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2020年6月 4日 (木)

生計目的副業と自己実現副業を誰がどうして区別するのか?という問題

さて、世の中がコロナ一色に染まっている間にも、それ以前からの山積する課題に対する検討は進められているわけで、去る3月末の法改正で雇用保険と労災保険については一応決着がついた兼業・副業についても、労働時間の通算問題についてはなお決着がつかないままになっていることはご案内の通りです。

そこで、去る5月19日に、経済同友会が「兼業・副業の促進に向けた意見~個人の主体的な働き方の選択を可能とする制度設計を~」という意見書を公表していました。中身は、基本的には労働時間の通算なんて難しいんだからやめてよ、という話なんですが、その理論立てがなかなか込み入っています。

https://www.doyukai.or.jp/policyproposals/uploads/docs/200519a.pdf?200601

これは、私も講演とかでこの問題を喋るときによく使う二分法なんですが、兼業・副業といっても2つのタイプがあるよと。

兼業・副業は目的によって、次の2つに大きく分類できる。
①生計維持のための収入確保を目的とした兼業・副業
②個人の自己実現や社会貢献を主目的としながら、雇用企業の人材育成、イノベーション創出、収入の増加にもつながる兼業・副業
 このうち、②の目的で兼業・副業を行う者はまだ少ないが、今後、環境を整備することにより、一層増やしていくことが望まれる。政府も「新たな技術の開発、オープンイノベーションや起業の手段、そして第2の人生の準備として有効」とし、同様の観点からその促進を図ろうとしている。 

これはほぼその通りで、も少しエッジの効いた言い方をすれば、世の中の兼業・副業の大部分は1の生計目的副業なんだけど、政府、というか官邸、というかその背後にいる経済産業省方面、が主として念頭に置いているのは、多数派の1じゃなくて、少数派の2なんですね。だから、一生懸命兼業や副業屋と笛を吹いて踊らせようとする。そこが、現場で労働問題に直面している人々と感覚がずれていく理由の一つでもあるわけです。

経済同友会は、(経産方面とは違って)そこのところの構造がよく分かった上で、しかし懸念するのは1の多数派のことばかり考えて2の少数派が過剰規制されてしまうことなんです。

しかし、現時点では①の生計維持のためにやむを得ず働かざるを得ない者が多いことから、ルールづくりの際、主として①の目的での兼業・副業を視野に入れ、一律的で過度な規制が検討される恐れがあり、これを危惧する。
 したがって、労働者保護の観点から①の目的で兼業・副業する人々を主眼に置いた過度な規制を導入することにより、収入確保の機会の喪失や、②の目的で自ら主体的に兼業・副業を選択しようとする動きが抑制される懸念があることに留意すべきである。②の目的での兼業・副業は、あくまでも自律した個人が自己責任の下で自由に行うべきものである。  

ここは、まさにその通りで、生計目的副業を念頭に置いた規制は、確かに自己実現副業にとっては過剰規制になり得ます。そういう構造であることは確かです。

ではどうするかというと、結論としては、

個人の自己実現や社会貢献を主目的とした兼業・副業については、健康管理には一定の配慮は必要なものの、基本的には自己責任で行われるべきであり、複数事業者間での労働時間通算を行わないことが望ましい。。

ということになるんですが、じゃあ、個人の自己実現や社会貢献じゃなくって、ただひたすらに低収入を補うために兼業・副業している多数派の人はどうしたらいいのかというと、それは明確には書かれておらず、結局

労働時間は通算が実務上困難なことを前提に、現時点では複数事業者間での労働時間通算を行わないことを原則にすべきである。 

というのに含まれることになっているようです。それはいささか無責任なような。

しかし、そもそも論からいうと、概念的には上記のように分けられる生計目的副業と自己実現副業を、誰がどうやって区別するの?という偉い大問題がでんとその先に控えている以上、うかつに生計目的副業は通算するけれども、自己実現目的副業は通算しないなんて、そんな議論もできないし、と言うことなんでしょうね。

 

 

 

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