らしに「それいけ、やれいけ」と調子に乗って騒ぎ立てても、それがいざというときに自分が享受できる公共サービスを減らすことだなどということは、ほんとにかけらすらも考えていないというのは、あまりにも当たり前のことなのかもしれません。

本ブログで何回も繰り返してきた気がしますが、わたしは、筋の通ったネオリベは好きです。筋の通ったというのは、公務員減らせということは、自分が享受できる公共サービスをその分減らせと言っているということをきちんと理解して言っているということです。そういう人は尊敬します。

しかし、残念ながらこの日本では、論壇で活躍する評論家にしても、居丈高な政治家にしても、みんなずぶずぶメンバーシップ型のいんちきネオリベでしかないのです。居丈高に公務員を減らしておいた上で、いざというときに公共サービスが足りないと、赤ん坊のようにわめきたてるのです。いや、それお前のやったことだろ。

(追記)

ちなみに、最近やたらに「ジョブ型」がはやり言葉になって、猫も杓子もみんなうわごとのようにジョブジョブ言ってますが、そいつらが本当に口に出している「ジョブ」なる概念が分かって言っているのか、それとも全然分かりもしないでただ世間で流行っているからもっともらしくくっちゃべっているだけなのかを、即座にかつ的確に判定するのに一番有用なのが、本ブログで書いた「公務員を減らして公共サービスを増やせ」という(ジョブ型社会からすれば)奇天烈な議論を、ちゃんとおかしな議論だと言えるのか、それともそっちも世間で流行っているからとそうやそうやそうやったれ!と平気で言えるのか、という判定道具でしょうね。 

この手の、自分では欧米風のネオリベラリズムを唱えているつもりで、実はとんでもなく特殊日本的なメンバーシップ感覚にどっぷり漬かっているガラパゴスであるにもかかわらず、そのことに全然気が付いていない手合いがやたらに多いのも、頭が痛い原因です。

第9位は、これも日経新聞の記事に対する苦言ですが、ちょっとさかのぼって、「ジョブ型」という概念はもともといかなる学問分野から発生したものであるのかを説明したエントリ。

eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2020/06/post-389a48.html(「ジョブ型」の典型は、アメリカ自動車産業のラインで働くブルーカラー労働者である)ページビュー数:2685

・・・いかに流行語になっているからといって(それにしては、流行語大賞の声はかかってこないなあ)、なんでもかんでもジョブ型って言えばいいわけじゃない。

こういうのを見ていると、この日経記者さんは、日米欧の過去100年以上にわたる労働の歴史なんていうものには何の関心もなく、そういう中で生み出されてきた「ジョブ型」システムというものの社会的存在態様なんかまったく知る気もなく、ただただ目の前の成果主義ということにしか関心がなく、それに都合よく使えそうならば(実は全然使えるものではないのだが)今受けてるらしい「ジョブ型」という言葉をやたらにちりばめれば、もっともらしい記事の一丁上がり、としか思っていないのでしょう。

最近のときならぬ「ジョブ型」の流行で、ちゃんとした労働関係の本なんかまったく読まずにこの言葉を口ずさんでいる多くの人々に、とにかく一番いい清涼剤を処方しておくと、

「ジョブ型」の典型は、アメリカ自動車産業のラインで働くブルーカラー労働者である

これ一つ頭に入れておくと、今朝の日経記事をはじめとするインチキ系の情報にあまり惑わされなくなります。

世界の労働者の働き方の態様は実に千差万別です。その中で、アメリカ自動車産業のラインで働くブルーカラー労働者は、そのあまりにも事細かに細分化された「ジョブ」の硬直性により有名です。

間違えないでください。「ジョブ型」とはまずなによりもその硬直性によって特徴づけられるのです。

だってそうでしょ。厳格なジョブ・ディスクリプションによってこれは俺の仕事、それはあんたの仕事と明確に線引きされることがジョブ型のジョブ型たるゆえんなんですから。

数か月後に刊行される『働き方の思想史講義』(仮題、ちくま新書)の中でも引用していますが、監督者がごみを拾ったといって組合が文句をつけてくるのが本場のジョブ型なんですよ。

そういうジョブの線引きの発想はホワイトカラーにも適用され、雇用契約というのは契約の定めるジョブの範囲内でのみ義務を負い、権利を有するという発想が一般化したわけです。それがジョブ型労働社会の成立。おおむね20世紀半ばごろまでに確立したと言われています。

一方、賃金支払い原理としての成果主義か時間給かというのは、一応別の話。

一応といったのは、むしろジョブ型が確立することで、それまで一般的だった出来高給が影を潜め、時間給が一般化していったからです。

これも、不勉強な日経記者をはじめ、圧倒的に多くの日本人が逆向きに勘違いしているようですが、ジョブ型の賃金制度とは、ジョブそのものに値札が付いているのであり、ということは、人によって値段が違うということはそもそもあり得ないのです。

そもそもジョブ型ではなく、人に値札が付くのがあまりにも当たり前に思っている日本人には意外に思えるかもしれませんが、日本以外の諸国では、ブルーカラーはもとより、ホワイトカラーでもクラーク的な職務であれば、成果による差というのは原則的になく、まさにジョブにつけられた値札がそのまま賃金として支払われます。

ホワイトカラーの上の方になると、そのジョブディスクリプション自体が複雑で難しいものになりますから、その成果実績でもって差がつくのが当たり前になりますが、それは労働者全体の中ではむしろ少数派です。末端のヒラのペイペイまで査定されるなんてのは、人に値札が付くのを不思議に思わない日本人くらいだと思った方がいいくらいです。まあ、日本の「査定」ってのは大体、成果なんかよりもむしろ「情意考課」で、「一生懸命頑張ってる」てのを評価するわけですが、そういうのは日本以外ではないって考えた方がいい。やったら差別だと言われますよ。

で、欧米のジョブ型でも上の方は成果主義で差が付きます。はい、日本の最近のにわか「ジョブ型」論者は、なぜかそこだけ切り出してきて、それよりはるかの多くの労働者を(頑張りで査定している)疑似成果主義の日本を、あたかも純粋時間給の社会であるかのように描き出して、ジョブ型にして成果主義にしようといい募るんですね。いや純粋時間給は欧米の一般労働者の方ですから。

そうじゃないのがいわゆるエグゼンプトとかカードルで、彼らは初めからそういう高い地位で就職します。そういうハイエンドのジョブ型は、日本みたいに頑張りで情意評価なんてのはなくて業績で厳しく査定されますから、多分そこだけ見れば日本が甘くて欧米が厳しいみたいな感想が出てくるのでしょう。 

そして、第10位に、あまりのひどい記事のオンパレードに業を煮やした私が、都内某所で講演したときに使ったパワポ資料を、そのままのっけたエントリです。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2020/09/post-152f79.html(誤解だらけの「ジョブ型」論)ページビュー数:2578

これがその後使いまわししているうちにだんだん膨れ上がっていて、明後日発売される『ジュリスト』2021年1月号の座談会でも使いました。

というわけで、1位から10位までのうち、6つが「ジョブ型」がらみで、残り4つのうち3つまでが過年度エントリという妙なことになっています。うーん、今年は「ジョブ型」以外に話題はなかったんかい?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

出口治明・上野千鶴子『あなたの会社、その働き方は幸せですか?』

9784396617493_600 出口治明さんと上野千鶴子さんの対談本『あなたの会社、その働き方は幸せですか?』(祥伝社)をお送りいただきました。

働き方についての取材や論考も多い出口治明さんと、
女性学、ジェンダーについて研究を続ける上野千鶴子さんが、
日本人の働き方、幸せになる働き方について語り合う。
長時間労働、年功序列などの日本型経営からの脱却など、
さまざまな課題がある中、これからどのように変化、対応していけばよいのか? 

この二人がどういう縁かというと、「はじめに」によると、京都大学の同期だそうです。もっとも出口さんは法学部、上野さんは文学部ですが。

 ・テレワークで生産性を上げるには?
・日本型経営、組織を変える方法はあるか?
・非正規労働者、女性の働き方はどうなる?
・学歴差別と女性差別を組み合わせた日本の業界構造
・労働の流動化がイノベーションを起こす
・子どもを産んでも経済的に困らないための支援を
・働く人が知っておきたい社会保障の仕組み
・「好き」は仕事にできるのか?
・来るべき転職時代に備えて学び続ける

正直言って、あんまり深みのある会話をしているわけではないのですが、この一節には吹きました。

上野 ・・・幸か不幸か、私のゼミをわざわざ好き好んで選ぶアホな学生たちも若干名います。彼らは就職には明らかに不利なゼミを選んでいるんです。

出口 上野先生のゼミ生だったらまともな企業は喜んで採るでしょう。

上野 そんな甘い世の中ではありません。うちのゼミ生たちが面接に行って「上野先生のゼミです」と言うと、面接官が乗り出して「上野先生ってどんな人?」と一瞬盛り上がるそうですが、それまで。採用には不利に決まっています。特に女子学生は、「ジェンダー研究をやりました」と言うと、潜在的トラブルメーカーと思われますから。

出口 企業にとっては、貴重な炭鉱のカナリアです。・・・

れっきとした「おじさん」企業の文藝春秋で『働く女子の運命』を出していただいた鳥嶋七実さんも上野ゼミ出身ですが、面接ではどうだったんでしょうか?

 

 

[あすへの考]コロナ禍 非正規格差が鮮明@編集委員猪熊律子@読売新聞

読売新聞の12月20日号の10面に、ほぼ全面を使って猪熊律子編集委員による「[あすへの考]コロナ禍 非正規格差が鮮明」という解説記事が載っています。ちゃんと分かってないとトンデモ記事になりやすい題材ですが、さすが猪熊さん、的確にまとめています。

https://www.yomiuri.co.jp/national/20201219-OYT1T50264/

で、その中に、私と神吉知郁子さんと大内伸哉さんの発言が登場しています。

・・・・労働政策研究・研修機構の濱口桂一郎研究所長によると、正規と非正規の格差問題は昔からあり、特に終戦前後は本工と臨時工の格差が大きな社会問題となった。だが、高度経済成長期を迎え、臨時工が本工として雇われたことや、1960~1980年代は家計補助的な働き方をする主婦パートや学生アルバイトが主流を占めた為、格差は議論の俎上に載らなくなった。但し、主婦でも基幹業務を担う人が増加した他、未婚や離婚の増加で主たる生計維持者として働く人も増えたことから、格差の問題が改めて注目されるようになった。就職氷河期、ワーキングプア、派遣切りが世間の関心を集め、「働き方は労使の問題だ」としてきた行政や司法も積極的に介入するようになった。同一労働同一賃金が大企業でスタートした今年、皮肉なことにコロナ禍によって、正規と非正規の格差が改めて鮮明になった。・・・・

・・・・東京大学の神吉知郁子准教授によると、待遇が不合理かどうかの判断は、働き方が密接に関わる。正社員は年功序列型賃金や長期安定雇用が保障される代わりに、“いつでも・どこでも・何でも”という無限定で滅私奉公的な働き方が求められてきた。こうした働き方が評価される限り、待遇差は是正され難く、是正の効果は正社員と同じように働く一部の非正社員にとどまるという。神吉氏は、「無限定な働き方は男女格差や少子化にも繋がり、持続可能ではない。同一労働同一賃金への対応として待遇の棚卸しが進む中、正社員の待遇見直しや、仕事の細分化、評価方法の再検討が進む可能性もある」と指摘する。・・・・

・・・・もう一つはデジタル化だ。野村総合研究所は2015年、10~20年後に就業者の約半数が行なう仕事は、ロボットやAIによる代替が可能になると発表した。それらには非正規だけでなく正規の仕事も含まれる。また、技術革新のスピードが速い為、企業は自社で社員を教育するより、個人事業主等外部に仕事を発注する傾向が強まることが予測される。「そうなると、非正社員と正社員の待遇格差に象徴される非正規問題そのものが消滅し、代わって、先端技術に対応できるかどうかという新たな格差が生じる」と大内教授は話す。 ・・・・

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2020年12月22日 (火)

日本人の働き方100年-定点観測者としての通信社

2021年1月16日(土)から 1月30日(土)まで、東京国際フォーラム・ロビーギャラリーで「日本人の働き方100年-定点観測者としての通信社」という報道写真展が開かれます。


https://kyodonewsprwire.jp/release/202012148555



  12回目となる今回は、日本初のメーデー100年を機に私たちの働き方を振り返ります。100年間のできごとに、その時々の暮らしぶりや働く女性の姿を織り交ぜた約140枚の写真で構成しました。100年を回顧する中で、ポスト・コロナの働き方を考える一助となれば幸いです。



この図録に、わたくしと本田由紀さんのエッセイが載っております。写真展に行かれた際には、ちらりとでも見ていただければと思います。


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EU離脱寸前のイギリスで、ギグワーカーはEU安全衛生指令上の労働者だという判決

本日付のソーシャル・ヨーロッパに、「Gig workers’ rights and their strategic litigation」(ギグワーカーの権利とその戦略的訴訟)というのが載っていますが、EU離脱があと数日後に迫ったイギリスで、プラットフォーム型のギグワーカーを労働安全衛生法の保護から外しているのは、EU労働安全衛生指令に違反するという判決を、イングランドとウェールズの高等裁判所が下したそうです。

https://www.socialeurope.eu/gig-workers-rights-and-their-strategic-litigation

話が複雑なんですが、そもそもEU法の最終的解釈権限は国内裁判所ではなくEU司法裁判所にあるので、この解釈が正しいかどうかは、この事案をEU司法裁に持って行かないと分かりません。

