『月刊連合』8/9月号
『月刊連合』8/9月号は「コロナ時代を考える」で、巻頭対談は中島岳志さんと神津会長ですが、「コロナが問うているもの」の副題が「「リスクの社会化」×「リベラル」の結集を」で、いささか脱力してしまいます。そこらのマスコミならともかく、労働組合の機関誌で「リベラル」じゃないでしょう、と思ってしまうのは、私の用語法がヨーロッパ式だからですかね。
https://www.jtuc-rengo.or.jp/shuppan/teiki/gekkanrengo/backnumber/new.html
世界を一変させた「新型コロナウイルス感染症」。
期せずして、日本では、社会に内在していた様々な問題が浮き彫りになっただけでなく、それに対応すべき政治の機能不全が際立っている。
コロナ禍は、私たちに何を問うているのか。ここからどこに向かえばいいのか。
中島岳志東工大教授と神津会長が語り合った。
そのあとに5人からの提言が並んでいますが、
■提言1/政治システムと危機対応 宇野重規 東京大学社会科学研究所教授
■提言2/コロナ危機とデータ戦略 宮田裕章 慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教授
■提言3/With/afterコロナの働き方 鶴 光太郎 慶應義塾大学大学院商学研究科教授
■提言4/コロナ危機と労働法 水町勇一郎 東京大学社会科学研究所教授
■提言5/ウィズコロナ時代のセーフティネット 森信茂樹 東京財団政策研究所研究主幹
これ、本当の長い方のタイトルはここに載っていませんが、鶴さんの提言は「日本型テレワークは十分可能だ」です。
実は鶴さん、ジョブ型正社員をあれほど宣伝しておいて、ここでは掌を返しています。
・・・最近一部のマスコミで、テレワークを推進するには職務範囲が明確なジョブ型雇用や成果主義にしなければならないとの論調が目立つ。しかし、これはテクノロジーがなかった昔の議論であり、時代錯誤である。テレワークは確かにジョブ型雇用と親和性が高く、ジョブ型自体を推進することは重要である。ただ、いまの雇用システムでも新たなテクノロジーが問題を解決してくれる。「日本型テレワーク」は十分可能なのだ。・・・・
軽薄なマスコミの論調に我慢ならない気持ちはよく分かります。しかし、これって、先日荻野勝彦さんがブログで書いていたことでもありますね。
https://roumuya.hatenablog.com/entry/2020/08/05/161030(この記事がひどい。)
ただ、そうだとしてもそれは実態から外れた残念な議論であり、なにかというと昨今のテレワークの拡大でわかったことは、そんな仕事の切り出しなどという手間をかけずになし崩しに始めてしまったところzoomやらSlackやらを使えば別に仕事の切り出しなんかしなくても・従来のように担当業務があいまいなままでもそれなりに「優秀な部下数人が手分け」することもできるし、結果テレワークでも仕事は回るということなのですね。
意外な観点から面白かったのが、日本若者協議会代表理事の室橋祐貴さんの「若手研究者は『労働者』では無いのか?」でした。たぶん日本ではほとんど考えられたことすらないのでしょうが、研究者という職業に就くための実践的職業訓練課程に在籍するということは、十分労働者性の議論の対象になり得るのです。だって、防衛大学校や防衛医科大学校の学生はれっきとした給与をもらう公務員たる自衛官なわけですよ。本質的には変わらない。
でも、そう思われないのは日本社会なりの理由があるわけで、そこだけ捕まえてあれこれ言ってみても仕方がない面があります。
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