家族手当・児童手当の労働法政策@『季刊労働法』269号
一昨日紹介した『季刊労働法』269号が届きました。特集記事等は一昨日のエントリに載せたとおりですが、わたくしの「家族手当・児童手当の労働法政策」の中身をチラ見せしておきましょう。
はじめに
通常の日本語では、「家族手当」と言えば企業が労働者に支払う賃金のうち労働者の扶養家族に対応する形で支払われるものを指し、労働法や人事労務管理論の対象です。一方「児童手当」と言えば、国が一定の要件を満たす国民に支給する社会保障給付の一つであり、社会保障法や社会政策論の対象です。とはいえ、両者は歴史的には密接に絡み合っていますし、今日においてすらその関係は解きほぐされていません。同一労働同一賃金原則を困難ならしめている日本的賃金制度にとって、家族手当やそれに類する諸手当は本質的な要素であり、それゆえに国の児童手当制度は過去半世紀近くにわたって発育不全の状態であり続けてきたともいえます。
今回は、日本的賃金制度における家族手当の発展と、それに代わるものとして構想されながら今日まで発展し切れてこなかった社会保障制度としての児童手当の歴史を、両者の関わりに重点を置きながら見ていきたいと思います。
1 生活給思想と家族手当
(1) 生活給思想の出発点
(2) 戦時賃金統制
(3) 法令による家族手当の展開
(4) 戦後労働運動と家族手当2 公的社会保障としての児童手当への道
(1) 戦後初期の構想
(2) 経済・労働政策としての児童手当
(3) 厚生省サイドにおける検討
(4) 労使の態度
(5) 児童手当法の小さな成立3 家族手当をめぐる労働法の諸問題
(1) ストライキによる家族手当カット
(2) 家族手当における男女差別-岩手銀行事件
(3) 家族手当における男女差別-日産自動車事件
4 児童手当制度の有為転変
(1) 児童手当に対する批判
(2) 児童手当の縮小的拡大
(3) 21世紀の拡大期
5 男女平等法制下の家族手当の残存
(1) 間接差別問題の提起
(2) 間接差別から落とされた世帯主要件
(3) 配偶者手当をめぐる政策
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