ところが、あと数日後に(協定が結ばれるか無協定のままかは未だ不透明ですが)イギリスはEUから出ていってしまうので、出ていった国はもはやEU裁判所に事案を持って行く道がないはず。ということは、この判決はイギリスの裁判官の判断がEUによって確認されることのないままになってしまうわけですね。

というわけで、なんだかすっきりしない状況ですが、いずれにしても大変興味深い判決であることは確かです。

 

フリーランスと独占禁止法@『労基旬報』2021年1月5日号

『労基旬報』2021年1月5日号に「フリーランスと独占禁止法」を寄稿しました。

 2020年7月17日に閣議決定された「成長戦略実行計画」では、「第2章 新しい働き方の定着」の中に「2 フリーランスの環境整備」の項が設けられ、「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するため、政府として一体的に、・・・保護ルールの整備を行う」と書かれた上で、真っ先に「(1)実効性のあるガイドラインの策定」が出てきています。これまで2017年から2019年にかけて、厚生労働省において、「柔軟な働き方に関する検討会」→「雇用類似の働き方に関する検討会」→「労働政策審議会労働政策基本部会」→「雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会」と順次進められてきた政策検討を見てきた立場からは、当然このガイドラインはその延長線上に策定されるものであろうと予想していたところでしたが、そうではなかったのです。
 そこでは「独占禁止法は、取引の発注者が事業者であれば、相手方が個人の場合でも適用されることから、事業者とフリーランス全般との取引に適用される。また、下請代金支払遅延等防止法は、取引の発注者が資本金1,000万円超の法人の事業者であれば、相手方が個人の場合でも適用されることから、一定の事業者とフリーランス全般との取引に適用される。このように、事業者とフリーランス全般との取引には独占禁止法や下請代金支払遅延等防止法を広く適用することが可能である。他方で、これまでは、働き方に関して、特に独占禁止法については、その適用には慎重であった。この点、公正取引委員会がこのような従来の姿勢を変更していることも踏まえ、フリーランスとの取引について、独占禁止法や下請代金支払遅延等防止法の適用に関する考え方を整理し、ガイドライン等により明確にする必要がある」と書かれ、もっぱら競争法の活用によるフリーランス保護が目指されています。労働法に関わる記述は、「フリーランスとして業務を行っていても、実質的に発注事業者の指揮命令を受けて仕事に従事していると判断される場合など、現行法上「雇用」に該当する場合には、労働関係法令が適用される」という「労働者性」に係る部分と、労災保険の特別加入制度の拡大に限られます。これらも重要な論点ですが、「雇用類似」に着目して労働法類似の保護を目指していた方向性は完全に脱落しているのです。
 競争法を活用したフリーランス保護は、過去数年来公正取引委員会が熱心に取り組んできた政策であり、2018年2月の「人材と競争政策に関する検討会」報告書において明確に打ち出されていたものです。こうした政策方向に対しては、労働弁護団所属の弁護士も大変好意的に受け止めており、「労働者が『独占禁止法』という新たな武器を手に入れたものと評価できる」という手放しの評価までされています*1。しかし、労働法の古い歴史と、近年の欧州での動向を踏まえて考えれば、そのような評価には大変危ういものが感じられます。周知のように労働法、少なくとも集団的労使関係法の黎明期は、競争法による抑圧からいかに脱却するかという闘いで彩られています。そして雇用労働者がその抑圧から脱却した後も、労働者ならざる者-今日言うところのフリーランス-は依然としてその抑圧下にあり続けています。それが今日、世界的な自営的就労の拡大の中で、再び労働法と競争法をまたぐ大きな論争点として燃え上がりつつあるのです。
9784480073310_600_20201222132201  昨年9月に刊行した濱口桂一郎・海老原嗣生『働き方改革の世界史』(ちくま新書)は、ウェッブ夫妻から藤林敬三まで英米独仏日の労使関係の名著12冊をわかりやすく解説した一般書ですが、その第2講で取り上げたのは『サミュエル・ゴンパーズ自伝 七十年の生涯と労働運動』でした。ゴンパーズはアメリカ労働総同盟(AFL)の議長として活躍しましたが、その後半生はシャーマン反トラスト法との闘いに明け暮れました。あまり日本人の常識にはなっていないように見えるこのアメリカ労働法前史を概観するところから始めましょう。
 アメリカでは経済政策の重要な柱である反トラスト政策との抵触が労働組合活動に対する主たる障害となってきました。1890年に制定されたシャーマン反トラスト法の制定時、ゴンパーズは「ただし、この法律は、労働時間の短縮若しくは賃金増加を目的とする労働者間のいかなる申合せ、協定若しくは団結にも・・・適用されるものと解釈されてはならない」という条項を挿入するよう求めましたが、実現しませんでした。彼は、その時からこの法律が企業のトラストではなく労働者の団結に適用されるだろうと予想していたといいます。「当局が法律の適用を怠ることを人々に気付かせないために、弱い方の集団に対して度を超えた情熱を発揮する恐れが多分にあることはこれまでの経験から明らかであった。賃金労働者の生活と労働条件を向上させようとする労働組合は、トラストとは基本的に違ったものであるが、私には、トラスト抑制ができない司法部がその代わりに目をつけるのが私たちの分野だろうという予感がした」と。
 実際、裁判所は次々に労働組合による「取引を抑制する共謀」を槍玉に挙げ、1908年のダンベリー帽子工事件で連邦最高裁もこれを認めたのです。ゴンパーズは、かくして不本意な立法闘争に引きずり込まれていきます。「政治的なものと経済的なものとを明確に区別することが、幾多の難問を決定する時私を導いた羅針盤だった。経済界は本質的に科学的であり、政治は相争う力の場である。私は労働運動を力の場から救い出すために、労働紛争における禁止命令の発動の規制と制限を求め、労働組合を反トラスト法の適用範囲から除外すべきことを主張し」ました。しかし、「われわれの活躍のかいもなく、法案は一つとして議会を通らなかった」のです。
 ようやくゴンパーズが切望した法案が成立したのは、ウィルソン大統領時代の1914年、クレイトン法によってでした。この法案の審議の際、ゴンパーズは底流をなす基本原則を織り込めば、労働組合を反トラスト法の適用範囲からはっきり除外する条項がずっと強化されるだろうと説き、「人間の労働は商品ではない」と書き入れたらどうだろうと提案し、これが盛り込まれました。
Dscf20521_20201222132401  ゴンパーズはこの法律を「労働の大憲章」と呼び、絶賛しましたが、連邦最高裁はその期待を裏切り、1921年のデュプレックス事件判決では、同社の顧客に対して商品不買の圧力をかけた第二次ボイコット活動に対し、クレイトン法第6条の「適法な行為」に当たらないと判断しました。さらに、クレイトン法第16条は私人(使用者)にも反トラスト違反の差止命令を求める権利を認めたため、むしろ労働差止命令(レイバー・インジャンクション)が乱発されることになったのです。これを食い止めるための立法は、1932年のノリス・ラガーディア法を待たなければなりませんでした。この思想を団結保護の方向に進めたのが1935年のワグナー法であることは周知の通りですが、むしろそのほんの数年前まで労働運動が競争法によって抑圧されていたという歴史的事実こそが重要です。
 一方、EU運営条約という憲法レベルで競争法の基本原則が明記されているEUにおいては近年、労働者性の議論とも絡み合いながら、非労働者の団体交渉権、労働協約締結権をめぐる議論が沸騰しています。労働者ではないとされたとたんに団体交渉が談合として否定されるような法の在り方自体に疑問が呈されているのです。そこで共有されている問題意識とは、「労働者でないからといって、フリーランスに競争法を適用するな!」というものです。その出発点となったのは、本紙2015年6月25日号で紹介したEU司法裁判所のFNV事件判決(C-413/13)です。
 この事案はオランダの競争法と労働法の交錯がそのままEUレベルに持ち込まれたものといえます。というのも、オランダの競争法はEU運営条約の規定に沿って、「オランダ市場又はその一部における競争を妨害し、制限し又は歪曲する目的を有し又は効果をもたらす事業者間の協定、事業者団体の決定及び協調行為は禁止される」とした上で、「労働協約法第1条第1項の規定による労働協約」を適用除外としているのですが、その労働協約法は第1条第2項によって、労働者ではない者にも労働協約法を「準用」という形で拡大適用しているのです。競争法の側では、カルテル規制の適用除外の範囲はあくまでも労働協約法第1条第1項、すなわち労働者に限定していて、それが準用される非労働者の(準)労働協約は適用除外には含まれていないのです。
 労働協約法の規定に基づいて、雇用されるオーケストラ楽団員とフリーランスの代替要員の双方を組織するオランダの情報メディア労組(FNV)は、当然のごとく代替要員であるフリーランスの演奏家の最低報酬についても使用者側との間で労働協約を締結していたのですが、これに対してオランダ競争庁は2007年12月、自営代替要員の最低報酬を定める労働協約は競争法の適用除外ではないという文書を発出し、これを受けて使用者側(及びもう一つの組合)は労働協約を終了させ、新たな協約の締結を拒否しました。これに対しFNVはハーグ地裁に提訴し、これが棄却されるとハーグ高裁に控訴しましたが、ハーグ高裁はこの事案をEU司法裁判所に付託したのです。EU司法裁判所は2014年12月の判決で、たとえ雇用労働者と全く同じ労務(本件でいえば楽器の演奏)を提供しているのであっても、サービス提供者は原則として同条同項にいうところの「事業者」にあたると判示しました。労働者を代表する団体がその会員である自営業者のためにその名で交渉しているとしても、それは労働組合としての行為ではなく、事業者団体としての行為に当たるというのです。ただし、もしその自営業者が偽装自営業者であるなら、労働者と分類することを妨げるものではないというのです。
 これは、個別労働関係法の適用をめぐる問題であれば特に問題はないでしょう。契約上は雇用契約ではなく請負契約等であったとしても、事後的にそれを雇用契約だと訴えるというのはごく普通のことです。しかし、集団的労働関係ではそうはいきません。FNV事件でも、労働組合はフリーランスの代替要員が労働者ではなく自営業者であることを前提としたうえで、彼らについても労働者に準ずる者として団体交渉をし、労働協約を締結しているのです。もし、フリーランスの代替要員は偽装自営業者だからフルに労働者として扱えと言い出したら、そもそもそれを受け入れない使用者側と団体交渉もできないし、労働協約も締結できないでしょう。中身の話に入る前に、労働者性をめぐる論争が延々と続き、結局フリーランスの報酬の議論にはたどり着きません。事後的な個別労働問題を扱う法律家からは自然な偽装自営業者論は、これから団体交渉を申し入れようとする労働組合の立場からすれば、ほとんどナンセンスな議論なのです。
 こうして、ここ数年来、EUでは自営業者の団体交渉権をめぐる議論が沸騰しています。これについても本紙2020年7月25日号でやや詳しく紹介しました。同年6月30日、EUの競争総局は、自営業者の団体交渉問題に取組むプロセスを開始したと発表しました。記者発表資料は、「EU競争法は団体交渉を必要とする者の道に立ちふさがらない。このイニシアティブは、労働協約を通じて労働条件を改善することが被用者だけではなく保護を要する自営業者にも確保されることを目指す」と述べ、既に始まっているデジタルサービス法の一般協議の、「自営個人とプラットフォーム」の項に意見を出すように求めています。これと並行して労働組合や経営団体とも協議を行うと述べています。
 競争政策担当のマルグレーテ・ヴェステアー副委員長の言葉が、その問題意識を明瞭に示しています。曰く、「欧州委員会は、プラットフォーム労働者の労働条件の改善にコミットしている。それゆえ、団体交渉が必要な者がEU競争法に違反する恐れなくそれに参加できるようにするプロセスを開始したのだ。競争法は労働者が組合を結成するのを止めないが、近年の労働市場では「労働者」概念と「自営業者」概念は境界が曖昧になっている。多くの個人が自営業としての契約を受入れざるを得なくなりつつある。我々はそれゆえ、労働条件の改善のために団体交渉する必要のある人々に明確さを与える必要がある」と。
 ここで共有されている問題意識とは、「労働者でないからといって、フリーランスに安易に競争法を適用するな!」というものです。競争法は集団的労使関係の敵であるという「常識」の上で議論が行われている欧州から見ると、労働側弁護士が競争法の適用を諸手を挙げて歓迎している日本の姿はいささか奇妙に見えます。
*1菅俊治「独禁法を使った労働運動の可能性」(『労働法律旬報』1913号)。 

 

2020年12月21日 (月)

