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2020年5月22日 (金)

フルプレイヤーとして働く高齢者が必要なんだが

本体ではなくしっぽの検察官の定年延長ばかりに焦点が当たって炎上した国家公務員法改正案は、当の某認証官の賭けマージャン退職に揺れる中で、本体の見直しに向かいつつあるようです。

https://news.tv-asahi.co.jp/news_politics/articles/000184528.html(国家公務員法改正案 安倍総理見直し検討の考え)

 安倍総理大臣は検察官を含む国家公務員の定年の延長を可能にする国家公務員法の改正案について、見直しを検討する考えを示しました。
 安倍総理大臣:「この法案を作った時とは状況 が違っているのではないかという(自民)党にもそういう意見があることも承知している。そうしたことを含めてしっかりと検討していく必要はあるんだろうと思っている」
 改正案について、自民党内からは新型コロナウイルスの影響で雇用情勢が悪化しているなかで「公務員だけ定年を延長してよいのか」と見直しを求める声が上がっています。安倍総理は「定年延長を含む制度改革は国民の意見に耳を傾けることが不可欠だ。国民の理解なくして前に進めることはできない」とも述べ、見直しを検討する考えを示しました。 

この自民党内の声は、あたかも定年を引き上げることが労働者(本件では公務員)の有利であることが前提になっているようですが、世界的にはむしろ、フランスの労働組合の定年引上げ反対デモに見られるように、逆の考え方も多く見られます。

基本に立ち返って考えれば、もし提供する労務とその対価として支払われる給与が釣り合っているならば、一方的に有利でも不利でもないはずですが、日本では定年引上げが労働者に有利であるように受け取られるのは、いうまでもなく高齢層(それに先立つ中高年層)において、提供する労務とその対価として支払われる給与が釣り合っていない、要するにその働きよりもたくさん給与をもらっていると思われているからであり、それは日本型雇用システムにのっとり年功的な給与体系のもとでは、多くの場合事実であるからでしょう。

いやむしろ、定年前の段階では、働きよりもたくさん給与をもらっていること大前提にして、7割に引き下げるという(同一労働同一賃金原則に正面から反する)ことを平然とやろうとしているのが今回の改正案なのですが、そっれでもなお、提供するであろう労務に比べて釣り合わない高すぎる給与だと、みんな思っているから、こういう反応が出てくるわけですね。

12日前に本ブログで書いたように、

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2020/05/post-1cb698.html(メンバーシップ型公務員制度をそのままにした弥縫策としての改正案)

・・・でもね、国家公務員法という法律は今から70年以上も昔、純粋ジョブ型公務員制度として出発していたということを知っている人からすれば、ここまでジョブ型原理に反する年齢差別的な仕組みを持ち込まないと動きが取れないほどに、メンバーシップ型の制度になり果ててしまったんだなあ、と思い半ばに過ぎるものがあるかもしれませんね。 

結局、年齢が上がるにつれてその貢献に比べてもらいすぎになるという構造をそのままにして、年金改正に合わせた高齢者雇用を進めようとすれば、こういう矛盾が露呈することにならざるを得ないわけですが、そういう一番肝心かなめの議論をみんな回避して、枝葉末節のことばかりにかまけてきたことのツケが、今の惨状なのかもしれません。

もひとつ、今回の改正案について、しっぽじゃない本体それ自体の問題点に着目していた数少ない議論として、厚労省を退職した千正康裕さんの議論がありました。

https://note.com/yasusensho/n/n42cc6c902943(誰も指摘しない検察庁法改正法案の最大の懸念)

 改正法案で導入されるのはいわゆる役職定年と定年延長です。
平たく言うと、60歳超えると幹部にはならずに給料が7割に減るということです。
つまり、幹部ではなくスタッフになるわけですが、さすがに60歳超えた人に、24時間、土日対応は難しいと思いますし、させるべきでもありません。時間ではなく、知識や経験を活かすような形で働いてもらうしかないでしょう。
また、国家公務員は定員が法令で決められていて全体の人数は変わらないので、定年延長される人の分、60歳以下の職員の人数が減ることになります。
結果として起こることは、24時間、土日対応可能な職員の割合がますます減っていくということです。

そもそも論でいえば、今の霞が関のような常時「24時間、土日対応可能」を前提とする仕組みそのものが異常なので、それこそ真っ先に見直されるべきではありますが、そうでなくても、普通のまともなフルの働き方すらできなくなっている(いわゆる「働かないおじさん」)ということも、この問題の背景にあるでしょう。日本型雇用システムのもとでは、管理職というのはマネジメントという一個の専門職ではなく、勤続への報償的性格を有するため、マネジメント能力の足りないしろうと管理職が給与が上がるにつれて却ってプレイヤーとしての能力を減退させていき、役職を外されると、かつてはそれなりにあったはずのプレイヤーとして活躍することすら難しくなり、やることなくただ高給を食んでいるとみなされていくわけです。そうなると、7割に給与を下げたところで、もらいすぎに変わりはなく、そんな公務員に一方的に有利な改正は見直せというような意見が、もっともらしく見えてくるわけですね。

その意味では、本来必要であり進めるべき定年引上げの前提条件としては、年功的な給与体系を働きに見合ったものにどうしていくかということに加えて、そもそも(素人管理職にすることなく)フルのプレイヤーとして若年期から中高年期、そして高齢期の65歳までを一貫して働き続けるような人事管理のシステムをどう構築していくかという大きな課題があるといえるのでしょう。

で、もともと国家公務員法はそういう設計(職階制)で作られていたんだけどね、とぼそっとつぶやいてみたりするわけですが。

 

 

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