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2020年10月

2020年10月19日 (月)

津谷典子・菅桂太・四方理人・吉田千鶴編著『人口変動と家族の実証分析』

26730 津谷典子・菅桂太・四方理人・吉田千鶴編著『人口変動と家族の実証分析』(慶應義塾大学出版会)をお送りいただきました。ありがとうございます。

https://www.keio-up.co.jp/np/isbn/9784766426731/

少子高齢時代における日本とアジアの家族や男女の働き方を詳細なデータに基づいた実証分析によって透視する。 

本書は編者の一人である津谷さんの定年記念企画とのことで、巻末には津谷さんの研究業績一覧が載っていますが、本書自体でも日韓台の東アジア三か国の人口動態と家族変動の興味深い研究書になっています。

目次は以下のとおりですが

序章 人口変動と家族――日本と東アジア (津谷典子)

 第Ⅰ部 低出生力社会における家族・人口変動のダイナミズム

第1章 出生水準が長期的な人口動向に及ぼす影響について (石井 太)
第2章 歴史人口学から見る低出生力社会の養子慣行
――近世東北農村1716-1870 年を中心に (黒須 里美)
第3章 国内人口移動の現状と変動要因 (直井 道生)

 第Ⅱ部 低出生力社会における就業パターンの変化と格差

第4章 就業寿命
――戦後わが国における長寿化、晩婚・未婚化と就業パターン (菅桂太)
第5章 女性博士のキャリア構築と家族形成 (小林 淑恵)
第6章 家族の変化と就労収入の格差 (四方 理人)

 第Ⅲ部 低出生力社会における夫婦の生活時間

第7章 日本の夫婦の生活時間と子ども (吉田 千鶴)
第8章 韓国における有配偶夫婦の時間配分 (曺 成虎)

 第Ⅳ部 東アジアにおける超低出生力の特徴と少子化対策

第9章 東アジア先進諸国における少子化の特徴と背景要因 (松田 茂樹)
第10章 台湾における育児休業制度の利用と女性の復職 (可部 繁三郎)
第11章 子育て支援施策の変遷と地方と国の予算の推移 (前田 正子)

津谷典子教授 履歴・研究業績

いろんな観点からいろんな読み方ができるのでしょうが、面白いなと思ったのは文部科学省の小林淑恵さんの「女性博士のキャリア構築と家族形成」という論文です。

かつてと比べれば女性博士という存在も増えていますが、そのキャリアパスと結婚・出産という問題に取り組んだ研究はあまりないので、興味深く読みました。

 

 

 

2020年10月17日 (土)

労働新聞に書評

9784480073310_600_20201017081701 『働き方改革の世界史』の短評が、『労働新聞』の「今週の労務書」に載りました。「古典でたどる欧米の雇用観」

https://www.rodo.co.jp/column/96601/

 働き方改革というより、本書では労使関係論の歴史を概観する。英米独仏の11の古典を取り上げ、各国でどのように労働運動が展開し、結果的にどんな考え方が生まれたのか、紐解いていく。「ジョブ型」と一括りにされがちな欧米の雇用システムが、実際には多様な形を経てきたことを学べる。
 企業横断的な職業組合を前提とするイギリスの雇用システムを皮切りとして、アメリカにおけるトレード(職業・職種)からジョブ(職務)への移行、ドイツで起こった共同決定に基づくパートナーシャフトなどが紹介される。他方でマルクス主義の本は扱わず、最後の12冊目でようやく国内の本が登場する。“純粋なメンバーシップ型雇用”が続く日本の特異さを改めて思い知らされ、今後向かうべき先を考えさせられる。 

短い中に、本書のメッセージを的確に伝えていただいていると思います。

 

 

2020年10月14日 (水)

名付け親が語る「ジョブ型雇用」本当の意味とは?@『BizHint』インタビュー

Bizhint 立て続けに「ジョブ型」の誤解を糺すインタビュー記事が続々と現れてきますが、こちらでは『BizHint』のインタビューに登場しました。題して「名付け親が語る「ジョブ型雇用」本当の意味とは?」

https://bizhint.jp/report/459165

テレワークが普及してにわかに注目を浴びる言葉に「ジョブ型雇用」があります。ジョブ型雇用とは職務や勤務地を限定した雇用契約。一方で、これまで日本では「メンバーシップ型雇用」と呼ばれる職務や勤務地、労働時間などが限定されない雇用契約が主でした。コロナ禍をきっかけに企業では「ジョブ型雇用」を推進していく動きがありますが、労働政策研究・研修機構労働政策研究所長の濱口桂一郎氏は巷で議論される「ジョブ型雇用」に対して、「誤解されている点が多い」と話します。ジョブ型雇用を考える前に、覚えておきたいことについてフォーカスします。・・・

ジョブ型雇用、前提は「ジョブ・ディスクリプション」を明確に
ジョブ型雇用、都合よく会社が変えられるわけではない
日本の教育制度や企業文化は「メンバーシップ型」前提で作られている
「ジョブ型雇用」は硬直性を引き受けること、それでも改革しますか? 

 

間違いだらけの「ジョブ型」議論、成果主義ではない…第一人者・濱口桂一郎氏が喝!@産経新聞

Sankei 産経新聞プレミアムに、私のインタビュー記事が掲載されました。題して「間違いだらけの「ジョブ型」議論、成果主義ではない…第一人者・濱口桂一郎氏が喝!」いやまあ、「喝!」といっても張本さんじゃありませんが。

https://www.sankei.com/premium/news/201014/prm2010140001-n1.html

新型コロナウイルス禍でのテレワーク拡大で社員の評価が難しくなっていることを受け、日本企業の雇用システムを欧米流の「ジョブ型」に切り替えるべきだとする議論が新聞や雑誌で盛んになっている。だが、ジョブ型の名付け親で、労働問題の第一人者として知られる濱口桂一郎労働政策研究・研修機構労働政策研究所長は「ジョブ型を成果主義と結び付ける誤解が多く、おかしな議論が横行している」と警鐘を鳴らす。(文化部 磨井慎吾)

「就職」と「入社」

ジョブ型=成果主義?

