菅野和夫『労働法の基軸』
菅野和夫著、岩村正彦・荒木尚志聞き手『労働法の基軸 学者五十年の思惟』(有斐閣)をお送りいただきました。菅野先生が自らの人生を弟子の岩村・荒木両氏に語った本です。
http://www.yuhikaku.co.jp/books/detail/9784641243224
副題には「学者五十年」とありますが、それ以前の生い立ちから幼少時代、学生時代のこともたっぷりと語られています。冒頭、菅野先生のお父様が満州からソ連に抑留され、シベリアのチタ州の収容所で亡くなったこととか、中学校のクラスの半数以上が集団就職していったこととか、ほかの3人兄弟は商業高校に進学し、和夫先生だけが普通科に行ったこととか、1950~60年代の地方の有様が浮かび上がってきます。
学生時代は全然授業に出ず、合気道ばかりやっていて、司法試験に合格して司法修習所で修習が終わるころ、労働弁護士を目指して旬報法律事務所に就職が決まっていたのが、突然石川吉右衛門先生に「助手になれ」と言われて、一転研究者人生が始まった・・・というあたりもなかなか波乱万丈です。
その後も、この目次のように、実に幅広い活躍をしてこられているので、話の広がりが大きいです。
第1章 ふるさとから東京へ
第2章 労働法学へ
第3章 菅野労働法学
第4章 労働政策への関わり
第5章 労働委員会での労使紛争処理
第6章 国際人として
第7章 大学人として
第8章 JILPTの調査研究に参加して
第9章 研究者生活を通じて
終 章 労働法五十年の変化をみつめて
非常に多くの方が、自分にかかわりのあるところをどこかに見出すでしょうが、私の場合、もちろん菅野先生がJILPT理事長だったころにその部下としてお仕えした時期がそれにあたります。独法改革で国際関係業務がバッサリ削られていたJILPTの国際プレゼンスを高めなければならないという大号令で始まった国際比較労働政策セミナーの第2回目で、理事長から「君が基調報告をやれ」と言われ、逃げ回っても許してくれず、おぼつかない英語でやらざるを得なかった記憶が、316ページ辺りを読んで蘇ってきました。
« 請負でも実態で労供というのは戦前から | トップページ | 『Japan Labor Issues』5・6月号 »
コメント