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« ジョブ型社会ではブルシット・ジョブにもジョブ・ディスクリプションがある | トップページ | 「卒業後3年以内は新卒扱いで」は10年前の日本学術会議の提言だった »

2020年10月25日 (日)

間違いだらけの「ジョブ型」議論、成果主義ではない…第一人者・濱口桂一郎氏が喝!@産経新聞

私は見ていなかったのですが、何やらNHKがトンデモをやらかしたようで、それを批判するつぶやきの中に私の名前も出てきているので、

https://twitter.com/StarMoonCrystal/status/1320337339839725570

NHKでKDDIの成果主義雇用制度を欧米式ジョブ型と紹介していて、まーたhamachan先生がブチ切れるだろうなぁと 

せっかくなので産経新聞に掲載されたわたくしのインタビュー記事を全文載せておきます。それほど長くない記事ですが、まあこれだけわきまえておけば、今回のNHKみたいなトンデモをしなくて済む程度のことは盛り込まれているはずです。

https://www.sankei.com/life/news/201014/lif2010140001-n1.html(間違いだらけの「ジョブ型」議論、成果主義ではない…第一人者・濱口桂一郎氏が喝!)

Sankei_20201025233201 新型コロナウイルス禍でのテレワーク拡大で社員の評価が難しくなっていることを受け、日本企業の雇用システムを欧米流の「ジョブ型」に切り替えるべきだとする議論が新聞や雑誌で盛んになっている。だが、ジョブ型の名付け親で、労働問題の第一人者として知られる濱口桂一郎労働政策研究・研修機構労働政策研究所長は「ジョブ型を成果主義と結び付ける誤解が多く、おかしな議論が横行している」と警鐘を鳴らす。   
(文化部 磨井慎吾)
 
 「就職」と「入社」
 ジョブ型とは、採用時から職務をはじめ勤務地や労働時間などを明確化した雇用契約を結び、その範囲内でのみ仕事を行うという欧米をはじめ世界中で標準の雇用システムを指す。典型的な例が米国の自動車産業の工場労働者で、細分化された具体的な職(ジョブ)に就くという、文字通りの意味での「就職」だ。
 これに対し、「入社」という言葉や新卒一括採用制度に象徴されるように、職務を限定せずにまず企業共同体のメンバーとして迎え入れ、担当する仕事は会社の命令次第という日本独特の正社員雇用は「メンバーシップ型」と呼ばれる。職種や勤務地、時間外労働などに関し使用者に強い命令権を認める代わりに、命じられた仕事がなくなった場合でも会社が別の業務に配置転換させる義務を負うなど、共同体の一員として簡単には整理解雇されない。
 この2類型は濱口所長が平成21年の著書『新しい労働社会』(岩波新書)などで命名し、現在では労働問題に関する議論で広く定着した用語となっている。
 そして、その根本的な違いは、職務が限定されているか否かという部分にある。「だからテレワークが増えて成果の評価が難しくなったのでジョブ型に移行すべきだ、というのは本末転倒な話なんです。ジョブ型雇用では、たとえば会社都合の人事異動など、今の日本企業なら当たり前のことの多くができなくなる。そうした大転換だということを全く分かっていない議論が多い」。濱口所長は、そう嘆く。
 
ジョブ型=成果主義?
 特に顕著なのが、「ジョブ型=成果主義」とする勘違いだという。
 「そもそもジョブ型では一部の上層を除けば、中から下の人についてはいちいち成果を評価しません。なぜかといえば、そのジョブに就ける人間かという評価はすでに採用時に済んでいるから。後はジョブ・ディスクリプション(職務記述書)に書かれた内容をちゃんとやっているかだけです」
 対して、人に注目するメンバーシップ型では末端に至るまで正社員全員を評価の対象にする。だが業績の評価といっても、ジョブの明確な切り分けのない日本企業で、しかも決定権や責任のない一般社員個々人に対して適切に行うのは困難であるため、社員の「頑張り」を見て評価する疑似成果主義になりがちだ。
 濱口所長は「日本で重視されるのはもっぱら潜在能力の評価と情意考課。従来は大部屋のオフィスで一緒に仕事して、あいつは頑張っている、などと評価していたのが、テレワークだと見えなくなってやりにくいという話で、それは単に評価制度の問題」とした上で、「ジョブ型への転換は評価制度に留まらず、企業の根本の仕組みを変え、入口である教育制度と出口である社会保障とも連動するなど、社会の仕組みの根幹にも関わってくる。ジョブ型導入論者が、そこまで考えた上で言っているのかは疑問だ」と指摘する。
 
