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« ジョブ型をめぐる3界隈の戦い | トップページ | 『週刊東洋経済』11月14日号に書評が »

2020年11月 8日 (日)

岡地事件(東京地判令和2年1月15日)評釈@東大労働判例研究会

11月6日、東大労働判例研究会(zoom)で岡地事件(東京地判令和2年1月15日)を評釈しました。レジュメはこちらですが、そもそも労働者性の判断基準とは何のためのものなのかという基本論から論じています。

http://hamachan.on.coocan.jp/rohan201106.html

Ⅲ 評釈
1 労働者性の判断基準とは何のためにあるのか?
 本件は労働基準法上の労働者性が争点となった一事案であり、本判決は他の多くの判決と同様、1985年の労働基準法研究会報告の労働者性の判断基準を本件に淡々と当てはめて結論を出したものである・・・ように見える。そして、その観点から本件を淡々と評釈することもできるし、それが通常の判例評釈の作法でもあろう。
 しかしながら、本判決はそもそも、労働者性の判断基準というものがいかなる状況を前提にして構築されたいかなる性格のものであるかという点についての認識が希薄であるように見える。それは、契約形式上は労働契約ではないとされているにもかかわらず就労の実態から労働契約に該当するとして労働者側が訴えた事案の積み重ねの中から、契約形式に反して労働者であると認定するために取り上げられてきた諸要素である。業務遂行上の指揮監督にせよ、勤務場所・勤務時間の拘束性にせよ、報酬の労務対償性にせよ、これらがあるから(契約の文言にかかわらず)労働者であると認定するための判断要素なのであって、これらがなければ労働者と認定できないというような必須要件ではない。
 そもそも、労働基準法上には管理監督者、事業場外労働のみなし労働制、裁量労働制、高度プロフェッショナル制度等、業務施行上の指揮監督が欠如ないし希薄であり、勤務場所・勤務時間の拘束性が欠如ないし希薄な労働形態が明確に規定されている。また、労基法37条の割増賃金の規定を除けば、そもそも賃金が労働時間に比例しなければならないなどとする規定は存在しない。もし、これら労働者性の判断基準の諸要素が労働者であると認定するための必須要件であるならば、これら労基法上に明確に規定されている労働形態や、労働時間によらない賃金制度の適用者はすべて労基法上の労働者ではあり得ないことになってしまう。そのような矛盾する結論を導くような考え方は間違っているといわざるを得ない。
 したがって、本件において最重要の論点は、そもそも本件において、契約形式上は労働契約ではないとされているにもかかわらず就労の実態から労働契約に該当するという主張がXからされたのかという点である。そうではなく、Xは「登録外務員雇用契約書」という契約形式をとる本件契約が労働契約に該当するということを当然の前提として労基法16条の適用を求めているのであり、これに対してYが「登録外務員雇用契約書」という契約形式にもかかわらず就労の実態から労働契約非該当性を主張しているのである。判決文上では、XとYが労働者性の判断基準に沿った形でそれぞれの主張を繰り広げているように整理されているが、それは裁判官の訴訟指揮が、契約形式が労働契約ではないことを前提とした労働者性の判断基準しか見えていないからである。本件はそもそも、契約形式が労働契約ではないことを前提とした労働者性の判断基準を淡々と適用して良いような事案ではない。まずは、本件契約が当事者の意思として労働契約に該当するものとして締結されたのか否かを見る必要がある。・・・・・

 

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コメント

いやはや、これはマクロで全体的整合性を保ちながらミクロな個別事象に迫っていくことの重要性を再認識させられました〜まさか裁判官さえも(俄仕込みの専門知識ですと)このようなファンダメンタルなとっかかり時点の課題設定ミスを犯してしまうものなのですね。

懸案の労基法16条(違約金禁止)ですが、企業人事の実務上はJILPATさんの以下のレジュメが役立ちます。
https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2009/04/pdf/058-061.pdf

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