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2020年5月10日 (日)

メンバーシップ型公務員制度をそのままにした弥縫策としての改正案

コロナ禍のさなか、なぜか検察官の定年ばかりに政治的注目が集まる国家公務員法改正案ですが、本ブログの観点からすれば、これこそ、もともと純粋ジョブ型の職階制で作られながら、それを完璧に放り捨ててメンバーシップ型でもって長年運用してきてしまった公務員制度を、そこのところはそのままにしながら、とにかく定年を60歳から65歳に引き上げなければならないからといって、ますます筋の通らない仕組みでもって何とか弥縫策としようという、まあそういう改正案であるわけです。ところが、残念ながら、そういう批判の声はこれっぽちも聞こえてこない。まあ、コロナ禍の真っ最中なので仕方がないとも言えますが、検察官の定年というしっぽが犬を振り回しているかの如き状況は、なんともはやではありますな。

https://www.cas.go.jp/jp/houan/200313/siryou1.pdf

1 現行60歳の定年を段階的に引き上げて65歳とする。
(ただし、職務と責任の特殊性・欠員補充の困難性を有する医師等については、66歳から70歳の間で人事院規則により定年を定める)

2.役職定年制(管理監督職勤務上限年齢制)の導入
① 組織活力を維持するため、管理監督職(指定職及び俸給の特別調整額適用官職等)の職員は、60歳(事務次官等は62歳)の誕生日から同日以後の最初の4月1日までの間に、管理監督職以外の官職に異動させる。
② 役職定年による異動により公務の運営に著しい支障が生ずる場合に限り、引き続き管理監督職として勤務させることができる特例を設ける。

3.60歳に達した職員の給与
 人事院の「意見の申出」に基づき、当分の間、職員の俸給月額は、職員が60歳に達した日後の最初の4月1日(特定日)以後、その者に適用される俸給表の職務の級及び号俸に応じた額に7割を乗じて得た額とする。
(役職定年により降任、降給を伴う異動をした職員の俸給月額は、異動前の俸給月額の7割水準)

いや、民間企業でやっていることと考え方の方向性としては同じじゃん、といえばその通り。メンバーシップ型人事管理を大筋で維持しつつ定年を延長しようとすればこういうやり方にならざるを得ない。

でもね、国家公務員法という法律は今から70年以上も昔、純粋ジョブ型公務員制度として出発していたということを知っている人からすれば、ここまでジョブ型原理に反する年齢差別的な仕組みを持ち込まないと動きが取れないほどに、メンバーシップ型の制度になり果ててしまったんだなあ、と思い半ばに過ぎるものがあるかもしれませんね。

(参考)

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2020/03/post-14393e.html(職階制-ジョブ型公務員制度の挑戦と挫折@『季刊労働法』2020年春号(268号))

はじめに
 日本の公務員制度についての労働法からのアプローチは、長らく集団的労使関係制度の特殊性(労働基本権の制約)とその是正に集中してきました。それが国政の重要課題から消え去った後は、非常勤職員という非正規形態の公務員が議論の焦点となってきています。しかし、正規の公務員については、終身雇用で年功序列という日本型雇用システムのもっとも典型的な在り方を体現しているというのが一般的な認識でしょう。最近話題となった小熊英二『日本社会のしくみ』(講談社現代新書)では、日本型雇用の起源を明治期の官庁制度に求め、その任官補職原則が戦後日本の職能資格制度という形に残ったと指摘しています。日本社会の大きな流れとしては、この認識は全く正しいと言えます。ただ、まことに皮肉なことですが、立法政策史の観点からすると、それとは正反対の徹頭徹尾ジョブに基づく人事管理システムを法令上に書き込んだのが、戦後日本の公務員法制であったのです。「職階制」と呼ばれたこの制度は、驚くべきことに、1947年の国家公務員法制定時から2007年の同法改正(2009年施行)に至るまで、60年間も戦後日本の公務員制度の基本的オペレーティングシステムとして六法全書に存在し続けてきました。しかし、それが現実の公務員制度として動かされたことは一度もなかったのです。今回は、究極のジョブ型公務員制度というべきこの職階制の歴史をたどります。
1 1947年国家公務員法