「いいとこどり」は不可能 

2020年10月13日 (火)

ジョブ型は成果主義じゃないし、解雇自由でもないけれど、同一労働同一賃金なんだぜ

なんか最近、

https://twitter.com/pandadnap9999/status/1315867522567077888

なんで新しい人事用語が出てくると時間外管理しなくていいとか解雇しやすくなるみたいな意味合いを付与したがるんだろうな。最近だとジョブ型とかさ。

いやそもそも「新しい人事用語」ですらないと思うんだけど。

でも、「ジョブ型」ってあんたの作った言葉だろう(いやそうなんだけど)、ていうわけで、一番初等レベルの

ジョブ型は成果主義じゃないし、解雇自由でもない

ってのをやたらにあちこちで喋ったり書いたりすることが多くなって、正直そろそろ食傷気味ではある。

トンデモなジョブ型論を叩くのは、名付け親のお前の責務だと言われれば、おっしゃる通りでやらざるをえないんだけどさ。

(追記)

下のコメント欄である外資系人事マンさんが言われているように、全然ジョブ型じゃない話では山のように「ジョブ型」が出てくるのに、同一労働同一賃金というまさにジョブ型の中核の話になると、なぜか誰も「ジョブ型」っていう言葉を発しなくなるという、この天下の奇観(注1)。

同一労働異なる賃金、異なる労働同一賃金のメンバーシップ型の世界で、ジョブ型を前提とする同一労働同一賃金なんてものがそもそもいかにして可能なのか、という本質的な問いを発したことなんか一人もいないんだろうね。

ジョブ型は成果主義じゃないし、解雇自由でもないけれど、同一労働同一賃金なんだぜ 

 (注1)今のところ、経営法曹の倉重公太朗さんだけが、この問題で「ジョブ型」に触れていますね。

https://news.yahoo.co.jp/byline/kurashigekotaro/20201014-00202908/

Profile1522398932_20201014092601  同一労働同一賃金の問題は、日本型雇用の崩壊に伴う、移行期であるが故の問題であるともいえます。メンバーシップ型雇用における「メンバー」と「メンバー外」の争いから、緩やかに「ジョブ型」に移行しようとする中で、「ジョブ」とは何なのか、業務とは、責任とは、人材配置の在り方とは、という根本が問い直されています。 

不透明感が増すこれからの時代、未来を担う若者が働きに出る頃、せめて日本がまっとうな労働市場があるためには、今の時代に合わせた「新・日本型雇用のグランドデザイン」を提示する時機に差し掛かっているといえます。

本判決をきっかけに、このような日本型雇用の根本について考える人が一人でも多く現れることを切に願って、夜なべして本稿を書きました。。。

 

 

日本的ジョブ型雇用は、単なる「成果主義の言い換え」だが合理的な理由@ダイヤモンドオンライン

Img_dd1207143d9bbd70328374e4e8bab0793326 ダイヤモンドオンラインに、毎日ちびりちびりと掲載されてきている「賢人100人に「コロナ後の未来」を聞く! 」というインタビューシリーズに、ようやくわたくしも登場しました。

https://diamond.jp/articles/-/249017

日立製作所や富士通など多くの日本企業が「ジョブ型雇用」へとかじを切る。ジョブ型は日本企業に定着するのか、これからの雇用はどうなるのか。日本でジョブ型の概念を広めたとされる労働政策研究・研修機構労働政策研究所長の濱口桂一郎氏に話を聞いた。(聞き手・構成/ダイヤモンド編集部 笠原里穂)

 人に仕事を付けるのが「メンバーシップ型」で、初めにジョブ(職務)ありきでジョブに人を付けるのが「ジョブ型」です。しかし、経団連や多くの企業の動きを見ていると、そうしたジョブ型への移行を目指しているようには到底思えません。

 少なくとも「初めにジョブがある」という前提に基づけば、採用の仕方を変えないと本来の意味でのジョブ型とはいえません。ところがコロナ禍の今、新卒一括採用を本気で変えようと思っている会社がどのくらいあるでしょうか。

 私には、今の状態は「成果主義」をジョブ型と言い換えているだけに見える。しかし、単に成果主義のように差をつけることをジョブ型だとするのは、完全に間違っています。・・・

 

誤解だらけの「ジョブ型」論 @WEB労政時報

WEB労政時報に「誤解だらけの「ジョブ型」論」を寄稿しました。

https://www.rosei.jp/readers/login.php

今年1月に経団連が公表した『2020年版経営労働政策特別委員会報告』がかなり大々的に「ジョブ型」を打ち出した(と、少なくともそうマスコミに報道された)ことに加え、年初からのコロナ禍でテレワークが急増し、「テレワークがうまくいかないのはメンバーシップ型のせいだ、ジョブ型に転換すべきだ」という声が湧き上がってきたことから、マスコミやネット上では「ジョブ型」という言葉が氾濫している状態です