八代尚宏『日本的雇用・セーフティーネットの規制改革』

Lt000140544001183500_xlarge 八代尚宏さんより新著『日本的雇用・セーフティーネットの規制改革』(日本経済新聞出版社)をお送りいただきました。いつもありがとうございます。

https://nikkeibook.nikkeibp.co.jp/item-detail/35873

規制改革、成長戦略でかけ声倒れに終わった第2次安倍政権の経済政策を検証、菅新政権が取り組むべき改革を第一人者が明確にする。 

というわけで、八代さん、退陣した安倍政権に対してはなかなか辛口です。

■2012年12月に民主党政権を引き継いだ第2次安倍政権は、2020年8月の突如の退陣声明で8年弱の長期政権を終えた。しかし、この間に長期安定政権を生かした、主要な経済政策の成果は見られていない。第2次安倍政権では、小泉政権や第1次安倍政権で経済戦略の司令塔となった経済財政諮問会議をほとんど活用せず、未来投資会議等、新しい会議を次々と作るだけで目先の話題つくりに終始した。これは「働き方改革」や「全世代型社会保障」という看板政策についても同様で、真の成長戦略には不可欠であるが、既得権力に反発される多くの構造改革を封印することで、「野党と比較してマシ」という世論に支えられた長期政権を維持してきた。この間に、急速に進展する少子高齢化、情報通信技術の発展、経済活動のグローバル化等、大きな経済変化に対応すべき貴重な時間を失ったことの社会的コストはきわめて大きい。ここで改めて安倍政権の8年間を振り返ることで、新政権が向かうべき経済政策の内容を明確にする。
■安倍政権に対しては、大企業寄りの「保守主義」という評価が定番であった。しかし、その現実の政策は、春闘賃金の引上げへの介入、同一労働同一賃金、長労働時間の抑制等の働き方改革に重点をおいた。また、コロナ危機への対応でも、国民一人当たり10万円の給付金や雇用調整助成金の大幅な拡大等、むしろ旧民主党が唱えても不思議ではない大きな政府型の政策が目立っている。安倍政権は、本来、旧民主党が目指す政策をいわば横取りすることで、野党にとっては対立軸となる経済政策を構築できなくなる。安倍政権が野党寄りの政策を自ら推進することで、その支持率の基盤を広げることは、長期政権を維持する上では効果的である。しかし、その犠牲となっているのは、本来の自民党の「小さな政府」と「市場競争を生かした経済活性化」という、保守本流の経済政策である。これはドイツのシュレーダー首相が、本来は左派政権であるにも関わらず、2000年代前半期に市場主義的な雇用改革や、抜本的な年金改革を断行したことで、その後の選挙では大敗北したものの、欧州の中でドイツ経済繁栄の基礎を築いたことと対照的である。
■今回のコロナの国境を越えた大感染は、日本だけでなく、世界経済にも大きな打撃となっている。ポストコロナの新しい時代に対応するためには、情報通信技術の積極的な活用と、それに対応した従来の働き方の抜本的な改革が必要とされる。また、東アジアの各国が直面する少子高齢化社会への対応についても、その先頭を走る日本への期待も大きい。その意味でも、菅新政権は、これまでの安倍長期政権の経済政策を反面教師として、同じ過ちを繰り返さず、本来の構造改革を実現することが急がれていると主張する。 

特に、八代さんは官邸の経産省グループに対してあまり良からぬ思いを感じておられたようで、第1章では持続化給付金などに対して「ポピュリズム政治」と斬って捨てています。

第2章から以降は、これはもう本ブログでも何回も取り上げてきた労働社会政策に対する八代節で、読むたびにデジャビュを感じますが、八代さんからすると、これだけ何回も何回も同じことを言い続けているのに、世の中はどうして変わらないのだ、という思いでいっぱいなのではないかと思います。

ただ、今までの多くの本と少し違うのは、その文章中に「ジョブ型」「メンバーシップ型」という用語が極めて多く用いられていることでしょうか。これら用語の頻度は、確かに世の中におけるこれら用語の頻用ぶりに対応していますが、とはいえ、その用語法は(版元の親会社の日経新聞の多くの記事とは異なり)ほぼ100%正確です。というより、これまでもほぼ同じ概念を違う言葉で使ってきているのを、「ジョブ型」云々と言い換えているだけなので、おかしな用語法になるわけはないのですけれども。

その辺の認識論的確かさは、例えば54ページの次の文章などにも表れていますね。

・・・この「遅い昇進」モデルは、個々の仕事にこだわらないメンバーシップ型の働き方と整合的であり、過去の高い経済成長期に企業や官庁の組織が持続的に拡大した環境に適している。しかし、いくら社員が競争しても、組織が拡大せず、その成果が乏しい低成長期には、「可能性の乏しい昇進機会をめぐり、大勢の社員が馬車馬のように働く」不毛な結果となる。今後の低成長期には、出世競争は一部のワーカホリックな社員にゆだねて、大部分の社員は、各々の得意とする専門的な業務に専念するジョブ型の働き方が相対的に増えることが望ましいといえる。・・・

このあたり、最近海老原さんが書いた話とも通底しています。

https://project.nikkeibp.co.jp/HumanCapital/atcl/column/00004/112700008/(欧米には日本人の知らない二つの世界がある)

こういう一番基本的で肝心な現実認識をおろそかにして、ややもするとすぐに空中を浮かぶような「かくあるべき」論ばかりを振り回すと、「ジョブ型」が能力主義に満ちた疑似エリートたちの成果主義の世界に早変わりしてしまうわけです。

第1章 安倍政権の経済政策を評価する
第2章 日本的雇用慣行と働き方改革
第3章 長時間労働の改革とテレワーク
第4章 同一労働同一賃金と非正規社員問題
第5章 解雇金銭解決のルール化
第6章 高年齢雇用安定法の弊害 
第7章 女性の働き方改革
第8章 全世代型社会保障改革の理念と現実
第9章 大きな改革を避けた年金改革法
第10章 医療と介護保険改革 

これも本ブログで何回も書いていますが、様々な事態や政策に対する認識は、私と八代さんはほとんど同じです。非正規労働問題の根源はなんでもやる代わりに身分が保証される「正社員」という特殊な働き方にあるのだし、日本的同一労働同一賃金というのは欧米アジアのものとは全然似ても似つかぬインチキだし、解雇の金銭解決問題とは現実に低い金額で解決している中小零細企業と裁判やったら解雇無効だからと高い解決金になっている大企業との格差だし、高齢者の継続雇用政策というのはメンバーシップ型の非正規という変なものを作っているのだし、女性問題とは要するに男性の働き方の問題だし。そこをどうするかという実践的なところで、いくつか違いが出てきますが、それは当然でしょう。

 

 

2020年12月18日 (金)

日中韓の労働フォーラム

本日、毎年日中韓の労働研究機関でやっている北東アジア労働フォーラムが、コロナ下なのでオンラインのウェビナーとして開催されました。テーマは「新型コロナウイルス感染症が労働市場に与えた影響と今後の労働政策課題」というものですが、中身の前にまずその格好。

画面に映った顔が、日本と韓国はみんなマスク姿なのに、中国側はみんなマスクなし。別にトランプを気取っているのではなく、もうマスクの必要のないくらい感染を抑えたということなんですね。

報告の中身も、中国側はもうコロナの感染は抑えて、国内の経済的影響もほぼ元に戻ったんだけど、いまや中国以外の世界中でコロナが蔓延して、その外部からの影響でグローバルサプライチェーンに影響が出てきていると、何となく勝ち誇っている感の漂う報告。

とはいえ、日本も韓国も、中国みたいなやり方ができる国ではないのだから、欧米と比べてよくここまで抑えているという話だとは思うのですが。

 

2020年12月16日 (水)

組織率が上がった!!労働者が減ったからだけど・・・

本日、今年の労働組合基礎調査が公表されましたが、なんと何十年もの間毎年着実に低下の一途をたどっていた労働組合組織率が、昨年の16.7%から17.1%へとだいぶ跳ね上がりました。


https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/roushi/kiso/20/dl/gaikyou.pdf


ただこれ、今年6月30日現在というコロナ禍の真っただ中で、ご想像の通り、労働者数が激減したことに伴う組織率の上昇なんですね。


組合員数は昨年までも毎年少しずつ増えてきてはいたのですが、それ以上に労働者数が増えてるもんだから、組織率は下がり続けていたわけですが、その労働者数が昨年の6,023万人から今年の5,929万人へと94万人減ったために、組織率が跳ね上がったわけです。うれしいような悲しいような。


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ブックレット『新型コロナウイルスと労働政策の未来』

Booklet01201221 2020年8月20日に開催された東京労働大学特別講座「新型コロナウイルスと労働政策の未来」の内容を、関連する背景資料と併せてブックレットとしてとりまとめました。

https://www.jil.go.jp/publication/ippan/booklet/01.html

世界的に急速に蔓延しパンデミックとなった新型コロナウイルス感染症への緊急対策として打ち出された雇用調整助成金の要件緩和や適用拡大、新たな休業支援金の制定、アルバイト学生へのセーフティネットの構築、さらには学校休校によってクローズアップされたフリーランスへのセーフティネットの問題や、一斉に拡大したテレワークがもたらした様々な課題など、各分野のさまざまな労働政策について、歴史的経緯を振り返りつつ、その政策的意義について検討・分析を行っています。

詳細な目次は以下の通りです。

0 2020年という年
 
Ⅰ 雇用調整助成金と新たな休業支援金
1 雇用調整助成金への注目
2 雇用調整助成金以前
3 雇用調整助成金の誕生と展開
4 コロナ禍の中の雇用調整助成金
5 もたつく支給と批判
6 新たな休業支援金の提起
7 新たな休業支援金の制定
8 新たな休業支援金の問題点
 
Ⅱ 非正規雇用への保護拡大
1 まだ残っていた非正規格差
2 非正規雇用の歴史を振り返る
3 近年の非正規雇用対策
4 非正規の労働市場セーフティネット
5 社会保険の非正規格差
6 コロナで露呈した非正規のセーフティネット
7 アルバイト学生のセーフティネット
8 傷病手当金の非正規格差
 
Ⅲ フリーランスへの保護拡大
1 学校休校とフリーランス問題の表出
2 フリーランス問題の経緯
3 家内労働法と在宅ワーク
4 建設業の一人親方
5 労働者性の判断基準
6 雇用類似就業への政策
7 小学校休業等対応支援金
8 家賃補助の対象拡大
9 持続化給付金と税法上の労働者性
10 フリーランスに失業給付?
 
Ⅳ テレワークの時代?
1 在宅勤務の急拡大
2 テレワークの経緯
3 事業場外労働制の経緯
4 2004年在宅勤務通達
5 2004年在宅勤務ガイドライン
6 労働市場改革専門調査会
7 2008年通達とガイドライン
8 国家戦略特区法の援助規定
9 働き方改革実行計画
10 2018年ガイドライン
11 テレワーク助成金の経緯
12 規制改革推進会議
13 テレワーク働き方検討会
 
