日本型雇用システムのあした@『ひろばユニオン』7月号
『ひろばユニオン』7月号に「日本型雇用システムのあした」を寄稿しました。
中身はおおむね次の通りですが、
ジョブ型とメンバーシップ型
「働き方改革」をめぐって
ジョブ型 経営側は抑制的
ジョブ型からタスク型へ?
第4次産業革命の揺さぶり
このうち、最近の経団連の動きについて論じた一節だけ、世間での議論がねじれ気味であるだけに、ちょっと公開しておきます。
一方、近年経団連が「ジョブ型」を推進しようとしていることが注目されている。もっとも、今年1月の『2020年版経営労働政策特別委員会報告』は、「メンバーシップ型社員の採用・育成を中心とした日本型雇用システムには様々なメリットがある一方で、経営環境の変化などに伴い、課題も顕在化してきている」と指摘しつつ、「ただちに自社の制度全般や全社員を対象としてジョブ型への移行を検討することは現実的ではない」と抑制的である。
具体的に示唆しているのは「Society5.0時代に向けて、最先端のデジタル技術などの分野で優れた能力・スキルを有する人材への企業のニーズが高まっていることから、こうした高度人材に対して、市場価値も勘案し、通常とは異なる処遇を提示してジョブ型の採用を行うこと」や、そうした「ジョブ型社員には職務給や仕事給、役割給の適用を検討する」ことなどであり、要するに「メンバーシップ型のメリットを活かしながら、適切な形でジョブ型を組み合わせた『自社型』雇用システムを確立すること」である。一部マスコミ報道が煽り立てるような、全面的なジョブ型社会への移行を唱えているわけではない。
これを見て想起されるのは、四半世紀前の1995年に当時の日経連が打ち出した『新時代の「日本的経営」』における「高度専門能力活用型」である。
同書は「長期蓄積能力活用型」という名で正社員を(主に入口で)絞り込みつつ、「雇用柔軟型」という名の非正規雇用を拡大していくという戦略を示したが、その中間に「高度専門能力活用型」の創設が提起されていた。これが両者の中間におかれているのは、その定着性の観点からであって、その社会的地位がメンバーシップ型正社員とパート・アルバイトの中間という意味ではなかったはずである。
ところがこの四半世紀、「契約社員」という名の新たな非正規労働者は明らかにメンバーシップ型正社員の下に位置付けられ、パート・アルバイトと大して変わらないような存在となってきた。その結果、高給の「働かないおじさん」の隣で、非正規の専門職労働者たちが主戦力化しているという光景が、日本のあちこちで見られるようになっている。
経団連のいう「ジョブ型」とは、働き方改革が目指す限定正社員への接近ではなく、四半世紀前の「高度専門能力活用型」のリバイバルと見た方がわかりやすい。少なくとも、1960年代までの日経連のように、同一労働同一賃金に基づく職務給の導入を声高に唱道しているわけではない。せいぜい、「キャリア面では、メンバーシップ型とジョブ型社員の双方から、経営トップ層へ登用していく実績をつく」ることが目新しい程度である。
« 濱口語法? | トップページ | ホテル配膳人はなぜ日雇なのか »
コメント