もともと、日本型雇用システムの特徴を、欧米やアジア諸国の「ジョブ型」と対比させて「メンバーシップ型」と名付けたのは私自身なのですが、近年の「ジョブ型」の氾濫には、正直眉を顰(ひそ)(ひそ)めっぱなしの状態です。というのも、マスコミに溢れる「ジョブ型」論のほとんどは、一知半解で「ジョブ型」という言葉を振り回しているだけだからです。いや、一知半解どころか、そもそも「ジョブ型」とは何かというイロハのイすらわきまえていない、知ったかぶりの議論が横行しているのが現状です。その典型例をひどいものから見ていきましょう。・・・・・

 

2020年10月12日 (月)

公益財団法人世界人権問題研究センター編『企業と人権の現代的問題』

Jinken 以前、ブックレット『真の女性活躍のために』(公益財団法人世界人権問題研究センター)をいただいていた特定社労士の藤木美能里さんから、今度は『企業と人権の現代的問題』をお送りいただきました。いつもありがとうございます。

http://khrri.or.jp/news/newsdetail_2020_10_09_post_34.html

•はしがき / 西村健一郎著
•第1章 SDGs(持続可能な開発目標)と企業の課題 / 桑原昌宏著
•第2章 働き方改革における「同一労働・同一賃金」 : 判例、指針を踏まえて / 島田裕子著
•第3章 複数就業と社会保険・労働保険 / 藤木美能里著
•第4章 社会保険の適用除外と非正規労働者 / 藤木美能里著
•第5章 外国人労働者をめぐる労働法上の諸問題 / 稲谷信行著
•第6章 うつ病等による休職者の復職とリハビリ就労の課題 / 西村健一郎著
•第7章 公益通報者保護法制の現状と改正課題 / 青木克也著
•第8章 コンビニ・フランチャイズ契約の適正化に向けて / 青木克也著

藤木さんは3章と4章と、二つの章を書かれています。

このうち、特に第4章は、私も興味を持っていろいろと書いてきた分野でもあります。

また、最後のコンビニ・フランチャイズ契約の章は、会計学的な問題提起から、労働法と経済法を横断する議論が展開されており、大変勉強になります。

 

2020年10月10日 (土)

京都大学経済学部図書館の「留学生へのおすすめ」

京都大学経済学部図書館の「留学生へのおすすめ」というのに、拙著『新しい労働社会』が顔を出しています。もう11年も前の本ですが、でも、世間で誤解誤用されている「ジョブ型」ってのを理解する上では少しは役に立つかもしれません。

http://www.econ.kyoto-u.ac.jp/library/wp-content/uploads/2020/10/2020list2.pdf

Kyodai

 

 

規制改革推進会議が「時間や場所に囚われない働き方の推進」へ

去る10月7日、規制改革推進会議が議長・座長会合というのを開催し、そこに提出されたペーパーがアップされています。

https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/coremeeting/20201007/201007coremeeting01.pdf

冒頭に出てくるんは今話題のハンコの話ですが、それに続く部分にテレワークが出てきます。

(3)テレワーク推進の観点から、時間や場所に囚われない働き方の推進
・労働時間管理や労働環境などの労働関係の規制・制度について、テレワーク推進の観点からガイドラインで制度の取扱いや運用の明確化や柔軟化等を行う。

昨年の答申では深夜業にちょびっと触れただけでしたが、今年に入ってコロナ禍で在宅勤務が急速に拡大したことを受け、かつての経済財政諮問会議労働市場改革専門調査会での議論の復活という面もあり、かなり全面に出てきていますね。

 

 

 

 

2020年10月 9日 (金)

『猫と東大』

531803 どういうわけだか、『猫と東大 猫を愛し、猫に学ぶ』(ミネルヴァ書房)という本が送られて来ました。

https://www.minervashobo.co.jp/book/b531803.html

猫も杓子も東大も。
大学は大学らしく猫の世界を掘り下げます。

世はまぎれもない猫ブーム。一方で、ハチ公との結びつきが深い東大ですが、学内を見回してみると、実は猫との縁もたくさんあります。
そこで、猫に関する研究・教育、猫を愛する構成員、猫にまつわる学内の美術品まで取り揃えて紹介します。

さすが東大、猫ブームに乗って猫本を出すとは。

駒場や本郷のキャンパスを逍遥する猫たちの写真に挟まれて、東大の先生方がそれぞれに猫談義を繰り広げるという、いかにもネコノミクスな本ですね。

その話題の広がりは下の目次のとおりですが、むかし東大出版会でこの手の一つお題を出して、いろんな分野の先生方がそれにまつわる話題を書くという趣向の本がありましたが、その猫版ですな。

最後の方には、シュレディンガーの猫のメンバーカードがもらえる研究支援基金なんてのもありますね。

 

はじめに(須田礼仁:情報理工学系研究科教授)


猫好き4教授座談会
(西村亮平:農学生命科学研究科教授/野崎 歓:東京大学名誉教授/本郷恵子:史料編纂所教授/須田礼仁)

特別掲載・猫の香り(野崎 歓)


猫と学問 その1

  【猫と獣医内科学】病院と研究科が一体となって進む 動物医療と研究・教育(辻本 元:農学生命科学研究科教授)
  【猫と動物行動学】ペットの声を聴く行動診療で 人と動物をよりなかよしに(武内ゆかり:農学生命科学研究科教授)
  【猫と医科学①】異分野の発想で進んだ特効薬開発 「AIM」でネコの寿命が二倍に!? (宮崎 徹:医学系研究科教授)
  【猫と獣医病理学】ネコもアルツハイマー病に!? ヒトの難病の鍵を握る動物たち
   (チェンバーズ ジェームズ:農学生命科学研究科助教)
  【猫とゲノム遺伝子学】獣医学とゲノム学と情報学を融合 ネコゲノム解析プラットフォーム
   (渡邊 学:新領域創成科学研究科特任教授)
  【猫と医科学②】インフルエンザウイルスの中間宿主として ニューヨークの猫が教えてくれたこと
   (河岡義裕:医科学研究所教授)
  【猫とソフトロボット学】完成したら「カエル型」!? 誕生・しなやかなネコ型ロボット(新山龍馬:情報理工学系研究科講師)
  【猫と応用獣医学】ネコの加齢に伴う腸内細菌叢の変化とは ネコにはネコの乳酸菌!?
   (平山和宏:農学生命科学研究科教授)
  【猫と獣医外科学】日本ペットサミット(J-PETs)を設立 どうぶつ達と共に暮らす幸せな社会へ(西村亮平)