【資料編】
【資料1】昭和27年4月23日職発第281号「綿紡績業における操業短縮に伴う一時離職者に対する失業保険金給付事務の取扱について」
-------昭和27年5月12日失保発第1199号「操業短縮等に伴う一時離職者に対する失業保険金給付事務の取扱について」
【資料2】昭和29年7月16日職発第409号「一時帰休制度に関する失業保険の取扱について」
【資料3】綿紡操短に伴う失業保険法上の諸問題(『職業安定広報』1952年8月号)
【資料4】昭和二十八年六月及び七月の大水害の被害地域にある事業所に雇用されている労働者に対する失業保険法の適用の特例に関する法律(昭和28年8月18日法律第239号)
【資料5】昭和三十四年七月及び八月の水害並びに同年八月及び九月の風水害に関する失業保険特例法(昭和34年12月14日法律第195号)
【資料6】失業保険法の一部を改正する法律(昭和38年8月1日法律第162号)
【資料7】雇用対策法(昭和41年7月21日法律第132号)
【資料8】雇用保険法(昭和49年12月28日法律第116号)
-------雇用保険法施行規則(昭和50年3月10日労働省令第3号)
【資料9】雇用保険法の一部を改正する法律(昭和52年5月20日法律第43号)
【資料10】遠藤政夫『完全雇用政策の理論と実践』(労務行政研究所、1976年)
【資料11】経済社会の変化に対応する円滑な再就職を促進するための雇用対策法等の一部を改正する等の法律(平成13年4月25日法律第35号)
-------雇用保険法施行規則
【資料12】日本再興戦略 -JAPAN is BACK-(平成25年6月14日閣議決定)
【資料13】雇用保険法施行規則の一部改正(令和2年3月10日厚生労働省令第29号)
【資料14】雇用調整助成金の申請書類を簡素化します(厚生労働省リーフレット)
【資料15】雇用調整助成金支給実績(厚生労働省ホームページ)
【資料16】日本弁護士連合会「新型コロナウイルス感染症による緊急措置として、労働者が失業したものとみなして失業給付を受給できる措置を講じるとともに、雇用調整助成金の迅速な支給拡大を求める会長声明」(2020年5月7日)
-------生存のためのコロナ対策ネットワーク提言「生存する権利を保障するための31の緊急提案」(2020年4月24日)
【資料17】新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための雇用保険法の臨時特例等に関する法律(令和2年6月12日法律第54号)
-------新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための雇用保険法の臨時特例等に関する法律施行規則(令和2年6月12日厚生労働省令第125号)
【資料18】労働基準法(昭和22年4月7日法律第49号)
【資料19】新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金支給実績(厚生労働省ホームページ)
【資料20】北岡寿逸(内務省社会局監督課長)「臨時工問題の帰趨」(『法律時報』第7巻第6号)
【資料21】昭和25年1月17日職発第49号「臨時内職的に雇用される者に対する失業保険法の適用に関する件」
【資料22】『新版雇用保険法コンメンタール』(平成16年11月、労務行政)
【資料23】雇用保険法等の一部を改正する法律(平成22年3月31日法律第15号)
-------雇用保険法施行規則の一部改正(平成22年厚生労働省令第54号)
【資料24】昭和31年7月10日保文発第5114号
【資料25】(いわゆる3課長内翰)
【資料26】年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律(令和2年6月5日法律第40号)
【資料27】雇用保険法施行規則の一部改正(令和2年3月10日厚生労働省令第29号)
【資料28】緊急雇用安定助成金支給要領(厚生労働省ホームページ)
【資料29】「学びの継続」のための『学生支援緊急給付金』 の創設(文部科学省ホームページ)
【資料30】新型コロナウイルス感染症に感染した被用者に対する傷病手当金の支給等について(事務連絡令和2年3月10日)
【資料31】雇用保険法施行規則の一部改正(令和2年6月12日厚生労働省令第123号)
【資料32】家内労働法(昭和45年5月16日法律第60号)
【資料33】自営型テレワークの適正な実施のためのガイドライン(平成30年2月2日雇均発0202第1号)
【資料34】労働基準法(昭和22年法律第49号)
【資料35】労働者災害補償保険法の一部を改正する法律(昭和40年6月11日法律第130号)
【資料36】建設業の一人親方問題に関する検討会設置趣旨(令和2年6月25日)
【資料37】労働基準法研究会報告(労働基準法の「労働者」の判断基準について)(昭和60年12月19日)
【資料38】成長戦略実行計画(令和2年7月17日閣議決定)
【資料39】働き方改革実行計画(平成29年3月28日働き方改革実現会議決定)
【資料40】雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会中間整理(令和元年6月28日)
【資料41】雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会中間整理(令和元年6月28日)
【資料42】カリフォルニア州労働法典の一部改正(2019年9月)
【資料43】新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応支援金(委託を受けて個人で仕事をする方向け)支給要領
【資料44】生活困窮者自立支援法施行規則の一部改正(令和2年厚生労働省令第86号)
【資料45】所得税法(昭和22年法律第27号)
-------所得税に係る基本通達
【資料46】労働者と自営業者の社会保障アクセス勧告(2019年11月8日)(COUNCIL RECOMMENDATION of 8 November 2019 on access to social protection for workers and the self-employed)
【資料47】労働基準法の一部を改正する法律(昭和62年9月26日法律第99号)
【資料48】昭和63年1月1日基発第1号、婦発第1号「改正労働基準法の施行について」
【資料49】平成16年3月5日基発第0305001号「情報通信機器を活用した在宅勤務に関する労働基準法第38条の2の適用について」
-------平成16年2月5日京労発基第35号「情報通信機器を活用した在宅勤務に関する労働基準法第38条の2の適用について」
【資料50】平成16年3月5日基発第0305003号「情報通信機器を活用した在宅勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」
【資料51】労働市場改革専門調査会第2次報告(平成19年9月21日)
【資料52】平成20年7月28日基発第0728002号「情報通信機器を活用した在宅勤務に関する労働基準法第38条の2の適用について」
【資料53】平成20年7月28日基発第0728001号「情報通信機器を活用した在宅勤務の適切な導入及び実施のためのガイドラインの改訂について」
【資料54】国家戦略特別区域法及び構造改革特別区域法の一部を改正する法律(平成29年法律第71号)
【資料55】働き方改革実行計画(平成29年3月28日働き方改革実現会議決定)
【資料56】「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」(平成30年2月22日基発0222第1号、雇均発0222第1号)
【資料57】働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(平成30年7月6日法律第71号)
【資料58】労働者災害補償保険法施行規則の一部改正(令和2年3月31日厚生労働省令第70号)
【資料59】規制改革推進に関する第5次答申~平成から令和へ~多様化が切り拓く未来~(令和元年6月6日)
  

 

2020年12月14日 (月)

増島雅和、蔦大輔『事例に学ぶサイバーセキュリティ』

Syoseki15 経団連出版の輪島忍さんより、増島雅和、蔦大輔『事例に学ぶサイバーセキュリティ—多様化する脅威への対策と法務対応』をお送りいただきました。

サイバーセキュリティが組織的課題であることを前提に、企業が行うべきサイバーセキュリティ対策について、具体的なインシデント(内部からの情報持ち出し、マルウェア感染、DDoS攻撃、ビジネスメール詐欺等)の事例をあげながら、組織対応の手順や勘所、留意すべき法的な観点を詳述しました。
法務部はもちろん、情報システム関連部署やインシデント対応チームなど、サイバーセキュリティの実務に携わる多くの方にお勧めします。

労働法的には、第3章の内部からの情報持ち出しのところが興味深いです。

 

 

2020年12月12日 (土)

第112回労働政策フォーラム「アニメーターの職場から考えるフリーランサーの働き方」はまもなく申し込み締め切りです

12月15日(火)にオンラインで開催予定の「第112回労働政策フォーラム「アニメーターの職場から考えるフリーランサーの働き方」は、まもなく申し込み締め切りです。視聴は無料ですが、申し込まないと視聴できませんので、関心のある皆様はぜひ。

https://www.jil.go.jp/event/ro_forum/20201215/index.html 

皆様から頂いた質問の中から、パネリストがお答えする時間もありますので、この際、この人にこれを聞きたいとかというのがあれば、ぜひご参加ください。

Anime

なお、配布資料はすでに全員の分がアップされています。

https://www.jil.go.jp/event/ro_forum/20201215/resume/index.html

基調講演 *労働関係図書優秀賞記念講演

『アニメーターはどう働いているのか?』からみるフリーランス労働(PDF:776KB)

松永 伸太朗 長野大学 企業情報学部 助教

研究報告

フリーランサーの働き方(PDF:738KB)

濱口 桂一郎 労働政策研究・研修機構 研究所長

事例報告

実態調査にみるアニメ制作従事者の働き方(PDF:2.60MB)

桶田 大介 弁護士(シティライツ法律事務所、東京弁護士会)・日本アニメーター・演出協会 監事

東映動画労組の歴史と労働者としての権利(PDF:467KB)

沼子 哲也 東映動画労働組合 副委員長

アニメーターの働き方の課題(PDF:306KB)

船越 英之 亜細亜堂労働組合 委員長

 

 

2020年12月11日 (金)

花見忠『労働問題六〇年』

552174
花見忠先生より、『労働問題六〇年 ― 東と西の架け橋を夢見て』(信山社)をお送りいただきました。ありがとうございます。

https://www.shinzansha.co.jp/book/b552174.html

労働法学者・中労委会長・IIRA会長・弁護士として多面的に活動し、60年にわたり東西の架け橋をめざして戦後の国際労働法学の発展に注力してきた花見忠先生の卒寿記念論考集。旧制静岡高校在学中の1964年から現在に至るまでの32論考を収録し、花見労働法学の全体像を示す。縁の深い山口浩一郎、小杉丈夫、梅谷俊一郎、ハラリ、マンフレート、ヴァイス各氏が花見忠のエピソードを語る。

中身は下の目次の通りですが、その大部分を占める労働法学人生のその前とその後に書かれた政治的な文章がいろんな意味で面白く、1940年代後半という時代と、2010年代という時代の日本を象徴しているような気がしました。

論説の第1は「日本金融資本と戦後に於けるその諸対策(一九四八年)」で、まさに左翼学生のアジビラ風で、常見陽平さんが見たら歓喜しそうな文体ですね。

・・・以上戦後の諸政策が金融資本の擁護のために、社会民主的な仮面をかぶせて解放された労働階級を欺きながら強行されてきた過程を見たのである。政治権力の労働大衆による把握のないとき、社会民主的仮面を被った政府の存在をもって社会主義的政策の遂行を夢想するなら、ブルジョワジーどもはそのマスクの蔭で狡猾な笑いを笑っているだろう。・・・

花見先生がいかに旧制高校生時代とはいえ、こういう文章を書いていたとは意外でした。

私が読んだ初期のものは、花見先生が1950年代に若手労働法研究者としてデビューした当時、いまはなき『討論労働法』誌の座談会などで鋭く突っ込んでいた姿なのですが、その当時のものはほとんど本書には収録されていないようです。

また、私が自分の労働社会に関する考え方を作り上げていく上で、大きな影響を与えられたのは、いまでは絶版で手に入りにくい本ですが、花見先生の『労働争議 労使関係に見る日本的風土』(日経新書)なんです。実は、『働き方改革の世界史』の最後に取り上げた藤林敬三『労使関係と労使協議制』に一番近い感覚で日本の労使関係を描いていたのは、花見先生のこの本なんですね。だけど、第2部の論説に収録された文章は、1957年から一気に1980年に飛んでいて、プロレーバー労働法学に対して皮肉なまなざしでいやらしくしかし的確に突っ込みを入れていた時代の花見節は、やはり本書ではあまり嗅ぐことが出来ないようです。

この『労働争議』、その後講談社学術文庫に収録されてましたが、いまではそれも入手困難で、どこか再刊する出版社はないですかね。その値打ちはある本だと思います。

そして、21世紀も10年代に入ると、歴史認識問題に刀を振るい始めます。これはもう、人によっていろいろ意見があるところでしょうから、あまり中身に立ち入ったコメントは避けておきますが、その「国際基準の普遍性は真っ赤な嘘」というスタンスは、その少し前あたりから感じておりました。『季刊労働法』2008年秋号で、花見先生、山口浩一郎先生に私の三人で、「労働政策決定過程の変容と労働法の未来」という鼎談をしたとき、ILOの三者構成原則に対してフィクションだとかなり低い評価をしていたことを思い出します。

ここはその後、結構真正面からぶつかった論点ですが、本書438頁では「ILOと筆者の関係はやや倦怠期に入った夫婦喧嘩のようなもので、三下り半とはほど遠い痴話喧嘩の類いであろう」と総括されているので、私如き若輩の関与する余地はないのかもしれません。

・はしがき――卒寿をむかえて/花見 忠(ⅰ)
・卒寿をむかえられた花見先生/小畑史子(ⅲ)

◆第一部 インタビュー 花見忠先生に聞く(聞き手 小畑史子)

一 懐かしい人々(3)
二 東大病院で誕生(5)
三 幼稚園・小学校・中学校(7)
四 静岡の思い出(10)
五 大学時代(13)
六 高野耕一さんとの出会い(14)
七 日本労働協会へ(16)
八 インターディシプリナリーとインターナショナル(18)
九 「花見労働法」とは(21)
十 労働法研究の醍醐味と困難(22)
十一 昭和から平成、令和へ(24)

◆第二部 論  説

   1  日本金融資本と戦後に於けるその諸対策(一九四八年)(29)
   2  労働契約の無効取消について――ラムの所説を中心として(一九五七年)(51)
   3  同情スト合法論に対する疑問(一九五七年)(74)
   4  働き中毒のすすめ(一九八〇年)(91)
   5  男女雇用平等法案をどう読むか(一九八四年)(110)
   6  外国人労働者問題の政策的視点(一九八九年)(127)
   7  日本的差別の構造――均等法五年で問われる婦人行政(一九九一年)(136)
   8  アジアの国々と西欧の「普遍的」理念(一九九五年)(160)
   9  均等法一〇年の再検討(一九九六年)(165)
   10  女性の優遇と平等(一九九六年)(182)
   11  時代の変遷と座標軸――丸山先生の思い出(一九九七年)(185)
   12  二一世紀の労使関係を議論するIIRA世界会議(一九九九年)(190)
   13  個別労使紛争処理を考えなおす(二〇〇一年)(197)
   14  グローバル化時代におけるILOの役割と今後の課題(二〇〇一年)(210)
   15  祝辞(花見忠君叙勲祝い 高野耕一)(二〇〇四年)(223)
   16  《特別講演》労働法の五〇年――通説・判例 何処が変?(二〇〇六年)(229)
   17  《記念講演》労働委員会制度と日本の労使関係(二〇〇六年)(260)
   18  私の終戦・静高・テニス(二〇〇六年)(282)
   19  公立学校における教員の起立・斉唱義務と思想・良心の自由――東京都・都教委(教員・再雇用制度等)事件(二〇一〇年)(291)
   20  国際規範の普遍性を考え直す(二〇一一年)(307)
   21  業務委託、請負に関する問題点と対策(二〇一一年)(316)
   22  経営と労働のバランスを取り、健全な社会作りをめざす自称「ヤメ学」弁護士(二〇一一年)(334)
   23  「肉まん」と小沢昭一(二〇一四年)(344)
   24  「法の支配」の幻想について(二〇一四年)(347)
   25  同性婚の法的地位(二〇一四年)(382)
   26  世界を徘徊する「歴史認識」という名の妖怪(二〇一五年)(389)
   27  歴史認識 東と西(二〇一五年)(408)
   28  丸山眞男先生が亡くなられて二〇年――激変する世界政治に思うこと(二〇一六年)(420)
   29  東と西の架け橋を夢見て(二〇一七年)(425)
   30  三〇余年に及ぶ友の思い出――Roger BlanpainとBob Heppleの早すぎた逝去を悼んで(二〇一七年)(440)
   31  ジム・ロジャーズの教訓から我が人生を顧みる(二〇一九年)(448)
   32  無二の親友、尊敬の念置かざること能わざる偉大な経済学者、亡き神代君を偲んで(二〇一九年)(450)

