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2020年7月11日 (土)

『情報労連REPORT』7月号に寄稿

2007_cover 『情報労連REPORT』7月号に「「新型コロナ緊急対策」と今後の労働政策-非常時の対応は平時に労働政策にどう影響するか」を寄稿しました。

http://ictj-report.joho.or.jp/2007/topics01.html

これは総論的に、いろんなことを詰め込んで概観していますので、より詳細はJILPTの緊急コラム等をご覧いただければと思いますが、ざっと一通り見るには手ごろではないかと思います。

雇用調整助成金の拡充

2020年度は働き方改革、賃金消滅時効、ハラスメント規制など数多くの労働政策課題とともに出発するはずでしたが、2020年初めから世界的に急速にまん延しパンデミックとなった新型コロナウイルス感染症への緊急対策が続々と打ち出される中で、労働政策面でも目まぐるしいような制度改正や創設が相次ぎました。その中には、今後の労働政策の行方を示唆するものも少なくありません。

まず、近年「行き過ぎた雇用維持型から労働移動支援型への転換」というキャッチフレーズの下で、ややもすれば否定的な視線を向けられることの多かった雇用調整助成金が一気に雇用政策のスポットライトを浴びました。知事の休業要請を受けた場合には助成率を10割としたり、日額上限を1万5000円に引き上げたりするなどの大幅な拡充に加え、被保険者期間6カ月以上という要件の撤廃や、雇用保険被保険者でない労働者の休業も助成対象とした点が注目されます。

2008年のリーマン・ショック時には、多くの非正規労働者が雇用保険の対象とならないことが批判の的となり、それまでの1年以上の雇用見込みという要件が1カ月以上に緩和されました。しかし、それでもなお雇用保険非加入の非正規労働者は少なくありませんし、加入していても6カ月の被保険者期間を満たさないことも多いのです。緊急事態に対処するための雇用調整助成金が、金の出どころである雇用保険の事情に引きずられることによって、守られるべき非正規労働者の雇用が守られないとすれば、それは是正されるべきでしょう。しかしこれは、緊急事態が過ぎ去った後には元に戻せばいいのかという問いも提起します。

休業に国が直接給付へ

雇用調整助成金を巡っては、その申請手続きが煩雑で受給手続きが遅々として進まないことに批判が集まり、かなり思い切った手続きの簡素化が行われました。これは、リーマン・ショック時に利用された雇用調整助成金において、その後不正受給等の指摘が多くなされ、厳格な運用のために手続きが煩雑になった面もあります。とはいえ、同様の制度を持つ欧州諸国では4月末の時点で独仏とも利用者数が1000万人に達していたことを考えると、やはり仕組みにも問題がありそうです。

これに対し、日本弁護士連合会などから災害時のみなし失業制度の適用が求められましたが、政府はむしろ休業そのものに国が直接給付を行うという法改正を選択しました。これにより、雇用保険の雇用安定事業として休業手当を受け取れていない中小企業労働者に「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金」が支給されるとともに、被保険者でない労働者にも同様の給付金が支給されます。

ここでも非正規労働者へのセーフティーネットの拡大という方向性が示されています。一方、本制度では、そもそも論として労働基準法第26条の休業手当支払い義務との関係が未整理のままで、緊急時の生活保障機能をどこがどれだけ担うべきなのかという本質的な問いが先送りされていると言わざるを得ません。

今回クローズアップされた問題としては、アルバイト学生への休業補償も注目されます。これは労働政策サイドではなく、教育政策サイドで「学びの継続のための『学生支援緊急給付金』」が創設されました。家庭から自立してアルバイト収入により学費等を賄っている学生等で、今回の新型コロナウイルス感染症拡大による影響で当該アルバイト収入が大幅に減少し、大学等での修学の継続が困難になっている者に、日本学生支援機構から10万〜20万円を支給するというものですが、アルバイト学生の社会的位置付けがかつてとは大きく変わってきていることを示しています。

リーマン・ショック後の2010年雇用保険法改正では、適用要件を週20時間以上かつ1カ月以上の雇用見込みと大きく拡大しましたが、昼間学生のアルバイトだけはそこから外したのです。10年前はまだ学生アルバイトを小遣い稼ぎとみる発想が強かったのですが、今やそれは時代遅れになりつつあるのです。

フリーランスへの対応

ここまではまだ、雇用労働者の中の非正規労働者への保障の拡大ですが、新型コロナウイルス緊急対策はさらにそれを超えてフリーランスなど非雇用労働者の保障も政策課題の舞台に引きずり出しました。安倍総理が3月から全国の小中高校を臨時休校としたことに伴い、厚生労働省は急きょ「新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金」を創設したのですが、子どもを抱えて働いているのはフリーランス就業者も同じなのに、そちらが対象にならないのはおかしいではないかという議論が噴出したのです。

そこから瓢箪から駒のように、新型コロナウイルス対策という名目で、一気にフリーランス就業者のための休業補償として「新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応支援金」が創設されることになりました。しかも、1日当たり4100円(定額)という金額が、雇用労働者の1日当たり8330円(上限)と比較して低すぎるのではないかという批判も起こりました(現在はそれぞれ7500円(定額)、1万5000円(上限))。

しかし、これは平時であれば極めて実現困難なものであったはずです。使用者の指揮命令下にあり、勤務時間中は労働義務を負っている雇用労働者向けの制度枠組みを、そうではないフリーランスの自営業者にどこまで応用することができるのかというそもそも論を、緊急対策ということで軽々と乗り越えてしまっているのです。