猫とキャンパス

  猫と駒場キャンパス 追悼文「さよなら、まみちゃん」
  キャンパスの歴史的建造物と猫と 駒場点景(永井久美子:総合文化研究科准教授)
  東京大学本郷構内の遺跡調査にて 発掘・猫の玩具(小林照子:埋蔵文化財調査室)
  再録・本郷ネコ散策マップ


猫と学問 その2

  【猫と日本文学①】『吾輩は猫である』にみる 「皮膚」の「彩色」の政治学(小森陽一:東京大学名誉教授)
  【猫と歴史学】東京大学所蔵史料から見る 鼠を捕る益獣としての猫(藤原重雄:史料編纂所准教授)
  【猫と日本文学②】口語自由詩の地平を拓いた詩人 萩原朔太郎の猫は……(エリス俊子:総合文化研究科教授)
  【猫と社会学】飼い主との間にある独特な関係性とは? 猫ブームの理由(赤川 学:人文社会系研究科教授) 
  【猫と美術史学】徽宗・春草・栖鳳 画猫の系譜(板倉聖哲:東洋文化研究所教授)
  【猫と経済史学】生殖の統御は完全に正当化しうるか? 野良猫のいる社会といない社会(小野塚知二:経済学研究科教授)
  【猫と考古学】遺跡が伝える新石器時代の人猫交流 飼いネコの始まり)西秋良宏:総合研究博物館教授・館長)
  【猫と教育プログラム】猫と人のよりよい関係を 東大生が3か月考えてみたら(真船文隆:総合文化研究科教授)


猫好き研究者夫妻に聞く「猫と日本史」(本郷恵子・本郷和人:史料編纂所教授)


「東大×猫」トピックス

  東大出身作家が書いたシャム猫が主人公の恋愛小説 
  猫のイラストが目印のUTokyoハラール認証チョコ
  先端研所属のアーティストによる猫絵本『ぼくのにゃんた』
  明治新聞雑誌文庫の猫画像資料
  「シュレディンガーの猫」のメンバーカードがもらえる 光量子コンピューター研究基金
    (古澤 明:工学系研究科教授/井上清治:光量子コンピューター支援基金ファンドレイザー)
  『猫号』制作後記(高井次郎:東京大学広報課)


おわりに(木下正高:地震研究所教授)

 

2020年10月 7日 (水)

トヨタはジョブ型じゃねえぞ

本日の日経の社説が「年功制が限界に来たトヨタ」。あたかも、日本型雇用の典型であったあのトヨタがジョブ型に舵を切ったかの如く、そういう印象操作をしたくてたまらない感が溢れていますが、

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO64680860W0A001C2SHF000/

トヨタ自動車が毎年の定期昇給(定昇)の算定方法を見直す。一律的に上がる部分をなくし、人事評価のみを反映した昇給とすることで労働組合と合意した。

日本型雇用を実践する企業の代表格とされてきたトヨタの動きは年功賃金がいよいよ限界に来た表れだ。デジタル化で企業の競争はかつてなく激しい。他企業も人事・賃金制度改革を急ぐべきだ。・・・

いやいや、今回のトヨタの賃金改革は、朝日のこの記事が詳しいですが、

https://www.asahi.com/articles/ASNB36DLFNB2OIPE02Q.html

職位に応じて一律に決まる「職能基準給」と、評価によって決まる「職能個人給」を、評価に応じて決まる「職能給」に一本化するというものであって、ジョブ型の正反対の「能力主義」をさらにますます全開にするというものなんであって、終戦直後の電産型以来の年齢平等主義の残滓を振り払うという意味では「改革」ではありますが、ジョブ型に向かうようなものでは全くない、ということが、やはり日経記者さんにはよく分かっていないようです。

むしろ、評価項目に「人間力」が加わり、「頑張った人がより報われるようになる」というのは、メンバーシップ型精神のより純化とすら言えるものであって、これでもって、社説の後ろの方に

・・・貢献度に応じた処遇制度の整備は急務だ。職務によって報酬を決める「ジョブ型雇用」は選択肢の一つになる。・・・

などといささか寝ぼけたことを書いているんですから、ちょっと呆れます。頭の中を整理した方がいいと思いますよ。

(追記)

https://twitter.com/treeina/status/1313837841638596614

hamachanも吠えてるやろうなぁと思ってブログみたらやっぱり吠えてた。・・・

(^^;)

 

 

 

2020年10月 6日 (火)

プラットフォーム労働者の団体交渉権の行方

本日、ソーシャル・ヨーロッパに寄稿された「Collective-bargaining rights for platform workers」(プラットフォーム労働者の団体交渉権)は、この問題が今置かれている状況をよく伝えています。筆者はNicola Countouris と Valerio De Stefanoです。

https://www.socialeurope.eu/collective-bargaining-rights-for-platform-workers

この問題の先頭を切って、2年前の2018年、デンマークでプラットフォームによるフリーランス家事労働者(アプリで呼ばれて、介護、家事、清掃、哺育等をする)とプラットフォーム事業者との間で労働協約が締結され、労働界で賞賛されたのですが、その協約にフリーランスの最低報酬(minimum fees)が規定されているのが競争法違反でけしからんと、デンマーク政府の競争・消費者当局が去る8月、最低報酬の支払いをやめるよう命令したというのですね。デンマークの競争法の仕組みはよく分からないのですが、フリーランス労働者の集団的労使関係が競争法当局によってこうできされがちであるというのは、以前オランダの例で取り上げたことがあります。