◆第三部 花見忠先生を語る

   先生・同僚・老々/山口浩一郎(455)
   花見忠先生の生き方/小杉丈夫(462)
   花見忠先生のお心遣い/梅谷俊一郎(468)
   Teacher, Mentor, Friend/Ehud Harari(エフド・ハラリ)⑻(473)
   Memories of Tadashi Hanami/Robert E. Cole(ロバート・E・コール)⑹(475)
   A Cosmopolitan Japanese Scholar–A very personal congratulation/Manfred Weiss(マンフレート・ヴァイス)…⑴(480)

・履歴(481)
・主要著作(484) 

 

 

 

 

 

2020年12月10日 (木)

『雇用差別と闘うアメリカの女性たち』

08412 ジリアン・トーマス著、中窪裕也訳『雇用差別と闘うアメリカの女性たち 最高裁を動かした10の物語』(日本評論社)を、訳者の中窪さんよりお送りいただきました。ありがとうございます。

https://www.nippyo.co.jp/shop/book/8412.html

1964年公民権法が定めた雇用における性差別禁止。その規定を出発点に、働く女性に対して懐疑的な時代と社会の中、権利を求めて闘った女性たちの《10の物語》。

中窪さんの翻訳書としては、6年前に出されたレッドベターの『賃金差別を許さない』に続き、女性差別をめぐる本ですが、今回のは10のケーススタディです。

プロローグ
第1章 女性と子どもは最後に
第2章 刑務所の壁を突き破れ
第3章 (より)長生きして幸せに
第4章 敵対的な環境
第5章 「床」であって「天井」ではない
第6章 女性パートナーへの道
第7章 妊娠する可能性のある方は
第8章 サンドラ・デイ・オコナー判事に言ってやる
第9章 通報者を撃つな
第10章 安全な配達、安全な出産
エピローグ
謝辞
訳者あとがき 

冒頭のプロローグで描かれるのは、アメリカ公民権法制定直前に、人種差別を続けたくて公民権法案を葬り去るために、わざと条文に「性別」を入れる修正を提案した南部出身の80歳のじいさんの話です。

この話、私の『働く女子の運命』でもちょっと触れましたが、そこでは、そのエピソードに続いて、「さて、ここからが重要です。いかに最初の意図は別なところにあったとしても、法律で男女同一賃金や男女差別の禁止が規定されれば、それらはそれ自体のロジックで動いていきます。」と書きました。

でも、実のところ、法律ができたからと言って、それも人種差別主義者の修正で思いもかけず入ってしまったような条項であれば、そう簡単に現実社会を動かしていったわけではなく、それを使って裁判に訴えて、世の規範を動かしていった女性たちの懸命の努力があったということを、当たり前ではありますが改めて思い起こさせるのが本書です。

 

 

 

久米功一『「働くこと」を思考する―労働経済学による問題解決へのアプローチ』

9784502366413_430 久米功一さんより新著『「働くこと」を思考する―労働経済学による問題解決へのアプローチ』(中央経済社)をお送りいただきました。ありがとうございます。

https://www.biz-book.jp/%E3%80%8C%E5%83%8D%E3%81%8F%E3%81%93%E3%81%A8%E3%80%8D%E3%82%92%E6%80%9D%E8%80%83%E3%81%99%E3%82%8B%E2%80%95%E5%8A%B4%E5%83%8D%E7%B5%8C%E6%B8%88%E5%AD%A6%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E5%95%8F%E9%A1%8C%E8%A7%A3%E6%B1%BA%E3%81%B8%E3%81%AE%E3%82%A2%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%81/isbn/978-4-502-36641-3

働くことの課題を考えるために多様なテーマ(外国人労働、障害者、高齢者、LGBT、発達障害、幸福度、結婚・出産・育児、病気・介護、副業・起業、AI等)を通じて解説。

はしがきによると、本書は東洋大学における「労働経済学B」の講義内容だそうです。「労働経済学A」が標準的な教科書による経済理論であるのに対して、このBはテーマ別で、しかも夜間講義なので社会人学生も多く、まさにそういうのにぴたりと当て嵌まる内容になっています。目次は以下の通りですが、どちらかというとメインというよりは中くらいのしかし結構いろいろ論点の詰まったトピックを取り上げて料理していて、一般読者にも興味深く読めるものになっています。

第1部 働く人
第1章 外国人労働者 
    ―日本でどのように受け入れられているか
第2章 障害者雇用 
    ―就労は自立につながるのか
第3章 高齢者雇用 
    ―年齢にかかわりなく働くにはどうすればよいか
第4章 LGBT 
    ―多様性を尊重する社会が何をもたらすか

第2部 能力・スキル・価値観
第5章 発達障害・認知特性
    ―自分や他者の認知特性を知って活かす
第6章 幸福度・価値観
    ―人は何のために働くのか
第7章 さまざまな能力と能力開発 
    ―誰がどのように能力や努力を認めるのか

第3部 仕事と生活の両立
第8章 結婚・出産・育児 
    ―夫婦はいかにして仕事と家庭を両立させるか
第9章 病気,介護 
    ―自分や他者のからだを労わりながら働く
第10章 多様な働き方 
    ―正規・非正規雇用はこれからどうなるのか

第4部 働き方・働く場所・働けない状態
第11章 感情労働・過剰サービス 
    ―感情の適正な価格を考える
第12章 海外で働く,地方で働く 
    ―どのように現地に適応していくか
第13章 非営利組織,副業・複業,起業する 
    ―その働き方は労働者か事業主か
第14章 知的機械の労働市場へのインパクト 
    ―テクノロジーで自分を変える
第15章 失業と貧困 
    ―いかに困窮状態を脱して,就労につなげられるか 

そのトピックも、外国人、障害者、高齢者といった普通の中くらいのトピックもあれば、LGBT、発達障害、感情労働といった、現時点ではまだ普通のテキストでは小さな論点としても取り上げられていないような、しかしこれから結構重要になってくるようなものも、鋭敏に取り上げてきています。

で、本日お伝えしたいのは、本書には本ブログのエントリがいくつか引かれていることです。いや、ジョブ型・メンバーシップ型みたいなのは拙著から使われているんですが、著書や雑誌論文などではほとんど書いたことがなく、ほとんどもっぱら本ブログ上だけでごちょごちょ書いていたようなことまで、久米さんは目を光らせていたんですね。

第11章の感情労働・過剰サービスのところで、サービス業の生産性の低さについて、本ブログのこれらのエントリを引いて、こう論じているんです。

・・・顧客の要望を察して自ら一手間をかける姿勢は「おもてなし」として快適さを提供する一方、価格に見合わない過剰なサービスは低生産性を招き、サービス提供者の心理的な負担にもなっています。その背景には、こうしたサービスを当たり前のもの、無料のものとして、享受してきた日本人の価値観があります。

そこで引かれているのが、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2015/12/post-ce16.html(勤勉にサービスしすぎるから生産性が低いのだよ!日本人は)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/12/post-107c.html(スマイル0円が諸悪の根源)

 

いやあ、ここまで見られていましたか・・・。

 

 

 

 

 

 

 

2020年12月 9日 (水)

『季刊労働法』271号(2020年冬号)のコンテンツ

271_h1scaled 労働開発研究会のHPに『季刊労働法』271号(2020年冬号)の目次が公開されています。

https://www.roudou-kk.co.jp/books/quarterly/8978/

今号の特集は「コロナ危機と労働法」。コロナ禍における労働契約、休業命令と補償・賃金問題、そして、労災・安全衛生、雇用保険、テレワーク、フリー就労者への手当、諸外国の対応など複数の視点から検討します。

ということで、なかなかバラエティに富んだラインナップになっています。昨日、労災保険の特別加入が決まった日本俳優連合の森崎さんも登場していますね。

コロナ禍に試される労働契約法―労働契約法の身体性と状況対応的特性 九州大学名誉教授 野田 進
コロナ禍での休業と補償・賃金に関する一考察―大規模自然災害との比較を通じて 岩手大学准教授 河合 塁
新型コロナウイルス感染症と労働安全衛生法・労災保険法上の法的課題 東洋大学専任講師・特定社会保険労務士 北岡 大介
新型コロナウイルス感染拡大と雇用保険制度 九州大学教授 山下 昇
緊急時テレワークの法的課題 広島大学教授 山川 和義
技能実習生・留学生への入管の対応と問題点 神戸大学准教授 斉藤 善久
コロナ禍のフリーランス芸能従事者の課題 女優・協同組合日本俳優連合国際部長 森崎 めぐみ
雇用・労働関係の諸外国の新型コロナ対策 労働政策研究・研修機構労働政策研究所副所長 天瀬 光二 

その他の論文は以下の通りですが、

労働法学における「比較」と「歴史」 早稲田大学名誉教授 石田 眞
労契法旧20条の解釈基準―令和2年最高裁五判決 明治大学教授 野川 忍
改正公益通報者保護法成立の意義と今後の課題 淑徳大学准教授 日野 勝吾
ドイツにおける内部告発と労働法 Heinisch事件およびEU指令を契機とした公益通報者保護の議論に着目して 東北大学准教授 桑村 裕美子
タイにおける障害者雇用率制度 東京経済大学教授 中川 純
■イギリス労働法研究会 第35回■
オンデマンドで稼働するドライバーの被用者性 Dynamex Operations West, Inc. v. Superior Court 法政大学教授 沼田 雅之
■アジアの労働法と労働問題 第43回■
ミャンマーにおける結社の自由ガイドライン神 戸大学名誉教授 香川 孝三
■労働法の立法学 第60回■
テレワークの法政策 労働政策研究・研修機構労働政策研究所長 濱口 桂一郎
■判例研究■
元請企業等の労働契約外の第三者企業と安全配慮義務 日本総合住生活ほか事件・東京高判平成30年4月26日(労判1206号46頁) 岡山大学准教授 土岐 将仁
ハラスメント申告に対する内部調査と弁明の機会の付与 辻・本郷税理士法人事件・東京地判令和元年11月7日(労経速2412号3頁) 弁護士 庄子 浩平
■重要労働判例解説■
会社分割に伴う派遣先の労組法上の使用者性の承継 朝日放送グループホールディングス外1社事件(大阪府労委決定令和2・2・3別冊中央労働時報1540号1頁) 國學院大學教授 本久 洋一
出産休暇・出産手当に関する無期・有期契約労働者間の相違の労契法20条違反性 社会福祉法人青い鳥事件(横浜地判令2・2・13労判1222号38頁) 常葉大学講師 植田 達
■追悼■
片岡曻先生を偲ぶ 立命館大学名誉教授 吉田 美喜夫 

私は、特集とは別建てでテレワークの歴史を掘り下げています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

在宅勤務が露呈した長時間労働抑制と労働者の私的自由の矛盾@『地方議会人』2020年12月号

Gikaijin202012 『地方議会人』2020年12月号に「在宅勤務が露呈した長時間労働抑制と労働者の私的自由の矛盾」を寄稿しました。

2020年は本来、働き方改革が本格化する年のはずでした。長時間労働抑制のための時間外・休日労働の上限規制が中小企業にも拡大するとともに、非正規労働者の均等・均衡処遇を目指すいわゆる日本的同一労働同一賃金が大企業・派遣分野に適用され、さらにいわゆるパワーハラスメントの措置義務が企業にかかるようになったからです。しかし、年初以来急速に蔓延しパンデミックとなった新型コロナウイルス感染症によって、労働問題における関心事はそれに伴う休業や失業への対応にシフトし、雇用調整助成金や様々な労働市場セーフティネットをめぐる議論が沸騰しました。

そうした中で、働き方改革の一テーマでもあったある働き方が注目を集めました。新型コロナウイルスへの感染のおそれを避けるために、会社に出勤せず自宅で勤務する働き方、在宅勤務です。本年2月末に政府がテレワークや時差出勤の活用を呼びかけてから在宅勤務を実施する企業が増え、とりわけ4月に入って政府による緊急事態宣言が発せられると急上昇しました。しかし、5月末に緊急事態宣言が解除されると、徐々に減少していきました。その状況を、労働政策研究・研修機構が8月に発表した「新型コロナウイルス感染拡大の仕事や生活への影響に関する調査(一時集計)結果」で見ると、図のように5月中旬に向けて急速に広がったものの、同月末からは徐々に萎んでいったことが窺えます。・・・・

特集は「働き方改革の先に待つ未来」というもので、巻頭言に白河桃子さん、執筆者に大内伸哉さんや高見具広さんといったメンツが並ぶ中に私も書いています。

デジタル変革と新たな働き方 大内伸哉(神戸大学大学院法学研究科 教授)
議会の働き方改革 田口一博(新潟県立大学国際地域学部 准教授) 
ニューノーマルに対応した「新しい働き方」の実現に向けて 飯倉主税(総務省情報流通行政局 情報流通振興課長)  
在宅勤務で露呈した、長時間労働抑制と労働者の私的自由の矛盾 濱口桂一郎(労働政策研究・研修機構 労働政策研究所長)
今後の働き方改革を考える ー「ニューノーマル」を見据えて ー 高見具広(独立行政法人労働政策研究・研修機構 副主任研究員) 
② 現地報告
神奈川県真鶴町 港町から生み出す新しい働き方と共助コミュニティ ―真鶴町の美しさと働き方改革― 卜部直也(真鶴町まちづくり課 計画管理 係長)
和歌山県白浜町 ワーケーションの聖地、和歌山 ~白浜町の取組み~ 大平幸宏(白浜町役場総務課企画政策係 主任)