2 1948年改正国家公務員法

3 職階法

4 S-1試験

5 職種・職級の設定

6 格付作業

7 間に合わせの任用制度

8 間に合わせの給与制度

9 職階制の挫折

10 その後の推移

11 職階制の廃止

・・・・ 徹底したジョブ型の制度を法律上に規定していながら、それをまったく実施せず、完全にメンバーシップ型の運用を半世紀以上にわたって続けてきた挙げ句に、それが生み出した問題の責任を(実施されてこなかった)職階制に押しつけてそれを廃止しようという、まことに意味不明の「改革」ですが、そもそも公務員制度改革を人事労務管理のマクロ的観点から考えるような見識のある人々は、21世紀には完全に姿を消してしまっていたのかもしれません。
 今日、非正規公務員問題を始めとして、公務員制度をめぐる諸問題の根源には、さまざまな公務需要に対応すべき公務員のモデルとして、徹底的にメンバーシップ型の「何でもできるが、何もできない」総合職モデルしか用意されていないことがありますが、それを見直す際の基盤となり得るはずであった徹底的にジョブ型に立脚した職階制を、半世紀間の脳死状態の挙げ句に21世紀になってからわざわざ成仏させてしまった日本政府の公務員制度改革には、二重三重四重くらいの皮肉が渦巻いているようです。

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コメント

何でもやらされて、結局何もかも中途半端なまま、勤続年数にしたがって自動的に上に行く。そんな人が上に立っているから、下の人間も育たない。まさに負のスパイラル。

季刊労働法、読んでみたいけど近くの図書館は開いていないからなあ。

組織のメンバーシップ性ですが、戦後の高度経済成長期までは民間企業もそうだったかもと思いますが、産業構造が変わり、生産が海外に移転し、というような大きな変化の中で、生き残らねばならない、儲けないとつぶれる民間企業はそれなりの合理性をもって旧態依然よりは変化してきてはいませんか。事業目的が明確で財政的には豊かではない中でやっているNPOなどはジョブ型が多いのでは。
それに対し、公務員は「絶対につぶれない」ので、組織を変革して生き残るための変化の契機がないですよね。しかも、省庁は最初は大変でも我慢して働けば最終的にいい目を見られるかも、という人参もあるので、変化など求めずに上司に従って的な風土が維持されるままなのでは、と小人は疑っております。地方も、首長が人気取りのために定員減らす、とかいうのはあるけれども、つぶれないのは変わりないし。

地方自治体の施設の図書館、東京では1,000平方メートル以下なら「休業要請」ではないはずですし、自治体図書館の利用者は地域を超える人の移動を伴うわけでもなく予約などの手段もあるはずなのに、とっとと閉めて開けないですね。図書館とどう大きく違うんだかの書店は休業要請の対象外でいろいろと対策して開けているのに、お気楽な地方公務員だからな、とうらみがましく考える小人です。まあ、アマで頼もうかな。

その図書館でいえば、既に非正規化が進んで6割を超えています。とっとと閉めて情けないと言われるのは、ジョブなきメンバーシップの正規公務員ではなく、メンバーシップなきジョブの非正規公務員というのが実態なわけです。

これは、図書館に限らず、本来公務員法が職階制で想定していた専門的職務はどんどん非正規化されていき、何でもやるけど何にもやれない正規公務員は、こういう「お気楽な地方公務員だからな」などという不平不満を直接受ける席には座らなくなっているという皮肉な事態が一般化しているわけですね。

https://toyokeizai.net/articles/-/260901

メンバーシップ型になるということは、みんながメンバーシップ型になるわけではなく、本来のジョブ型の仕事が非正規という形で準外部化されたり、委託という形で純外部化されたりするということも含まれているわけです。

非正規化はそのとおりだと思います。厚労省も膨大な非正規とか、あと委託、外注などで仕事を回しているでしょうからね。

まあ、細かいことですが、自治体図書館で言えば、そこで働いている人のほとんどは非正規で、ただし、さすがに館長など管理的職員は正職員、そこらで多少の判断はしようと思えばできるんじゃないかと、ついつい小人は期待するわけですが、ただし、自治体図書館の管理職はほとんどの場合、図書館というジョブに特に思い入れのない、自治体窓際職員が配属されているらしいですね。

>その図書館でいえば、既に非正規化が進んで6割を超えています。とっとと閉めて情けないと言われるのは、ジョブなきメンバーシップの正規公務員ではなく、メンバーシップなきジョブの非正規公務員というのが実態なわけです。

”とっとと閉め”ると決定したのは、”何でもやらされて、結局何もかも中途半端なまま、勤続年数にしたがって自動的に上に”立っているジョブなきメンバーシップの正規公務員の方だと思います(もっと上の首長?) 公立図書館は閉館しても収入は減らないので、(感染防止という)建前を優先するのかもしれません。以前に公立図書館の運営を民間企業に委託して問題になった事がありましたが、その様な民営図書館でも自粛しているのでしょうか?

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