この問題、最近EU当局のみならず、OECDも強い関心をもっているところであり、引き続きウォッチしていく必要があります。

 

 

2020年10月 5日 (月)

武石恵美子・高崎美佐『女性のキャリア支援』

9784502354618_240 武石恵美子・高崎美佐『シリーズ ダイバーシティ経営/女性のキャリア支援』(中央経済社)をお送りいただきました。

https://www.biz-book.jp/%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA%20%E3%83%80%E3%82%A4%E3%83%90%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%86%E3%82%A3%E7%B5%8C%E5%96%B6%EF%BC%8F%E5%A5%B3%E6%80%A7%E3%81%AE%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%AA%E3%82%A2%E6%94%AF%E6%8F%B4/isbn/978-4-502-35461-8

 なぜ女性の能力発揮が重要なのか、女性の活躍によって何を目指すのか。日本のダイバーシティ経営の推進や女性が主体的にキャリア形成に取り組むための課題を明らかにする。

第2章の採用と就職、第3章の初期キャリア、第4章の出産・育児期、第5章の昇進までは、大体通例のパターンですが、最後の第6章が「女性一般職のキャリア形成」を取り上げていて、これがなかなか興味深いです。

この章の最後で武石さんもこう述べていますが、やはりノンエリート女性のキャリアというものをもっときちんと見つめていく必要がありますね。

・・・最後に、管理職女性や女性の昇進というような上方に向かう女性のキャリア形成を扱う研究に比べると、女性一般職の現状や課題について明示的に取り上げる研究は少ないことを問題提起したい。現実には、昇進を視野に入れずに就業を継続して仕事にやりがいをもって働く多くの女性が職場を支えている。・・・

 

北欧の労働組合はEU最低賃金指令を断固拒否するぞ!

昨年来、EUではフォンデアライエン委員長が言い出しっぺのEU最低賃金という構想が着々と進んでいて、既に2次にわたるEUレベル労使団体への協議を終え、欧州委員会が指令案を出すんじゃないかという状況になりつつありますが、それに断固としてNO!を突きつけているのが、EUで一番組織率が高く、団体交渉が盛んな北欧諸国の労働組合です。

https://www.socialeurope.eu/eu-legislation-on-minimum-wages-is-not-the-solution

例によって「ソーシャル・ヨーロッパ」から、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン3か国の労働組合の代表の連名による「EU legislation on minimum wages is not the solution」(EU最低賃金立法は解決じゃない)という文章を紹介しておきます。

 We are deeply worried and concerned that the European Commission, after its second-stage consultation with the social partners, is planning to proceed with a legislative initiative on minimum wages—a proposal, which will not respect treaty limitations and be counterproductive for a social Europe built on robust, multi-employer collective bargaining.

われわれは欧州委員会が労使団体への2段階協議を終えて最低賃金に関する立法提案を提出しようと計画していることを深く憂慮し懸念する。それは、条約の制約を尊重せず、健全な多数使用者との団体交渉の上に構築された社会的ヨーロッパに対して反生産的である。

現に労働組合が強く活動している北欧諸国からすれば、最低賃金立法など不必要である以上に有害なのです。

We do acknowledge the need for higher wages and better-functioning labour markets. But what Europe needs is more collective bargaining and stronger social partners, not a straitjacket on social dialogue and wage-setting, which would not only be detrimental to Scandinavian labour markets but also risk harming social dialogue in other member states.  

われわれは高賃金と良好に機能する労働市場の必要性を理解している。しかし、ヨーロッパに必要なのは、もっと多くの団体交渉ともっと強い労使団体なのであって、労使対話と賃金決定に対する拘束衣じゃない。それはスカンジナビア諸国の労働市場を損なうだけではなく、他の加盟国の労使対話にも悪影響を与える危険性がある。

 

 

2020年10月 4日 (日)

竹中平蔵と習近平の「共鳴」@梶谷懐

Takenaka 中国経済の梶谷懐さんが、現代ビジネスに「竹中平蔵氏と中国・習近平政権、提唱する「経済政策」がこんなに似てきている」というエッセイを寄稿しています。これが大変面白い。

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/76094

あの竹中平蔵氏が、中国で大いに人気を集めているらしい。中国の人々はいったい竹中氏の何に惹かれ、彼から何を得ようとしているのか。神戸大学・梶谷懐教授による全3回のレポート。最終回となる今回は、竹中氏が提唱する経済政策と、習近平政権が目指す経済体制(「シーノミクス」と呼ばれる)に見られる類似、そして、日中で共振する「新自由主義」の動きについて解説する。 

Xi まあ、今の中国社会を、共産党一党独裁による徹底した新自由主義と考えるのは、割とポピュラーな見方だとは思いますが、そこにここ二十数年にわたって陰に陽に日本の政策決定に関わり続けてきた竹中平蔵という補助線を引いてとらえなおしてみると、改めていろいろと興味深い論点が浮かび上がってくるという感じです。逆に、中国社会という補助線を引いて竹中路線というものをとらえなおしてみると、またいろいろなものが見えてきます。

