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2020年6月13日 (土)

EU指令の在宅勤務権

日経新聞が在宅勤務権の話題を取り上げていますが、

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60324760S0A610C2MM8000/(在宅勤務が標準に 欧州は法制化の動き、米は企業主導)

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い本格化した在宅勤務を定着させる動きが広がっている。欧州では「在宅勤務権」の法制化が始まり、米国企業は在宅勤務の恒久化を決める例が相次ぐ。日本でも実施企業は増えたが、ルール作りなどで遅れている。在宅勤務は企業の競争力も左右する可能性がある。・・・

この話題、先月本ブログで、JILPTの『ビジネス・レーバー・トレンド』記事として紹介しましたが、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2020/05/post-2912be.html

・・・フベルトゥス・ハイル労働社会相は、ウイルスの脅威が去った後も、労働者が望めば在宅で勤務できる権利(在宅勤務権)に関する法案の構想を発表した。早ければ今年の秋頃に新たな法案が出される可能性がある。・・・
・・・報道によると、フベルトゥス・ハイル労働社会相の提案は、同氏が属する社会民主党(SPD)の議員や野党議員から多くの賛同を得ている。・・・
・・・他方、ドイツ使用者団体連盟(BDA)のシュテファン・カンペテル会長は、時代遅れの政策で、このような立法は不要だとした上で、「人々が在宅で働くだけでは経済は回らない」と述べて反対している。 

その後全文がJILPTのサイトで読めるようになっています。

https://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2020/05/germany_02.html

これは今回のコロナ禍を契機に出てきた議論ですが、実はそれに先立って、ある特定の文脈ではありますが、既にEUの労働法制にはリモートワークの権利が規定されています。

それは、昨年6月に採択された「両親と介護者のワークライフバランスに関する、及び理事会指令2010/18/EUを廃止する欧州議会と閣僚理事会の指令(ワークライフバランス指令)(Directive (EU) 2019/1158 of the European Parliament and of the Council of 20 June 2019 on work-life balance for parents and carers and repealing Council Directive 2010/18/EU)です。

この指令、実は邦訳が今年3月に出た『労働六法2020』(旬報社)にちゃんと載っていますが、関連部分だけ引用しておきますと

https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/?uri=uriserv:OJ.L_.2019.188.01.0079.01.ENG

Article 3 Definitions
1. For the purposes of this Directive, the following definitions apply: 

(f) ‘flexible working arrangements’ means the possibility for workers to adjust their working patterns, including through the use of remote working arrangements, flexible working schedules, or reduced working hours. 

Article 9 Flexible working arrangements
1. Member States shall take the necessary measures to ensure that workers with children up to a specified age, which shall be at least eight years, and carers, have the right to request flexible working arrangements for caring purposes. The duration of such flexible working arrangements may be subject to a reasonable limitation.
2. Employers shall consider and respond to requests for flexible working arrangements as referred to in paragraph 1 within a reasonable period of time, taking into account the needs of both the employer and the worker. Employers shall provide reasons for any refusal of such a request or for any postponement of such arrangements.
3. When flexible working arrangements as referred to in paragraph 1 are limited in duration, the worker shall have the right to return to the original working pattern at the end of the agreed period. The worker shall also have the right to request to return to the original working pattern before the end of the agreed period where justified on the basis of a change of circumstances. The employer shall consider and respond to a request for an early return to the original working pattern, taking into account the needs of both the employer and the worker.
4. Member States may make the right to request flexible working arrangements subject to a period of work qualification or to a length of service qualification, which shall not exceed six months. In the case of successive fixed-term contracts within the meaning of Directive 1999/70/EC with the same employer, the sum of those contracts shall be taken into account for the purpose of calculating the qualifying period. 

邦訳は:

第3条 定義
1 本指令においては以下の定義が適用される。 
(f)「柔軟な労働編成」とは、労働者が遠隔労働編成の活用、柔軟な労働日程又は労働時間の短縮によるものも含め、その労働パターンを調整する可能性をいう。 

第9条 柔軟な労働編成
1 加盟国は、8歳を下回らない特定の年齢までの子供を有する労働者及び介護者が育児・介護の目的で柔軟な労働編成を請求する権利を有するよう確保するために必要な措置をとるものとする。かかる柔軟な労働編成の期間は合理的な限度内とすることができる。
2 使用者は第1項に定める柔軟な労働編成の請求に対し、使用者及び労働者双方の必要を考慮に入れて、合理的な期間内に考慮し対応するものとする。使用者は、かかる請求を拒否し又はかかる編成を延期する場合はその理由を通知するものとする。
3 第1項に定める柔軟な労働編成の期間が限定される場合、労働者は合意された期間の終期において元の労働パターンに復帰する権利を有するものとする。労働者はまた、状況の変化を理由として正当化される場合には、合意された期間の終期の前に元の労働パターンに復帰することを請求する権利を有する。使用者は、使用者及び労働者双方の必要を考慮に入れて、元の労働パターンへの早期復帰の請求を考慮し対応するものとする。
4 加盟国は、柔軟な労働編成を請求する権利を6か月を超えない労働期間資格又は勤続期間資格に条件付けることができる。理事会指令1999/70/ECに規定する同一使用者との反復継続した有期契約の場合には、これら契約の総計が資格期間の算定において考慮されるものとする。

あくまでも育児・介護をする労働者という文脈の規定ですが、「遠隔労働編成」(remote working arrangements)を請求する権利がEU指令の上に姿を現しており、つまり育児休業とか介護休業と並んでワークライフバランスのためのリモートワークというのは制約付きながら一定の権利になってきているんですね。

今回のコロナ禍は、これを一気にそれ以外の労働者にも拡大していくことになるかもしれないという話です。

 

 

 

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