「いいとこどり」は不可能
 「私が一番言いたいのは、みんなジョブ型を新しいと思って売り込もうとしているけど、まったく新商品ではないよ、むしろ古くさいものだよ、ということです」
 産業革命後の欧米社会で長い時間をかけて形成された雇用モデルであるジョブ型に対し、高度成長期の日本で定着したのがメンバーシップ型だ。1980年代までは硬直的な欧米のジョブ型と比べ、柔軟で労働者の主体性を引き出す優れた仕組みだと称賛もされてきたが、90年代以降は「正社員」枠の縮小に伴う非正規労働者の増加、無限定な働かせ方に起因するブラック企業化など、各種の問題が噴出するようになった。そこで引き合いに出されるようになったのがジョブ型だが、現在の経済メディアなどでの議論では、そうした歴史的経緯はすっかり忘却されている。
 濱口所長は「2つの型のどちらも、色々なものが組み合わさった複雑なシステム。当然メリットもデメリットもあるし、全部ひっくるめて一つのシステムなので、いいとこどりなんてできるはずがない」と力を込め、メンバーシップ型の発想にどっぷり漬かった頭でジョブ型を理想化し、簡単に導入できるかのように説く議論を戒めている。 

 

 

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コメント

今朝の北日本新聞朝刊に北陸経済研究所の藤沢和弘さんの以下の記事が掲載されています。
https://webun.jp/item/7705725

>以下引用

「教えて富山けいざい」
ジョブ型雇用って? 2020.10.26 23:56

■職務明確、成果で処遇/コロナで従来型見直し

 Q-ジョブ型雇用って何のこと。

 A-文字通りそのジョブ(仕事)に適合した人材を採用する雇用形態です。これまで日本で長らく行われてきた終身雇用制度に基づく「メンバーシップ型雇用」と対になる言葉になります。最近では通信大手のKDDIが7月に1万人以上の正社員を対象に職務内容をあらかじめ明確にし、成果で処遇する「ジョブ型雇用」を導入すると発表しています。

 Q-どんな理由で注目されているの。

 A-社会や産業・技術が比較的安定していた時代では、人材を新卒一括で採用し、時間をかけて企業内のさまざまな仕事を経験しながら「その会社のスペシャリスト」という名の「ゼネラリスト」になることで年功型の賃金や退職金を得ることができました。

 しかし現在は技術やサービスの変化が速く、人材を養成する時間が不足したり、働く側も適応できなかったりと、成果と報酬にギャップや不公平が見られるようになってきました。昔のように労働時間に比例して価値が生み出される仕事は少なくなり、雇用する側、働く側双方からジョブ型への転換が叫ばれています。コロナ禍でリモートワークが増えている中で「本当の労働価値」がより見える状態になり、従来型のメンバーシップ型を見直す転機にもなりました。

 Q-課題はなあに。

 A-ジョブ型は仕事に対しての雇用なので、何らかの理由でその仕事がなくなった場合は「解雇」となるケースが多いようです。また自らのスキルを武器に転職を繰り返すジョブ型の人材は常に最先端の能力を獲得し続けなくてはならず、全ての労働者にとって都合の良い働き方とは言えません。

 企業にとってスキルを持つ「即戦力」を雇用できるメリットがありますが、今のところメンバーシップ型を維持しながら、一部の業務にジョブ型を採用するというのが現実的な対応でしょう。

 (北陸経済研究所の藤沢和弘さんが解説しました。随時掲載します)
>引用終わり

成果と結びつける段階で間違いだと思うのですが、このような雇用形態を求める動きがある以上、単にジョブ型じゃない、間違いと切り捨てるだけではなく、何か新しい名称をつけてあげてはどうでしょうか。

