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2020年5月18日 (月)

1985年以前は公務員に定年はなかった件について

人はみんな自分の生きてきた時代、より正確に言うと社会人となってそれなりのことが分かるようになってからのことしか本気では覚えていないということのいい実例が、今やや異なるトピックが原因で話題となっている国家公務員の定年引上げに係る法案をめぐってもよく現れているように思われます。どういうことか?みんな、民間企業と全く同様に、公務員にも定年制があるのがあまりにも当たり前だと思っているんですが、実は国家公務員法に定年制が導入されたのは1981年改正によってであり、それが施行されたのは1985年3月末からなんです。それまでは、公務員には定年制はなかったんですよ。

http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/houritsu/09419810611077.htm

法律第七十七号(昭五六・六・一一)
  ◎国家公務員法の一部を改正する法律
 国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)の一部を次のように改正する。 

第三章第六節第一款に次の一目を加える。
      第二目 定年
 (定年による退職)
第八十一条の二 職員は、法律に別段の定めのある場合を除き、定年に達したときは、定年に達した日以後における最初の三月三十一日又は第五十五条第一項に規定する任命権者若しくは法律で別に定められた任命権者があらかじめ指定する日のいずれか早い日(以下「定年退職日」という。)に退職する。
 前項の定年は、年齢六十年とする。ただし、次の各号に掲げる職員の定年は、当該各号に定める年齢とする。
 一 病院、療養所、診療所等で人事院規則で定めるものに勤務する医師及び歯科医師 年齢六十五年
 二 庁舎の監視その他の庁務及びこれに準ずる業務に従事する職員で人事院規則で定めるもの 年齢六十三年
 三 前二号に掲げる職員のほか、その職務と責任に特殊性があること又は欠員の補充が困難であることにより定年を年齢六十年とすることが著しく不適当と認められる官職を占める職員で人事院規則で定めるもの 六十年を超え、六十五年を超えない範囲内で人事院規則で定める年齢
  前二項の規定は、臨時的職員その他の法律により任期を定めて任用される職員及び常時勤務を要しない官職を占める職員には適用しない。
 (定年による退職の特例)
第八十一条の三 任命権者は、定年に達した職員が前条第一項の規定により退職すべきこととなる場合において、その職員の職務の特殊性又はその職員の職務の遂行上の特別の事情からみてその退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる十分な理由があるときは、同項の規定にかかわらず、その職員に係る定年退職日の翌日から起算して一年を超えない範囲内で期限を定め、その職員を当該職務に従事させるため引き続いて勤務させることができる。
  任命権者は、前項の期限又はこの項の規定により延長された期限が到来する場合において、前項の事由が引き続き存すると認められる十分な理由があるときは、人事院の承認を得て、一年を超えない範囲内で期限を延長することができる。ただし、その期限は、その職員に係る定年退職日の翌日から起算して三年を超えることができない。
 (定年退職者の再任用)
第八十一条の四 任命権者は、第八十一条の二第一項の規定により退職した者又は前条の規定により勤務した後退職した者について、その者の能力及び経験を考慮し、公務の能率的運営を確保するため特に必要があると認めるときは、人事院規則の定めるところにより、一年を超えない範囲内で任期を定め、その者を常時勤務を要する官職に採用することができる。
  前項の任期又はこの項の規定により更新された任期は、人事院規則の定めるところにより、一年を超えない範囲内で更新することができる。
  前二項の規定による任期については、その末日は、その者に係る定年退職日の翌日から起算して三年を超えることができない。 
附 則
 (施行期日)
第一条 この法律は、昭和六十年三月三十一日から施行する。ただし、次条の規定は、公布の日から施行する。

 

http://www.shugiin.go.jp/Internet/itdb_housei.nsf/html/houritsu/09519811120092.htm