例えば、竹中氏らが主導している規制緩和のためのサンドボックスについても、こういう視点があり得るのですね。

ただ、注意しなければならないのが、このレギュラトリー・サンドボックス制度が、実際にそう銘打っていなくても、実質的に採用されているようにみえるのは、中国社会がそもそも「法の支配(rule of law)」が極めて脆弱な社会だということと深い関係があるということだ。
レギュラトリー・サンドボックスが採用された都市では、規制やルールはイノベーションという「結果を出す」ための存在となり、「法の支配」で重視されるような「政府を縛る」という側面はそれほど重視されない。その意味ではむしろ、竹中氏らが強調する、「事前的な規制から事後的チェックを行う政府への転換」とは、中国のような法の支配が弱い社会における、革新的なテクノロジーへの対応を、日本を含む先進国が模倣しつつある、という側面があるのではないか。 

Img_7119e6535e8d93bad458588317af5bf05702 「中国化する日本」というと、與那覇潤さんのベストセラーのタイトルですが、竹中流の規制緩和が「法の支配の弱体化」という意味における「中国化する日本」の表れであるという視点は新鮮でした。

それでも、小泉政権時代からその構造改革路線が中国で高い評価を受けてきたのは事実だし、すでにみたように彼が第二次安倍政権の下で提言している政策は、スーパーシティ構想も含め、習近平政権が進めている国家と民間資本が一体となった経済戦略(シーノミクス)とその根本で共通するものを持っている。その意味で、竹中氏の目指す経済改革と、ここ25年ほどの中国経済の方向性は明らかに「共鳴しあっている」というのが筆者の結論である。

竹中氏の政治的立場は、批判的なニュアンスを込めて「新自由主義的」と形容されることが多い。これは一般的には「小さい政府」を志向することだと理解されている。

しかし、すでに述べたように、竹中氏は小泉政権で閣僚を務めていた時期から、「構造改革」に、単に「国家の役割の縮小」を主張するだけではなく、終身雇用制度や特定郵便局制度、さらには「自治」の名を借りて改革を拒む大学やマスコミの談合体質にいたるまで、日本社会に残る様々な「古い慣習」や中間団体を「既得権益」としてその解体を目指す、という性格を濃厚にもっていた。

中間団体を解体した一君万民型社会。そういわれればまさしく竹中路線とは「中国化する日本」そのものなのかもしれません。

一方、筆者が研究対象とする中国社会はもともと国家から相対的に独立した「中間団体」の形成が極めて困難な社会である。明清史を専門とする足立啓二氏は、その著作『専制国家史論』の中で、国家が唯一の権力ならびに公共財供給の担い手としてそびえたち、それに対抗するような自律的団体や権力への抑止力が社会の中に形成されないことが、「専制国家」としての中国の本質だと喝破している。

すでに述べたコロナ・ショックへのバッファーとして機能した雇用に流動性の高さも、中国社会において国家=共産党から独立した労働組合、すなわち労働者を守る中間団体の形成が極めて困難であるという事実と表裏一体である(足立、2018)。このような中間団体の弱さを補完するのが、ビジネスなど特定の目的を実現するために集まり、利益を得たら解散する、流動性の高い「弱いつながり」である。

このような流動性が極めて高く、自律的な中間団体がなかなか形成されないために、人々が互いに「信用」に基づいて秩序だって行動するのが困難な社会に出現したのが、大企業と政府が個人と事業体の情報を一元的に管理し、ひとびとを「よりよき行い」に誘導する現在のデジタル監視社会にほかならない。

51kts8kzz4l_sx353_bo1204203200_ この足立さんの本も、与那覇さんの本のもとになったものですね。

竹中氏はいわゆる「親中派」ではない。しかし、その目指すべき経済や社会に関する思想のレベルにおいて、中国の改革派のエコノミストや、官僚たちと近いマインドにあることは、彼の発言のはしばしから伺える。それは、必ずしも前回の記事で述べたような、雇用の流動化に関わることだけではない。たとえば、竹中氏はインタビューや著作の中で「自分は弱者の切り捨てを行っているのではない」「本当の意味で改革を進めれば弱者は救済され、格差は縮小するはずだ」といったことを繰り返し語っている。 

ただ、そこで言われている「弱者救済」は、企業を含む中間団体から切り離された個人が文字通り「弱い存在」として国家や大企業に直接対峙することを前提している。それは端的にいえば、それまで人々がよりどころにしていた中間団体が解体された後に、いわば決して怪我をしないように遊具や砂場が工夫されて配置された「安全な公園」を政府や大企業のエリートが設計し、そこで庶民がのびのび遊ぶような社会のイメージである。ちょうど習近平政権下の中国社会がそうであるように。

そこには、今の中国と同じように、自主的な労働組合の存在する余地はそもそもないのでしょうね。

9784480073310_600_20201004180001 先月出した拙著『働き方改革の世界史』の「あとがきに代えて-マルクスが入っていない理由」の中で、ちょびっとだけ中国に言及したところが、こうなるととても深い意味があったような気がしてきます。

・・・なお、ロシアも含め旧ソ連・東欧圏の労働組合はITUCに加盟していますが、中国共産党支配下の中華全国総工会は(もしそれを労働組合と呼ぶならば、組合員三億人を超える世界最大の労働組合ですが)ITUCに加盟していません。これに対し、台湾の中華民国総工会はITUCに加盟しています。労働組合は国際政治に妙な忖度をしないのです。ちなみに香港の二つの自由な労働組合はITUCに加盟していますが、その運命が心配です。
 というわけでせっかく海老原さんが「マルクスなんてワン・オブ・ゼム」というサブタイトルをつけてくれたにもかかわらず、遂に一冊も取り上げるに至らなかったことの背後には、こういう複雑怪奇な事情があったわけです。お判りいただけましたでしょうか。・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

