高尾総司・森悠太・前園健司『ケーススタディ 面接シナリオによるメンタルヘルス対応の実務』
高尾総司・森悠太・前園健司『ケーススタディ 面接シナリオによるメンタルヘルス対応の実務』(労働新聞社)を著者の高尾さんよりいただきました。前にもご本をいただき、本ブログで紹介したことがありますが、今回の本もますます高尾節が全開です。
https://www.rodo.co.jp/book/9784897618272/
第一章では、メンタルヘルス対応で相談を受ける事例を代表的な6つのケースにまとめ、対応方法と伝えるべき事項を「シナリオ」で示しています。事例の経過ごとに、大まかな対応方針と面接の目的、面接で会社として伝えたいメッセージ、さらには、応用編として面接前に社内で協議しておくべきポイントを整理したうえで、実際の使用を想定した面接シナリオを掲載しています。
第二章では、本書のテーマである面接シナリオについての考え方を、第三章では高尾メソッド総論として、業務的健康管理に基づく対応の理論部分と、最新の手順と主要様式の解説を行っています。
目次は以下の通りです。
はじめに
第一章 ケース別 面接シナリオによる対応
case.1 復帰後の配慮が長期間解除できないまま、あらたに身体疾患を理由に勤怠が乱れ始めた
case.2 「復帰可能。ただし異動が望ましい」という診断書が出た
case.3 体調不良を理由とした勤務態度不良が問題となっていて、さらに上司が適切に労務管理できていない
case.4 パワハラを引き合いに、復帰時の部署を指定
case.5 職場で自傷行為をする従業員 寮にて一人暮らし
case.6 合理的配慮として職務「大幅」免除を求められた
第二章 面接シナリオの意義
第一節 面接と面談の違い
第二節 面接シナリオの作成メリット
第三節 面接シナリオの作成手順
第四節 面接シナリオ作成の実際
第三章 高尾メソッド総論
第一節 理論編
1. 二つの健康管理
2.大原則と三原則
3.復帰基準
第二節 手順と様式
1.復帰までのプロセス
2.主要様式の解説
第三章のまとめ
おわりに
コラム
column.1 軽減勤務や試験出社
column.2 2ステップ受診とは
column.3 正社員の無限定性
column.4 安全配慮義務の意義・労災との違い
column.5 安全配慮義務における相当因果関係
column.6 パワハラ相談に対する対応
column.7 使用者の過失有無の判断
column.8 家族の関与(面接への同席)
column.9 結果回避義務の履行
column.10 合理的配慮
column.11 人事の精神的負担の軽減
column.12 産業医のキャリアイメージ
column.13 産業医・保健師の役割を明確にする
社員のメンタルで頭を悩ます人事担当者にとって、
メンタルかフィジカルかも含め、医師の意見の内容等に惑わされず「仕事に支障を来しているかどうか」で判断する(第一原則)
というメッセージは心に響くでしょう。
また、次の台詞は、法律用語の現場への受容の在り方という意味でも重要です。
・・・安全配慮義務を「配慮」という文言から推察して、誤った理解をしている上司・人事担当者が多い。・・・時短勤務など業務を軽減する配慮をしたとしても、結果が悪ければ配慮が不十分だったと追及される恐れがある。配慮をして労務提供を中途半端に免除する(軽減勤務=不完全労務提供の受領)のではなく、労務提供の全免除措置(療養機会の付与)こそが、基本的な安全配慮義務の履行だということを事前にしっかり説明しておきたい。
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