ぱらぱらめくってみると、私と高見さんが同じJILPT調査の在宅勤務の推移のグラフを使っていますね。別に不思議ではありませんが。

でもこの雑誌、基本的にはタイトル通り、まさに地方議会の議員さんたちの雑誌なんですね。冒頭のグラビアから後ろの方の連載や資料まで、まさにそういう作りになっています。

特集の中でいかにもそれらしかったのが、「ワーケーションの聖地、和歌山-白浜町の取組み」という白浜町役場の方の記事です。

地域活性化の起爆剤としてワーケーションに期待する気持ちが痛いくらい伝わってきますが、労働法の適用はどうするんだろうという気持ちはじわじわと・・・。

 

 

2020年12月 8日 (火)

新型コロナウイルスと雇用・暮らしに関するNHK・JILPT共同調査@周燕飛

Zhou_y_20201208225701 先週土曜日夜にNHKで放送されたNHKスペシャル「コロナ危機 女性にいま何が」は大変評判が良かったようですが、番組にも登場したJILPTの周燕飛さんが、放送ではとても言い切れなかった調査結果をこちらのパワポ資料にまとめてアップしていますので、関心ある方はぜひ。

https://www.jil.go.jp/tokusyu/covid-19/collab/nhk-jilpt/docs/20201113-nhk-jilpt.pdf

Chou_20201208224901

データに基づく分析なので、中身をきちんと読んでいただく必要があるのですが、最後のまとめのところから「主な発見」を箇条書きで書き出しておきますと、

 • コロナ禍が雇用に及ぼす被害は女性に集中(「会社都合」の失職率、収入激減者の割合、失職した正社員の非正規化率が高い、休業手当の受給割合が低い等)。

 • 「保育園・学校の休園(校)や時間短縮」は、子育て女性の雇用喪失の大きな理由となっている。 

 • 子育て男性の家事・育児時間は緊急事態宣言期間中に一旦増加したものの、今やコロナ前の水準に逆戻り。家庭での男女役割分業慣行がなかなか変えられない「壁」の存在が垣間見える。 

 • 妻の労働収入が減少した世帯は、「500万円~800万円未満」の夫婦世帯の中間層に偏っている。共働きの中間層は、コロナ禍でより大きな打撃を受けている。 

 • 妻の収入貢献度は、正規女性が42.7%、非正規女性が23.8%になっている中、妻の収入が減少した共働き中間層は、貯蓄の取り崩し、食費の切詰めや子どもの教育費カットを行う傾向を強めている。 

 • 子育て女性の20人に1人、シングルマザーの10人に1人は「育児放棄気味である」と回答しており、コロナ禍で児童虐待のケースが増えることを警戒すべきである。 

 

 

 

今さら聞けない「ジョブ型」雇用ってなに?【山本紳也×倉重公太朗】

Shinya 八面六臂の弁護士倉重公太朗さんが本日アップされた対談の相手に選んだのは、伝説の人事コンサルタントこと山本紳也さん。

山本しんやというと、山本晋也監督の真面目な社会学を思い出してしまうのは年のせいでしょうか。

それはともかく、さすが倉重さんが見込んだ対談相手だけあって、認識がことごとく的確です。

https://news.yahoo.co.jp/byline/kurashigekotaro/20201208-00211458/

どれぐらい的確かはリンク先をじっくり読んでいただくとして、なぜそういう的確な認識に至ったかを物語っているところが、私自身の経験と交錯して大変共感しました。

倉重:今日は「今さら聞けないシリーズ」みたいな感じです。よく新聞で出てくるけれども、いまいち分からないという方も結構いると思うので。そもそもの出発点として、日本型雇用は「メンバーシップ型」だと言われますが、これは一体何かというところを、簡単にご解説をいただけますか。
山本:はい。まず前置きになりますけれども、僕がここ数年、この分野に興味を持ちだしたのは、上智大学の国際教養学部で非常勤教員を始めたことがきっかけの一つです。上智の国際教養学部は、学生の半分ぐらいがノンジャパニーズで、日本人学生の多くは帰国子女なのです。
倉重:では、英語で授業をされるのですか。
山本:そうです。ほとんど日本に住んだことがない日本人の学生もいるような学部で、帰国子女が半分と、残り半分は日本が好きな外国人です。この学生たちを相手にしていると、日本の会社の人事の説明が難しいのと同時に、彼ら・彼女らにとっても、日本の人事を理解するのがすごく難しいと感じます。
倉重:なんの先入観もなく、ピュアな感じで聞かれるのですね。
山本:そうです。実体験のない学生らは、見聞きする表面上の事象が疑問のトピックになります。「なぜ新卒一括採用なのですか」「なぜ年功序列、終身雇用なのですか」「なぜ自分で好きな仕事を選べないんですか」という具合です。
 もっとも彼らが興味を持つのは、採用のところになります。「なぜ自分たちがやりたいことを聞いてくれないのか?」「自分たちが何を勉強してきたか、学校の成績がどうかということは全然意識されず、パーソナリティーばかりを日本の企業は気にする。これはどうしてだろう?」という疑問を皆が持っています。
倉重:実はどれも根っこは同じ質問ですね。それに対して、どういうふうに回答をするのですか。
山本:日本での当たり前を、国内で生活した経験の少ない彼らに説明しようと思うと、すごく難しいのです。これらは、一つひとつの制度や事象では説明がつきません。メンバーシップ型は、終身雇用だけで語れるものでもなければ、職能資格制度だけでも語れるものでもないのです。
倉重:新卒一括採用だけで日本型雇用は語れないと。
山本:そうです。会社以外の労働市場、社会環境も含めて、全部セットで成り立っている社会システムなのです。僕自身も授業で彼らとやり取りしている間に、だんだんと理解が深まってきました。そうこうしている間に、今年、コロナ禍をきっかけに「ジョブ型だ」「メンバーシップ型だ」という議論が始まりました。どうも世の中の議論というのは、どこか一部だけを抜き出していたり、人事制度論になっていたりするところが強くて、違和感を覚えています。 

Kurashige_20201208202001 私の場合、政策研究大学院大学で、アジア、アフリカ、東欧等からの留学生を相手に日本の雇用政策と人事労務管理を英語で講義しなければならず、おぼつかない英語で日本の人事管理のテキストをそのまま英訳したようなことを喋っていると、お前の言っていることは全然理屈が通っていなくてさっぱりわからんという矢が次々に飛んでくるという中で、否応なしに、なぜ彼らには、日本人にとって当たり前のことが全然通じないのかを必死に考えざるを得なかったのが、ジョブ型、メンバーシップ型というアイディアの出発点ですから、やはりそういう文化摩擦の経験が大事なんですね。

そういう経験をしたことがないと、ジョブ型というのが指し示しているリアルな社会のありようが全く理解できず、某濱口罵倒三羽烏候補生みたいに、「素人談義」だなどと自らのド素人ぶりを露呈してしまい、しかもそこのことに生涯気が付くことがないまま一生を終えてしまうわけです。

 

高年齢者就業確保措置と再就職援助措置@WEB労政時報

WEB労政時報に「高年齢者就業確保措置と再就職援助措置」を寄稿しました。


https://www.rosei.jp/readers/login.php



今年3月31日に改正され、来年4月1日から施行される予定の高年齢者雇用安定法は、70歳までの多様な雇用就業機会の確保として、これまでの65歳までの定年・継続雇用に加えて、フリーランスやボランティアといった非雇用型の就業までメニューに入れていることから、さまざまな議論を呼んでいることは周知のところです。この連載でも、8月18日付の第144回「70歳までの高年齢者就業確保措置の具体的内容」でやや突っ込んで検討をしています。

ところで、今回の高年齢者就業確保措置のメニューの中には、これまでの65歳までの高年齢者雇用確保措置には入っていなかったけれども、非雇用型就業ではなくれっきとした雇用に属するメニューが含まれています。それは、2019年5月15日の未来投資会議で7つのメニューの4番目として掲げられていた「他の企業(子会社・関連会社以外の企業)への再就職の実現」という選択肢です。これは、今回の改正では、第10条の2第3項として盛り込まれています。・・・・

2020年12月 7日 (月)

『POSSE』46号

Eokewqkuuaiogpc 『POSSE』46号をお送りいただきました。

https://info1103.stores.jp/items/5fc6650edf5159294bd1890a

特集「どうなる? コロナで激変する働き方」

ウーバーイーツをはじめとしたギグワークの増大、
テレワークの進展、解雇・倒産の増加による失業の拡大……。
コロナ禍は労働市場に大きなインパクトを与え、
私たちの働き方は急激な変化に見舞われている。
本誌特集では、コロナ禍で激変している労働のあり方とそのなかで浮上していきている新たな課題を、さまざまな角度から検証、考察した。
コロナ後の未来を見据え、この激動期のなかでこそ、
私たちの労働のあり方を見直していく必要があるだろう。

◆特集「どうなる? コロナで激変する働き方」
「ポスト・コロナ」を見据えた在宅ワークの働き方――ドイツで広がる「つながらない権利」の要求に学ぶ 大重光太郎(獨協大学教授)

従業員シェアリングの課題・留意点――法的側面から 嶋﨑量(弁護士)

プラットフォームワーカーに対する法的保護のゆくえ――コロナ危機のもとで進む政策議論の問題点は? 川上資人(弁護士)

コロナ禍で「名ばかりフリーランス」問題に新展開――yoggyインストラクターユニオンの取組み 金子まゆ美(yoggyインストラクターユニオン副執行委員長)

「ホワイト企業」ワタミの光と影――「ワタミの宅食」事件から見えてくるポスト・コロナの労働問題 本誌編集部

コロナ危機で会社が廃業! そのとき従業員はどうするか?――東部労組めがねおー支部の事例から考える、自主営業という選択肢 須田光照(東部労組書記長)

コロナ危機であらわになる「貧困社会」の実態――生活相談の現場から考える POSSE生活相談班

テレワークやフリーランスなど、まさにいま現在の論点が取り上げられています。

ただ、ちょっと細かい注文ですが、例えば冒頭に、つながらない権利について大重さんを呼んでいますが、大重さんはドイツの専門家で、ドイツはこの問題についてはあまり積極的ではない国なので、人選がどうなのかな、という気がします。正確に言うと、テレワークの権利という話ではいまドイツはかなり突出していて注目の的なんですが、つながらない権利についてはむしろ消極的なのです。つながらない権利についてはフランス、イタリア、スペイン、ベルギーといったラテン系諸国が既に立法化しているなど、欧州も各国によって微妙にニュアンスが違うんですね。EUレベルでも、いま欧州議会で立法提案に向けた動きがあるんですが。

◆ミニ企画 社会運動とストライキ
なぜアメリカの労働者はBlack Lives Matterに連帯しストを打つのか 本誌編集部
命をまもる看護師のストライキ――あらゆる人々の生存と社会正義を求めて 山本健太朗(ブラックバイトユニオン組合員) 

医療体制が危機的状況と言われる日本では、看護師の選択はもっぱら「exit」で、「voice」というのは聞こえてきませんが。

「ジョブ型」は成果主義じゃない 広がりどうみる――名付け親・濱口桂一郎さんに聞く@朝日新聞

本日の朝日新聞の真ん中の方(25面)に、私のインタビュー記事が載っています。インタビュワーは榊原記者。先日(11月21日)に電子版に載ったものを紙面の都合で若干短縮したバージョンです。

https://www.asahi.com/articles/DA3S14721771.html

「ジョブ型」と称した人事制度を採り入れる企業が増えています。日立製作所などの大手も導入し、日本型雇用が本格的に崩れるとの見方もあります。「ジョブ型」の名付け親として知られ、労働政策研究・研修機構で研究所長を務める濱口桂一郎さんは「ジョブ型は『成果主義』の代替用語ではない」。一体、どういうことなのでしょうか。 ・・・・

これで、朝日と産経という一見対照的な論調の新聞にわたくしのほぼ同じ主張のインタビューが載り、それは日経新聞流の「ジョブ型」の批判であり、そして一見それと対照的に見える東京新聞は実は日経流の認識を無批判にそのまま受け入れて単にそれを罵っているだけ、という、なかなかに興味深い配置状況が浮かび上がってきますね。

ちなみに、肝心の日経新聞も本日の経済教室では本田由紀さんが登場し、自ら誤解を糺していますが、

https://www.nikkei.com/article/DGXKZO67002130U0A201C2KE8000(専門性とスキルの尊重を ジョブ型雇用と日本社会 本田由紀 東京大学教授)

その中で、わたくしがこう描写されておりますな。

・・・注目が高まっているジョブ型雇用だが、言葉が広まるとともに多くの誤解も生まれており、中心的に提唱してきた濱口桂一郎・・・が、自身のブログや諸所のメディアで懸命に誤解を正している。・・・

いやまあ、懸命というか、名付け親としての製造物責任があるもので・・・。

(参考)

https://www.sankei.com/life/news/201014/lif2010140001-n1.html(間違いだらけの「ジョブ型」議論、成果主義ではない…第一人者・濱口桂一郎氏が喝!)

https://www.sankei.com/economy/news/201115/ecn2011150001-n1.html(【新章 働き方改革】成果主義?解雇されやすい?思い込みが煽る「ジョブ型雇用」不安 労働政策研究・研修機構研究所長・濱口桂一郎)

