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2020年8月29日 (土)

高齢・障害と社会法@『法律時報』2020年9月号

08350 『法律時報』2020年9月号は「高齢・障害と社会法」が特集で、下記のようなメンツになっています。

https://www.nippyo.co.jp/shop/magazines/latest/1.html

企画趣旨……笠木映里 

座談会基調報告……笠木映里 
[座談会]
高齢・障害と社会法……関 ふ佐子・永野仁美・森 悠一郎・柳澤 武・菊池馨実 

科学技術・医療の発展と高齢者・障害者雇用……長谷川珠子 

障害者・高齢者を対象とする労働法理論とその変容可能性……石崎由希子 

介護者支援とそのあり方についての理論的検討……津田小百合

コロナ下なので、在仏の笠木さんは基調報告はすれども座談会には参加していませんね。そこはちょっと残念です。

高齢者と障害者、労働法と社会保障法という2×2を縦横に論じるといろいろと見えてくるものがあるのだと思いますが、マクロの視点とミクロの視点がやや接合不足の感もあり、これはむしろ議論の出発点と位置付けられるべきなのでしょう。

個人的に気になったのは、たとえば座談会の中で柳澤さんが高年齢雇用継続給付についてこう述べているんですが(p26)、これは明らかに法政策の経緯を逆転させています。

・・・ゆえに、日本の高年齢者雇用継続給付も、差別禁止アプローチと全く矛盾するわけではなく、さらには休息や貢献という考え方と適合的ではないかと考えています。とりわけ、労働者自身の意思で、自分は少し日数を減らしたいとか、定年後なのでパートでもよいとか、そういった働き方を望んでいる場合には、この給付の存在によって「休息権」を部分的に実現しているとはいえるかもしれません。

ここで注意していただきたいのは、この特別な給付があるから賃金を減らしてよいという風に、賃金格差を是認する根拠として用いることは、本末転倒だということです。休息権という発想に依拠するならば、、賃金格差を是認する理由として、当該給付を持ち出すことは許されないわけです。・・・・

まさか柳澤さんが、この雇用継続給付のできた経緯を知らずにこんなことを言っているはずがないと思いますが、もちろんこの雇用継続給付は、65歳までの継続雇用を進めるために、まさに「この特別な給付があるから賃金を減らしてよい」からとにかく雇用だけは伸ばしてね、という政策目的で作られたわけで、それを本末転倒などと評するのは、それこそ本末転倒というべきでしょう。

賃金差別の元凶、とまではいわなくても、少なくともその最大の正当化要因として作られ、そのように運用されてきたこの雇用継続給付を、策定時にもその後も、この四半世紀の間誰もそんな趣旨だなんて語ったこともない「休息権」の実現のための手段だなどというロジックを勝手にこしらえて、そこからこの制度の本来の趣旨目的を「本末転倒」と批判するなんていうのは、法哲学とかの分野であればあってもいいのかもしれませんが(とはいうものの、私はそうとも思いませんが)、少なくとも実定法の具体的な条文をとらまえてあれこれ論ずる法分野においては、これはちょっとやってはいけない禁じ手ではないかと思います。

いうまでもなく、既に制度創設時の目的であった65歳継続雇用は2012年改正で義務化されているわけで、いまや定年後再雇用者の低賃金を正当化するという役割以外の何物でもなくなっているわけですが、それならそうとはっきり批判すればよいのであって、あまりにもずれた「休息権」などいうものを持ち出して無理やり正当化しようとする必要など何もないと思いますよ。

そもそも、高齢者の「休息権」自体にもいろいろと議論の余地がありますが、それをとりあえず認めたとしても、そこから導き出されるべきは例えば、高齢労働者の短時間労働請求権とかであって、労働時間とは何の関係もなくただ年齢だけで低賃金を認める以外のいかなる内容も含まないこの継続給付でもって「休息権」が担保されるというのは理解不能ではないでしょうか。

 

 

 

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