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2020年4月 6日 (月)

萬井隆令さんの(ほかの方への)批判論文の注釈におけるわたくしへの言及について

萬井隆令さんより紀要の抜き刷りが送られてきました。わたくしは原則として、刊行物については本ブログ上でご紹介しておりますが、抜き刷りについては省略させていただいております。ただ、その中にわたくしに対する言及等があった場合には、それに対するコメントをすることがあります。

今回お送りいただいたのは、『立正法学論集』53巻2号の「論評:高橋賢司「労働者派遣法の法政策と解釈」」と、『龍谷法学』52巻4号の「労働者派遣と「常用代替防止」論」ですが、前者は表題通りもっぱら立正大学の高橋賢司さんを批判しているものなので、私にかかわりがあるのは後者です。

とはいえ、高梨昌、高橋賢司、本庄淳志、浜村彰といった方々がいずれも本文で面と向かって批判されているのに対して、わたくしは注27で

(27)濱口桂一郎氏は、派遣法の目的は「常用代替防止」である」(同「本当の意味での派遣労働者の保護とは何か」『情報労連REPORT』2012年11月号)とか「常用代替防止という日本独自の派遣法思想」(同「ようやく普通の法律になった労働者派遣法」)https://www.nippon.com/ja/currents/d00203/ )と述べられる。それが浜村氏の言う「政策原理」と同義なのかは、濱口氏は詳述されないのでわからない。

と、ついでのように言及されるだけです。

この言及がそもそも私の議論を批判するものなのか、そうではないのかすらよく分かりませんが、ただ、そこに示されているかつての私の文章をちらりとでも読めば、通常の法律学の論文なんかよりはるかにストレートに書いたつもりであり、それがどういう意味であるのかはあまりにも明白だと思われるので(浜村さんの議論と同じかどうかなどは別にして)、「詳述されないのでわからない」などという言われ方は如何なものかと感じた次第です。

どれくらい明白かつストレートに書いたのかは、注27でURLを明記いただいているニッポン・コムの文章の該当部分を読んでいただければわかると思いますので、引用しておきます。

https://www.nippon.com/ja/currents/d00203/ (ようやく普通の法律になった労働者派遣法)

 労働法研究者の多くがうすうす気付いているにもかかわらず、あえて言挙げしてこなかったことは、今までの日本の労働者派遣法が世界的に見て極めて異例な仕組みであったということである。先進諸国の派遣法は、派遣労働者を保護するための労働法である。当たり前ではないかと思うかもしれないが、日本の派遣法はそうではない。派遣という本質的に望ましくない働き方を抑制するために労働者派遣事業を規制することが目的の事業立法である。問題は、派遣という働き方が誰にとって望ましくないのか、である。
日本独自の「常用代替防止」という法目的
 派遣法制定時の政策文書に明確に書かれているように、「望ましくない」のは日本的雇用慣行の中にいる常用労働者(正社員)にとってであって、派遣という働き方をしている労働者にとってではない。それを象徴する言葉が派遣法の最大の法目的とされる「常用代替の防止」である。派遣という「望ましくない」連中が侵入してきて、われわれ常用労働者の雇用が代替されては困る、という発想である。
 ではどうしたら常用代替しないように仕組めるか。1985年に初めて労働者派遣法が制定された時のロジックは、新規学卒から定年退職までの終身雇用慣行の中にいないような労働者だけに派遣という働き方を認めるというものであった。それを法律上の理屈としては、専門的業務だから常用代替しない、特別な雇用管理だから常用代替しない、と言ったわけである。 
 しかし、その「専門的業務」の主たる中身は、派遣法制定当時は結婚退職することが多かったOLと呼ばれる事務職の女性たちが担う「事務的書記的労働」(法制定に尽力した労働経済学者、故高梨昌氏の言葉)であった。「ファイリング」という職業分類表にも登場しない「業務」が最大の派遣専門業務となったのは、法律と現実の間の論理的隙間を埋めるものであり、後には事務職なら最低限のスキルとなる「事務用機器操作」が専門業務としてその隙間を埋めた。
 このごまかしが世間で通用したのは、OLは新規学卒から結婚退職までの短期雇用という暗黙の了解の下に、派遣労働者でOLを代替することは常用代替ではないと認識されていたからであろう。男性正社員の終身雇用さえ維持できれば、OLがいくら派遣に代替されても構わなかった。その虚構を維持するためなら、高度な専門業務をやっている男性の派遣を「専門的業務でないから」といって禁止しながら、実際には補助的な事務を担う女性の派遣ばかりが「専門的業務」の名の下に増加しても、誰も文句を言わなかったのである。

 

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