法律第九十二号(昭五六・一一・二〇)
  ◎地方公務員法の一部を改正する法律
 地方公務員法(昭和二十五年法律第二百六十一号)の一部を次のように改正する。
第二十八条の見出しを「(降任、免職、休職等)」に改め、同条の次に次の三条を加える。
 (定年による退職)
第二十八条の二 職員は、定年に達したときは、定年に達した日以後における最初の三月三十一日までの間において、条例で定める日に退職する。
2 前項の定年は、国の職員につき定められている定年を基準として条例で定めるものとする。
3 前項の場合において、地方公共団体における当該職員に関しその職務と責任に特殊性があること又は欠員の補充が困難であることにより国の職員につき定められている定年を基準として定めることが実情に即さないと認められるときは、当該職員の定年については、条例で別の定めをすることができる。この場合においては、国及び他の地方公共団体の職員との間に権衡を失しないように適当な考慮が払われなければならない。
4 前三項の規定は、臨時的に任用される職員その他の法律により任期を定めて任用される職員及び非常勤職員には適用しない。
 (定年による退職の特例)
第二十八条の三 任命権者は、定年に達した職員が前条第一項の規定により退職すべきこととなる場合において、その職員の職務の特殊性又はその職員の職務の遂行上の特別の事情からみてその退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる十分な理由があるときは、同項の規定にかかわらず、条例で定めるところにより、その職員に係る同項の規定に基づく条例で定める日の翌日から起算して一年を超えない範囲内で期限を定め、その職員を当該職務に従事させるため引き続いて勤務させることができる。
2 任命権者は、前項の期限又はこの項の規定により延長された期限が到来する場合において、前項の事由が引き続き存すると認められる十分な理由があるときは、条例で定めるところにより、一年を超えない範囲内で期限を延長することができる。ただし、その期限は、その職員に係る前条第一項の規定に基づく条例で定める日の翌日から起算して三年を超えることができない。
 (定年退職者の再任用)
第二十八条の四 任命権者は、第二十八条の二第一項の規定により地方公共団体を退職した者又は前条の規定により勤務した後地方公共団体を退職した者について、その者の能力及び経験を考慮し、公務の能率的運営を確保するため特に必要があると認めるときは、条例で定めるところにより、一年を超えない範囲内で任期を定め、その者を当該地方公共団体の常時勤務を要する職に採用することができる。
2 前項の任期又はこの項の規定により更新された任期は、条例で定めるところにより、一年を超えない範囲内で更新することができる。
3 前二項の規定による任期については、その末日は、その者に係る第二十八条の二第一項の規定に基づく条例で定める日の翌日から起算して三年を超えることができない。
   附 則
 (施行期日)
第一条 この法律は、昭和六十年三月三十一日から施行する。ただし、次条の規定は、公布の日から施行する。 

 

268_h1hp725x1024_20200313134301_20200518095501 信じがたいかもしれませんが、でも、私が最近書いた「職階制-ジョブ型公務員制度の挑戦と挫折」を読まれた方は、それが国家公務員法制定時の超ジョブ型の設計と整合的であることがお判りだと思います。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2020/03/post-14393e.html(職階制-ジョブ型公務員制度の挑戦と挫折@『季刊労働法』2020年春号(268号))

はじめに
 日本の公務員制度についての労働法からのアプローチは、長らく集団的労使関係制度の特殊性(労働基本権の制約)とその是正に集中してきました。それが国政の重要課題から消え去った後は、非常勤職員という非正規形態の公務員が議論の焦点となってきています。しかし、正規の公務員については、終身雇用で年功序列という日本型雇用システムのもっとも典型的な在り方を体現しているというのが一般的な認識でしょう。最近話題となった小熊英二『日本社会のしくみ』(講談社現代新書)では、日本型雇用の起源を明治期の官庁制度に求め、その任官補職原則が戦後日本の職能資格制度という形に残ったと指摘しています。日本社会の大きな流れとしては、この認識は全く正しいと言えます。ただ、まことに皮肉なことですが、立法政策史の観点からすると、それとは正反対の徹頭徹尾ジョブに基づく人事管理システムを法令上に書き込んだのが、戦後日本の公務員法制であったのです。「職階制」と呼ばれたこの制度は、驚くべきことに、1947年の国家公務員法制定時から2007年の同法改正(2009年施行)に至るまで、60年間も戦後日本の公務員制度の基本的オペレーティングシステムとして六法全書に存在し続けてきました。しかし、それが現実の公務員制度として動かされたことは一度もなかったのです。今回は、究極のジョブ型公務員制度というべきこの職階制の歴史をたどります。
1 1947年国家公務員法
2 1948年改正国家公務員法
3 職階法
4 S-1試験
5 職種・職級の設定
6 格付作業
7 間に合わせの任用制度
8 間に合わせの給与制度
9 職階制の挫折
10 その後の推移
11 職階制の廃止
・・・・ 徹底したジョブ型の制度を法律上に規定していながら、それをまったく実施せず、完全にメンバーシップ型の運用を半世紀以上にわたって続けてきた挙げ句に、それが生み出した問題の責任を(実施されてこなかった)職階制に押しつけてそれを廃止しようという、まことに意味不明の「改革」ですが、そもそも公務員制度改革を人事労務管理のマクロ的観点から考えるような見識のある人々は、21世紀には完全に姿を消してしまっていたのかもしれません。
 今日、非正規公務員問題を始めとして、公務員制度をめぐる諸問題の根源には、さまざまな公務需要に対応すべき公務員のモデルとして、徹底的にメンバーシップ型の「何でもできるが、何もできない」総合職モデルしか用意されていないことがありますが、それを見直す際の基盤となり得るはずであった徹底的にジョブ型に立脚した職階制を、半世紀間の脳死状態の挙げ句に21世紀になってからわざわざ成仏させてしまった日本政府の公務員制度改革には、二重三重四重くらいの皮肉が渦巻いているようです。 

