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2020年8月19日 (水)

大沢真理『企業中心社会を超えて』

521338_20200819084301 岩波書店編集部の藤田紀子さんより、大沢真理『企業中心社会を超えて』(岩波現代文庫)をお送りいただきました。

今月初めに、たまたま岩波のサイトを見ていて、本書が文庫として再刊されることを知り、本ブログにこういう記事を書いたのが、藤田さんのお目にとまったようです。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2020/08/post-180a3a.html

大澤真理さんの『企業中心社会を超えて 現代日本を〈ジェンダー〉で読む』が、岩波現代文庫に収録されるんですね。本書は1993年に刊行されたほぼ一世代前の本ですが、働く女子の運命を最も的確に論じた名著として、長く読み継がれるに値する本です。文庫収録を機に、また多くの方に読まれることを願っています。 

そこでも書いたように、拙著『働く女子の運命』の基本枠組は、腰巻きにでかでかと顔の載っている上野千鶴子さんではなく、大澤さんのまさに本書の議論そのものなんですね。

冒頭にでてくるのが宮沢内閣の生活大国5か年計画というくらい、一世代昔の古い本でありながら、今日に至る日本社会の根っこの問題を最も的確に摘出していた本でもあります。

拙著の枠組になった一節は上記エントリで引用しましたが、今回の文庫化でかなり長い「なにを明らかにし、どう歩んだか」という「あとがきにかえて」が付けられており、これもまさに「あとがきに替える」だけの中身になっており、本書出版以後の30年間をざっくりと描写し、評価する内容になっています。

・・・では低成長は、会社主義が崩れ、企業中心社会が緩和されたことを示唆するのだろうか。「新時代の日本的経営」とは、女性社員や非正規従業員に対する差別を排し、過労死問題を払拭するようなものなのか。社会全体として、労働における負担と見返りの性別格差も解消されてきたのだろうか。そして、政府の税・社会保障制度や労働政策は再構築されたのか。・・・

あと、今回の文庫化で付け加えられているのが、「社会政策の比較ジェンダー分析とアジア」という付論ですが、これ実は、本書のもとになった東大社研の『現代日本社会』の一論文の執筆経緯を明かしていて、それが当時の(東大社研を中心とする)「会社主義」論者のジェンダーバイアスを暴露しようというものになっていて、なかなか面白い。

・・・しかし。「女子労働論」は会社主義の論者たちからほとんど無視されていた。・・・それは特殊な周辺領域であるばかりでなく、学問的水準が低いという「烙印」を押されていた。能力と意欲ある若手研究者なら社会の「基軸」、「一般」の研究を目指すものだという指導、誘導が暗黙のうちにも行われていた。基軸や一般として研究される対象が実は男性だけであるにもかかわらず、である。

私の論文は、雇用労働と家事労働を貫く性別分業こそが、会社主義-のちの用語では、「企業中心社会」-の基盤であることを主張した。この論文への批判的な反応として、現代日本社会を分析する上で、「女性の不在」は当然だという主張があった。・・・他方では、理由はともかく、女性を明示的に論じる必要はない、などの反論もあった。・・・私は、アカデミック・セクシズムが現に作用していることを実感した。それは、たんに女性研究者に対するセクシュアル・ハラスメントや就職差別などとしてではなく(それらはもちろん深刻で大きな問題だが)、大きな共同研究のデザインやそれに伴う人的・資金的な研究資源の配分のジェンダー・バランスとしてこそ存在していたのだ。

そこでしかし、大澤さんは、「自分の研究を女性学と称するのは避け」、労働問題や社会政策の根幹をジェンダー視点で再構築するという道を歩んでいくことになります。その第一歩を踏み出した記念碑的作品が本書というわけです。

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