根本的にジョブ型そのものを理解できていない
人事/経営陣が
進めるから
アンケートも微妙か

上記の「何か新しい名称をつけてあげてはいかがか?」という佐伯氏のご指摘に関して思う所を…。

働き方改革が声高に叫ばれる数年前から、Hamachan先生はその受け皿として「限定社員」というネーミングを考案され、既存のメンバーシップ型雇用における職務無限定の「正社員」とは異なる処遇や運用を行い人事制度上の切り離しを提案されてきたと理解しています。その「限定社員」は、総合職/一般職のコース型人事制度を用いる多くの大企業に導入され、ワークライフバランスの観点から残業及び転勤レスな地域限定型ライフスタイルのニーズに合った一部の人材層を吸収する役目を果たしました。

その後、われわれ目線は「正社員/非正規社員」の格差問題、「正社員」の正社員性そのものにフォーカスしていく訳ですが、そのとき使われたのが「同一労働同一賃金」という、日本の雇用習慣の実態とは全く異なる(世界標準のジョブ型雇用における)男女平等賃金原則でした。これを、喫緊の課題である日本的格差問題解消のためのツールとして応用した訳です。(もっともバランスの取れた直近の最高裁判決群を見れば分かるように、同格差問題の解消は健全な企業経営や財務体質あってのものでしょうから一足飛びには解消されません。)

こうした社会経験と実践学習を経て、われわれはようやく自分たちの「働き」の日本的なる部分に対してかなり自覚的になりました。その理解をスッと後押ししてくれたのが「メンバーシップ型/ジョブ型」のHamachan製コンセプトです。10年以上前に提唱されたこのコンセプトに時代がようやく追いつき、再発見したと言えます。

すると、問題はここからです。日本企業が現在の「新卒採用、人事異動、内部昇進、属人給や職能給や成果給、各種手当」等々の日本的な雇用慣行や制度をどっぷり維持したまま、他方で「ジョブ型人事制度」を導入するとは笑止千万。ジョブ型を標ぼうするためには前述の各要素に大幅な見直しまたは廃止が必要だからです。それが出来ない(あるいはそこまでできる訳がない、する必要がない)と思われるのならば、無理して時代の流行を追わず、自社の課題は何か?、それを解決できる手段や制度はどうあるべきか?そのために手放す要素と守るべき要素はそれぞれ何か?を企業ごとに冷静に考え抜く以外ありません。その解決策は、各社各様となるはずです。

以上を全て踏まえて、いま一般的な日本企業が基幹人事慣行を維持したまま一方で時代の要請に応えていくために必要な制度改革は何かと訊かれれば、まず専門人材やマネジャーポジション等の主要ポストの既存等級制度からの切り出し、その上で「社内外公募」にもとづくフェアな選抜採用、「完全職務給(諸手当なし)」、それを下支えする職務分析/職務評価/職務記述書、といった、誰でもよく聞いたことのあるオーソドックスな諸テーマに落ち着くはずです。

現状の誤ったブームを煽ってしまった原因の一端も小職にあるか(?)と思われ、上記エントリを粛々と投稿しました。

「電通、社員230人を個人事業主に 新規事業創出ねらう 」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66103760R11C20A1916M00/

変革の方向性としてこんな面白い手法もあるのかなと、はた感心です。どっちにしても「雇用」(正社員)を前提としたジョブ型ポジションではなく、いっそポジションフリーで組織内を上司や部門のしがらみなく柔軟に動き回る(かき回す?)個人事業主へ契約コンバート、その彼らにインキュベーターとしての役割を期待していくとは…。おそらく個々人のアイデアや才能や力量が仕事の成果にダイレクトに直結する広告代理店という職種ならではの良策なのかと。結果、個人と組織のwin-winが達成され、早期退職後の自営独立というキャリアパスに直結し、退職後も…。

各社なりに独自に知恵を絞る余地は多分にあることのよい例ですね。

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