2020年10月 3日 (土)

テレワーク検討会議事録から濱口発言部分

8月17日に開催された第1回これからのテレワークでの働き方に関する検討会の議事録がアップされているようなので、そのうち私が発言している部分を紹介しておきます。初めのところは、おそらく多くの方の頭の整理にちょうど良いのではないかと思います。

https://www.mhlw.go.jp/content/000677489.pdf

〇 濱口委員
濱口でございます。ありがとうございました。特に、小豆川さんのお話は、大変詳細でかつ、私の知らないような細かい事も教えていただいて、非常に勉強になりました。ただ、冒頭の 7 つの時期区分とされたのですが、非常に細かくて、もう少しざっくりとした時期分を紹介したいと思います。
今回新型コロナ危機で世界的にテレワークが注目されていますが、その直前までも、ここ数年来、世界的にテレワークというのが大変注目を集めたトピックになっていました。とりわけ、昨年 2019 年に ILO が「21 世紀におけるテレワーク」という報告書を出していまして、日本、EU、アメリカ、インド、ブラジル、アルゼンチンの実態を調べています。その序章で、メッセンジャーさんという方が、テレワークの進化を3段階に区分されています。これが非常に分かりやすく、かつ、今ものを考える上でも役に立つのではないかと思います。
第1世代は 70 年代末ぐらいから 80 年代にかけての時期です。この頃はだいたいコンピューターはスタンドアローンで、通信機器も電話とファックスでやっていたような時代です。彼はこの時期を「ホームオフィスの時代」と呼んでいます。通勤する代わりに自宅が職場になるという意味で、テレコミューティングとも呼ばれました。次の第 2 世代は、90 年代から 2000 年代の時期です。これは彼は「モバイルオフィスの時代」と呼んでいます。コンピューターはラップトップになり、また携帯電話(モバイルフォン)を使って、家を離れても仕事ができるようになったので「モバイル」なんですが、データはやはりオフィスに集中されていました。それが、2010 年代、とりわけその半ば以降は、彼はそれを第 3 世代と呼ぶのですが、「バーチャルオフィスの時代」になります。スマートフォンやタブレットのように、情報機器と通信機器が完全合体して、どこに居ようが職場や自宅と同じように仕事ができる、同じようなレベルで仕事ができるという時代です。この時代を最もよく言い表すフレーズとして、私が気に入っているのが、少し前の 2017 年に、ILO と EU の労働研究機構が共同で出した研究報告書のタイトルで、「Working Anytime Anywhere」というものです。いつでもどこでも働けます。というすごいタイトルですが、これができるようになったことで、今までの時間的、空間的に限定された場所で、それが職場であろうが自宅であろうが、あるいはサテライトオフィスであろうが、そこで働くのが労働だという、労働法の基本概念自体がガラガラと変わりつつあるという議論をしています。このように、大きく3段階に分けると見通しが良くなるのではないかと思います。そういう意味から言うと、今回の新型コロナ危機というのは、直前まではこの3段階のいわば先端部分が、技術の発達に乗っかる形で、できるところがどんどん先に行くみたいな形で進んでいたのが、むしろそうじゃなかったところに、いきなりロックダウンとか緊急事態宣言により、ステイホームでホームオフィスが強制されたようなところがあります。つまり、テレワークの進化の段階からいうと最先端ではなくむしろやや古いタイプのホームオフィスですが、それが今までテレワークなどしていなかったような人々にまで大量に適用されることで、多くの問題が出てくる。そういう状況ではなかろうかと思うのです。
先程、小豆川さんが言われたような、最近までずっとここのところ、テレワークというのはワークライフバランスに資すると言ってきたわけですが、実際にやってみたらワークライフバランスどころか、むしろワークライフコンフリクトが噴き出してきているという面もあります。あるいは、これはもしかしたら、日本の雇用システムの問題かもしれませんが、仕事の仕方が個人のジョブに切り分けられていないために、テレワークをしようとしたらいろいろトラブルが発生するという話もあります。先程の3段階論で言うと、最先端というよりも少し前の世代のテレワークなのですが、新型コロナ危機によりそれが一気に拡大したことで、雇用システムとしていろいろ問題が起きているとも言えます。そういう意味では、今テレワークを論じるに当たっては、去年まで先端的なところで議論していたような「いつでもどこでも働ける」という話と、世代論的にはむしろ旧世代のテレワークになりますが、強制的に在宅勤務をせざるを得なくなったために今までの働き方との間でいろいろ矛盾が生じているという話との、両にらみのような形で議論していくことが必要であろうと思っています。先程の開催要綱からすると、この検討会はどちらかというとやや後者に重点があるのだろうとは思いますが、一方で最近ワーケーションという言葉もちらちら出てきています。ワーケーションは、ある意味まさしく典型的な working anytime anywhere の表れみたいなところがありますから、それが労働の在り方、労働法とか労使関係の在り方にどう影響するかということも、併せて念頭に置きながら議論していく必要があるのではないかと感じました。 

