兼業・副業の促進@未来投資会議
本日、官邸の未来投資会議が開催されたようで、その資料がアップされているんですが、
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/dai39/index.html
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/dai39/siryou1.pdf
なんだかやたらに兼業・副業の促進に力が入っているようです。
今後の働き方としては時間・空間の制約からの解放が8割以上で、兼業・副業の一般化はそれほどではない,あるいはほかの選択肢と並び程度なのですが、なぜか何が何でも兼業・副業を進めるぞという感じで、こればっかり具体的な制度設計に入りこんでいます。
と、こればっかり一生懸命なんですが、実のところ労使双方とも本音では推進なんてしたくないと思っている政策をこういう風に進めていくのは、どんなものか、と思わないでもありません。
« 『情報労連REPORT』6月号 | トップページ | 欧州労働市場は若者の一人負け? »
最後の、「実のところ労使双方とも本音では推進なんてしたくないと思っている政策」というコメントにやや疑問があります。
確かに、使用者は副業を歓迎しないでしょうが、副業の選択肢が増えること自体は望ましいと考える労働者は確実に存在します。他方、副業を希望しない労働者には関係のない話です。
何よりも、副業の促進は、現在の企業に依存しない収入源の増加と、それを足掛かりにした転職や自立の可能性を高めることで、これまで日本の労働者に欠けていた「辞めることの自由度」を高めることになります。
労働者の利益を守るためのVoice or Exitの内、前者が低下している以上、後者の役割を高めることは労働政策としても望ましいと思われますが。
投稿: 八代尚宏 | 2020年6月17日 (水) 09時06分
わざわざコメントいただき恐縮です。
ここでいう「労使双方」は労使のマジョリティはというつもりで書いているので、そうでない人もいることはもちろん理解しています。
またそもそも、労使のマジョリティが本音ではあまり推進派でなくても結果的に推進すべきであったことはいくらでもあり、例えば男女均等法自体、本音では経営側は平等反対、労働側は女子保護堅持であり、本気の推進派は労働省婦人少年局だけだったかも知れませんが、結果的には労使ともそちらに寄っていったわけで、労使の意向が常に正しいわけでもありません。
ただ、兼業・副業について言えば、推進の原動力である経済産業省や官邸が提示するイメージがハイエンドの高度専門職であるのに対して、現実に兼業・副業している労働者の大部分は生計維持型の低賃金就労で、ずれたイメージのまま議論が進められている感がぬぐえないところがあります。
実を言えば、兼業・副業が「自立」につながるような労働者は、そもそもその働き方が(高度プロフェッショナルや裁量労働制に当たるかは別にして)なにがしかもともと自律的な働き方をしている人であり、その意味ではあまり厳格な労働時間規制が適切ではなく、それゆえ労働時間の通算の議論もそもそも余り意味がないような人々ではないかと思っています。
その意味では、私はむしろ健康確保の観点からの規制を除けば、兼業・副業がふさわしいような労働者に労働時間の通算なんてしない方がいいと思っていますので、上のような変に中途半端な規制には疑問を感じるのです。
それに対して低賃金のアルバイトをいくつも掛け持ちしているような人については、労働時間の通算やとりわけ労災保険上の通算が重要になるでしょうし、それゆえ審議会でも労働側はそこには強く要求していたわけですが、ただそういう種類の兼業・副業が増えても、労働者の自立につながるかどうかは疑問です。
ややいろんなことがごっちゃになってしまった感がありますが、もう少しこの問題は労働者像を明確にした上で議論した方がいいと思っています。
投稿: hamachan | 2020年6月17日 (水) 14時01分