争議行為を伴う争議、遂に50件を切る
本日、令和元年(2019 年)労働争議統計調査の概況が発表されました(なぜかページには平成14年とありますが)。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/14-r01-08.pdf
毎年じわじわと減り続けてきた争議行為を伴う争議件数、前年の58件からついに50件台を割り込んで、49件になってしまいました。
一応、総争議件数は268件(これも激減してる)となっていますが、その差の「争議行為を伴わない争議」ってのは、要するに口先だけの争議であって、この調査では「争議行為を伴わないが解決のため労働委員会等第三者が関与したもの」と定義していますが、ストライキなどのなにがしか使用者側をチクリとでも刺すような真似は全くなく、労働委員会に駆け込んでいるだけの争議とも言えないような争議です。
つまりまともな争議は今や全国で年間50件もない社会になってしまったわけです、日本は。
なぜこんなふうになってしまったのでしょうか。
という疑問から、来月刊行予定の濱口・海老原『働き方改革の世界史』は始まります。
働き方改革の世界史【目次】序章 日本人が煙たがる「労働運動」というもの対岸の火事としての労働争議/日本の労働組合はガラパゴス的な形態をしている/協調的だが暴れ出すと手に負えない日本型の労働組合/社内調整のための仕組み/英米と欧州大陸国で異なる進化/片翼だけの労使関係の問題第一章 トレードからジョブへ第1講 出発点は集合取引(コレクティブ・バーゲニング)シドニー&ベアトリス・ウェッブ、高野岩三郎監訳『産業民主制論』【受講準備】会社を超えた広い連帯【本講】労働思想の必読古典/失われた失業保険機能/集合取引とは、労働力を高く売ること/日本は生活給、イギリスは標準賃銀率/雇用の継続と日本型デフレ第2講 「労働は商品じゃない」の本当の意味サミュエル・ゴンパーズ、S・ゴンパーズ自伝刊行会訳『サミュエル・ゴンパーズ自伝 七十年の生涯と労働運動(上巻・下巻)』【受講準備】アメリカ労働総同盟の初代議長【本講】アメリカ労働思想の古典と現代日本/労働組合主義から社会主義への反論/ネガティブな立法闘争/労働の大憲章/国防会議諮問委員会とILO第3講 ジョブ型労働運動の哲学セリグ・パールマン、松井七郎訳『労働運動の理論』【受講準備】ジョブ、ポスト、トレード【本講】階級意識と仕事意識/ジョブ・コントロールの労働運動/先任権ルールと残業の考え方/現場労働者が作り上げ、決めていく/戦後日本との対比復習ノート1 トレード型とジョブ型第二章 パートナーシップ型労使関係という奇跡第4講 共同決定というもう一つの産業民主主義フリッツ・ナフタリ編、山田高生訳『経済民主主義 ― 本質・方途・目標』【受講準備】労使関係のパラダイム・チェンジ【本講】現代ドイツの労働システムの始祖/ナフタリって何者?/経済民主主義の源流/労働関係の民主化/教育制度の民主化第5講 労使は経営共同体のパートナーシップギード・フィッシャー、清水敏允訳『労使共同経営』【受講準備】労使双方の努力で構築【本講】いわゆるライン型資本主義/経営パートナーシャフト―生活の安定/公正賃金/共同体のメンバーとしての従業員/組織原則の違い/フィッシャー経営学とカトリシズム第6講 カトリックの労働思想W・E・フォン・ケテラー、桜井健吾訳・解説『労働者問題とキリスト教』【受講準備】社会問題に切り込んだ聖職者【本講】キリスト教と労働問題/カール・マルクスの商売敵/新たなギルドの模索 /職人組合と生産協同組合/カトリシズムというモノサシ復習ノート2 ドイツ型労働システムの根幹第三章 パートナーシップなき企業内労使関係の苦悩第7講 労使パートナーシップへの淡い夢G・D・H・コール、和田耕作訳『労働者 ― その新しい地位と役割』【受講準備】イギリスの消耗【本講】今こそ読み返すべき還暦本/企業内部での経営参加を志向/日本型新卒一括採用が理想/完全雇用が必須な理由/ドイツや日本で実現した理想第8講 パートナーシップなきイギリスの職場アラン・フランダース、岡部実夫・石田磯次共訳『イギリスの団体交渉制 ― 改革への処方箋』【受講準備】労使関係は人間の権利と尊厳の問題【本講】イギリス労使関係が大転換するきっかけ/事業所レベル交渉の弊害/従業員を相手にせよ/集団から個人へ第9講 ジョブ・コントロール型労使関係は崩壊の一途バリー&アーヴィング・ブルーストーン、岡本豊訳『対決に未来はない ― 従業員参加の経営革命』【受講準備】精勤・勤勉な労働の回復【本講】アメリカ労働運動の中枢からアメリカ的労使関係を批判/監督はごみを拾うな/製品の品質に関心を持つな/日本のやり方に学べ/純粋メンバーシップ型宣言/挑戦は法的に頓挫第10講 メンバーシップ型アメリカ企業の雌伏、栄光、挫折サンフォード・ジャコービィ、内田一秀・中本和秀・鈴木良治・平尾武久・森杲訳『会社荘園制』【受講準備】外界と隔絶された共同体【本講】非主流派、少数企業の物語/福祉資本主義の崩壊からアメリカ型内部労働市場システムへ/日本型雇用に酷似/現場管理者の権力を削ぐ/コダックの協和主義/雇用と所得、どちらが重要か/コダックと富士フイルム復習ノート3 ノンユニオンという帰結第11講 労働者自主管理という理想像の逆説エドモン・メール、佐藤敬治訳『自主管理への道』【受講準備】仏の労使の距離感【本講】労働運動の思想的分裂/労働者自主管理と企業内労使関係/労働者を責任ある俳優に/あべこべの世界復習ノート4 自主管理思想の理想郷とは第四章 片翼だけの労使関係第12講 従業員組合のアンビバレンツとその帰結藤林敬三『労使関係と労使協議制』【受講準備】争議の現場をよく知る研究者【本講】労使関係は二元的である/日本と欧米、最大の違い/上部団体の存在意義/第二組合がなぜ生まれるのか/組合が左傾化する背景/不可避の雰囲気闘争/妥協機関としての労働委員会/身内の争いは激しさを増す/組合を去勢する労使協議制/藤林の予言通りになった日本の労働社会復習ノート5 戦後日本のパラドックス第五章 労働思想ってそういうことだったのか対談コレクティブ・バーゲニングの真相/アメリカはなぜジョブ・コントロールを確立できたか?/立法重視で行くべきか、現場を重視すべきか?/ドイツ型パートナーシャフトは奇跡の産物/労使共同経営って、いったい何をするの?/欧米に見られる日本型雇用への憧憬/日本社会に労働者代表制は取り入れられるか?あとがきに代えて マルクスが入っていない理由
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