WEBちくまで『働き方改革の世界史』の第1講(ウェッブ夫妻『産業民主制』)がためし読みできます
筑摩書房のサイトの「WEBちくま」というところで、『働き方改革の世界史』の一部がためし読みできるようになっているようです。
http://www.webchikuma.jp/articles/-/2142
労働者の団結や団体交渉、労使協調、経営参加など、現代の労使関係の理論はどのように生まれたのでしょうか。英米独仏そして日本で模索され、実践されてきた労使関係の理想と現実をえぐる、ちくま新書『働き方改革の世界史』の第1講を公開します。
ここには、第一講の「出発点は集合取引(コレクティブ・バーゲニング)」が全文アップされていますね。
第一章 トレードからジョブへ
欧米と日本の労使関係で象徴的に異なるのが、労働組合のあり方です。企業内もしくは事業所内で一緒に働く労働者が団結して組合を作る日本型に対して、欧米(とりわけ欧州)では労働組合は企業内に閉じておらず、横断的に広く同職や同業を結んで成立しています。この根源的な違いはどこから来たのか。その大元にある「コレクティブ・バーゲニング」について考えることにしましょう。
第1講 出発点は集合取引(コレクティブ・バーゲニング)
シドニー&ベアトリス・ウェッブ、高野岩三郎監訳『産業民主制論』
大原社会問題研究所、一九二七年(復刻版:法政大学出版局、一九六九年)【受講準備 海老原嗣生】
†会社を超えた広い連帯
日本人からすると度肝を抜くような同書中の言葉を引っ張りだして、まずは、頭の中をシャッフルして頂くことにします。
「自分は各々(おのおの)の職工にその必要または働きに応じて報酬を与ふるのであつて自分自身の使用人以外何人とも交渉するを肯(がえん)じない」と云(い)う言葉は、もはや今日は、主要産業に於ては、或は片田舎の地方とか又は格別に専横なる固主の口よりする外、殆(ほとんど)耳にしなくなった」・・・・・【本講 濱口桂一郎】
†労働思想の必読古典
労働思想の古典と言えば、一〇〇人中一〇〇人がウェッブ夫妻のこの本を挙げること間違いはありません。それほど有名な本ではあるのですが、例えばちくま学芸文庫とかに収録されているならともかく、戦前、大原社会問題研究所から翻訳刊行され、戦後、法政大学出版局から復刻されたとはいえ、現在絶版状態の一〇〇〇頁をはるかに超えるこの大冊をきちんと読んだ人は、労働研究者の中にもそれほどいないのではないか、とりわけ集団的労使関係が人気薄な昨今の若手研究者の中にはほとんどいないのではないかと、推察しています。
ところが、見た目の分厚さに気圧(けお)されずに読み進めていくと、この本は日本型雇用システムとまったく異なるイギリス型雇用システムの原型を極めてくっきりと示してくれている本であることに気がつきます。もちろん、原著の初版が一八九七年というまさに一世紀以上昔の本ですから、現在のイギリスの雇用システムとは異なるところがいっぱいあります。むしろ、この間にイギリス労働社会がどれだけ変わったかということがイギリス研究の焦点でもあるのですが、にもかかわらず、極東のこの国から見れば、一九世紀から二〇世紀を貫いて二一世紀に至るイギリスの変わらなさこそが目につくのです。
それは、私が諸著で「メンバーシップ型」に対比して「ジョブ型」と呼んでいる欧米型雇用の原型であり、労働研究者であれば「ジョブ」(職務)が確立する以前の「トレード」職業)の時代の雇用システムであると言うでしょう。その「トレード」の作る団結体が「トレード・ユニオン」(正確に訳せば「職業組合」)であり、同書はそのトレード・ユニオンの機能を詳細に分析した本なので、いってみれば日本的な(会社のメンバーであることがすべての前提となる)「社員組合」とはまったく異なるトレード・ユニオンの姿が浮き彫りになっているのです。そういう観点から同書を紹介したものはあまり見当たらないので、ここではもっぱら、その観点から見ていきたいと思います。 ・・・・
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弁護士業界などを見てると、「待遇の低下の発生」によって新規参入者の劣化、または、減少というのは
別に労働者だけには限らないのではないでしょうか?
投稿: サクラプ | 2020年9月17日 (木) 12時01分
サクラプ 殿
>弁護士業界などを見てると、「待遇の低下の発生」によって新規参入者の劣化、または、減少というのは別に労働者だけには限らないのではないでしょうか?
いわゆるキャリア官僚の世界も、「待遇の低下の発生」(ブラック勤務, 再就職(天下り)後の収入の減少等)によって、志望者の劣化、または、減少 という事が起こっているのでしょうか?
投稿: Alberich | 2020年9月26日 (土) 21時42分