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2020年11月14日 (土)

Assert Webの書評

9784480073310_600_20201114113301 Assert Webというブログで、福井の杉本達也さんという方が、『働き方改革の世界史』についてかなり長めの書評を書かれています。

https://assert.jp/archives/8607

「働き方改革」というよりも労働組合論、「世界史」というよりも、「世界史」の物差しから見た「日本史」といった方が正解かもしれない。本書では英米独仏の11の古典を取り上げ、・・・・・各国でどのように労働運動が展開し、どんな考え方が生まれたのか、「ジョブ型」とされる欧米の雇用システムがどのような経過をたどってきたかを要約している。 

しかし、本書の意図はこうした古典の単なる紹介にあるのではない。底流に流れるのは日本の労働組合の「ガラパゴス的な形態」への批判である。・・・

と、この方は労働組合論として本書を受け止めています。この長い書評の半分以上は、実は今日の労働組合運動に対する杉本さんの批判になっています。その思いがおそらく「わが意を得たり」とジャストミートしたのが、第12講の藤林敬三のところです。

・・・そして、著者の本音は第12講で思い切り炸裂する。「外につながらない労働組合が、社内だけで労働運動を続けるという片翼飛行は、どのような帰結を見せるのか。協調、なれあい、そして組合弱化。そうした将来は、なんと60年近くも前に、もう見えていた」とし、「今ではほぼ完全に忘れられた本」である藤林敬三の『労使関係と労使協議制』を紹介する。藤林は労使関係を第一次関係の経営対従業員関係と第二次関係の経営対組合関係」に分け、第一次関係は「元々が労使の親和、友好、協力の関係」であり、第二次関係は「賃金ならびに労働諸条件、すなわち団体交渉の中心的な事項を対象」とし、「労使は明らかにここで利害が対立している」、「この二つの関係は性格上まったく相異なる」とする。そして、日本の労働組合は「この二つの関係が明確に区別され分離されることなく、からみ合って不分離の状態で存在」し、「その労使関係は、非常に曖昧模糊たる状態にあり、また非常に矛盾した複雑微妙な関係を示す」と洞察した。さらに、かつての総評、現在の連合などの上部団体の意義について、「そのまま放置すれば労使関係の第一次関係に傾こうとする経営対企業内労組関係を、その企業内労組を外部から指導支援することによって、経営対組合関係としての第二次関係の方向に事態を押しやろうとする」ところに存在意義があり、そのために「必要以上の左翼理論」、「イデオロギー」で強引に第二次関係へ引き上げようとしたと述べている。しかし、60年後「イデオロギー」が皆無となった今日、日本の労働社会は「利害対立の第二次関係が限りなく希薄化し、労使協力の第一次関係に埋没」してしまった。

ここは、今日の日本の状況を60年前の本が予言していたという本書の一番コアなところであり、ここに着目していただいているのは著者として冥利に尽きます。

さらに杉本さんは、

・・・ところで、本書は第2章で「労使共同決定」を取り上げている。「1918年11月のドイツ革命では、前年に起きたロシア革命でボルシェビキ(共産党)が唱えた『すべての権力をソビエトへ』に倣って、『すべての権力をレーテへ』が唱えられました。ソビエトもレーテも労兵評議会という意味です」、・・・

本書に「レーテ」という懐かしい言葉が出てくるとは思わなかった。・・・・ 

と、「レーテ」という言葉に敏感に反応されています。この言葉に敏感に反応されるということは、この杉本さん、相当なご高齢とお見受けしました。私の年齢でも、もはやこの言葉を知っている知識人は数少ないはずです。

 

 

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