〇 濱口委員
先程、小西先生が言われたことに、若干補足する話です。今回のこの検討会の対象は、いわゆる雇用型テレワークということになっています。一方に自営型テレワーク、あるいはむしろ雇用類似の働き方といわれる領域もあり、どちらも同じ在宅労働課の所管です。われわれ JILPT はその雇用類似の方も、いろいろな調査をやらせていただいておりまして、それらがごっちゃにならないように区別していかないといけません。ただやはりこの両者は一定の関わりはあるので、その関係を考えておく必要があります。雇用型テレワークであっても、時間的、空間的に離れているために、指揮命令関係が非常に希薄化します。ということは、雇用型テレワークは雇用労働だよと言いながら、雇用労働としての性格がある面で希薄になるということです。これを言い換えますと、いわゆる労働者性の判断基準の中に、指揮命令であるとか、時間的、空間的制約というのがあるのですが、それらがないから、労働者ではないんだという風に、話が裏返しになってしまう、危険性もあるわけです。危険性という言い方をしたのは、雇用労働者であるならば、労働時間規制だけでなく、契約保護とかコスト負担、リスク負担といったような幅広い範囲で、さまざまな保護を受けることができるわけですが、雇用労働者ではないとなってしまったら、そういう様々な保護が全部なくなってしまうわけです。これは両者裏腹なのですね。ですから、雇用を前提としたテレワークについて、どういうルールにしていくべきかを考える際には、常にその裏側では、そのルールに合わないからといって雇用ではないテレワークに追い込んでしまったらどういうことになるのかという点を、常に意識しながら、議論していく必要があるのではないかということです。労働時間規制というのは確かに労働者保護の重要なトピックではありますが、ただ、そこを、先程、風神先生が言われましたが、過度に強調しすぎると、労働者であるならば労働時間規制に服さねばならない、労働時間規制から外れるようなものは労働者ではないということになってしまうと、話が反転してしまい、労働時間規制以外の様々な保護もなくなってしまい、元も子もなくなってしまうという危険性も考えられます。もちろん、この検討会のトピックは、あくまでも雇用型テレワークなのですが、その裏側には非雇用型、自営型テレワークにいつでも変わりうるのだということを、常に念頭に置く必要があると感じております。

この最後のところで出てくる「風神先生」は、昨日紹介した清家篤・風神佐知子『労働経済』の著者のおひとりです。この時はリモートで参加されていたので、直接お目にかかってはいないのですが、この前のところで労働時間規制について発言されていたので、それを受ける形での私の発言でした。

 

 

 

山田孝之がユニオン結成へ!@『女性自身』10月13日号

Joseijishin_20200929 いやこれ、単なる芸能ネタではなく、立派な労働ネタでもあると思うんですが、今のところ取り上げているのは『女性自身』だけのようですね。

https://news.yahoo.co.jp/articles/8db0d02c7b4646e1444ed0bbafb630bdd2c479a3

Yamada 「山田さんは3年前から俳優や監督を守るために奔走してきました。その思いが来年、とうとう形になるそうです……」(芸能プロダクション関係者)・・・

・・・実はそんな彼が今、俳優や監督のためのユニオン結成をくわだてているという。

「日本で映画を製作すると、売り上げの30~40%は映画配給会社のもとに入ります。俳優の場合は固定ギャラですが、短い拘束期間に対してギャラが高額なケースも少なくありません。

いっぽうで監督は長期にわたって製作に関わることがほとんど。にもかかわらず、ギャラが固定給で安いということも多々あるそうです。山田さんは『これでは監督に夢がないよ』と憂いていました」(映画関係者)

最近はなぜか公正取引委員会がフリーランスの味方みたいな感じでしゃしゃり出てくることが多いんですが、諸外国ではやはりこういう時は集団的労使関係の出番というところが結構あります。

日本の風土でどこまでやれるのかやれないのかというところはありますが、せっかくの試みでもあり、先行きを見守りたいと思いますし、他のマスコミも追いかけてほしいですね。

 

 

2020年10月 2日 (金)

清家篤/風神佐知子『労働経済』

12382_ext_01_0 清家篤/風神佐知子『労働経済』(東洋経済)をお送りいただきました。いつもありがとうございます。

https://str.toyokeizai.net/books/9784492396544/

  多くの人々が生活の糧を得ている労働は、企業の利潤や一国の豊かさの源泉にもなっている。この労働に関わる事柄を経済学的に理解し、現実的に起こっている問題を考えてみようという教科書。
 労働経済学の基本的考え方を示す基礎編の第Ⅰ部と,その労働経済学を使って現実の問題を考えてみる応用編の第Ⅱ部という二部構成になっている。
 とくに第Ⅱ部は、少子高齢化時代の女性労働、高齢者雇用、第4次産業革命と労働、非正規雇用と人的資本投資など、いま最もホットなテーマを真正面から扱っており、それらの問題について、経済学的な観点と現実をつきあわせて考えるために最適な書。

清家さんは言わずと知れた労働経済学の大家ですが、風神さんは慶應のその後任者で、はしがきによると、清家さんが2002年に旧『労働経済』を出したときには、まだ慶應商学部の学部生だったそうです。

ということで、ちょうど一世代上と下の二人による労働経済学の教科書ということになりますね。

中身は、第一部はまことにオーソドックスな労働経済学のテキストブックで、例えば第2章の労働供給なども、とても丁寧に無差別曲線を導き出し、」労働供給曲線を導き出しています。

一方第二部は様々な労働政策の場に関与されてきた清家さんらしく、各分野の労働政策を論じています。今回の本の特徴はやはり何といっても第12章の「第4次産業革命と労働」でしょう。ここで、日本では第4次産業革命は少子高齢化と相性が良いと言われている点は、いろいろと議論の種になりますね。

第Ⅰ部 基礎編
 第1章 労働経済学とは何か
 第2章 労働供給
 第3章 労働需要
 第4章 失業
 第5章 賃金
 第6章 労働時間
 第7章 労働市場における情報の役割
第Ⅱ部 応用編
 第8章 経済の構造変化と雇用・労働市場
 第9章 高齢者雇用の経済分析
 第10章 女性雇用の経済分析
 第11章 人的資本投資
 第12章 第4次産業革命と労働
 第13章 労働力のフロー表
 第14章 雇用調整
 第15章 労使関係

 

 

 

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