・・・というのも、最近マスコミにあふれるジョブ型論のほとんどは一知半解で、言葉を振り回しているだけだからだ。ここでは、その中でも特に目に余る2つのタイプを批判しておきたい。
 1つ目は特に日経新聞の記事で繰り返し語られる、労働時間ではなく成果で評価するのがジョブ型だという議論だ。あまりにも頻繁に紙面でお目にかかるため、そう思い込んでいる人が実に多いのだが、これは9割方ウソである。 ・・・・
 もう一点、ジョブ型になれば解雇されやすくなるという趣旨の議論が推進派、反対派の双方で見られる。・・・最近では東京新聞に解雇しやすいとジョブ型の導入に警鐘を鳴らす記事が掲載された。・・・そう思い込んでいる向きも多いのだが、これも8割方ウソである。

2020年12月 6日 (日)

報酬の労務対償性をめぐって

弁護士の堀内聡さんがこう呟いていて、

https://twitter.com/shoriuchi18/status/1335509734430887936

労働者性の判断要素である「報酬の労務対償性」について、いつもよくわからなくなります。
業務委託であっても、報酬は委託業務の対価であって、労務というか業務というかはともかく、仕事への対価であることは同じではないかという疑問がいつも拭えない。 

いやそれどころか、典型的なメンバーシップ型の日本的正社員の場合、そもそももらっている賃金が厳密な意味でのその遂行した労働の対価なのか、それとも「社員」という地位に対してあてがわれる武士の「禄」みたいなものなのか、かなりあいまいですね。

その昔労働法学界では賃金二分説という学説がありまして、賃金には基本給のように労働の対価たる部分と、何とか手当みたいなそうじゃない部分、まさに身分に対応する部分があるんだという説が有力説だったこともあるんですが、そもそも基本給だって厳密には労働に対応した対価じゃなくって身分に応じて年功的に決まるじゃないか、と反論されてたことがあります。

改めて考えると、日本のメンバーシップ型正社員の「賃金」って、労働者性の判断基準たる労務の報酬対償性が(非正規労働者に比べると)いささか希薄なのかもしれません。

まあ、何回も言っていることですが、実定法上「社員」てのはいかなる意味でも労働を提供して報酬をもらうたぐいの人ではないのですから、自らを「社員」だと言っている人が労働者性が希薄なのは、論理的に誠に整合的なのかもしれません。

半ば冗談で書いてますが、半ばは大まじめな話でもあります。

 

偽装労働者協同組合による団体行動権の侵害について(スペイン最高裁判所2019 年5月8日判決)

昨日書いた労働者協同組合の濫用の危険性について、労働者協同組合の元祖みたいな国のスペインで、まさにドンピシャの事例があったようです。

神田外語大学グローバル・コミュニケーション研究所の紀要『グローバル・コミュニケーション研究』第9号に掲載されている、青砥清一さんの「偽装労働者協同組合による団体行動権の 侵害について ―スペイン最高裁判所2019 年5月8日判決を巡って―」という論文です。

https://kuis.repo.nii.ac.jp/?action=repository_uri&item_id=1735&file_id=22&file_no=1

労協と協同労働者との関係は「協同組合関係」であり、一般的な企業と被雇用労働者との間に存在する労使関係に相当しないと考えられている。それゆえ、スペインでは協同労働者に対して労働法が適用されてこなかったのだが、一部の労協がこの協同組合制度を悪用する事件がスペインで多発している。本事件の概要は、食肉加工場に協同労働者を派遣している労協が、偽装的に派遣先企業を解雇された従業員を労協に加入させ、協同労働者としての自由裁量も経営参加も認めることなく元勤務先の就労規程と業務命令に基づき役務を提供させた上、これに異を唱える労働者と労働組合の争議行動を妨害したというものである。
本論では、スペインにおいて 200 年以上の歴史をもつ労協の沿革と法制度について概説した後、上記の労働紛争に関する判例の変遷と政府の対応について考察する。 

いろいろあるものですね。この事件、なかなか面白いです。

2020年12月 5日 (土)

労働者協同組合は究極のメンバーシップ型なんだが・・・

昨日、労働者協同組合法が成立しました。この法案については、今までも何回か解説してきたところですが、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2008/02/post_c79d.html(労働者協同組合について)

・・・端的に言うと、労働者協同組合における労務提供者は労働法上の労働者ではないということに(とりあえずは)なるので、労働法上の労働者保護の対象外ということに(とりあえずは)なります。この事業に関わるみんなが、社会を良くすることを目的に熱っぽく活動しているという前提であれば、それで構わないのですが、この枠組みを悪用しようとする悪い奴がいると、なかなかモラルハザードを防ぎきれないという面もあるということです。
いや、うちは労働者協同組合でして、みんな働いているのは労働者ではありませんので、といういいわけで、低劣な労働条件を認めてしまう危険性がないとは言えない仕組みだということも、念頭においておく必要はあろうということです。
それこそ最近の医師や教師の労働条件をめぐる問題を考えると、どんな立派な仕事か知らんが、労働者としての権利をどないしてくれるンやというところを没却してしまいかねない議論には、少しばかり冷ややかに見る訓練も必要なのではないか、というきがしているものですから。 

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/04/post-8536.html(「協同労働の協同組合法案」への反対論)

・・・ここでは、わたくしの判断は交えずに、樋口さんの批判を引用しておきます。この批判が正鵠を得ているのか、的外れなのか、正々堂々と議論されることが望ましいと思います。
>ワーコレグループが主張する「新しい働き方」は賃労働を克服する理想としてデザインされているが、今日の社会において十分に検討されているとは言えない。それがフィクションのまま現実化されれば、労働者の味方のはずのワーコレ・労協が働き手に対し労働者以下の劣悪な労働環境を強制して労働搾取してはばからない愚行を演じることになる。議員立法による不十分な検討でこのような法律が成立することに嘆かざるを得ない。 

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/post-ecd7.html(第4の原理「あそしえーしょん」なんて存在しない)

・・・たぶん、現在の組織のなかで「アソシエーション」に近いのは協同組合でしょうが、これはまさに交換と脅迫と協同を適度に組み合わせることでうまく回るのであって、どれかが出過ぎるとおかしくなる。交換原理が出過ぎるとただの営利企業と変わらなくなる。脅迫原理が出過ぎると恐怖の統制組織になる。協同原理が出過ぎると仲間内だけのムラ共同体になる。そういうバランス感覚こそが重要なのに、そのいずれでもない第4の原理なんてものを持ち出すと、それを掲げているから絶対に正しいという世にも恐ろしい事態が現出するわけです。マルクス主義の失敗というのは、世界史的にはそういうことでしょう。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/03/post-132e.html(アソシエーションはそんなにいいのか?)

・・・日本の「正社員システム」とは、それがマルクス的な意味での資本によって結合されただけの自由な=疎外された労働ではなく、まさに「社員」としてアソシエートした諸個人による共同的労働になっているところにあるのだとすると、そして、そのシステムが例えば本号の特集となっている「シューカツ」を生み出す一つの源泉となっているのだとすると、「いまこそアソシエーションを!」みたいな議論はいかにも皮肉なのではないか、ということですね。 

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2012/08/post-97a8.html(とってもメンバーシップ型なユーゴスラビア労働法)

「そういえば、その昔、ゆーごすらびあなんていう国がありましたなあ」
「そうそう、ろうどうしゃじしゅかんりとかいうのもありましたねえ」
と、老翁老婆が渋茶を啜りながら回想するような歴史的存在となった旧ユーゴスラビアですが、ソ連やポーランドと比較しながら、旧ユーゴスラビアの労働法をいろいろ読んでいくと、これって究極のメンバーシップ型労働法理論を構築していたのだという事が分かりました。
労働者自主管理というのも1950年に始めてから徐々に進化していっているのですが、その完成形とみなされているのが1976年の連合労働法というやつですが、この法律では、連合労働者の労働関係は、一方が他方を雇う雇用関係ではなくって、「全ての者が互いに労働関係を結ぶ相互的労働関係」なんですね。企業という概念の代わりに「労働組織」というのが中心で、その労働者評議会が仲間として入れる人間を選定する。事業管理機関も労働者評議会が選ぶ。まさに、出資者がメンバーである会社ではなく、労働者がメンバーである労働組織が社会の中心をなすのが自主管理社会主義というわけで、法制度自体がとってもメンバーシップ型なわけですね。
今の日本で言えば、「協同労働の協同組合」に近いわけですが、社会全体をこういう仕組みにしようとしたところが旧ユーゴの特徴であり、結局それに失敗してユーゴという国まで一緒に崩壊してしまったというわけです。 

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2020/05/post-972ce4.html(最新の労働者協同組合法案@『労基旬報』2020年5月25日号)

・・・この法案がこれからどうなっていくのか、新型コロナウイルス感染症にとりつかれた状態の現在は全く予想することはできませんが、世の中がある程度落ち着いてくれば国会提出という運びになる可能性は今回はかなり高いように思われます。法案の附則では、現在中小企業等協同組合法に定める企業組合や特定非営利活動促進法に基づくNPO法人として活動している事実上の労働者協同組合が、本法に基づく労働者協同組合に組織変更する手続きも詳細に定めており、かなり現実性がありそうです。 

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2020/06/post-bb83e4.html(労働者協同組合法案ようやく国会に提出)

 つい先日、『労基旬報』5月25日号に解説を寄稿したばかりの労働者協同組合法案が、先週金曜日に国会に提出されたようです。

というわけで、この法案がようやく昨日成立したというわけです。

上にリンクを張った過去のエントリをざっと読めばわかるように、これはなかなか人間労働の本質にかかわる論点を提起していて、そう単純素朴に礼賛すればいいという話でもないのですが、さすが深みのないリベサヨ風味の東京新聞は、全面的に礼賛モードですな。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/72617(「労使」ではなく「協同」で働く 労働者の裁量、自律性を取り戻す<協同労働法>)

で、そこに最近ニューモードのマルクス主義で人気を博していいる斎藤幸平さんが登場して、その礼賛に唱和しているんですが、そうなればなるほど懸念が増してくるわけですよ。何しろ、マルクス御大の「あそしえーしょん」の夢想が魔法使いの弟子たちの手を転々とした挙句に、この地上にどんな地獄絵図をもたらしたかという世界史を齧った人間としてはね。

 大阪市立大大学院の斎藤幸平准教授は「現場の労働条件が悪化し経済的不平等が拡大する中、労働者が経営主体となる協同労働が広がれば、労働のあり方や生産の仕方を根本から変える可能性がある」と指摘した。

「しかし労使関係を前提にしない、もっと別の働き方があるはずで、それが協同労働だ。必ずしも労使関係を前提とせず労働者自らが出資し、自分たちでルールを定め、何をどう作るかを主体的に決める。株主の意向に振り回されず労働者の意思を反映していけば、働きがいや生活の豊かさにつながるのではないか」 

どんな御託を並べようが、いかに労働者の利益を代表する共産党が権力を握ってすべてを支配するからお前たち労働者が支配しているのと同じだ、などと言おうが、現実に社会主義諸国の職場には(国家権力によって労使関係ではないと定義され、それを労使関係だと指摘することを禁じられた)現実の労使関係があったわけです。そういう血塗られた歴史の重みを忘れて、こういう軽薄な言葉を吐けるんだなあ、と嘆息。

いや今回の法案は、まさにそういう(とりわけ労働弁護士方面から提起された)懸念に応えるために、当初の「労働者じゃない」という設計を全面的に「労働者である」と変え、つまり、労働者協同組合の組合員として働くものといえども、この市場社会において労働力を売って生きる労働者として、その取引条件を市場における集合取引(まさにウェッブ夫妻が描き出し、ゴンパースが旗を振ったコレクティブバーゲニング)として行うんだと明記することで、そういう地獄絵図につながる懸念を払拭しようとしているわけですが、それを報じる新聞の論調が、なんだか夢想の世界を生きているかのごとくなので、やっぱり心配になるわけです。

テレワーク論@『経団連タイムス』

Logo_keidanren01 『経団連タイムス』12月3日号に、去る11月9日に経団連の雇用政策委員会にお呼びいただいてお話ししたテレワークについてのコメント概要が載っています。

https://www.keidanren.or.jp/journal/times/2020/1203_02.html

経団連は11月9日、雇用政策委員会(淡輪敏委員長、内田高史委員長)をオンラインで開催した。労働政策研究・研修機構(JILPT)の濱口桂一郎研究所長から「テレワークの法政策課題」について、また厚生労働省の田中誠二職業安定局長から「職業安定行政の主要課題と今後の方向性」をテーマにそれぞれ講演を聴いた。概要は次のとおり。

■ JILPT・濱口研究所長

(1)テレワークにかかる法政策の変遷
2004年の在宅勤務通達では、事業場外労働のみなし労働時間制の適用可否が中心であった。適用される要件は、(1)私生活を営む自宅で行われること(2)使用者の指示により常時通信可能な状態に置かれていないこと(3)随時、使用者の具体的な指示に基づいて行われていないこと――とされた。

18年のガイドラインでは、サテライトオフィスやモバイル勤務の活用が追加されたほか、深夜労働の制限や深夜・休日のメール送付の抑制等の対策例が盛り込まれた。当時、長時間労働の是正が基軸とされたことから、厳格な労働時間管理に傾斜した内容となった。

(2)テレワークにおける検討課題
政府は20年4月、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言を発出し、在宅勤務や時差出勤の推進を要請した。その結果、在宅勤務が急拡大する一方、労働時間管理を中心に労働法上の課題が顕在化した。コロナ禍によって多くの人々が半ば強制的に在宅勤務を経験したことで、ウェブカメラの常時設置や離席時のチャット投稿など、在宅勤務時の厳格な労働時間管理が、労働者の私的生活への介入となり得ることがわかった。

