『季刊労働法』269号
『季刊労働法』269号の目次が労働開発研究会のサイトに出ています。
https://www.roudou-kk.co.jp/books/quarterly/8311/
まず第1の特集は「特集:副業・兼業の新段階」です。
●昨年、厚労省「副業・兼業の場合の労働時間管理の在り方に関する検討会」の報告書がまとめられるなど、副業・兼業の在り方がこの間、議論されてきました。これを受け「副業・兼業」を特集します。副業・兼業における健康確保と実効性のある労働時間法制、労災保険、雇用保険という法律問題はもちろん、実務上の課題、また副業・兼業の拡大が与える労働市場への影響についても考察します。
ということで、いろんな観点からの論文が並んでいますが、このうちJILPTの山本陽大さんが中心になってやった若手研究者5人による労災保険の比較法研究は、そもそも労災保険の比較法自体最近はあまりやられていない(JILPTになる前のJIL時代の報告書があるくらい)ので、大変有用なはずです。
副業・兼業者の労働時間管理と健康確保
横浜国立大学准教授 石﨑 由希子
副業・兼業と労災補償保険制度―日・独・仏・米・英法の五ヶ国比較―
労働政策研究・研修機構副主任研究員 山本 陽大
京都府立大学講師 河野 尚子
明治学院大学准教授 河野 奈月
大阪大学准教授 地神 亮佑
同志社大学教授 上田 達子
兼業・副業を行う労働者と雇用保険法の課題
北星学園大学専任講師 林 健太郎
副業・兼業における実務上の課題
弁護士 笠置 裕亮
副業・兼業の拡大が労働市場に与える影響
日本大学教授 安藤 至大
続く第2特集は「変わる公務労働とその課題」です。
公務労働部門では、4月から会計年度任用職員制度が始まっています。同制度、公務労働の分野における均等・均等処遇を中心に検討し、公務労働における制度と実務のはざまにある問題も指摘します。
この問題のオピニオンリーダーの上林さんをはじめ、こちらも読みでのある論文です。
欺瞞の会計年度任用職員制度と間接差別の温存
公益財団法人地方自治総合研究所研究員 上林 陽治
公務部門における「正規」・「非正規」間の均等・均衡処遇の法的実現の在り方に関する検討
金沢大学准教授 早津 裕貴
刑事施設職員に対する団結権否認を問う─ILO87号条約(結社の自由及び団結権の保護)の適用に関わって─
公務公共サービス労働組合協議会参与 大塚 実
公務労働における制度と実務のはざま―地方公務員という労働者―
公務人材開発協会業務執行理事 鵜養 幸雄
特集以外の記事は以下の通りですが、
■論説■
団体行動権を支える法理 北海道大学名誉教授 道幸 哲也
アカデミック・ハラスメントの法理・序説 九州大学名誉教授 野田 進■アジアの労働法と労働問題 第41回■
南アジアの船舶解撤現場における労働問題 インダストリオール・グローバル・ユニオン造船・船舶解撤部門担当部長 松﨑 寛■労働法の立法学 第58回■
家族手当・児童手当の労働法政策 労働政策研究・研修機構労働政策研究所長 濱口 桂一郎■判例研究■
医師の当直業務、勉強会参加時間等の労働時間性と労働時間把握懈怠の使用者の責任 長崎市立病院事件・長崎地判令和元年5月27日労経速2389号3頁 北海学園大学教授・弁護士 淺野 高宏
育児休業終了後に契約社員に移行した従業員の正社員復帰請求および雇止めの可否 ジャパンビジネスラボ事件・令和元年11月28日労判1215号5頁 京都女子大学教授 烏蘭格日楽■重要労働判例解説■
行政措置要求の対象としての管理運営事項 三木市公平委員会事件・大阪高判平成30年5月25日労判1196号42頁 全国市長会 戸谷 雅治
医師の自主的な研鑽の労働時間性 長崎市立病院事件・長崎地判令和1年5月27日労経速2389号3頁 富山県立大学准教授 大石 玄
なんと、同じ長崎市立病院事件の評釈が、淺野高宏さんと大石玄さんの二人が見事に重なっています。これは同じ雑誌の同じ号で読み比べできるという稀有なケースですね。どちらも北海道大学の関係者だし。
私の連載は、賃金制度としての家族手当と社会保障制度としての児童手当をだぶらせて考察したものです。
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