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2020年8月28日 (金)

新型コロナと風俗営業という象徴(再掲)

Huzoku 昨日、こういう記事がひっそりと載っていましたが、

https://this.kiji.is/671668179429524577(性風俗業者、給付金除外で提訴へ「根拠なし、職業差別を助長」)

新型コロナウイルス感染症対策で中小企業に支払われる持続化給付金の対象外とされた性風俗事業者が「法の下の平等を定めた憲法に反する」として、国に支払いを求める訴訟を東京地裁に9月にも起こすことが27日、分かった。原告弁護団は「合理的根拠なく特定の業種を支援から外し、職業差別の助長につながる」と主張している。・・・

このトピック、ちょうど4か月前に本ブログで取り上げておりました。4か月後の今も一字一句修正する必要性はなさそうなので、そのままここに再掲しておきます。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2020/04/post-b631f8.html(新型コロナと風俗営業という象徴)

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今回の新型コロナウイルス感染症は、医療問題から経済問題、労働問題まで実に幅広い分野に大きなインパクトを与えていますが、その中で風俗営業というトピックが全く違う文脈で全く違う様相を呈しながら様々に語られていることが興味を引きます。それはあたかも風俗営業というそれ自体はそれほど大きくない産業分野がある意味で現代社会のある性格を象徴しているからではないかと思われるのです。

まずもって、コロナウイルスを蔓延させているのは濃厚接触している夜の街の風俗営業だという批判が登場し、警察が歌舞伎町で示威行進するてなこともありましたが、それはそういう面があるのだと思いますが、実は経済のサービス化というのは、もっともっと広い範囲で人と人との接触(どれだけ「濃厚」かは別として)それ自体を商品化することで拡大してきたのであれば、コロナショックが何よりも人と人とが接触する機会を稼ぎの元としている飲食店やサービス業といった基盤脆弱な日銭型産業分野を、当該接触機会を最大限自粛することによって直撃していることの象徴が風俗営業なのかもしれません。

一方、コロナショックを労働政策面から和らげようとして政府が繰り出した雇用助成金政策に対して、それが風俗営業従事者を排除しているのが職業差別だという批判が噴出しました。そしてその勢いに押された厚生労働省はそれまでの扱いをあっさりと放棄し、風俗営業従事者も支給対象に入れることとしたわけですが、このベクトルは風俗営業のみを卑賎視する偏見に対して、それもまた歴とした対人サービス産業であるという誇りを主張するものであったはずで、その背景にはやはり、風俗営業も他の対人サービス業も、人と人との接触それ自体を商品化する機会を稼ぎのもとにしていることに変わりはないではないか、そして現代社会はそれを経済拡大の手っ取り早い手段として使ってきているのではないかという自省的認識の広がりがあったのかもしれません。

ところが、ここにきて、某お笑い芸人がラジオ深夜番組で語ったとされる、コロナ不況で可愛い娘が風俗嬢になる云々というセリフが炎上しているらしいことを見ると、実は必ずしもそうではなかったのかもしれないなという感じもあります。そのセリフが政治的に正しいものではないことはたしかですが、本ブログのコメント欄に書き込まれたツイートにもあるように、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2019/04/post-5924c7.html#comment-117951899

> 不景気になると
> 岡村隆史「かわいい人が風俗嬢やります」
> 経営者「有能な若者が安い給料で働く」
> あんまり言ってること変わんねえよなこれ 

労働供給過剰によってより品質の高い労働力が低価格で供給されるという経済学的には全く同型的な市場メカニズムを語る言葉が、一方はソーシャルな立場からは全く正しいものではないにもかかわらず、多くの経済学者の口から平然と語られても全く問題にならない(どころか経済学的に正しいことを勇気をもって語ったとしてほめそやされる)のに、芸人の方は集中砲火を浴びるのは、やはりエコノミカリー・コレクトに対するポリティカリー・コレクトとソーシャリー・コレクトの存在態様の大きな格差を物語っているのかもしれません。

これら新型コロナウイルス感染症をめぐってさまざまに立ち現れた風俗営業をめぐる人々の思考のありようは、誰かがもっときちんと、そしてこれが一番大事ですが、どれか一つのアスペクトだけではなく、そのすべての側面を全部考慮に入れたうえで、突っ込んで考察してほしいなあ、と思います。そういうのがほんとの意味での社会学的考察ってやつなんじゃないのかな、なんてね。

(追記)

世の中、ちょっとした時期のずれで大きな差ができることがありますが、本日から申請を受け付け始めた経済産業省の持続化給付金は、中小法人向けの200万円コースも、個人事業主向けの100万円コースも、特定の風俗営業は対象から除外しています。

https://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/kyufukin_chusho.pdf

https://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/kyufukin_kojin.pdf

不給付要件(給付対象外となる者)に該当しないこと
(1)風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に規定する「性風俗関連特殊営業」、 当該営業に係る「接客業務受託営業」を行う事業者
(2)宗教上の組織若しくは団体
(3)(1)(2)に掲げる者のほか、給付金の趣旨・目的に照らして適当でないと中小企業庁長官が判断する 

雇用助成金の時には、風俗営業だからと言って排除するのは職業差別だとあれほど騒いだ人々が、岡村発言の直後にはだれも文句を言わなくなってしまっているというあたりに、その時々の空気にいかに左右される我々の社会であるのかがくっきりと浮かび上がっているかのようです。

 

 

 

 

 

 

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