とはいえ、労働政策からのフリーランス対策はこれだけで、上記休業労働者への直接給付のフリーランス版という話はありませんし、そもそも雇用保険の失業給付の対象にはなりません。それは当たり前だと思うかも知れませんが、実は世界的には今、フリーランスへの失業給付という問題意識が高まりつつあるのです。EUでは2019年11月に、「労働者と自営業者の社会保障アクセス勧告」が成立し、自営業者にも失業給付や労災給付を行う国がかなりの数に上っています。日本でも労災保険には自営業者の特別加入という仕組みがあることを考えれば、理論的にはあり得ない話ではありません。もっとも、フリーランスの場合、そもそも休業と失業の間に明確な区分も付けがたいという問題があります。

税制上の課題

ちなみに、経済産業省所管の持続化給付金は、新型コロナウイルス感染症の影響により売上が前年同月比で50%以上減少している事業者に対し、法人は200万円、個人事業者は100万円給付するものであり、後者はフリーランス就業者に対する一種の休業手当と見ることもできます。ところが、フリーランス就業者は確定申告の際、事業所得ではなく給与所得ないし雑所得として申告することが多く、そのためにこの給付金がもらえないと問題になり、事業収入を給与所得や雑所得に計上しているフリーランスも対象に含めると梶山経産相が記者会見で述べる事態になりました。労働者性に関する判断基準が労働社会政策と租税政策で食い違っていることが、思わぬ形で露呈したと言えます。

この問題は、今回は事業者として持続化給付金の対象になるかという形で表れましたが、裏返して言えば、税務署から見て事業者ではなく労働者と判断されるような就業形態の者が、労働法や社会保障の適用上労働者ではないとされているために、雇用労働者向けのさまざまな保障から排除されていることの問題点でもあるのです。 

なお、今号にはコロナ禍に関する記事がたくさん載っていますが、常見陽平さんが(連載とは別に)「コロナ禍のテレワークの今とこれからー不自由で硬直的にならないために何が必要?」を書いています。

テレワークの功罪についてあれこれ論じる中で、最後のパラグラフで「「ジョブ型」への警戒」を露わにしています。曰く;

テレワークの導入拡大に伴って、経団連や日本経済新聞が「ジョブ型」への移行を盛んにアピールしていますが、労働組合としてはその裏の意図にも気付くべきです。そこにあるのは、仕事のモジュール化と解雇自由の世界観です。要するに、働く人を取り替え可能な部品化する懸念があります。

そもそも、経団連や日本経済新聞の言う「ジョブ型」を素直に信用してはいけません。「ジョブ型」には、働く側にジョブを選択する権利があり、今の日本のように会社が強大な人事権を握って、従業員をどこにでも異動させるようなことはできません。会社が強大な人事権を手放さないままの「ジョブ型」は、労働者の立場をますます弱くする可能性があります。

一方で、「無限定正社員」を中心とした「メンバーシップ型」雇用のままテレワークが導入されると、過度な一体感が重視された結果、労働強化になり得ることに注意が必要です。テレワークが広がる中、「仕事がモジュール化するからジョブ型になる」くらいの論理で働き方が語られることに強い違和感を覚えます。労働者の立場が弱いまま導入される「ジョブ型」に労働組合は警戒するべきです。

さらに仕事のモジュール化について言えば、そこには「一億総フリーランス化」という意図も見え隠れします。政府はこの間、「雇用によらない働き方」を促進してきました。そこにも労働組合は注意を向けるべきでしょう。

自由で柔軟な働き方の象徴として語られてきたフリーランスの働き方が、決してそうではないことが明らかになったのも、今回の教訓の一つだと思います。働く人たちの自由に働きたいというニーズと雇用の安定をどうマッチさせるのか。さらには、キャリア権をどう保障するのか。日本社会として世界にどのような働き方を示せるのかが問われています。テレワークそのものより、それを巡る日本社会の労使関係が問われていると言えるでしょう。 

これは二重三重にねじれているんですが、まず本来の「ジョブ型」は、ある意味で確かにあらかじめ定まった「ジョブ」に人をはめるという意味で「モジュール化」なんですが、その典型は(何回も言っていますが)アメリカ自動車産業のブルーカラー労働者であって、裁量労働制だの成果主義とは正反対なんですね。

ところがなぜか現在の日本で日経新聞の唱道する「ジョブ型」ってのは、そういうジョブ型の諸国のハイエンドの部分だけに着目して、(ある意味では「ジョブディスクリプション」が包括的で幅があるがゆえにそれが可能である)成果主義を取り出して、あたかもそれが「ジョブ型」なるもののすべてであるかのように宣伝する。

ただそれには理解できる面があって、日本はジョブ型諸国に比べるとはるかに広い範囲の労働者層に「査定」をするんですが、その「査定」の中身が、ジョブディスクリプションが不明確かつ不確定なため、能力考課、情意考課にならざるを得ず、それが本来業績査定すべき部分まで「いやあ、あいつは「できる」し、頑張っているし」でやっちゃうので、そこをどうにかしたいという気持ちがあるわけです。それはわかるのですが、言葉の間違った使い方を世に広めるようなやり方はやめてほしいですね。

それとはも一つ別の次元で、これはむしろ世界共通に進んでいる大きな変化として、「ジョブ」を超えた「タスク」レベルへの限りなくミクロなモジュール化という問題があり、今話題のフリーランスはむしろこちらなんですが、そこはこれまでの労働法や社会保障法ではなかなか追いついていかないところなので、世界的に議論が沸騰しかけているのです。

昨日アップした、自営業者の団体交渉権を認めよう、という話もその一環です。

 

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