まず、具体的な(公務たる)ジョブがあり、そのジョブに相応しい人間を採用してそのジョブに充てる、給与はそのジョブごとに定められる、という極めてジョブ型に徹した公務員制度を前提とすれば、メンバーシップ型人事管理から必然的にもたらされる定年制というような制度はそもそも想定されていなかったのですね。とはいえ、上記論文に書いたように、職階制は法律条文上には長らく明記されながら実際に運用されることのないまま祭り上げられたままであり、それゆえどこかでやめてもらわなければならないがゆえに勧奨退職でもってやってきたのを、ようやく1980年代という日本社会が企業主義一辺倒になった時代になって、公務員にも法律上定年制が適用されるようになったというわけです。

役職定年だの、60歳で7割に引き下げるだの、いかにもメンバーシップ型全開の制度を入れ込みながらなんとか65歳定年にこぎつけた今回の法改正案それ自体が、70年以上前に作られた法律のその時の思想とは似ても似つかぬものになってしまった国家公務員法の歴史の悲しみを問わず語りに物語っているようではあります。

いや、そんなこと知っている人は、当の人事院の役人たちも含めて、もはやほとんど絶え果ててしまっているのでしょうけど。

 

 

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コメント

定年がないということは、退職金も今のように自己都合退職で減額されたりといったこともなかったんだろうか。

本文とはあまり直接関係ないですが。

最近は中小企業も含めて定年制が一般化しています。
30人から99人規模の中小企業でも定年制の導入率が9割を超えています。100人から299人人規模だとほぼ100%です,
ただ,1970年前後をみると,30人から99人規模では5割程度の導入率でした。
「ジョブ型雇用」が多いされる中小企業で,なぜ定年制の導入が進展したのか,検討も必要でしょう。


中小企業については、そもそも大企業のようなメンバーシップ性が希薄であるだけで、別段ジョブ型でもないというのが実態でしょう。言い換えれば人事労務管理が大企業に比べて雑であり、それゆえにかつては定年制もあまり普及していなかったのだと思います。

その中小企業になぜ定年制が普及してきたのかと言えば、一つは(大企業を中心とする55歳定年の)定年引上げを目指す高齢者雇用政策の影響。あの頃は「60歳定年の努力義務」とか「60歳定年の義務化」というスローガンがよく言われましたが、厳密には「定年がないのは大いに結構だけど、もし定年を定めるならば」という条件節がついている政策目標が、なにやら定年がないのが遅れているので、ちゃんと定年を導入して、それを60歳にしなければいけないかのような印象を与えたのではないかと。

これと重なりますが、労働省、厚生労働省のモデル就業規則の(社労士等を通じた)影響力も結構あったのではないかと思います。中小企業というのは「明日は大企業のようになろう」というあすなろ精神から、モデル就業規則に倣う傾向が強かったのではないでしょうか。

下記は同意見です。政策の意図しない機能だったと思います。
その点を私も言いたかったのです。
定年制を導入する必要のない企業も多かったと思います。

「定年を定めるならば」という条件節がついている政策目標が、なにやら定年がないのが遅れているので、ちゃんと定年を導入して、それを60歳にしなければいけないかのような印象を与えたのではないかと」。

ざっくりした小並感としては、そもそも、その政策意図は
   
年齢差別を維持しながらも、それによる弊害は抑制したい
   
というものだ、と思います。

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