今後、「長時間労働の抑制」と「私的自由の確保」につき、どうバランスを取るかが問題になる。また、厳格な時間管理に傾斜し過ぎることなく、健康確保のために大まかな労働時間の状況把握を行うという視点からの検討も重要となろう。 

この人の記事こそ、ジョブ型「狂」想曲だったんだが・・・

一時の訳の分からないインチキなジョブ型論に対する批判がかなり増えてきましたが、その中にこんな記事を見つけましたが、

https://www.businessinsider.jp/post-225369(「ジョブ型雇用」狂想曲に御用心、日本型雇用が諸悪の根元なわけでもない)

ジョブ型狂想曲に水をぶっかけるこの記事自体は冷静な記事ではあるんですが、でもこの記事の筆者が今年6月に書いたこの記事は、

https://www.businessinsider.jp/post-215432(日立、富士通、資生堂…大企業ジョブ型導入で崩壊する新卒一括採用)

その中の記述のあまりなあまりぶりに、思わずWEB労政時報で10月に書いた「誤解だらけの「ジョブ型」論」では、槍玉に挙げてしまったくらいだったんですが・・・。

https://www.rosei.jp/readers/article.php?entry_no=78921

 今年1月に経団連が公表した『2020年版経営労働政策特別委員会報告』がかなり大々的に「ジョブ型」を打ち出した(と、少なくともそうマスコミに報道された)ことに加え、年初からのコロナ禍でテレワークが急増し、「テレワークがうまくいかないのはメンバーシップ型のせいだ、ジョブ型に転換すべきだ」という声が湧き上がってきたことから、マスコミやネット上では「ジョブ型」という言葉が氾濫している状態です。
 もともと、日本型雇用システムの特徴を、欧米やアジア諸国の「ジョブ型」と対比させて「メンバーシップ型」と名付けたのは私自身なのですが、近年の「ジョブ型」の氾濫には、正直眉を顰(ひそ)顰(ひそ)めっぱなしの状態です。というのも、マスコミに溢れる「ジョブ型」論のほとんどは、一知半解で「ジョブ型」という言葉を振り回しているだけだからです。いや、一知半解どころか、そもそも「ジョブ型」とは何かというイロハのイすらわきまえていない、知ったかぶりの議論が横行しているのが現状です。その典型例をひどいものから見ていきましょう。
 まず、「ビジネスインサイダー」というネットメディアに6月26日付で掲載された「日立、富士通、資生堂…大企業ジョブ型導入で崩壊する新卒一括採用」(滝川麻衣子)という記事です。「日立製作所、資生堂、富士通、KDDIなど名だたる日本企業が、職務を明確にして、年齢や年次を問わずに適切な人材を配置する『ジョブ型』への移行を加速させている。グローバルで人材獲得競争が激しさを増す中、グローバル基準のジョブ型に移行する企業が、今後も増えることは確実だ」という書き出しで始まるこの記事を読んでいくと、すぐにこういう一節にぶつかります。
「人事政策は事業そのものです。かつての電機メーカーから舵を切り、今の日立はグローバルで社会イノベーション事業を行うサービス事業会社。グローバルのマーケットを知っている必要がある。外国人、女性など人材の多様性こそが必要で、日本固有のメンバーシップ型を続けることは無理がありました」
 日立の人事戦略の中核人物として、ジョブ型導入の指揮をとるCHRO(最高人事責任者)中畑英信氏は、Business Insider Japanの取材に対し、そう話す。
 日立は、2021年3月までにほぼ全社員の職務経歴書を作成し、2024年度中には完全なジョブ型への移行を目指している。背景にあるのが、ビジネスモデルの転換だ。
 この中畑CHROの発言部分は正確なのでしょう。しかし、それを受けてすぐにこの記事の筆者が書いているのは、なぜか中畑氏が語ったであろうはずの「全職種の職務記述書を作成」ではなく、「全社員の職務経歴書を作成」というまったく正反対の言葉なのです。
 「ジョブ型」とは何であり、何でないか、というイロハのイのそのまた入門の入門をほんの少しだけでも齧(かじ)齧(かじ)っていれば、ジョブ型とはヒトではなくジョブから出発するのであり、したがってまず作成すべきはそのジョブの中身を明示する職務記述書(ジョブ・ディスクリプション)であって、いろんな仕事をぐるぐる回ってきたヒトの能力を暗示する職務経歴書なんかではあり得ない、というのは常識であるはずです。なのに、声高に「ジョブ型」の到来を叫ぶこの記事の筆者自身が、その一番根っこにあるべき常識が欠如しているという哀しいまでのアイロニーが滲み出ています。
 驚くべきことに、この記事の筆者はそのすぐ後に「人に仕事を割り振るのではなく、仕事(ポジション)に見合った人材を登用するジョブ型では」云々と、大変まっとうなことを書いているのです。自分の書いているまっとうな記述の意味も実はよく分かっていないということなのでしょうか。 ・・・・

「全職種の職務記述書を作成」を「全社員の職務経歴書を作成」と書いてしまうような方に、いまさら「「ジョブ型雇用」狂想曲に御用心」とか言われてもねえ、というのが正直な感想ではあります。

 

2020年12月 4日 (金)

職務限定・成果給の両立難題@神林龍@日経経済教室

Kambayashi_20201204180801 本日の日経新聞の経済教室に、神林龍さんが「ジョブ型雇用と日本社会」の「中」として「職務限定・成果給の両立難題」を書かれています。

https://www.nikkei.com/article/DGXKZO66953900T01C20A2KE8000

日経新聞がひたすら宣伝している「ジョブ型とは職務を定めた成果主義なり」という奇妙な議論を、(私と違って紳士的なので、頭から叩きつぶすのではなく)やんわりとしかししっかりと否定しています。

・・・結局、ジョブ型雇用を職務記述書と成果給の混合と解釈しても、その道のりは険しい。いわゆる日本的雇用から抜け出そうという意図は察せられるが、その組合せは論理的な矛盾をはらんでいる。・・・

そして、日経式ジョブ型論がなぜか都合よく忘れたがるこの点もしっかりと指摘しています。

・・・さらに職務記述書を重視するのであれば、使用者は日本的雇用慣行の下で享受してきた広範な人事権を一定程度諦めねばならない。・・・

こういうのは、およそ雇用システム論を少しでも齧れば当たり前のことではあるのですが、昨日の「上」では、太田肇さんがあっさり日経式ジョブ型定義に従って、「ジョブ型では時間ではなく、仕事の成果を重視するが、労働基準法は一部の職種を除き原則として労働時間で管理することを前提にしている」などと、相当にトンデモなことを書かれています。

いやいや、れっきとしたジョブ型社会の欧米でも、一部のエグゼンプトを除けばメインストリームのマジョリティの労働者は労働時間規制の下にありますが、そういう圧倒的多数のジョブ型労働者たちは、日経式定義ではジョブ型に認めてもらえないようです。しくしく。

(追記)

普通の理性を持った人であれば、この神林さんの文章が、日経式インチキジョブ型論を批判し、私が繰り返し論じている本来のジョブ型論の観点から今のおかしなジョブ型狂想曲をたしなめていることはわかりそうなものですが、世の中には日経式ジョブ型論に疑いを持たずに、私の議論を「素人談義」だなどと罵倒し、神林さんにどう答えるのか?などと見当はずれの言いがかりをつける、いささかアレな感じの経営学者さんもおられるようです。たぶん、アメリカのジョブコントロールユニオニズムも知らなければ、ヨーロッパ諸国の産業別労働協約のことも何にも知らないんでしょうね。池田信夫、田中秀臣とならび、濱口罵倒三羽烏の一角を狙っているのかもしれませんが、もう訳の分からないイナゴの来襲は御免なので、これ以上コメントは避けておきます。勝手に仲間扱いされた神林さんが一番迷惑をこうむるでしょうし。

それに、この分野で一番信頼されている佐藤博樹さんがようやく満を持して、インチキジョブ型論の批判に乗り出してこられてるので、

https://news.yahoo.co.jp/articles/56d2c370d772ddc248ca82165ccc23f91259e494(人事の流行「ジョブ型雇用」の誤解 成果主義や解雇と直結? 佐藤博樹・中央大学ビジネススクール教授に聞く)

今まで一人気を吐いてきた誤解をいちいち叩く仕事はそろそろ控え気味にしたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

『日経DUAL』にインタビュー記事

働くママとパパを支える雑誌ということで、『日経DUAL』のインタビューを受けました。

https://dual.nikkei.com/atcl/feature/19/112600055/112600001/?i_cid=nbpdual_sied_pt_cs_1(ジョブ型雇用になると、新・学歴社会がやってくる?)

雇用システム論の基礎の基礎からすればごくごく当たり前のことを喋っただけなんですが、インタビュワの方には大変驚かれてしまったようです。こういう話をして驚かれるということ自体、いかに現代日本で「ジョブ型」ってのが誤解されまくっているかを示しているとも言えますけど。

 「ジョブ型」雇用を一部で導入していた日立製作所が本格採用に広げ、富士通やKDDIはジョブ型人事制度の導入を発表するなど、ジョブ型に取り組む企業が相次いでいます。リモートワークで働き方が変わり、「メンバーシップ型」では社員を評価するのが難しくなってきたことも背景にあるようです。

 「今、世間で言われているジョブ型は成果主義の言い換えで、欧米のジョブ型とは異なります。もし欧米で行われているようなジョブ型になれば、教育のあり方、企業への就職、社内の人材育成の方法といった『親時代の当たり前』は変わってきます

 そう話すのは、ジョブ型の名付け親で日本型雇用研究の第一人者の濱口桂一郎さんです。

 「これまで日本の学生が行ってきた就活は、実質的には『就職』ではなく『入社』を目指すものでした。会社に入れば自動的に仕事が割り振られてきましたが、ジョブ型ではそうはいきません。ジョブを得るには、『この仕事ができる人いますか?』という求人に、『はい、私ができます』と自分で手を挙げて応募しなければなりません。ですから、未経験の新卒者よりも、専門スキルを持ったスペシャリスト(専門家)が求められるのです。では、新卒者の売りとは何か。経験に代わる専門性や、どの大学の何学部でどういう専門的な勉強をしてきたかが意味を持つようになります。これまでの日本の学歴社会とはまったく違った、欧米式の学歴社会がやってくるのです

 濱口さんは、ジョブ型になると、それ以外にも「若い人のほうが仕事のチャンスがたくさんある」「やりたいことが分からなくても就職はできる」といった、これまでの「当たり前」も変わってくるだろうと言います。次のページから詳しく話を聞きました。

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2020年12月 3日 (木)

成長戦略会議実行計画

一昨日(12月1日)、成長戦略会議が実行計画を取りまとめました。

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/seicho/pdf/jikkoukeikaku_set.pdf

冒頭、アトキンソン流の生産性論もあり、いろんな項目が並んでいますが、労働政策面では、テレワークについてやや踏み込んだ記述がされている点が注目です。

2.テレワークの定着に向けた労働法制の解釈の明確化

時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方として、テレワークなど新たな働き方の導入・定着を図ることが重要である。
今回、コロナ禍でのテレワークの実施により、その有効性が確認された。一方で、課題も明らかになった。
テレワークで生産性が上がるか否かではなく、「新たな日常」になることを前提とし、どうすれば労働生産性が上がるかを考えていくべきとの指摘があった。
政府としては、テレワークの定着に向けて、新たなKPIを策定するとともに、中小企業によるテレワークのための通信機器の導入について支援の強化を図る。さらに、労働時間の把握・管理及び健康確保について、以下の方向で、労働法制の解釈の明確化を図る。

(1)労働時間の把握・管理
テレワークの時間管理について、労使双方にとって負担感のない、簡便な方法で把握・管理できるようにするため、ルールを整備する。
具体的には、以下の方向で検討を進める。
①テレワーク時における労働者の自己申告による労働時間の把握・管理については、自己申告された労働時間が実際の労働時間と異なることを客観的な事実により使用者が認識している場合を除き、労働基準法との関係で、使用者は責任を問われないことを明確化する。
②(中抜け時間があったとしても、)労働時間について、少なくとも始業時間と終業時間を適正に把握・管理すれば、労働基準法の規制との関係で、問題はないことを確認する。
③テレワーク時には原則禁止であるとの理解があるテレワークガイドラインの「時間外、休日、深夜労働」について、テレワーク以外の場合と同様の取扱いとすることについて検討する。
(2)健康確保
長時間労働者・高ストレス者に対する医師の面接指導については、リモートでの面接指導も企業が柔軟に選択することができる旨を、テレワークガイドラインで明確化することを検討する。 

なお、テレワークは後ろの方の地方創生のところにも出てきます。

1.地方創生に資するテレワークの推進

新型コロナウイルス感染症の拡大を契機として、地方で暮らしてもテレワークで都会と同じ仕事ができるという国民の意識・行動変容を踏まえ、サテライトオフィスの整備や、東京での仕事をテレワークにより続けながら移住を希望する者への各種支援策を講じる。この際、産業界や自治体等の関係者との協力を進めるための取組などの環境整備を進めていく。その際、二地域居住・就労も含め、地方への新しい人の流れを創出する。
また、ワーケーション、ブレジャー(出張先で滞在を延長するなどして、余暇も楽しむ)を推進する。 

 

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